東洋経済 ジャパニーズウイスキーの悲しすぎる現実 について思うこと
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「ジャパニーズウイスキー」の悲しすぎる現実
輸入モノが国産に化ける、緩すぎる規制(東洋経済 3月26日)
WWA2018でジャパニーズウイスキー3種が、同国際コンペの主要部門といえるブレンデッド及びモルトウイスキー区分で世界一を獲得。日本のウイスキーの評価は益々高まった・・・なんてことを書いた数日後、東洋経済社からジャパニーズウイスキーのもう一つの事実とも言える記事が公開されました。
所謂「バルク」に分類される海外からの輸入原酒と、日本の酒税法の問題点については、これまで当ブログでも何度か記事にしてきたところです。
自画自賛というわけではありませんが、バルクウイスキーの実態とその位置付け、そして日本のウイスキーを取り巻く環境について、愛好家を中心として一定の情報提供ができたのではないかと感じています。
ご参考:ジャパニーズウイスキーの現状とバルクウイスキー(2016年8月9日)
他方、この手の話は一般に広く、そして正しく認知されてこそ、国が動く土台が整備されるというものです。
記憶している限り、本問題に関するメディアからの報道は業界専門誌に限られており、認識しているのは愛好家の一部という状況でした。
今回発信を行なった東洋経済もまた、ある種専門誌であるとはいえ、発信力については5大紙に次ぐものがあると認識しています。
タイトルは中々に刺激的ですが、今回の記事が世論に対して一石を投じるきっかけとなり、現在ウイスキー文化研究所などが進めているジャパニーズウイスキーの基準整備を後押しすることに繋がるのではないかと期待しています。
当該記事は
・輸入原酒で作られる"ジャパニーズウイスキー"
・ブレンド用アルコールを使用できる日本の酒税法
大きくこの2本立てでまとめられており、業界の状況を調査し、各メーカーや関係者の意見もまとめることで、踏み込んだ特集となっています。
ブレンドアルコールの使用、酒税法の問題点については追記する内容もありませんので、早急に議論が進むことを願っています。
粗悪なウイスキーを大々的に製造することは、短期的に利益は得られても長期的に見て業界が衰退することは、かつてスコットランドでも起こった話です。
一方で、輸入原酒の使用に関して改めて自分の考えを記載させていただくと、
・輸入原酒のみで作られたウイスキーがジャパニーズを名乗ることは疑問。
・ただし、輸入原酒については、一定の基準のもとであれば、使うことは問題ない。
輸入原酒100%でジャパニーズというのは明らかに問題外ですが、完成度を高める目的で一定量の輸入原酒を使うのは、決して悪ではないと考えます。
例えば日本のウイスキーは温暖な気候から樽感が強くなりがちですが、比較的寒冷なスコットランドなどの異なる地域で熟成された原酒と組み合わせることで、バランスの向上や奥行き、複雑さを生み出す事が期待できますし、実際それらの原酒を用いたウイスキーも存在します。
加えて生産規模の限られるクラフトディスティラリーにおいては、グレーンウイスキーの需要のみならず、酒類製造免許における最低製造数量基準も無視出来ません。
他業界に目を向けると、自動車、家電、日本が強みとするものは完全国産品というわけではなく、輸入した技術や部品を組み上げてMade in Japanとして評価されています。
日本のウイスキーは先に記載したように国際的に高い評価を受けており、その評価を受ける背景には、原酒の質のみならず「ブレンドの技術」や「日本の熟成環境」もあります。
ならば、輸入原酒であっても、日本だからこそ作れる高品質なウイスキーを作る上では取り入れて、海外との差別化を図っていくべきではないかというのが持論です。
そのためにも、現在整備が進んでいる"定義"の中で、その扱いや表記方法まで明確に示していく必要があると共に、"全事業者"への徹底が重要となります。
最後に、今回の特集、並びにこれまでの自分の意見の中で触れられていなかった課題を記載して、記事の結びとします。
それは、上記"全事業者"には、製造者だけではなく販売側も含まれるという点です。
ウイスキー製造者側に、ラベルの記載で消費者が誤解しないように努めている動きがあることは、記事のコメントから読み取ることが出来ます。
もちろんこれは途上の動きであり、特定のメーカーに限られるだけでなく、整理がわかりにくいものも見られます。しかし免税店を含む一部販売店ではそうしたウイスキーも含めて「ジャパニーズウイスキー」として販売している状況があります。
この点についても、結局は明確な基準がないことに起因しており、誰が悪いという責任を問うものではありません。課題は製造側にあるだけではなく、ブームによって急速に広がった市場全体にあると言えます。
古来どのような業界でも、トライ&エラー、あるいはスクラップ&ビルドを繰り返しながら基準やルールは整備されてきました。
今後日本のウイスキー業界がどのような選択をするのか。ブームの影で変革の動きが起ころうとしています。
