リトルミル 40年 1977-2018 セレスティアルエディション 46.8%
LITTLE MILL
Aged 40 years
Celestial Edition
Distilled 1977
Bottled 2018
Bottle No,1 of 250
Bottle No,1 of 250
30ml(700ml) 46.8%
グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:ー
場所:自宅@試飲サンプル
暫定評価:★★★★★★★(7)
香り:ややドライな香り立ち。花の咲いたハーブのような植物感と紙っぽさに加え、キャラメルコーティングしたナッツのようなメローなウッディネス。加熱したリンゴや熟した白葡萄、奥からトロピカルなフルーティーさ。時間経過でケミカルなニュアンスと、インクっぽさも微かに。
味:若干青さのあるケミカルな甘みと紙っぽさ、リンゴの蜜や杏のジャムのような粘性のある樽由来の風味。後半にかけてじっとりと、オーキーな華やかさと熟したトロピカルフルーツのような甘い香味が現れ、ウッディでほろ苦いフィニッシュのなかで長く残る。
角の取れた長期熟成の原酒に、多少枯れた要素も伴うが、メローで多彩な熟成感のある樽由来のフレーバーが全体をまとめている。樽感は重くなくバランス良い綺麗な仕上がり。またベースは良くも悪くもリトルミルらしい個性が感じられる。オフィシャルハイエンドに相応しい完成度の高いシングルモルトである。
近年、閉鎖蒸留所であることからプレミアが付きつつあるリトルミル蒸留所。完全に閉鎖されたのは今から約25年前の1994年。2004年には火災も発生して設備が焼失し、敷地は既に荒れ地になっていますが、原酒の残りは第2蒸留所ロッホローモンドに移されていました。
その旧リトルミル蒸留所の数少ないオフィシャルリリースで、今年2月にリリースされたのが「リトルミル40年 セレスティアルエディション」。1977年蒸留の原酒をアメリカンオーク樽とファーストフィルバーボン樽で熟成し、バッティングした後3ヶ月間オロロソシェリー樽でフィニッシュした、リトルミルのオフィシャルリリースで最長熟成となるシングルモルトです。
ボトリング本数は250本。イギリスでは6000ポンドと、そのプレミアを証明するような価格設定でリリースされましたが、驚くべきことに既に完売しており日本に入荷することはなかったそうです。
一方、ロッホローモンドグループの日本正規代理店として製品を輸入・販売している株式会社都光が、非売品の販促サンプルを複数セット作成。今回ご厚意により、その一つをテイスティングする機会を頂きました。
今回のリリースの背景に位置づけられているのが、リトルミル蒸留所の元マネージャー、ダンカン・トーマス氏です。
同氏は1931年にリトルミルを3回蒸留から2回蒸留に切り替え、整流器付きのヘッドを持つ特殊なハイブリットポットスチル(ローモンドスチルの原型)を考案・導入。現在のリトルミルやロッホローモンドの個性を確立するきっかけとなった、ハウススタイルの産みの親と言える人物です。
銘柄名である”CELESTIAL”は、空、天上、あるいは、この世のものとは思えないほど素晴らしいという意味。今回のリリースはトーマス氏の"遺産"として位置付けられるストックの中から、スコットランド・グラスゴーの上空で、特定の星が真っ直ぐに、同蒸留器のネック部分にある覗き窓のような配置で直線に並んだ1977年の仕込みである、特別な原酒のみを使用。セレスティアルの銘に相応しいシングルモルトに仕上がっているそうです。(ロッホローモンド、マスターブレンダー談)

(付属冊子に書かれた、1977年10月11日スコットランド・グラスゴー上空のスターチャート。太陽、月、金星、土星、火星、木星が連なるように並んでいる。ドライなことを言うと、これがウイスキーの出来に影響したのかは不明。ただし彗星が来た年は素晴らしいワインが出来るというジンクスから考えると・・・。)
自分の知っているリトルミルという蒸留所のハウススタイルを考えると、壮大な前置きに期待と緊張感を覚えつつ、体調を万全にしてテイスティング。
香味ともやはりリトルミルらしい、時にダンボールとも例えられる紙系の要素や植物感がありつつ、余韻にかけては若干ケミカルなニュアンスも伴うトロピカルなフルーティーさ。現在のインチマリンやロッホローモンドにも似たようなニュアンスは備わっていますが、それはもっと人工的で、これも当時のリトルミルらしさと言えます。
また、今回のリリースは40年を越える長期熟成原酒ですが、樽感は圧殺するようなキャラクターではなく、ディアジオのスペシャルリリースにあるハイエンドシングルモルトのような綺麗な構成。むしろ樽由来の香味が酒質と混ざりあって多彩さにも繋がって、全体の完成度を高めています。
