ジャパニーズウイスキー「響」のフェイクボトル報道に思うこと
いつか話題になるだろうと思っていた、ネットオークションにおけるジャパニーズウイスキーのフェイクボトル。その逮捕者が出たというニュースが、本日配信されています。中身は別のウイスキー 偽「響30年」販売容疑で逮捕(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASL8P41T0L8PONFB006.html
自分がウイスキーを本格的に飲み始めた2010年頃、フェイクボトルと言えばスコッチでマッカランやスプリングバンク、あるいは陶器瓶のラガヴーリンなど、海外から買い付けるような一部のレアなボトルに限られていました。
代表的なものが、昨年ニュースにもなった100年前のマッカランとかですね。
国内ではマッカラン30年ブルーラベルが話題になるくらいで、よほど高額なものでなければフェイクづくりは割に合わないというのが定説だったとも記憶しています。
ところが、近年のジャパニーズウイスキーブームを受けて、まずはイチローズモルトのフェイクと思しきボトルがヤフオクなどで見られるようになり。スコッチモルトも高騰し始めた結果、近年リリースでもフェイクを疑われるボトルが徐々に増えていました。
そして極め付けが、今年発表された白州、響の休売ニュース。海外からの買い付けで流通価格の数倍という価格高騰を引き起こした結果、メルカリやヤフオクの所謂転売系の出品物に明らかにフェイクと思しき響17年以上が混じり始めたのです。(メルカリの方が多い印象。)
それは散見というほどの数はないものの、事件化することは時間の問題だったようにも思います。
疑わしきは・・・ということで、この場でWEB上に出品されている(されていた)ボトルを名指しすることはできませんが、例えば最近メルカリやヤフオクで見かけた響で、明らかに怪しかったモノの特徴は以下の通り。
①開封済みである。
②液面が通常より高い。
③撮影の影響を差し引いても、色が濃いor薄い。
④ラベルが張り直されたような跡がある。
⑤キャップシールのデザインが異なる。
はっきり言って、上述のレアなオールドボトルのそれと比べると殆どは雑なフェイクであり、個別に解説するまでもありません。ラベルをルーペで拡大したり、キャップシールを一部切り取ってコルクの状態を確認しないと認識出来ない精巧なフェイクに比べれば、あまりにも稚拙。
現時点ではキャップシールまで複製して詰め替えているようなケースは少なく、①、②、③がセットになっていたりで、笑いのネタにすらなるレベルです。
他方、④や⑤は解説の余地があるので少し述べていくと、まず④は最安価の響ジャパニーズハーモニーのラベルを剥がし、響17年以上のグレードのラベルを調達(あるいはプリント)して貼り直した、所謂ニコイチと思われるものです。
響はボトルのカットがグレード毎に変わるのと、ウイスキーの色合いもジャパニーズハーモニーと17年以上では異なるため、注意して見ればわかるのですが・・・。以前あったこの怪しい出品物は、残念ながら落札されていました。
また、⑤については、今回ニュースになっているケースが該当すると思われるもの。響のキャップシールは現行品だと斜めにカット(30年は垂直)が入り、HIBIKIなどの印字があるのですが、それらが全くないのっぺらぼうなモノがありました。
そして、このような市場状況が続くと確実に増えてくるのが、先に述べた「精巧なフェイク」です。
既に高額なジャパニーズウイスキーの空き瓶が、オークションなどで数万単位の価格でも落札されており、その行き先は純粋なコレクターだけとは思えません。
キャップシールを複製して詰め替えされると、少しでも液面の高さ、色合いをごますように見える写り具合のような、怪しいところがあれば購入しないという予防策を取る以外に手はないのです。
これまで海外から調達されてしまったオールドボトルのフェイクは、泣き寝入りするしかなかったケースが殆どであるように思います。現在は逆に、海外の愛好家がジャパニーズのフェイクを掴んでしまったという悲しい話もあります。
しかし現行品で国内となれば、明確なフェイクは責任の所在を辿ることはある程度まで可能であると思います。
今回のケースは、まさに氷山の一角。容疑者らが悪意を否定している状況(偽物と知ってたけど、騙す気はなかったって、弁明にならんがな。。。ってか何入ってたんだ)ですが、少なくとも逮捕者が出たことで、フェイクの出品に歯止めがかかってくれることを期待したいです。
コメント
コメント一覧 (10)
手を出していなかったのですが、聞くところによるとフェイクボトルための工場があるとか・・・
ジャパニーズだけでなく、オールドマッカランなどはフェイクが本当に怖くて・・・
ウイスキーそのものだけではなくフェイクを見極める目も養わないといけないか・・・と
考えさせられました
ヤフオクでもメルカリでも、高額なものは入札してまで入手しようと思いません。詐欺行為が横行していたり、また今回のような偽物があったり。リスクは回避するべきとも。
ずっと響の30年を適正価格で販売しているところで探しています。もう探し出してから4~5年経ちました。もう、完全に諦めました。
先日、白州蒸留所のバーで、響30年、山崎25年、白州25年、マッカラン25年などを飲み、本当に飲みたくなったら白州の蒸留所行けばいいやという気持ちに。シングルで3000円近くしましたが、ボトルで何十万だすよりいいのかなと思いつつあります。
血も涙もない話ですよ・・・。
例えば、ラガヴーリンのオールドの陶器ボトル。自分が飲み始めた時点で10万円くらいしていたのですが、どうしても欲しいと購入した人のところに届いたのが、中身がただの水だったり・・・。
グレングラントやグレンリベットのオールドボトルが、中身がカティサークのようなオールドブレンデッドだったり・・・
中には、フェイクだけど結構うまいよねなんてバンクがあったりもしたのですが、これらは本当に見た目じゃ区別がつかないボトルが大多数でした。
コメントありがとうございます。
こういう加熱したブームがあると、フェイクの存在はどうしようもないですね。
靴や服でフェイクが作れてしまう昨今ですから、詰め替え、ダミーラベルなんてのはちょっとノウハウがあれば簡単にできてしまうのだと思います。
ただ、何事も金が動くところには問題が生まれ、それに対策するというイタチごっこで知識やノウハウが蓄積していく側面もありますから、今が新しい時代への過渡期と割り切るしかないかなと、最近は少々諦め気味だったりもします。。。
以前知人がFBにジョニ黒のフェイクづくり工場なるものの画像をUPしていた記憶があります。
この手の工場で生産されるのは一点モノではなく大量生産品なので、その手の国の中で流通して終わりだとは思おうのですが、空きボトルを使った高額一点モノは本物と見分けがつかないのが怖いところです。
しかし信頼できるところからしか買わない、となるとますます物不足感から確かなボトルの価格が跳ね上がりそうで・・・。