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1年があっという間に過ぎ去ってしまった・・・なんてことを毎年呟いている気がしますが。(もう歳だなぁ・・・とも)
日々こうしてブログを更新していると、過ぎ去ってしまった時間の存在を実感出来る、日記的な感覚があったりします。

2019年に更新したレビュー数は270程度、総数は1500を越えました。うち投稿していない銘柄もあったりで、何だかんだ500銘柄は飲んでいると思います。
また、今年はブログ活動をしてきた中でも、最も繋がりの広がった年で、楽しいことも多かったですし、考えさせられる事柄も少なからずありました。
2019年最終日の更新では、これら1年で経験したことの中から、印象に残っている出来事やボトルをまとめて振り返っていきます。

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■Liqulの執筆開始&グレンマッスルのリリース
最も印象的だった出来事は、勿論この2つ。
まずひとつ目が、酒育の会の代表である谷島さんからお声がけいただき、Liqulでオフィシャルボトルレビューの執筆を開始したこと。
同紙がWEB媒体へと移行する来年からが本番なので、今年は準備運動的な意味合いもありましたが、業界で活躍されている皆様と一緒に活動することができたのは、大きな刺激になりました。

また、執筆にあたりアイコンを新垣先生に描いて貰えたのも、ウイスキーの縁で実現した出来事のひとつです。
某海賊漫画風くりりん似顔絵。個人的にはすごく気に入っているものの、仲間内から「こんな悪い表情出来てない」と言われておりますがw
2020年最初の記事は既に入稿済みで、先日リニューアルが発表されたアランの新旧飲み比べが掲載される予定です。

そしてもうひとつの出来事は、オリジナルリリース「グレンマッスル18年ブレンデッドモルト」が実現したことですね。
宅飲みした際の酔った勢いで始まった計画でしたが、愛好家にとってのロマンをこうして形に出来たことは、ブログ活動というか人生の記念になったといっても過言ではありません。
実現に当たってご協力頂いた笹の川酒造、ならびに福島県南酒販の皆様、本当にお世話になりました。。。

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グレンマッソー18年は、国内で3年以上貯蔵されていたものとはいえ、輸入原酒(バルク)を使ったブレンデッドモルトウイスキーです。
突き抜けて旨いリリースとは言えませんが、キーモルトを探るミステリアスな面白さに、嗜好品として楽しんでもらえるバックストーリー。加えて香味にも流行りの系統のフルーティーさがあり、一定レベルのクオリティには仕上がっていたと思います。

何の思い入れもなくとりあえずサンプルだけ手配して、複数のなかから比較的まともなものを選んで・・・というような選定方法では、我々愛好家側の色は出せないと思っての”ブレンド”というジャンルでしたが。SNS等で「今年印象に残ったウイスキーのひとつ」と、何人かに言って貰えていたのが嬉しかったですね。
そして第一歩が踏み出せたことで、それに続く新しい動きもあり、来年はそのいくつかを発表出来ると思います。我々の作った味がどんな感想をいただけるのか、今から楽しみです。

※参照記事

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■ジャパニーズウイスキーの定義とワールドブレンデッド
さて、輸入原酒と言えば、2019年は輸入原酒を使いつつ「ジャパニーズ的な名称を用いたリリース(疑似ジャパニーズ)」が、前年以上に見られたのも印象的でした。
一部銘柄に端を発し、ウイスキーの成分表記についても少なからず話題となりました。こうした話は、すべて情報を開示したり、事細かに整理したからといってプラスに働くものとは限りませんが、法律上の整理と一般的なユーザーが求める情報量が、解離してきているのは間違いありません。
今の日本は、昭和のウイスキー黎明期ではないんですよね。

一方で、大手の動きとしてはサントリーが「ワールドブレンデッドウイスキー AO 碧」を新たにリリースしたこともまた、2019年の印象的な出来事のひとつだったと感じています。
ワールドブレンデッド表記は、自分の記憶ではイチローズモルト(ベンチャーウイスキー)が2017年頃から自社リリースに用い始めた表記。ジャパニーズウイスキーブームのなかで、それとは逆行するブランドを業界最大手であるサントリーが立ち上げたのは驚きでした。

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ウイスキー文化研究所ではジャパニーズウイスキーの定義作りが進み、既に素案が公開されている状況にあります。
来年のTWSCはその定義に基づいてカテゴリーの整理が行われていますし、4月にはジャパニーズウイスキーフェスティバルが開催される予定であると聞きます。

シングルモルトウイスキーでは、産地が重要な要素となるため基準に基づく産地呼称等の整理が必要ですが、ブレンデッドはジャパニーズだけでなく、広い視点で考えなければならないとも思います。
他産業ではMade in Japanブランドが世界的に強みと言っても、日本製のパーツや材料が評価されている部分もあれば、国内外問わず作られたそれらを、日本の技術や品質追求の考えの下で組むことで形成されている部分もあります。
サントリーの碧を始め、ワールドブレンデッド区分のウイスキーは、日本の環境だけでなくブレンド技術という日本の技をブランドに出来る可能性を秘めたジャンルと言えます。

つまり輸入原酒(バルクウイスキー)もまた、使い方次第で立派なブランドとなるのですが、問題なのは酒ではなく”売り方”。どこのメーカーとは言いませんが、海外市場をターゲットに、紛らわしいを通り越したえげつない商品をリリースしている事例もあります。
現在作られている基準をきっかけに、そうした整理にもスポットライトが当たり、業界を巻き込んだ議論に繋がっていくことを期待したいです。

