マッカラン10年 1980年代流通 40%

MACALLAN
YEARS 10 OLD
1980's
750ml 40%
グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(6)
香り:黒砂糖と揚げドーナッツのような香ばしく甘いアロマ、トーンの高い鼻腔への刺激に続いて、奥にはアロエのような青い植物感、シロップの甘み。
味:若干荒さはあるがコクのある甘みを感じる口当たり。黒蜜、粉末カカオをまぶした生チョコレートやアーモンドの香ばしさとほろ苦さ。中間は平坦気味だがレーズンを思わせる甘酸っぱさと徐々にピリピリとした刺激も感じられる。
余韻はほろ苦く、程よくドライなウッディネス。カラメルソースや熟成したクリームシェリーを感じる深い甘みも伴って長く続く。
深い甘みのあるシェリー感が備わっているが、香りは度数以上に強いアタックがあり、若さゆえか酒質と樽は完全に融合しているわけではないと感じる。他方、樽の良さがそれを補ってバランスは悪くなく、全体を通しては深みのあるシェリー樽熟成モルトに仕上がっている。

流通時期から見て、おそらくマッカランが1974年に自社のクーパレッジでスパニッシュオークの樽を作り始め、その樽が使われ始めた初期の頃の原酒と思しき1本。
スタンダードで
ありながらしっかりとした
シェリー感は
、現行品シェリーカスクとの大きな違い。テイスティングの通り加水でありながら酒質の強さも感じる点は、
元々マッカランの酒質はフルボディでパワフル、それこそ加水であれば20年前後の熟成が望ましいキャラクターからすれば個性が出ているとも言えます。
それは多少荒くはありますが、黄金時代と呼ばれる60年代の片鱗も備わっています。
(1990年代後半から2000年代流通のマッカラン10年。ラベルがやや垢抜けた印象、味わいも多少洗練されシェリー感はライトになったが、まだ方向性は変らない。)
話は変わりますが、今年に入りマッカランは新しい蒸留棟の工事を完了し、さらなる量産体制に入ったのは有名な話。これまで生産をしてきた旧蒸留棟は、今後稼働を休止するそうです。
この蒸留所は地上ではなく地下に作られ、遠目にはただの丘にしか見えないというユニークというか、未来的な外観。設備そのものも蒸留所とは思えないミュージアムのような配置となり、その生産量これまでの約1/3増で、約1500万リッターという原酒に対して、どれだけマッカランの象徴たるシェリー樽を確保できるかは疑問が残ります。
【参照】ウイスキーマガジンジャパン:マッカランの新しい蒸留所が完成(前編・後編)
樽の確保について、マッカランは相当力を入れているという話でもあるのですが、2000年代後半の肩張りボトルに変わってからシェリー感の変化は大きく、量産による影響が如実に現れている状況と言えます。ファインオークのように、バーボン樽を用いたり、ダブルカスクのように複数の樽材を用いるものが今後益々増え
ていくのだとも思います。
加えて年々軽くなる酒質も、かつての厚みのある麦とシェリー樽が融合したようなキャラクターから見て、さらにライト化が進むのでしょう。
自分としてはそれを飲む前から否定するつもりはないですが、急激な変化に対して誰もが割り切れているかというと、難しいように思います。
先に触れましたが、マッカランは1970年代のシェリー樽自社生産開始など、生産工程の切り替えが、のちのリリースで一つの節目として語られることが多くあります。
そういう意味で、今回の新しい蒸留棟の完成は、マッカランが切り替わったという節目として将来的に語られていくのでしょう。例えるならブローラとクライヌリッシュのように、全く違うものなんだと割り切れるきっかけにもなるのではないかと考えています。
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