シングルカスクウイスキーをアイドル化するのは止めるべきという意見
FBタイムラインで、ウイスキー仲間がシェアしていた以下の記事。本件についてはこれまで自分も多かれ少なかれ考えていた内容でもあったので、ここで紹介すると共に自論をまとめたいと思います。
STOP IDOLISING SINGLE CASK WHISKIES
Scotch Whisky .com(2018/7/10)
https://scotchwhisky.com/magazine/opinion-debate/the-way-i-see-it/19800/stop-idolising-single-cask-whiskies/
書かれている内容は、端的に言えば「シングルカスクウイスキーを過剰に評価してませんか?」という話。
シングルカスクウイスキーは樽や蒸留所などの情報は明確だし、原酒一つ一つを限りなくそのままの香味で楽しむことは出来るが、それらは決して味の良さや原酒の品質を保障するものではないということ。高品質なウイスキーの条件はシングルカスク縛りではなく、あくまで1つのジャンルであって、ブレンドウイスキーなどと平等に評価されるべきというのが記事を通しての著者の意見です。
この記事については自分もほぼ同意見で、考察のポイント含めてよくまとめられた内容だと思います。確かにそういう傾向あるよねと。ただ、少々ワンサイド気味な主張にも感じてしまうのが、時系列と経験に伴う消費者サイドの趣向の変化を考慮していない点にあると思うのです。
自分もそうだったのですが、ウイスキーに興味を持つきっかけは個人個々としても、ある一時から
・飲む前から40%や43%の加水リリースのウイスキーを残念に感じる。(特にGMの蒸留所ラベルとか)
・ハイグレードのブレンデッドウイスキーは、なぜこの原酒を混ぜてしまったのかと感じる。
・同じ価格ならブレンドやシングルモルトよりもシングルカスクのほうを購入してしまう。
などなど、ある種のシングルカスク・カスクストレングス至上主義的な感覚を持つ場合が多いのではないでしょうか。
前置きすると、あくまで自分の主観的な分析であって、全ての愛好家が必ずそうとは思いません。また仮にそうであっても、それを否定するものでもありません。
・飲む前から40%や43%の加水リリースのウイスキーを残念に感じる。(特にGMの蒸留所ラベルとか)
・ハイグレードのブレンデッドウイスキーは、なぜこの原酒を混ぜてしまったのかと感じる。
・同じ価格ならブレンドやシングルモルトよりもシングルカスクのほうを購入してしまう。
などなど、ある種のシングルカスク・カスクストレングス至上主義的な感覚を持つ場合が多いのではないでしょうか。
前置きすると、あくまで自分の主観的な分析であって、全ての愛好家が必ずそうとは思いません。また仮にそうであっても、それを否定するものでもありません。
ただ、そうした趣向を持った上で様々なリリースを経験した結果、最終的にその道を貫く方も居れば、「加水には加水のよさがある」「ブレンドの面白さに気が付く」という趣向の変化を経験する人も居るという点が、シングルカスクの位置付けを考える意味で重要なポイントだと思います。
ブレンド全盛だった1980年代に比べ、近年のウイスキー市場は多様さを増し、バッテッド、シングルモルト、シングルカスクなど様々なリリースが増えて勢力図が変わりつつあります。
では、シングルカスクウイスキーを一つのジャンルとして捉えた場合、シングルカスクウイスキーは、混ざっていない単一の原酒であるが故に蒸留所や樽の個性を認識しやすく、ウイスキーを学ぶ上で重要な経験がわかりやすく得られることが強みであると考えます。
例えば、オーケストラやコーラスを普段聴かない人に、CDを聞かせてあの楽器が良かったとか、あの人の声が良かったとか、ある特定の要素を切り出して感想を求めても答えづらいのではないかと思います。これは不慣れ故に音の聞き分けが追いつかないためで、指揮者の役割についても同様です。
しかしソロパートについてならどうかというと、これなら明確に認識できます。
そして様々な楽器について学んだ上でオーケストラを聞くとどうか・・・。当然それぞれの音にピントが合いやすくなり、全体の中で指揮者の意図にも気が付きやすくなると期待出来ます。
この話をウイスキーにそのまま当てはめると、シングルカスクはまさに上記のソロであり、ウイスキーを学ぶ上では最初のステップに位置づけられると思うのです。
この話をウイスキーにそのまま当てはめると、シングルカスクはまさに上記のソロであり、ウイスキーを学ぶ上では最初のステップに位置づけられると思うのです。
(実際、ブラインドテイスティングでも、シングルカスクを中心に飲んでる方は予想が的確な印象がありますね。)
なお、認識のし易さは逆にごまかしが効きづらく、荒さも目だってしまうというデメリットと言えるかもしれません。
