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HIGHLAND PARK 
GORDON& MACPHAIL 
Aged 29 years 
Distilled 1989 
Bottled 2018 
Cask type Refill Sherry Butt #18/084 
700ml 57% 

グラス:木村硝子
時期:不明
場所:自宅@サンプル
暫定評価:★★★★★★(6ー7)

香り:スウィートでドライ、スパイシーな香り立ち。ブラウンシュガーやカラメルソース、色の濃い甘さを感じた奥からハイトーンな刺激が鼻孔を刺激する。

味:とろりとしてリッチなシェリー感。ドライプルーンやデーツ、カラメルソースで煮詰めたダークフルーツを思わせる甘酸っぱさとほろ苦さ。余韻にかけては序盤の甘味をウッディでビター、スパイシーな刺激が引き締め、タンニンが染み込むようなフィニッシュ。

ハイランドパークっぽさよりも、新旧入り交じったような不思議なシェリー感が主体。それこそ昔のGMシェリーを思わせるカラメル系の甘さやダークフルーツ感の中に、傾向の異なるスパイシーさが混じる。少量加水するとスパイシーさが和らぎスウィートでマイルドな味わいに。総合的には良くできているが、これは近年シェリーなのかオールドなのか、果たして。。。


こんな樽があったのかと感じる、GMコニッサーズチョイスのグッドリリース。
酒質の個性よりも、いかにも昔のGMリリースらしい色濃くしっかりと付与された樽感が特徴的ですが、日本市場には同じ表記で熟成期間が約3ヵ月短いだけの、色の薄いシングルカスク(以下、画像参照)が入っていたようで。。。色合いだけで比較すると、ちょっと違いすぎるというか、ほんとに同じリフィルシェリーバットなのか?ラベル、コピペで作って修正し忘れてない?と思えるほどです。

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(ご参考:HIGHLAND PARK Aged 29 years 1989-2018 Cask No,19/057 55.3%)

こうした色濃いリフィルシェリー樽のリリースは過去にもあり、特段不思議なものではありません。
要因としてまず一つ考えられるのが、1st fillが灰汁抜き程度の短熟でしか使われなかった樽であり、エキスが充分残っていた可能性。そしてもう一つ考えられるのが、余韻にあるビターでウッディな傾向と新旧入り交じったようなスパイシーさから、スパニッシュオークバットのリチャード仕様、鏡板には新しいものが使われた補修樽であるという可能性です。

過去のGMのリリースで、ハイランドパークの短熟と言えば、1970~1980年代にリリースされていた8年があります。
この熟成に使われていた濃厚な1st fillなら、あるいは次に入れた原酒にもエキスを残すのでは。。。という希望的観測と、何よりオールドハイランドパークの中でも名高いボトルのDNAを継いでいると考えると、このリリースは非常にロマン溢れる1本となります。
他方で、ブレンド向け等を合わせ、年間で膨大な数の樽を払い出すGMが、いちいち同じ銘柄がめぐりあうような樽の管理をしているとは思えず。。。
現実的には、当時のGMから数多リリースされていた同じような短熟リリースの樽が使われたと考えるか。もう一つの可能性として、クーパレッジ経由の補修樽と考える方が、フレーバーの系統的にも自然なように感じます。

実際のところ、色の薄い日本向けの方が、GMの最近のリリースに多く見られる、あの特徴的なGMカスクの払い出しをそのまま使ったと言われても違和感なく。むしろ色合いとしては自然なのです。
飲み比べをしたわけではなく、これ以上は画竜点睛を欠くため控えますが(何より野暮ですし)、ついついあれこれ考えてしまうのは魅力的なウイスキーであるから。普通に味だけ見ても、良質なシェリー樽フレーバーが付与されたグッドリリースだと思います。


余談:このボトルは先日の持ち寄り会にて、どんな樽が使われているのかと話題になった1本でした。その際は「昔のGMシェリー樽の短熟払い出し後」という、本記事で1つ目の可能性寄りの考察をしましたが、会終了後に小瓶交換をしてじっくり飲んでみると、そうとは言い切れないニュアンスがいくつも見られたわけです。
やはり落ち着いて飲み直す機会は重要ですね。美味しいだけでなく、大変考えさせられる1本でした。追試の機会を頂き、ありがとうございます!

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今日のオマケ:笹の川酒造 初しぼり 純米吟醸 しぼりたて生

正月用の日本酒の一つ。安積蒸留所を操業する老舗笹の川酒造の本職とも言うべき、日本酒の2019年の初しぼり生酒。
昨年の新酒は、準備していた酒米や酒造そのものが台風の浸水被害を受け、震災後最大の被害があった中での仕込みでした。

そのため、新酒は例年より遅い出荷となったようですが、柔らかくクリーミーな米の旨味を感じる口当たりに、くどすぎず品の良い吟醸香、フルーティーさ。バランスの良さにすいすい飲めてしまう、美味しい日本酒に仕上がっていると思います。
昨日の若鶴の生原酒は、和洋どの料理も受け止められるような濃い酒でしたが、今日の日本酒は和食寄りで、刺身や昆布巻き等の脂の強すぎない料理と合わせると相乗効果を期待できると思います。
しかしなんというか、気持ちよく酔える良いお酒ですね。