カテゴリ:
IMG_20190315_221258
DIMPLE 
ROYALE DECANTER 
12 Years old 
1980's (1984's) 
750ml 43% 

グラス:国際企画テイスティンググラス
時期:開封後数週間程度
場所:お酒の美術館 神田店
暫定評価:★★★★★★(5ー6)

香り:若干金属系の要素を伴うが、カラメルやみたらしを思わせる甘くリッチな香り立ち。奥には乾いた植物や穀物、オレンジママレードのようなアロマも混じる。

味:マイルドで厚みのある口当たり。キャラメリゼやカステラの茶色い部分、少し溜まり醤油のような古酒っぽさ。中間から後半にかけては軽やかな刺激と干し草を思わせるニュアンス。余韻はほろ苦く、スパイシーな刺激を伴い、張り付くように長く続く。

若干キャップ臭はあるが、味への影響は少なく。ヘイグらしいコクのある甘味とそこから繋がるスパイシーな刺激というキャラクターは感じることができる状態が良い個体なら★6固定。
記念ボトルで見映えはするが、キャップ地雷に注意が必要。


ブレンデッドウイスキー、ヘイグのデラックスブランドであるディンプルから、1984年に限定リリースされた1本。
オランダの大手錫加工メーカーとタイアップした商品で、メタリックで鎧を着ているかのような厳つい装飾が目印。その外観から特別感があり、流通量の多い80年代中頃のディンプルでありながら、通常の12年の2倍程度の流通価格となっています。

一方、中身はというと・・・コクと厚みのあるグレンロッシー、軽快で軽やかな刺激のあるグレンキンチー、そしてマイルドでスウィートなグレーンの個性が混じりあう豊かな味わいではあるのですが、当時のディンプル12年と比較するとどうかと言えば、多少マイルドというかコクのある甘味が強いものの、そこまで大きな違いはないように感じます。
ただしブレンデッドスコッチウイスキーが全体的ににライトな仕上がりになり始める1980年代中頃という時期にあって、この仕上がりは流石大手メーカーの上位グレード、という印象も同時に受ける仕上がりです。


さて、このボトルの装飾に採用されている錫という金属は、毒性がなく食器、グラスなど身の回りのものに多く使われてきました。特に酒器としては、入れた酒の味がまろやかになるという評価もあります。
今回のような外側の装飾が中身にまで効果を及ぼすことはありませんが、唯一内部に触れる場所、キャップの裏を原因とする”例の金属”の存在は、愛好家を悩ます要因のひとつ。
そう、このボトルもキャップの裏側は金属張なのです。

IMG_20190516_080622
(ティンキャップ裏側。"Tin cap"のTinは錫の英語名称。キャップの性能としては気密性が高いものの、問題はキャップ裏の金属シートにあった。この金属シートは同時期のショートスクリュー及び1970年代以降のスクリューキャップにも一部継続して採用され、現代の愛好家に猛威を振るう。画像右側のものは黒ずみが見られる。鉛のそれに近いようにも。。。)

この謎の金属シートについて、今回は少し考えてみます。
使用目的としては、キャップ部分とボトル部分の隙間を埋めるための、緩衝材兼密封材という位置付けで1950年代前後のティンキャップ時代から使われていましたが、1980年代後半頃に姿を消します。
最初は明らかに鉄っぽい味と香りや、その柔らかさに加え、ワイン業界でキャップシールに鉛が使われなくなった時代とリンクするため、キャップ裏の金属は鉛だと考えていたのですが・・・毒性があることが明らかな鉛を使うだろうか?という疑問もありました。

では、錫ならばどうか。通常は無味無臭な錫も、状況によっては金属系の味や香りを付与する場合があるようです。
あるいは鉛や錫などとの合金、ひょっとするとアルミなどの別の金属で作られているということも考えられます。これを確認したところで何が得られるかといえば、鉛が含まれるようなら、その毒性から著しく香味が変化しているボトルは手を出すべきではないものと区分できます。(あるいは、錫であっても中毒の例がないわけではないようです。)

オールドボトル市場が広がり、より一般的に販売されるようになった今。これまで確認してこなかったことも、どうにか調べていかなければならないのでは・・・と思うのです。
自分は専門家ではないので本やネットで調べた程度の知識しかありませんが、どなたか簡易に検査できる方法をご存じ出はありませんでしょうか。