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963 
BLENDED MALT WHISKY 
AGED 17 YEARS 
WINE WOOD RESERVE  
Release 2019 
Bottled No, 547/634 
700ml 46% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:穏やかな香り立ち。トップノートは乳酸系の酸と、人工のオレンジシロップのようなケミカルさ。合わせてフレーバーティーを思わせる甘みとウッディネス。

味:ほのかな粘性とビターな口当たり。カカオをまぶしたバニラ、若い林檎、口内にとどめるとパイナップルシロップのような甘み。
余韻はウッディでドライ、オーキーな華やかさが鼻孔に抜け、ケミカルなフルーティーさと樽由来の渋味が長く残る。

加水が適度に効いて飲み口は柔らかく、ワインカスクらしい張り付くような色濃い甘みはそれほどないが、タンニン、ウッディネスは健在。酒質由来の香味としては、似たキャラクターではベン○ヴィス的な味わいでまとまっている。この一体感、ティースプーンモルトだろうか。

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意欲的に様々なリリースを行っている、笹の川酒造の関連会社、福島県南酒販のプライベートブランドである963シリーズから、バーボン樽熟成の原酒を国産ワイン樽でフィニッシュした、ワインウッドリザーブのリリースです。

これまで、963の17年熟成ブレンデッドモルトはミズナラ樽フィニッシュが2本リリースされていて、どちらもハイランドタイプで癖の少ない原酒がベース。バーボン樽由来の華やかなオークフレーバーとミズナラ樽のスパイシーさと合わさった、”愛好家に認知されているミズナラフレーバー”を擬似的に構成している面白いリリースでした。
そして今回のワインカスクリザーブも同様にバーボン樽原酒がベース。。。なのですが、バーボン樽由来のオークフレーバーもあるはあるものの、それ以上に所謂ジェネリックトロピカルに該当するケミカルなフルーティーさ、シロップのような甘みが樽由来のビターな味わいのなかで主張していて、原酒の構成からしてこれまでのリリースとは異なっていて少々驚かされました。

ばらつきの無い個性、ケミカルなフルーティーさから、ブレンドを構成している主たる原酒はハイランドモルトの"Bの辺り"と推察。国産原酒でこの系統はまだ無いですね。
ワイン感はワインそのものを思わせる酸味やハーブ系のニュアンスは少なく、コクがある程度。色も写真の通りでうっすら赤みがかった程度であるため、国産ワイン樽といってもワインがそう濃く無いタイプか、あまり長期間使っていない樽だったのかもしれません。

一方で樽材由来のウッディさ、渋味はそこそこ強く、ここはスコットランドでのバーボンバレルによる熟成感と異なるところ。
裏ラベルには「17年バーボンバレルで熟成し、最後にワイン樽で後熟」という説明で17年表記となってますので、ワイン樽の期間が1年未満のように読めますが、それでこの樽感は少々違和感あり。例えばティースプーンモルトの輸入原酒(バーボン樽ベース)を、安積蒸留所で再びバーボン樽に詰め、ワイン樽後熟含めて3~4年単位熟成して仕上げたとかなら。。。熟成感の違いも納得できます。

何れにせよ、このウイスキーに備わったフルーティーさは近年のトレンドのひとつであり、これもまた面白いリリースだと思います。
ここで後熟に使った樽は、また新たな熟成に使えますし、原酒の幅を広げて更なるリリースに繋げていってほしいと思います。