※メッセージにて最低製造数量基準についてのご指摘を頂き、追記させて頂きました。輸入原酒の表記の置き換えをして良いという話でも、安易に撤廃すべきと言えるものでもありませんが、小規模かつ新興のクラフトディスティラリーにとってハードルである事に違いない基準です。(3/27追記)


コメント
コメント一覧 (16)
おいしい原酒はどんどん使うべきです(笑)
問題は定義だと思っています
おっしゃるようにこれは販売側、そして消費者の理解の問題もあると思いますが、
日本のメーカーのウイスキー、だからジャパニーズウイスキー
ではなく、今後決められるであろう定義に則っているから「ジャパニーズウイスキー」という
認識を持つ必要があると思います
個人的には、バルクウイスキーのほうが美味しかったとしても、ジャパニーズウイスキーを
名乗る以上、最低限蒸留は日本に限定するべきだと思いますが・・・
ただ同時に、その定義から外れたからといってウイスキーであることに変わりはないので、
それはそのままで良いのではないかと・・・。
そこでジャパニーズウイスキーとして作ったり、売ったりすることは当然問題にする
といった感じです
と、考えたのはいいのですが、そうすると、ジャパニーズウイスキーの定義のほかに、
日本における広義のウイスキーの定義も必要になってしまいますね(笑)
フランス産に限るヴァン・ド・ペイ
ワールドワイドなワイン混合可能なヴァン・ド・ターブル
ってありますよね
ジャパニーズウイスキーも、そんな形でクラス分けしたらいいのではと思います。
そもそも東洋経済自体が品性に欠ける記事や、ミスリード・煽り目的の記事タイトルが多く、信用しにくいメディアです(少し前、週刊文春に企業体質を暴露されていましたし)
私個人的には輸入と国産のブレンド比率を明瞭にしてほしいです。
最近になって、蒸溜所を建設して自前でウイスキーを作るメーカーが増えている事はうれしいですが、反面、バルクウイスキーを買って貯蔵、熟成させただけでジャパニーズを名乗るメーカーもまだまだ存在します。
そうしたメーカーも、将来的に自前でウイスキー作りをするというならいいですが、全く考えてないところもあります。鳥取のあそことか。
戦後の国民の経済的な理由により、1%モルトを入れるだけでウイスキーを名乗れる法律を作った事は否定しませんが、ある程度裕福になり、本物を求める志向が強い現代においては、法律が時代遅れになっている事は事実でしょう。
ましてやジャパニーズウイスキーと世界が認めている現代となれば、クールジャパンの一環としてブランディング、品質の向上を政府レベルで行う時期に来ていると思います。
一刻も早い法整備を望みます。
以前くりりんさんが記事に書かれていたように 情報を飲むという面もあるので、輸入原酒の表記を明確にしたら味は変わらずとも評価が変わってしまうということも起きてしまうんでしょうか。
個人的には輸入原酒は使える上限の割合を決めて表記を明確にするのが一番だと思いますが、それで国産100%だからと価格にプレミアがついてしまったら悲しいです。
ありがとうございます。
ウイスキーがさらに美味しくなるための選択肢とするなら、全然良いと思うんですよね。
だから日本の蒸留を名乗るなら100%じゃなきゃだめだけど、そうじゃないなら比率を明記するとか、例えば成分表示に、「原料:モルト、グレーン (一部輸入原酒を含む。)」と記載するとか、そういうことをするくらいで良いんじゃないかと思います。
あと、倉吉についても、説明の問題であって、スコットランドでいう原酒を買い付けてブレンデッドを作るブレンデッドメーカーが、日本には今後根付いていく必要があるとも思うのです。変に自分のところで作ってるかのような記述をせず、自分たちは買い付けた原酒で理想のウイスキーを造るんだと、そういうシナリオならここまでネガティブな反響は無かったと感じています。
この広義のウイスキーの定義が、現在で言う酒税法なのですが、それ以上の定義が無いということが、このジャパニーズウイスキーの定義問題になっていると理解しています。
なので、自分としては、広義のウイスキーの定義は「ブレンド用アルコールの使用有無」が問題だと考えていますが、もしそれを規制した場合、小規模な生産者は現在作っていたウイスキー的なモノを作れなrくなりますので、それに付随して酒造免許においてウイスキーの年間製造量を定義している、年間最低基準も緩和する必要があるかなとは思います。
そして酒税法の上に整理されるべき、議論の本命ジャパニーズウイスキーの定義は、製造方法はもちろん、ラベル表記等についても定義する必要があると感じています。
事の発端は、紛らわしいラベルや表記で販売されているということがありますので。かといって我々のようなコアな愛好家基準で作ると、日本酒のようになんだかわからない表記がいっぱい並ぶことにもなるため、どこかでバランスをとる必要があるとも考えています。
何れにせよ、自分で出来る情報発信はしつつ、議論は見守っていきたいと思います。
的確なコメント、ありがとうございます。
おっしゃるように今の日本のウイスキーはどちらも交じり合ってしまって、整理できていないという点が課題であると思います。
