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CRAGGANMORE 
Classic Malt Series 
Age 12 years 
1990-2000's
750ml 43% 

グラス:国際企画テイスティンググラス 
時期:開封後1週間程度 
場所:お酒の美術館 神田店 
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:甘みのあるややドライな香り立ち。麦芽の白い部分を思わせる白粉のようなアロマ、パンケーキなどの洋菓子、すりおろしりんご、ほのかにスモーキーで徐々にビターな印象も感じる。

味:マイルドな口当たり。程よい酸のある麦芽風味はオレンジやおしろい、生焼けホットケーキのような粘性と粉っぽさを同時に感じる。余韻にかけてはピーティーでほろ苦く、麦芽系のニュアンスはやや張り付くように感じられるが、比較的さっぱりと消えていく。

古典的なハイランドモルトに通じる構成。樽はリフィルのバットが主体かあまり主張はないが、その分厚みのある麦芽風味が特徴的。また麦芽風味のなかに多彩な香味要素が溶け込んでおり、単に麦系な酒ではない奥深さが魅力である。加水すると洋梨を思わせるフルーティーさ、さらにマイルドでスウィートな味わいに。


1988年、UD社傘下時代にクラシックモルトシリーズのひとつとなったことで、シングルモルトのリリースが始まったクラガンモア。
それまではオールドパーやホワイトホースなど、DCL傘下のブレンド銘柄の構成原酒ではありましたが、恐らく知名度という点ではほとんどなかったであろうモルトのひとつです。

ただ、シングルモルトとしての魅力がないわけではなく、その可能性をメーカーサイドが評価していたということが、UD傘下の数多くのスペイサイド蒸留所の中からクラシックモルトに選ばれていることからも明らかです。
当時のクラガンモアが備えていた厚みのある麦芽風味は短熟では多彩な、長熟ではシェリーやバーボン樽の要素に耐える酒質であり、コアなファンも多く。オールドのクラシックモルト・クラガンモアを飲むと、そのポテンシャルが伝わってくるのです。

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(1988年頃からリリースされた、UDクラシックモルトシリーズのクラガンモア初期ボトル。細かいデザインの違いはいくつかあるが、ラベルの模様が少し緑色を帯びているのと、CRAGGANMORE表記の斜め上にSPEYSIDE表記がポイント。)

なぜそのようなフレーバーが出ていたのか。そしてなぜ現行品のクラガンモアからは失われてしまったのか。その他の銘柄含めて大いなる謎のひとつです。
クラガンモアは蒸留設備について大きな変更がなく、名物とも言えるスワンネックをカットした、特殊な形状のスチルは現役。一方、クラガンモアは1990年代までフロアモルティングを行っていた蒸留所であり、熟成年数から逆算していくと近年のフレーバーの線の細さの要因になっているのは精麦行程ではないかと考えられるのは、他の蒸留所とも共通する事項と言えます。

勿論これだけが背景にあるとは考えられず、蒸留の際の流量やワームタブでの冷却温度なども関連する要素に考えられます。
フレーバーがどの蒸留所でいつ頃消えたのか、あるいは新たに生じたのか。その前後に蒸留所で何があったのかを時系列でまとめてみると、見えてくるものもありそうです。


余談ですが、クラガンモア蒸留所の形状を上空から見ると、コの字に近い形状になっていることがわかります。
クラガンモア以外に、大がかりな改装を行っていない蒸留所などは、この形状であることが多いのですが、これはキルン棟にあのパゴダ屋根のデザインを採用した、蒸留所設計者チャールズ・ドイグの設計に見られる特徴なのだそうです。

蒸留所の真ん中のスペースに資材、麦芽などを搬入し、コの字の下側から上に向かうように各種工程が配置されている。そして最大の特徴であるパゴダ屋根のキルン塔。
近年はネットでの情報発信やツールの充実から蒸留所を現地以外からも見ることができるようになりました。
酒質以外に建物の作り、配置を見てみるというのも面白いかもしれません。