総合的な完成度と言う点では、ブレンド、バッティング、加水と手を加えるほうが上がりやすくなるのも事実。 その為、シングルカスクリリースは必ずしも美味しさが保障されるものではないのですが、稀に単独で完成度の高い突き抜けたリリースもあります。
ブレンドとは異なる香味の広がり方は快活にして明瞭であり、そしてその存在を知ってしまうと、熟成の神秘という大きな謎に触れるが如く次の邂逅を求めて沼にハマってしまうわけです。
そういう突き抜け系のウイスキーを飲んだことがある身としては、シングルカスクをアイドル化してしまう心も非常によくわかります。
何だかとりとめなくなってしまいましたが、時代が変わった今、シングルカスクにはシングルカスクで活かすべき要素があり、シングルカスクもシングルモルトもブレンドも、全部飲んで今の市場を楽しむような飲み方を推奨したいのが自論であります。
また、そのためにはリリース側のみならず販売側も、そのボトルの個性をわかりやすくPRしてほしい。なんか結論はあまり変わってない気もしますが、シングルカスクを無条件で迎合する必要はないとしても、それがどんな特徴を持っているかを正しく発信出来る。製造元を含めた売り手側のスキルが求められているようにも思うのです。


コメント
コメント一覧 (5)
確かにこの流れはある気がしますね。売る側も意識して販売戦略を練っていますし。僕自身、自分の中で突き抜けたシングルカスクに出会ったことがあるので、アイドル化してしまうのはよくわかります。
ただ、よくよく思い返してみるとシングルカスクより混ぜた物のほうがバランスが良く、突き刺さったウイスキーが多いことに気が付きました。
今の時代にウイスキーを楽しんでいる身としては、楽しんで美味しく飲むのが一番だと思いますが、もう少し視野を広くして楽しむのも良いかもしれません。
クラフト蒸留所に関しては、経営的な問題、ブランディングの問題等々で評価される
一樽を・・・という気持ち、戦略はよく理解できるところです
シングルカスクには突き抜けたウイスキーもありますが、それだけではなく、
個性が良く分かる分、同じ蒸留所でも樽毎の違い、年代毎の違いも気になる
ところであったり、また、美味しいブレンデッドやシングルモルトの構成原酒を
知るという意味でも飲み手としては好奇心をくすぐられてしまいます
ブレンデッドやシングルモルトのブレンダーの妙技、シングルカスクの蒸留所の個性
どちらも楽しんでありがたくウイスキーの飲んでいきたいと改めて考えました
スコッチの場合、40年前くらいまではブレンダーの妙技がもっぱら喧伝されていたのですが。
高級ワインの世界でも、ブルゴーニュはボルドーより選別重視ですが。
モーゼルワインなどは、同じ生産者(マルクス・モリトーア)同じ畑(ツェルティンガー・ゾンネンウーア)同じ品種(リースリング)同じ年(2010年)同じ等級(トロッケンベーレンアウスレーゼ)に10種類の作り分けがされるほど。
シャンパーニュは本来調合重視で。
極上品でしられるクリュッグ・グランキュヴェは20ほどの村の3品種のブドウのワイン10年分から選んだ70種ほどをブレンドすると言われますが。
同じクリュッグが10年前から発売しているクロ・ダンボネはアンボネ村の自社畑0・7haのピノノワールだけから秀作年のみ年号入り・製造本数入りで作り、価格はグランキュヴェの10倍。
それでもクリュッグ社によれば価格に上下はあっても品質に優劣はなく、味わいはどれも極上なんだそうで。
つまるところワインの世界でもウイスキーの世界でも、希少価値と品質の優劣は別問題だってことで・・まあ嗜好品だからあたりまえではありますけどね。
私も売り手側のやり方が大事なんじゃないかと思ったクチでして、シングルカスクのボトルではヴィンテージだとかポジティブなテイスティングコメント、限定本数などを全面に押し出して売っているイメージが強いと思っています。
そしてそれを鵜呑みにしたかどうかは別として、ユーザー側が過剰な特別感を持たされ、ボトルが売り切れ、それによってまた特別感が増し、皆が我先にと飛びつくようになり、結果として神格化の加速スパイラルが生じてしまっているような気がします。(それだけではなくて、昨今の過熱しきったウイスキーバブルが大きく影響しているのだとは思いますが…)
まあ売れること自体は悪いことだとは思っていませんが、その過剰な特別感を理由にむやみやたらと(ボトルの真価やシングルカスクの本来の意義を知られずに)買われてしまう現状をあまり良い事だとも思えません。
売れる物にわざわざネガティブな広告を打つ売り手もいないとは思いますが、ある程度は冷静な判断を促してくれるような提言苦言も、ちょっと欲しいかな~と願うところです。
かく言う私も、それこそ「シングルカスク」とか「限定~本」とかいう謳い文句に時として踊らされてしまっている一人ではあるので、デカい口を叩ける身分ではありませんが…
折に触れて勉強になる記事をありがとうございます。またいろいろと参考にさせていただきたく思います。