この点は業界基準でも良いですが、酒税に組み込むならどちらも同じ額だと意味が無いので、国産優遇的な感じにすれば・・・ってなると外圧がかかっちゃいますかね(笑)
コメントありがとうございます。
冒頭からの流れは多少煽り気味とは感じますが、フラットな視点で見てもブレンデッドが品質が劣るようには読めませんでした。ただ、グレーンウイスキーについては、水増しととられても仕方ないとはいえ、土屋さんのコメントなどは事実で否定できない部分もありますので。
さて、東洋経済の企業体質云々については様々意見はあると思いますが、こと本件については一般ユーザーに問題点が周知されるという点で、発信力のあるメディアに取り上げられたことが大きいと感じています。
記事中にも書きましたが、これまではニッチな業界紙くらいにしか取り上げられていませんでしたので。ブームと言う点では少なからずダメージがあるとは思いますが、問題意識が広まることで動く話もあると考えています。
自分も議論に加わっているわけではないので、土屋さんら有識者の方々に託しているという状況です。
ブレンド比率か、それとも使われているという事か、なんらかの形で明示するようはして欲しいですね。
蒸留所が建設されるのは良いのですが、業界全体として生産過剰に陥る可能性もあります。
むしろ今原酒を買い付けてウイスキーを作っている企業は、今後蒸留・製造側へ進むのか、あるいはブレンドメーカーとして原酒を買い付け、ブレンドしてウイスキーを作っていく方向にシフトするか、選択肢は一つだけじゃないのかなと考えています。
(蒸留から製造しているように読める説明をしながら、買い付けた原酒だけでウイスキーを造っているのは疑問ですが。)
そしてそれは整備された定義の上で行われるべきと思います。
別な方へのコメントにも書きましたが、本件は日本におけるウイスキーとは何かを定める広義な定義と、その上に成り立つ日本産ウイスキーとは何かを定める定義の二つが最低でも必要で、現在の日本には「日本におけるウイスキーとは何か」という酒税法しか機能していません。
この酒税法についても、RERAさんもおっしゃられるようにブレンド用アルコールの添加が認められるという状況は、いち愛好者としてもどうかと感じています。
一方で、ウイスキーの製造免許には生産量(ウイスキーとして出荷する量)の最低基準が定められており、ブレンドアルコールを用いて基準を満たしていたような小規模な生産者、あるいは先に書かれたウイスキーを自社製造し始めたばかりのメーカーにとっては厳しい変更ともなりますので、整備されるべきとしても、慎重に議論すべき問題であるとも感じています。
こうした話は、古くからウイスキーのカラメル添加有無、チルフィルターの有無などでも、愛好家間で起こってきた事例があるので、輸入原酒表記があった場合は間違いなく、おこりうることだと思います。
とはいえ、国産100%だから良いというわけでもありませんので、そういうモノを飲むことに喜びを見出す層と、幅広く楽しむ層と、あるいはそうした層へのビジネスなど、様々な動きが起こるとも思います。プレミアは今の流れだとついてしまうかもしれませんね。。。
ただ、シングルモルトについては100%国産であることに違いはありませんが、影響があるとすればブレンデッドです。一部銘柄にあっては、国産100%というブランドを維持するべく輸入原酒を排除して作らざるを得なくなり、プレミア以外のところで値上がり、あるいは出荷量大幅減という話が起こる可能性もありうると思っています。
法律でジャパニーズウィスキーを定義するという事は無さそうな気がします。
これは法律の目的がジャパニーズウィスキーのブランドを守るというものではなく、
酒税法上のウィスキーを定義するものであるからだと思っています。
日本酒ですら法律ではなく「清酒の製法品質表示基準」という国税庁のガイドラインで定義されているのみですし・・・
地域や国単位でブランドを守る必要があった欧米とその必要が無かった日本との差なのかもしれません。ある意味平和だったなと。
カシャッサですら法制化されている現状ですから、ガイドラインくらいは作って欲しいと思いますが、
これまで、ウィスキーの定義をさんざん骨抜きにしてきた某企業がどう出るのか楽しみなところではあります。
おっしゃるとおりで、自分としても本音を言えば、大項目とも言える酒税法上において、ジャパニーズがどうとかスコッチがどうとかまで定義することは現実的には無いと思います。法律は早そうそう変更されないもので、いつ追加されるかもわからない産地の話などはまず組み込まれません。
しいてあるなら、国産原酒は税率○%、海外産は税率○%という税金の区分があるかくらいですが、これも差別化すると不利なほうから圧がかかりますので、変ることは難しいとも感じています。
現時点ではクリティカルな議論をする場ではなく、可能性が少しでも残るところは広げていく時期だと思っていますので、その点も含めて曖昧に書かせてもらっている次第です。
ただ実際としては、定義は酒税法そのものというより良くてガイドラインか、あるいは作り方よりも表記のほうにフォーカスするのかなと思います。
何れにせよ、何をどう変えるのか、アプローチは法律だけでは無いため、慎重に議論していく必要があると思っています。