アメリカンオーク(おそらく3rdフィルクラスのシェリーカスクかウイスキーカスク)樽とバーボン樽、ボトリング本数から推察するに4樽ほどと思いますが、複数樽のバッティング故の多彩な樽由来の要素。これが”紙”と”トロピカル”の2つのハウススタイルを繋いでいるのです。
アメリカンオーク(おそらく3rdフィルクラスのシェリーカスクかウイスキーカスク)樽とバーボン樽、ボトリング本数から推察するに4樽ほどと思いますが、複数樽のバッティング故の多彩な樽由来の要素。これが”紙”と”トロピカル”の2つのハウススタイルを繋いでいるのです。
いやいい仕事してますね。ブレンダーの気合いが伝わってくるようでもあります。
元々好みが別れる蒸留所ではあり、このボトルもそういうキャラクターはあるのですが、それを抜きにしてレベルの高いボトルだと思います。
この40年以外には25年、27年、そして今後29年がリリースされる予定で、こちらは日本にも少量在庫があるとのこと。関西のほうではテイスティングイベントも開催されるようですね。
あのリトルミルが・・・なんて自分のような世代の飲み手は思ってしまうのですが、それだけ閉鎖蒸留所として注目を集めつつあるということなのだと思います。そして今回その一連のシリーズのトップに君臨する1本のテイスティングという、愛好家垂涎の貴重な機会を頂けたこと、改めまして感謝申し上げます。
ボトル画像引用:https://www.whiskyshop.com/
コメント
コメント一覧 (3)
リトルミル40年は、ドリンカーズラウンジさんのブログでも取り上げられていました。ロッホローモンドとの繋がりや、現行ロッホローモンド12年のテイスティングもされていました。
以前、くりりんさんのブログで初めて、段ボールの味がするウィスキーがあると知り、ウィスキーって奥深いな…と考えてました。
また、インチマリン12年に「6!」の評価を付けられてて、すごく気になってました。
くりりんさんの6!がつく現行は少ないですが、エドラダワー10年は本当にクリーミィで美味しかったですし、インチマリンも良いのでは…と思いながらも、ロット違いで段ボールや根菜のニュアンスが残ってたら、、と思うと躊躇しておりました。
あまり情報が無いまま、時間がたちましたが、今回の両者さまの記事で、インチマリンを思いだしました。
探すと、送料込みで3800ほどで値下げ価格で売られており、可愛そうな、せつないような気持ちになりました…
買ってみようかしら、と考えています。
ウィスキーは、ロットによって、昔の好ましくないニュアンスが復活したり、引っ込んだりはするのでしょうか??エドラダワーは石鹸の香りは無く、優しい味わいで、安定しているようでした。
ノッカンドゥ21年を過去と現在でテイスティングされてたり、同じボトルの比較されてるのも大変参考になります。
すみません、長くなりました…
また記事のアップ楽しみにしております。
コメントありがとうございます。
ドリンカーズラウンジのYさんとは交流があるので、サンプルが届いた時はお互い「これ凄くね?」と興奮のやり取りをしていました(笑)。
情報量の多いウイスキーでしたので、その後お互い記事を書く上で産みの苦しみを味わいましたが、オープンになった記事を読んで、現行品にまでつなげてくるとは・・・そこまで踏み込んだか、やるなあ!と、ちょっとした対抗意識と悔しさも覚えたところです。
さて、インチマリンですが、つい先日ロッホローモンド12年と合わせてここ1年以内のものと思しきインチマリン12年のロットも確認してきましたが、インチマリンのほうがフルーティーさがわかりやすい構成で、以前の印象のまま美味しくなっているなと感じました。(紙っぽさはそこまで強く感じませんが、機械油のようなオイリーな要素は伴うかもしれません。)
販売価格、自分も確認しましたが、3800円ならお買い得なのではないかと思います。
やはり第一印象というか、これまで作られてきたイメージはそう簡単に払しょくできるものではないですよね。ただ、先日ウイ文研が主催したコンペでは、ガチのブラインドテイスティング審査でロッホローモンド12年が高評価だったことなどから、中身は良いものに切り替わっているのだと思います。
エドラダワー、ノッカンドゥなど参考にしていただいているとのことで、うれしいコメントをありがとうございます。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
産みの苦しみ…確かに、くりりんさんの記事を読んでると、ネットのブログとは思えないような感覚になります。堅苦しくないけど、まるで書籍のような…情報量が多くて、本当にボリュームあります。
インチマリン12年、今も良いんですね。貴重な感想を教えてくださり、感謝です…思いきって注文しました。
不思議なウィスキーのイメージですが、実際に味わうのがすごく楽しみです。
記事のアップも待っています、また参考にさせてください。