リトルミル 29年 1990-2019 47.3%

LITTLE MILL
Aged 29 years
Distilled 1990
Cask type Refill bourbon casks
Finished Oloroso Sherry Cask & Limousin Oak Cask
Only 600 Release
700ml 47.3%
グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:ー
暫定評価:★★★★★★★(7)
香り:やや重めの香り立ち。ゴムやオリーブオイル、湿った段ボールのようなニュアンスが最初は感じられるが、徐々にオーキーでスパイシー、後熟に使われたリムーザンオーク由来か、香木を思わせる要素も開いてくる。
味:素晴らしい。香りに反して華やかかつリッチでフルーティー、微かにケミカルな要素を伴うが、60年代のモルトに通じるトロピカルなフルーティーさがまず最初に開く。ライチやマンゴスチン、そこにパイナップルという果実の色合いは白から黄色に変化していくイメージ。余韻はウッディでドライ、序盤のフルーティーさは消えて華やかなオーク香、ハーブティー、微かに和紙のような香りが鼻腔に抜けていく。
香りでは警戒させられたが、思えばこれも含めて香味は”らしさ”がしっかりあり、ハウススタイルに忠実なフラグシップと言える構成。特に味わいのフルーティーさは、なぜ1990年でこれが出るのかという、リトルミルマジック。少量加水すると全体的にまとまりが出て、マイルドでフルーティー。美味。
先日、ロッホローモンド及びグレンスコシアの輸入代理店である都光さん、ならびにリカーマウンテンさんから、ロッホローモンドグループの最高執行責任者(上の写真の人)の来日に合わせて開催された、関係者向けテイスティングセミナーのお誘いをいただき、ホイホイ参加してきました。
会の目玉はなんといっても、ブランドのフラグシップにして、オフィシャル最長熟のリリースとなるリトルミル29年、そしてグレンスコシア45年の発表。ただ個人的には最近好ましい変化が多く見られるロッホローモンド蒸留所で、いったいどのような取り組みが行われているのか聞いてみたかったことから、非常に楽しみなセミナーだったのです。
その取り組み、原酒の作り訳に関する情報は、追って同銘柄のテイスティングレビューの際にでも紹介させていただくとして。。。
今回はリトルミルです。リトルミルは1994年に蒸留所を閉鎖、その後火災で焼失という悲運もありましたが、原酒はすでにロッホローモンド蒸留所に移されていたため、難を逃れています。
最近は、この原酒を使ってプレミアムなボトルが発表されており、先日テイスティングの機会を頂いたリトルミル40年セレスティアルエディションを始め、29年、27年、25年がそれぞれリリースされています。
原酒については「数は言えないが1990年代のものがまだ残されている」という話でしたので、この手のリリースはしばらく続いていくものと思われます。

(今年の始め頃に発表された、リトルミル40年1977-2018セレスティアルエディション。長期熟成の原酒らしく、多彩なウッディネスとリトルミルらしいフルーティーさが織り成す奥深い味わい。レビューはこちら。)
さて、先日紹介したリトルミル40年は熟成期間の長さから樽感が強く出ていましたが、今回の29年は適度。リフィルバーボン樽で熟成された原酒のフルーティーさを活かした、良い部分が解りやすい構成です。
後熟に使われたシェリー樽とリムーザンオーク樽の要素は、香りのほうでやや重たい雰囲気を作り出していたものの、味の方はそこまで目立たず、繋ぎに徹してバランスの良い仕上がりとなっています。正直、40年よりも今回のほうが好みでした。
一方、同時にテイスティングしていたビル氏のコメントは「典型的なローランドスタイルで、フローラルで、パフューミーで、ラベンダーなどの花のようですよね。」とのことで、たぶんこの味わいのフルーティーさをフローラル、パフューミーと指しているのだと思いますが・・・この辺は国の違い、感じ方の違いというヤツなんでしょう。
確かにリトルミルでも60年代蒸留のものがパフューム系統の香味に変化しかけているものに当たったことはありますが、このボトルはそうではなく。近い系統のボトルをあげると、クーパーズチョイスのリトルミル30年1985-2015。我々の言うところのトロピカル路線なのです。
そんなわけで、蒸留所の個性もありつつ美味しいリトルミルであるこの1本。
なお価格については、40年の6000ポンドほどではないものの、税抜380000円となかなか。
なんというか、ここまで来ると芸術品ですね。リトルミルにしても、ローズバンクにしても、亡くなってしまった芸術家の作品が、ある日突然注目されるような。
自分のような一般人ではそうそう飲めないような貴重な1杯、機会を頂きただただ感謝です。
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