※参照記事

■2019年印象に残ったウイスキー5選
小難しい話はこれくらいにして、行く年来る年的投稿ではお決まりとも言える、今年印象に残ったウイスキーです。
まず前置きですが、今年は冒頭触れたとおり、500銘柄くらいはテイスティングをさせていただきました。
中には、サンプル、持ち寄り会等でご厚意により頂いたものもあります。皆様、本当にありがとうございました。

オールドの素晴らしいものは相変わらず素晴らしく、そうでないものはそれなりで。一方ニューリリースでは原酒の個性が弱くなり、ボトラーズは特にどれをとってもホグスヘッド味。。。のような傾向があるなかで、それを何かしらとタイアップして売るような、ラベル売り的傾向も目立ちました。
市場に溢れる中身の似たり寄ったりなリリースに、食傷気味になる愛好家も少なくなかったのではないかと推察します。

その中で、今年印象的だったボトルを年始から思い返すと、オフィシャルリリースや、作り手や選び手の想いが込められたものほど、そのバックストーリーの厚みから印象に残りやすかったように思います。
個人的な好みというか、その時その時の美味しさだけで選ぶなら、カテゴリーから上位を見てもらえれば良いので、面白味がありません。味以外の要素として、そのリリースに込められた情報、背景、個人的な思い入れ等も加味し、”印象に残ったウイスキー”を選んでいきます。
なお先の項目で触れている、グレンマッスルやサントリー碧も該当するボトルなのですが、二度紹介しても仕方ないので、ここでは除外します。(ニューポット、ニューボーンについても、来年まとめるため対象外とします。)

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チャーしたスパニッシュオークの新樽で熟成された山崎。味は若い原酒を濃い樽感で整えたような粗さはあるが、その樽感がシェリー樽、あるいはシーズニングという概念を大きく変えた。味以外の"情報"で、これ以上のインパクトはない。是非飲んで欲しい1本。

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最高の白州のひとつ。白州蒸留所シングルモルトで初の30年熟成という点も印象的だが、15本と極少数生産故、樽から全量払い出されなかったことがもたらした、アメリカンオーク由来の淀みのないフルーティーさ、良いとこ取りのような熟成感が素晴らしい。

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アメリカで多くのシェアを獲得していた、全盛期とも言える時代のオールドクロウ。
100年を越える瓶熟を経てなお濁らずくすまず、艶のある甘味と熟成ワインのように整ったウッディネスが素晴らしい。また味もさることながら、ボトルそのものが有するバックストーリーも申し分なし。記憶に刻まれた、文化財級の1本。

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新しい蒸留所が示した新時代への可能性。樽由来のフルーティーさ、麦芽由来の甘味とフロアモルティングに由来する厚みのあるスモーキーフレーバーが合わさり、短熟らしからぬ仕上がりが評判となった。来年の10周年、そしてこれから先のリリースにも期待したい。

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マイ余市を選ぶつもりが、年末の持ち寄り会で滑り込んだ特別なウイスキー。2014年に天寿を全うされた、故竹鶴威氏に敬意を表した記念ボトル。ニッカが蒸留所を再稼働させた1990年の、最初の原酒をリメードホグスヘッド樽で熟成させたシングルカスクで、ニッカらしいウッディさにオークフレーバーと、ベンネヴィスらしいフルーティーさが合わさった、ファン垂涎の1本。

※その他候補に上がったボトル
・グレンファークラス 29年 1989-2019 ブラックジョージ
・リトルミル40年 1977-2018 セレスティアルエディション
・アラン 18年 オフィシャル
・アードベッグ 19年 トリーバン
・余市10年 2009-2019 マイウイスキー作り#411127

ちなみに、2019年はウイスキーだけでなく、ワインも色々飲んだ1年でした。
いくつか個別の記事を書いてみて、まだワインについては1本まとめて記事に出来るだけの経験が足りないと、オマケ程度でふれるにとどめましたが、ウイスキー好きに勧められるボトルもある程度固まったように思います。
ウイスキー愛好家のなかでも、ワインを嗜みはじめたメンバーがちらほら出てきていますし、来年はウイスキー×ワインの交流も進めていきたいですね。

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■以下、雑談(年末のご挨拶)
さて、本更新をもって2019年の投稿は最後となります。
まとめ記事ということで長くなりましたが、最後に来年の話を少し。。。

来年3月で本ブログは5周年を迎えます。
ブログ活動を再開した当時はどれだけ続くかなんて考えてませんでしたが、これも本当にあっという間でした。
ブログを通じて色々と繋がりも増え、執筆活動以外の動きもあり。先に記載した通り、来年は新たに発表出来ることもいくつかあると思います。

他方で、ブログ外のところでは息子が小学校に上がるなどの家庭環境の変化や、仕事のほうも任されている事業で管理職的な立ち回りが求められるようになってきて、公私とも変化の大きな年になりそうです。
自分にとってブログ活動は趣味であるため、継続はしていくつもりですが、今年から暫定的に行っている週休二日ルールを定着させるなど、時間の使い方を考えなければならなくなると思います。こうして、環境が変わっていくなかで何かを継続することは、本当に難しいんですよね。

楽しみである気持ちが半分と、不安のような複雑な気持ちが半分。。。というのが今の心境。そんな中でも、細々とでも活動は継続していくつもりですので、皆様来年もどうぞよろしくお願いします。
それでは、良いお年をお迎えください。

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