オールドクロウ 7年 (1969-1976) 100プルーフ ボンデッド
- カテゴリ:
- ★7
- アメリカンウイスキー(バーボンなど)

OLD CROW
KENTUCKY STRAIGHT BOURBON WHISKY
BOTTLED IN BOND
1970's
(Distilled 1969)
(Bottled 1976)
750ml 50%
グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:不明
場所:BAR BLACK HEART
暫定評価:★★★★★★★(7)
香り:メローで華やか、熟した梅のような穏やかな酸と、メープルシロップやバニラの甘味。穀物感とこなれた香ばしさが、ワッフルのような洋菓子を思わせる。
味:香り同様にメローでコクのある口当たり。序盤はグレーンの甘味がメインにあるが、徐々に熟したオレンジのような酸と軽いスパイシーさ、品の良いウッディネスが口内に染み込む。
余韻はスパイシーでウッディ。じんじんとしたハイプルーフ由来の刺激が心地よく、振り子のように収束していく。
メローで度数よりも香味とも柔らかく、それでいて骨格はしっかりとしている。経年も合わさった熟成感が心地よいバーボン。これもまた現行品とは別物で、余韻に変なえぐみや渋みもなく、ストレートでも負担なく飲める。今回はストレートのみだったが、ロックも試してみたい。
先日レビューさせていただいた、禁酒法前のオールドクロウ100proofとの比較でテイスティングしたもの。同じくBOTTLED IN BOND 仕様の流通時期違い。
ですが今回のレビュー記事では、禁酒法時代との比較や香味分析ではなく、飲んでいて疑問に感じた、オールドクロウの歴史における”凋落”に関して自分なりの考えを書いていきます。
1970年代、フランクフォートにあった蒸留所と共にオールドクロウの版権を持っていたのはNational Distillery社。オールドグランダッドやEHテイラー等を販売していたメーカーです。(※取得した時期は1920年とも30年代とも言われている。)
当時同社ではすぐに出荷出来る工業用アルコールの生産に重きをおいていたとのことで、蒸留所も1960年代に蒸留器の変更含む大規模な改装工事を実施し、原酒製造プロセスにおける生産量の増加と効率化(コストダウン)が図られたとされています。
(オールドクロウ1912-1919とオールドクロウ1969-1976、現代から100年を遡るテイスティングで、今回のボトルは50年前に置かれたマイルストーン。詳細は不明だが、マッシュビルは禁酒法前(左)がライ比率高め、今回の蒸留所改修後がコーン比率高めで、現在に近いスタンダードなレシピであると思われる。禁酒法前ボトルのレビューはこちら)
オールドクロウはかつてアメリカで一番売れた、バーボンの花形とも言えるブランドでしたが、1970年代から80年代の市場において凋落が始まります。
その背景には1960年代の蒸留所改修後、新たに導入した製造行程にミスがあって味が落ちたことに加え、それを解決せずに操業を続けたメーカー側の姿勢があった・・・という話が伝わっているのですが、不思議な話、その時代の真っ只中にある今回の1本は、言うほど悪い味とは思えません。っていうか普通に美味しい。
確かに当時のND社は、パフュったグランダッドやギルビーズジンなどの別件事例があります。
あるいは熟成年数の短い、スタンダード品のみ影響が大きく、熟成の長いものはネガティブな影響が樽の効果で打ち消されていたなら理屈はわかります。
実際、当時は今より樽材の質が良かったと考えられ、マイルドな味わいや果実風味はオールドバーボンの魅力でもあります。
しかし以前飲んだ70年代流通のスタンダードも、メローで加水が効いてソフトな口当たり。これもそこまで悪い味か?という感じ。少なくとも同年代の他のメーカーのスタンダードと比べ、大きな差があるとは思えません。
蛇足ですが、松田優作が「旨い」と言ったエピソードがあるのもこの時代のオールドクロウなんですよ。(映画の中なので、なんの基準にもなりませんが(笑))。
