アプルヴァル キュヴェ ヴィクトール 30年以上熟成 41%
APREVAL
QUVEE VICTOR
Aged 30 years over
Calvados Payd'Auge
700ml 41%
グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@エクリプス
時期:開封直後
(参考評価:★★★★★★(6-7)(!))
味:マイルドな口当たり、熟したリンゴ、コンポート、色の濃い蜂蜜、紅茶、徐々にホワイトペッパー。ふくらみのある豊かな味わいが広がる。
余韻はオーク由来の心地よいウッディネス。果実味と共にビターでほろ苦い余韻が長く続く。
過度な樽感なく非常にいい熟成感、熟成のピークを感じる味わい。バッティングによるボディの厚みと丸みのある味わいと、ウイスキーでいうリフィルホグスのスペイサイド長期熟成に通じる熟成感がある。
ストレートを大ぶりのグラスで、じっくりと時間をかけて楽しみたい。
日本のウイスキー愛好家の間でも、無農薬栽培のりんごから作られるカルヴァドスやシードルとして知られるアプルヴァル。
同社のコスパに優れたラインナップの中で、長期熟成原酒独特の角の取れた丸みのある味わいと奥行き、所謂熟成感と言われる感覚が味わえるのが、30年以上熟成した原酒で構成さたキュヴェ・ヴィクトールです。
1200リットルという大きな新樽で長期間熟成させた後、400リットルサイズの樽に移して後熟を行う製法が特徴。
近年のウイスキーでは、バーボンバレルやそれよりもさらに小さい樽を使い、強い樽感の原酒を短期間で仕上げるスタイルが見られます。しかし短期間で付与した樽感と、時間をかけてじっくり熟成させた樽感は、同じ濃さでもベースにある酒質部分の仕上がりが異なるため、トータルでの完成度が段違いです。
長期熟成原酒の枯渇から、そうしたニュアンスを感じられる原酒のリリースが減ってきているのは言うまでもなく。これが手の届く範囲の価格帯で楽しめるという点で、このカルヴァドスはウイスキー好きにもオススメしたい1本と言えます。
(エクリプスにて、30年以上熟成のヴィクトールと40年以上熟成のグスターヴの飲み比べ。どちらも同じ樽構成で熟成が行われている。グスターヴはヴィクトールに比べやや過熟気味でボディも枯れ始めているが、熟成による豊かな香味が魅力。)
(アプルヴァル・カルヴァドスの名をウイスキー好きに広めるきかっけとなったXO。18-24年熟成。見た目の色合い通り、濃い樽感と豊かだがしつこすぎない甘みが楽しめる、コスパに優れた1本。当ブログのレビューはこちら。)
先に述べたように、ヴィクトールは自然な樽感と熟成感が魅力であると言えます。
一方、同社ラインナップでその対極にあるのが、上記写真のアプルヴァルXO。このXOも1200リットルから400リットルという同じ樽構成なのですが、逆に濃く豊かな樽香があり、原酒を移す時期や樽の使用回数をコントロールすることで、成長に違いをつけていると考えられます。
以前の自分のレビューでは、この熟成傾向を例えるなら、2000年代に見られたGMの濃厚なシェリー感に通じると書いています。今回のヴィクトールも同様に例えるなら、かつてのケイデンヘッドを思わせるナチュラルな樽感と仕上がり。。。なんてこじつけ気味でもありますが、先にも書いたようにこの価格帯でこれだけの熟成感があるウイスキーリリースって、ほとんどないんですよね。
カルヴァドスの独特の香味は好みを分ける部分でもありますが、それを差し引いても優良なリリースだと思います。
さて、アプルヴァルのカルバドスやシードルが美味しい理由は、リンゴの種類にもあるようです。
実は今まさに、現地を京都の名店カルヴァドールのマスターである高山氏が訪問されていて、その解説をFB上でされておりましたので、こちらにも引用させていただきます。
上の動画は先日ポワレの紹介記事でもリンクを貼らせてもらった製造風景動画ですが、同社の農園を見ると、整った農地に間隔を置いて1本1本リンゴの木が植えられているのが見えます。
この品種は、Haute tigesという土着品種。幹が太く背が高く枝を広げるため、風通しを良くする必要があるので密集して植えられず、しかも大量生産可能な品種に比べて実の数も少ないのだそうですが、その分すばらしい味わいの林檎を実らせるのだそうです。
また、無農薬農法ゆえ、牛が放牧されており、土に栄養分が還っていく仕組みも作られています。
「いい生産者は、昔からの土着品種の林檎を大切にしている」こうした話を聞いた上で同社の製品を飲むと、また一つ豊かな味わいに感じるのは、それらが作り出す品質への信頼によるものなのかもしれません。
※2018年9月追記
最近入荷したアプルヴァルXOの新しいロットを飲んだところ、上記で触れた色濃い樽感と甘みが控えめとなり、完全にロットが切り替わっていました。
新しいロットのキャラクターは、グランリザーブからキュベビクトールを繋ぐ、熟成のベクトル上にあるようなキャラクター。これはこれで美味しいという評価もあると思います。
りんごの蜜っぽさ、蜂蜜などの熟成したカルヴァドスの香味は健在ですが、微かに硫黄香もあり、この変化の背景は追熟する際に使う400リットルの樽や、追熟期間が変わったのではないかと予想しています。
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