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GLENFARCLAS 
THE NOSTALGIC DRAM 
Aged 19 years 
Distilled 1999 Dec 
Botteld 2019 Jun 
Cask type Refill Sherry Butt #7062 
For J's BAR & Shinanoya Ginza 25th Anniversary 
700ml 55.2% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後数日以内
場所:ジェイズバー
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ややドライでハイトーンな香り立ち。粉砂糖にキャラメリゼ、スポンジケーキ、レーズンのアクセント。さながら焼き菓子のシュトーレンのようで、微かに香ばしさ、ほろ苦さも漂う。時間経過でドライフルーツを思わせる要素がさらに開く。

味:口に含むとスウィートでリッチ。とろりとした甘味は熟した杏子、キャラメルソース、樽由来の要素が始めに感じられ、徐々に強めのスパイス、やや青みがかったハイトーンな酒質由来の刺激が続く。余韻はウッディで、黒糖ふ菓子とカカオ粉末、軽い香ばしさと共にほろ苦く程よいタンニンを伴うフィニッシュが長く続く。

トーンが高く、酒質由来の骨格を感じさせるファークラス。いくつかのクリスマスモルト、特に1990-2000年辺りの系統のひとつ。ただし樽由来の要素であるシェリー感は中々レベルが高く、酒質の強さと樽由来の杏子やレーズン、洋菓子を思わせるオールド寄りの甘味を味わえるのが、このボトルがノスタルジック・ファークラスたる由縁だと思う。

※イベント中であったため、ボトルを撮影し忘れてしまいました。借り物の画像となります。氏曰く一緒に写っている水石が、ボトルのイメージとして重要なのだそうですが。。。WABI/SABIの世界は奥が深く、以下徒然と綴った自分の解釈が正しいのかは不明です。

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信濃屋銀座店、並びに池袋のジェイズバーが共に25周年を迎えることを記念し、銀座店の店長・堤さんが現地でカスク選定したジョイントボトル。
グレンファークラスでリミテッドと言えば濃厚なファーストフィルシェリー系が多くあるなか、かつ市場においても迷ったら濃い方を買うと言う傾向も見え隠れするなか。あえてリフィルシェリーを選ぶというのは、選び手の表情が見えてくるようなチョイスだと思います。

現実的なことを言えば、2000年前後の蒸留でファーストフィルシェリーの圧殺的な仕上がりのものに、突き抜けて素晴らしい原酒があるかというと。。。例えるなら下味の特にない肉に濃いソースで味をごまかしたような、それなりに食べれるけど一体感のない、無理矢理仕上げた印象が拭えない部分がどうしても残ります。
一方、リフィルバットであればシェリー感は淡くなっていても、ベースの樽が作られたのが70年代とか、昔の味わいを残している可能性はあり。今回のカスクはその系統だったのか、現代のそれとは違うフルーティーさが、熟成によって得られる角の取れた甘味と共に感じられる点がまずひとつ。

またグレンファークラスは、決して酒質がソフトとかマイルドなタイプではなく、むしろしっかりと強いタイプ。それ故、シェリー樽での長期熟成や加水を経てバランスが取れて仕上がるという傾向があります。
それは大きな岩が風雨と経年、あるいは自然の力で徐々に削られ、丸みを帯ていく様・・・つまり水石が作られているプロセスにも似て。リフィルシェリー樽由来の圧殺タイプではないフレーバーの中に、その削りきられてない"力強い岩の存在"が主張して見える点が、このリリースに込められたもうひとつの表情であるように感じられるのです。


近年、市場の状況、WEBによる情報伝達等の発達など、様々な変化によって「プライベートボトル」の垣根は間違いなく下がりました。
日本に居ながら、インポーターにメールで依頼し、カスクサンプルを取り寄せて、その中からボトリングする。10年くらい前までは、それをやること事態が特別だったプライベートボトルは、もはや昔ほど特別とは言えなくなりました。(もちろん、インポーターとの繋がりであるとか、金と覚悟が必要であるとか、決して気軽にやれるものではありません。)

プライベートボトルは間違いなくロマンです。ですが、上記のような効率化されたプロセスで選ばれたものに表情があるかというと、なにか物足りなさを感じてしまいます。嗜好品としてのウイスキーは情報と共に飲むものであり、バックストーリーは美味しさの引き立て役です。故に、最近増えてきた、特別なラベルでブランドを作る傾向は、ある意味で自然な流れと言えるのかもしれません。
そのなかで、自ら蒸留所で原酒を選定し、あえて売れ筋の濃厚系からはずし、中身にメッセージを込める。
個人的に今回のリリースには、選定者の不器用なプロ意識を見たように思うのです。