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THE ESSENCE of SUNTORY 
YAMAZAKI 
SPANISH OAK  
(New Wood) 
Aged 9 years 
Distilled 2009  
Bottled 2019 
500ml 56% 

グラス:サントリーテイスティンググラス
時期:開封当日&数日後
場所:日比谷BAR
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ドライでやや荒さも感じるウッディな香り立ち。焦げた樹皮やコーヒーのような苦さ、渋みを連想させるアロマに、そこからかりんとうや黒砂糖の甘み、徐々に甘酸っぱくリッチなダークフルーツ香。微かに香木のような要素も混じる濃厚なアロマ。

味:リッチでパワフル、ねっとりとして存在感のあるウッディさ。タンニンと共にダークフルーツの甘酸っぱさと、カカオ多めのアーモンドチョコレート。合わせて少しゴムのような樹液っぽさが主張する。
余韻はウッディでビター、そしてスパイシー。存在感のあるタンニンと、香り同様に香木を思わせるニュアンスを伴う深く甘い樽香が口内に残って、ひりつくような刺激と共に長く続く。

若干赤みがかった濃厚な色合いが美しい。酒質の若さを濃い樽感でマスクしている構成で、樽由来の要素や樹液を思わせるようなニュアンスを感じた後で、角の取りきれていない刺激が顔を出してくる。
少量加水するとクリーミーな甘み、プルーンを思わせるニュアンスが開くが、タンニンやほうじ茶のようなウッディさは変わらず後半を支配する。

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エッセンスオブサントリー第2弾、最後に紹介するのは、スパニッシュオークの”新樽”で熟成させた山崎原酒。今回のリリース3本のなかではこれが一番興味がありました。
なにせ、スパニッシュオークは近年シーズニングのシェリーカスクにおける主要な樽材のひとつでありながら、アメリカンホワイトオークと違い、純粋な新樽の香味がどう影響するかは様々なシェリー樽熟成のウイスキーを飲んで、共通項から推測するくらいしか手段がなかったためです。

いざ飲んで見ると、スパニッシュオークらしい香木的な要素もさることながら、これが本当に新樽なのか?ファーストフィルのシェリーカスクではないのか?
と、スペックを疑問視してしまうような系統の濃厚なフレーバー。ドライフルーツのような果実味や強いタンニンは木材の持つ香味成分、そして多孔性という性質に由来するところもあるのでしょう。一方で焦げたようなニュアンスも感じられることから、樽製造の際に適度にチャーしてあると推察。そうでなければ、この色合いは説明しづらいなと思います。

その上で、新樽でこの香味なら、シーズニング前の樽作りと処理で、熟成させるウイスキーの仕上がりはおおよそ決まっているとも言えます。
例えば同じエッセンスオブサントリーのモンティージャワインカスクだと、焦げ感や樹液のような要素が低減している一方で、シェリー感と認識するであろうベースの香味は同じ。そこにシーズニング由来と思えるシロップっぽさや黒糖系の甘みが付与されているような。。。
つまりシーズニングでやっているのは色濃い果実味の付与ではなく、余計な灰汁抜きと、香味の仕上げ(短期のものはシェリーをいれた既成事実化とも・・・)のような印象すら受けます。
このボトル経験の有無で、近年のシェリー樽のシェリー感に関する印象がだいぶ変わるのではないでしょうか。

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(3種飲み比べ。それぞれの原酒の経験のみならず、飲み比べることで新樽にある香味がシーズニングやリフィルでどう変化したか、その関連性も知ることが出来る。
なお1ショットずつ注文したものの、全部飲みきるころには、舌も鼻も肝臓も”情熱”にやられてしまい。。。度数の高さと香味の濃厚さから、飲み比べはハーフショットずつが適量かもしれない。)

原酒単品で見ると、シングルモルトやブレンドの厚みを出せるような濃厚なモルトが、10年弱の熟成でこれだけのレベルに仕上がってしまうのは純粋にすごい。物量がどれだけあるかわかりませんが、オフィシャルリリースの原酒不足解消の光明が見えるようです。
もちろん3本とも仕上がりは荒く、特にこの新樽山崎などは、カバランのソリストを連想するような構成でもあったのですが、熟成環境しかり新樽のパワーしかり、サントリーは日本でのウイスキー作りを考えて、本当に試行錯誤しているんだなと驚かされます。

今回のリリースは、そうした山崎のハウススタイルを構成する要素に加え、ウイスキーの熟成に必要な樽の中でも謎の多いシェリー樽の、シーズニングシェリーとスパニッシュオークの香味の関係性を紐解くヒントを貰えたような、素晴らしい教材でもあったわけです。(あるいは更なる迷宮への入り口とも。)
思っていた以上に奥が深く、味の満足度以上に考えさせられるリリースでした。
次があるなら、白州でピートレベル違いのアメリカンオーク3種とかを期待したいです。


余談。完成度は3本とも横並びであり、序列については完全に個人の好みの問題と言えますが、バランスで言えばリフィルシェリー、わかりやすい甘みを帯びた濃厚さはモンティージャ、樽材由来の要素が最も出た経験値断トツは今回の新樽。。。
全てに共通のニュアンスがある中で、味で一番を決めるなら、好みの要素が多かったものはモンティージャワインカスクでした。