カテゴリ:
BALLANTINE'S
MASTER'S
BLENDED SCTOCH WHISKY
"A remarkable, fresh take on our classic blend"
700ml 40%

グラス:エリート
時期:不明
場所:ACE
暫定評価:★★★★(4-5)

香り:軽い香り立ちから乾いた穀物っぽい香ばしさ、淡い樽由来の甘いアロマ。ドライであまり香りが立たない。

味:まろやかで加水で整えられたシェリー系の甘味を伴う口当たりだが、合わせて若い原酒の刺激、ボディは軽く、干草やえぐみを伴うウッディネス。
余韻は樽香主体でほろ苦くドライ。

ハイランドモルトを主体に感じるが、全体的にドライで軽い。少量加水すると香りが開くが、ボディはさらに軽くなってしまう。ベースとなるモルトが軽いので、ブレンドされるグレーンが若いとコクを補えないのが苦しい一方、ハイボール用と割り切るなら道はある。


バランタインにおける3代目マスターブレンダー:ジャック・ガウディ氏が、プライベートで楽しむために作っていたというレシピをコンセプトに、5代目となる現マスターブレンダー:サンディ・ヒスロップ氏が作り上げたブレンデッドウイスキーが"マスターズ"です。
2014年に日本限定でリリースされた本品ですが、昨年大幅にラベルチェンジし、当時はよりは香味も淡いシェリー感を伴う、ライトで落ち着いた構成へとシフトしています。

そのコンセプトは、熟成したグレンバーギーとミルトンダフをベースとし、若いグレーンを合わせるというノンエイジ仕様。この背景には、モルト原酒に比べ、グレーン原酒の熟成変化(成長幅)は小さいから、短熟でも問題ないという考え方があるようです。
リリースされた当時は「なんてもったいことを。。。」と考えたりもしました。
まあハイボールで飲む分には結構美味しく飲めたのですが、ストレートは少々粗が目立ってしまう印象です。


さて、今日はこのマスターズのコンセプトについて、史実プラスだいぶ私見混じりの(こじつけ気味な)考察でまとめていきます。
ジャック氏がマスターブレンダーを務めていた1959年から1994年、あるいはそれ以前から1970年代くらいまでの間は、良質なグレーン原酒の確保が各メーカーの課題としてあり、大規模グレーン蒸留所を傘下に持つグループが形成され、BIG5に代表されるブレンド銘柄が量産されていきました。
当時の市場では年数表記のあるブレンドが珍しく、デラックス表記や、あっても5年程度の一桁表記が一般的。リリースされた中には若いグレーン感を感じるものも見られ、複数種類のモルト原酒に若いグレーンを用いることが、普及価格帯におけるスタンダードな作り方だった可能性が高いと考えられます。

そんな中で同氏は、マスターブレンダー就任後の1960年代にバランタイン12年を誕生させているのですが。。。ほぼ同時期ないしそれよりも前に、ノンエイジ仕様のゴールドシールもリリースしています。このゴールドシールは短命で、70年代には一旦姿を消しているのですが、味は確かなボトルでした。
ひょっとすると、ジャック氏がプライベート版として作ったのは、このゴールドシールか、あるいは12年をベースとしていたブレンドなのではないかとも感じています。

(ジャック氏が関わったと考えられるバランタイン・ゴールドシールと12年の60年代流通ボトル。スモーキーなゴールドシールに対し、12年は熟成したハイランドモルトを主軸に感じるまろやかな構成。現代のマスターズはどちらかといえば後者のタイプだが・・・。)

当時のモルト原酒は、香味もコクも現代のそれより強く、今回のコンセプトでも充分モルティで美味しいブレンドになったと思う一方、酒質の弱くなった現代のそれでこのブレンドを作ると・・・まあテイスティングの通りストレートで楽しむには少々残念な構成になってしまうのは仕方ないんですよね。
日本市場ではハイボールがブームなので、ちょっとリッチなハイボール向けと割り切っての投入は戦略としてありそうです。

ちなみに、今回マスターズを作り上げた5代目のマスターブレンダー;サンディ氏は、4代目のロバート氏と共にジャック氏の下でブレンダーの訓練を積み重ね、マスターブレンダーに選ばれたという経緯があります。
ジャック氏がプライベート用のブレンドを作った経緯は定かではりませんが、それが当時あるいは先代から受け継がれた技だとすれば、それを再現したコンセプトはバランタインの伝統の継承。
飲んだ感想より、歴史考察であーだこーだ楽しませて貰いましたが、それもまた100年以上積み重ねてきたメーカーとしての歴史があればこそですね。