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CREST
SUNTORY WHISKY
Aged 12 years
1989-1990's (左)
660ml 43%
1990-2006's (右)
750ml 43%

グラス:国際規格テイスティング
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(5ー6)

CREST 1989-1990's
香り:ドライでウッディ、しっかりと甘みは、古酒感と黒蜜のようなシェリー感のある香り立ち。徐々に少しリキュールのようなチェリーやハーブ香も伴う。

味:マイルドで黒砂糖を思わせる甘みのあるシェリー感、微かに杏棒を思わせる酸味、序盤は味の濃さ、膨らみを感じるが、合わせて干草と軽い穀物感で、奥行きがトーンダウンする。
余韻はウッディでビター。ドライでジンジンとした刺激、染み込むよう。

やや単調でブレンドらしい軽さが余韻にかけてあるが、飲み口はふくよかでしっかりとしたシェリー感がある。少量加水すると香味が開き、バランスが良くなる。

CREST 1990-2006's
香り:ドライな香り立ち。アメリカンホワイトオーク系の樽香。ウッディでバニラや林檎の蜜を思わせる甘いアロマが主体的。干草のような乾いた印象もある。

味:フルーティーさとリチャー系の樽香、林檎やウッディな甘みがしっかりある。加水が効いてスムーズでまったりとした飲み口ではあるが、中間からは少しピリピリとした刺激や、グレーンの主張もはっきりとしてくる。
フィニッシュは華やか、ミズナラ感も伴う鼻抜けでドライなフィニッシュ。

序盤は主軸となる要素が濃く、詳細なフレーバーを捉えづらいが、余韻にかけて華やかなオークフレーバー、多層的な香味を伴う。若くて味の強い廉価版響と言える構成。


今回はちょっと変則的ですが、同じブランドの時期違いを、1つの記事にまとめます。
サントリークレストは1989年のサントリー創業90周年と、酒税法改正に合わせたウイスキーブランドの札新でリリースされ、2006年に終売となったブランド。
リリース初期のボトルは1枚目の写真左側、ウイスキーの色が濃くロゴマークが向獅子のボトル。その後1990年4月以降にロゴマークが変更となったボトルは右側。味わいも初期品がシェリー系の原酒が強い構成であるのに対し、華やかなオークフレーバー、ミズナラ系のニュアンスも感じられる多層的な構成にシフトしています。

ただ、多層的と言っても響17年以上のような、様々な要素が混じり合っての多層的な香味という感じではなく、クレストはしっかりめに1つの樽香があって、それのアクセントにいくつかという印象。
一方、その香味が軸になるため、まさに水割りやロックなど、薄めて飲むことを前提としているようにも感じます。
ウイスキーブーム前、会社の飲み会に差し入れすると、世代だろうと思われる方々から「クラブでよく飲んだよなあ」なんて懐かしがられたものです。

自分も真剣にテイスティングしたことはなかったのですが、今回改めてストレートで利いて見ると、これがどちらも案外悪くないのです。
荒削りというのは失礼ですが、しっかりとした樽香が、あるタイミングを越えるとストンと軽くなる香味の変化は少し違和感ではありますが。。。双方が持つ熟成感のある原酒の風味は、現行のローヤルや響JHとは比べられず。
白州ベースのブレンドという話も聞きますが、特に後期品は余韻にかけてアメリカンオークやミズナラ樽由来のオーキーな華やかさが感じられ、成る程たしかにと。原酒をふんだんに使えた時期の作品であることを感じさせる構成です。

近年のジャパニーズウイスキーブームで入手難易度が上がった印象はあるものの、まだ比較的良心的な価格で手に入る銘柄。当時のグレードとしてはローヤルの上、後の15年の下という感じでしょうか。
「響が無ければローヤル15年を飲めばいいじゃない」というのが持論でしたが、ハイボールやロックはクレストでも良いかもしれない。そんな選択肢が増えたように感じるのです。