個人的な予想をすると、製造行程のミスは事実として、同社のなかでバーボンそのものの販売力の低下。即ちブランドの優先順位の調整があり、PR不足からジムビームなどのライバル銘柄や、他の酒類の台頭を許してしまったとか、そういう外的要因のほうが大きかったのではないかと。
失礼ながら、スタンダード品はコーラとかセブンスターで割って飲むようなことを主としていた市場で、まるっきり飲めないようなものならいざ知らず、ベースの味が多少落ちたという理由でブランドが凋落するとは思えないのです。
1987年、人気の落ちたオールドクロウはジムビーム社に買収され、問題となった蒸留所も閉鎖。同銘柄用の貯蔵庫としてのみ現存することとなります。
なお、先日ニュースになったジムビーム蒸留所の火災は、このオールドクロウ蒸留所跡地にある貯蔵庫群の一部で発生したものでした。
ジムビーム社買収後のオールドクロウは3年熟成で、バーボンの基準を満たすなかでは若い部類。自社ブランドであるジムビーム以上の優遇はするはずもなく、低価格路線にすっかり定着しています。
自分の記憶が正しければ、火災を受けたジムビーム側のコメントに「あそこにあるのは若い原酒だから被害は少ない」というのがあったと思いますが、年数、市場価値、それらを踏まえて確かになるほどと。
なんとも諸行無常、あるいは栄枯必衰というやつですね。
ワインクーラーにウイスキー突っ込む展示センスはどうしたものか、とは思いますが、こういうのも出ていたのかという1本。BOTTLED IN BOND表記が復刻版のようで、なんともそそられますね。
調べてみて、日本にも平行品が入っているのですが、全く気づいていませんでした(笑)
高い度数らしい骨格のしっかりした口当たりに、ジャックらしいメローさと焦げたウッディネスが合わさって、それなりな仕上がり。熟成年数は5~6年くらいでしょうか。多少近年のバーボンに見られるえぐみというか、ネガ要素もありますが、変にドライさや酵母っぽさも目立たず、ロックで飲んだら良さそうです。
ただしジャックダニエルの50%仕様のものだと、シルバーセレクトやシングルバレルがあり、値段もそう変わらない(味は樽の効き具合に違いはあるが、この2本のほうがリッチ)ので、辛口なことを言うと中身を考えた時に日本でこれをチョイスするのは・・・ラベル以外に難しい気がします。
コメント
コメント一覧 (2)
60年代半ばまで大いに伸長したバーボンの売り上げは、消費者の嗜好性の変化とホワイトスピリッツの消費拡大によって急落していきますが、クロウはNDの主要3銘柄の中では一番スタンダードな売れ筋銘柄だったので、その影響を大きく受けてしまったものと思われます。風味の変化が売り上げの減少を招いた話はどうにも結果論的に語られているような気がしてなりません。
ジャック・ボンドについては、シルバーセレクトが終売になたことや流通量の多い方のシングルバレルが47度であること、ボンドがリッタ-ボトルであることなど、普段飲みするにはちょうどいいボトルなのですが、如何せん流通が限定的なのが微妙ですね。ただ、BOTTLED IN BONDの表示はバーボン好きには抗えない魅力があるので、中身は兎も角それだけで手を出す人も多いんじゃないでしょうか。
今回も視差に富んだコメント、ありがとうございます。
味が落ちたから売れなくなったわけではない、という考えを聞けて少しほっとしています(笑)。
おっしゃるように結果論で、何となく都合の良いように後付けされている気がするんですよね。
そしてジャックボンドですが、まさにバーボン好きには抗えない魅力のあるラベルで、売れるとしたらその点だと感じています。BARでの話題にもなりそうです。
ただ流通が限定的なのもそうですし、現地免税店では36ドルでしたので、1ドル100円換算ならアリかなと思いましたが、日本はちょっとばかり高いのも・・・。
っていうか、シルバーセレクトって終売だったんですね。あれは良いジャックだと感じていただけに、残念です・・・。