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KANOSUKE 
NEW BORN 
Distilled 2018 July 
Bottled 2019 August 
Cask type Bourbon barrel #18153 
200ml 48% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:開封後数日
評価:ー

香り:乾いた麦芽、トースト、蜂蜜梅やレモンを思わせる甘酸っぱいアロマ。合わせてつんとした刺激、酵母を思わせるようなニューポット臭も若干感じられる。

味:口当たりは柔らかいコクがあり、香ばしい麦芽とレモンキャンディのような甘味や酸、すぐにピリピリとした刺激が舌を刺激していく。余韻はほろ苦く、序盤の要素がスッとなくなり不思議と強く残らない。

嫌みなところの少ないニューボーンだ。ニューメイクの段階で感じられた作りの丁寧さが熟成でそのまま磨かれてきていて、特にノンピート原酒でありなら未熟な部分が目立たない。ハイボールも悪くなかった。トライ&エラーの段階といえる創業直後の原酒でこのクオリティは素直に好感と期待が持てる。
一方で樽感は1年熟成にしては強く、3~5年程度でピークを迎えるような早熟な仕上がりも予想された。

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嘉之助蒸留所リリースのニューボーン、リミテッドエディション。先日発売されたばかりの蒸留所限定品で、現地に見学にいったウイスキー仲間からお土産として頂きました!
今後はバーボン樽熟成以外に、シェリーやワインなど様々な樽でのニューボーンのリリースが予定されているそうで、現地だけでなくWEB SHOPでも毎月数量限定で発売されるようです。

同蒸留所のニューボーンといえば、昨年に8ヶ月熟成のものがリリースされていました。
これは米焼酎の熟成に使ったアメリカンオーク樽をリチャーしたもので、悪くない仕上がりでしたが、リチャーの影響で酒質の細かい部分までは見えづらかったところ。一方、同じく昨年リリースされていたニューポットをテイスティングした際の感想としては、
・綺麗な酒質で、適度なコクが感じられる。
・熟成による削りしろは少なめ、早熟なタイプ。
・熟成環境を考えるとバーボン樽で5年程度で仕上がるのではないか。
という印象をもっていました。

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(嘉之助蒸留所リリースのニューポット。3種類のポットスチルを使い分けて作った複数の原酒をブレンドしているのが特徴。未熟感の少ない綺麗なタイプで、WWA2019では日本地区における最優秀ニューポットを受賞していいる。当ブログでのレビューはこちら。)

今回の原酒は約1年熟成。蒸留所がそもそも創業直後で、これからトライ&エラーのなかで酒質を変化させていく段階あることを考えると、成長予測の判断が難しいところではありますが、ニューポットの段階で感じた早熟系の原酒であることは間違いなく。
熟成環境と今の段階の酒質が落ち着く地点に解離が少ないというのは、この蒸留所の大きな強みだと感じました。

温暖な日本において、通常環境での熟成は樽感との駆け引きです。
例えば樽感のピークがバーボン樽だと5年後に来るような環境で、10年以上熟成させないと飲み頃がこない原酒では、どの段階でボトリングしても若いかウッディか、どっちつかずになりかねません。(この点、カヴァランとかは非常に上手く調整していますね。)
嘉之助蒸留所のバーボン樽熟成の原酒は、上述の条件が、どちらも短期でちょうど良いところにあるように感じます。

ここから先は勝手な妄想ですが、逆に、10年クラスの熟成を目指していくならば、複数回使ったアメリカンオークのリフィルバットや、あるいはシェリーやワインなどの熟成に用いられることがあるという500リットル以上の大型な樽を使ってみるのも手かもしれません。
九州には有明産業さんもありますから、樽材だけでなく樽の大きさという点でもタイアップが出来るのではないか・・・なんて。思い付きレベルですが、これも他の蒸留所とは異なる個性に繋がるようにも感じられました。


最近様々なクラフトからニューメイク、ニューボーンがリリースされて、着実日本でのウイスキー作りが根付いて、成長してきていることが感じられます。
若いウイスキーは粗く、飲みづらく、また生産量などの関係から大手メーカーのそれに比べて割高というネガティブな要素もありますが、決して完成度などの同じ土俵で比較するものではありません。
将来性という異なる評価軸で、リアルタイムでそれを見れるのは今だけ。ブームによる様々な影響が出ている昨今ですが、嗜好品愛好家として今を生きる我々はその点で幸運なのかもと思えるのです。