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LAGAVULIN 
Aged 10 years 
For Duty free Travel retail 
Release in 2019 
700ml 43% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
場所:-
時期:開封直後
評価:★★★★★★(6)

香り:ドライで強くスモーキー。乾いた麦芽香や根菜っぽさに加え、ピートフレーバーはややシャープな質感と、塩素を思わせる薬品香も伴う。スワリングすると貝類や磯っぽさ、アイラ要素を強く感じる。

味:柔らかくオイリーな口当たり。スモーキーな含み香に加え、ハマグリのスープのような潮だしを思わせるややクリアなアイラ要素。微かにグレープフルーツの柑橘感。
ほろ苦く香ばしいピートフレーバーが味の後半を支配し、余韻はドライでスモーキー、焚き火の後のような焦げ感を伴うフィニッシュ。

しっかりとアイラ要素の詰まったラガヴーリン。若いモルトだが、加水でバランスよく整えられている。SMOOTH・INTENSE・SMOKY・WARMING というコンセプトの通り、オイリーでありつつ引っ掛かりの少ない口当たりから、強いピートの存在。またその味わいは、スペイサイドの10年ものにあるような軽やかで冷涼なイメージに比べ、暖かみのある広がりとも言える。


2019年8月から一部の免税店向けでリリースの始まった限定のラガヴーリン。
スタンダードで8年がリリースされ、GoTとのタイアップ企画で9年がリリースされたと思いきや、次は10年ですか。量産の限定品で徐々に年数が上がっているこの現象に、次は11年がどこかのマーケット限定とかで出るんでしょ?と思って調べたら、アメリカ向けにオファーマンエディションなるボトルがリリースされてましたよw

構成としてはスタンダードの8年の延長にあるヤングアイラなのですが、加水が効いているのと熟成が少し延びたことで、口当たりのシャープな感じが落ち着いています。
また、構成原酒のタイプが多少異なるのか、あるいは加水との相乗効果か、出汁っぽさが強めに出ているのが特徴。個性はしっかりと出ているため、43%といっても物足りなさはあまり感じません。

熟成に使われたのは、リチャーしたものを含むリフィルアメリカンオーク樽がメインと推察※。リチャー樽によって色や若干の焦げ感が備わっているのはオフィシャル16年にも共通するベクトルです。
プレーン寄りの構成で、華やかさやフルーティーさが控えめな代わりに酒質ベースの味わいがダイレクトに感じられる、ディアジオらしい樽使いだなと思います。

個人的にはもう少しアメリカンオーク由来のフルーティーさが混じり、多彩さがあるほうが好みなのですが・・・それは12年以上のグレードにてって整理ですかね。少なくとも価格相応の味わいは備わったボトルだと思います。


※なお、テイスティング後に調べたところ、この10年熟成のウイスキーには、以下の3種の樽が使われているとのことでした。

・リフィルカスク
・バーボンカスク
・ニューリチャード リジュヴェネーテッドカスク

3番目の聞きなれない樽はなんでしょう。そういえば、先日ブラインドをぶっこまれたアイラフェス限定のラガ18年にも、そんな表記があったような。Newがどこにかかっているのかにもよりますが、Rejuvinatedは「若返らせた」という意味ですから、使い古した樽の内側を削って再度焼いた、再利用新樽的な意味なんでしょうか。
この手の古樽はこれまでブレンドに回されるなど、メインに出てくることはなかったと思うのですが、使い古されていることで灰汁も抜けて、案外良い熟成感に繋がるのかもしれませんね。



Port-Ellen

今日のオマケ:ポートエレンが蒸留再開に向けての計画を開始したというニュース。
Port Ellen distillery secures planning permission - The Spirits Business (2020/1/2)

少々強引ですが、ディアジオ繋がりでこんな話題。
2017年に発表されていた、ポートエレンとブローラの再稼働計画。ブローラに続いて、ポートエレンもいよいよ工事が始まる模様です。

時間かかりすぎやろ、って声が聞こえてきそうですが、ポートエレンは蒸留設備等が既に撤去され、そうしたスペースの一部を倉庫として貸し出すなど、工事する前に整理しなければならない既存契約があったと聞いています。これらの整理が完了し、工事計画がアイラ島を管轄するアーガイル&ビュート評議会で昨年5月に承認され、2021年までに再稼働するという実効的な計画が動き出したそうです。

どこまで当時の味を再現できるのかは気になるところですが、ポートエレンは1973年から現在も稼働する精麦工場とのツーマンセル。つまり仕込み環境が変わっていないなかで、閉鎖直前の1980年代は近年のラガヴーリンタイプの強くピーティーな原酒を仕込んでいました。それこそ、今回の若いラガヴーリンのような味になるんじゃないかと予想しています。