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ESSENCE OF SUNTORY
CHITA GRAIN WHISKY
Wine cask finish
Aged 16 years
Distilled 2001
Bottled 2018
750ml 49%

グラス:サントリーテイスティング
時期:開封直後
場所:BAR飲み
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:蜜のような濃厚な甘み、メープルシロップや木苺のジャム、ほのかに薬っぽさ。濃厚だが、奥には穀物の甘みと軽やかさも感じられる。

味:人工ベリーシロップのような粘性のある質感、レーズン、少し薬草系のニュアンスを伴う甘みの強い濃厚な口当たり。序盤は粘性からベタつくような感じもするが、徐々にウッディなタンニンが口内の水分を奪う。
余韻は強くドライ、濃い紅茶のようなタンニン、甘みが収斂しウッディーでビターなフィニッシュが長く続く。

シェリー樽で長期熟成したグレーンのような甘く濃厚な香味が主体的だが、ほのかに薬っぽさ、粘性、強めのウッディーさなどワイン樽熟成のウイスキーに出やすい要素も感じられる。
加水すると一気にボディが軽くなり、口当たりも崩れ気味に感じられる一方で、タンニンはそのまま残る。ストレートで。

エッセンスオブサントリーシリーズ、3本目。今作最後の1本は、知多蒸留所のミディアムタイプのグレーン原酒を12年間ホワイトオークのリフィルホグスヘッド樽で熟成させた後、赤ワイン樽で4年間フィニッシュした濃厚な味わいの1本です。
ラベルに書かれた「夢」という文字は、ナイトキャップともとれるような甘く濃厚な味わいからか、あるいはサントリーのウイスキーづくりの真髄の一つと言える、知多蒸留所でのグレーン原酒の作り分けが実現する夢のような味わい。。。というところでしょうか。

ご存知の方も多いと思いますので、概要だけ触れさせて頂きますが、知多蒸留所では、グレーン原酒の"作り分け"が行なわれています。
この取り組みが始まったのは1994年からで、本格的に製品に活用され始めたのは2012年ごろから順次という話。連続式蒸留機の蒸留塔のタイプ(数)をコントロールすることで、ライトタイプ(クリーンタイプ)、ミディアムタイプ、ヘビータイプの原酒を作り、さらの樽もシェリー樽やワイン樽、バーボン樽など、使い古しの樽が使われることが多いグレーンウイスキーをモルトウイスキーと同様に熟成させる事で、味わいの多様性を生み出す事に成功しています。
今回のワイン樽フィニッシュはその代表的な原酒とも言え、シングルグレーンウイスキー知多を始め、響などの上位グレードのブレンデッドウイスキーを作る上で、味わいの奥行きや幅を持たせるために使われているようです。

さて、今回ベースに使われているのは、ラベルに書かれているように、ミディアムタイプのもの。そこに濃厚な樽感が加わっているわけですが、いかに樽が強くても味わいはやはりグレーンです。
ただ、フィニッシュであることで2つの樽感が混じるためか、多少複雑さが感じられます。
以前イチローズモルトから川崎蒸留所のシェリー樽熟成のシングルカスクグレーンウイスキーがリリースされたことがありましたが、あのタイプにちょっと似ているかなという印象も持ちました。

もちろん使われている樽の中で、香味の構成に大きく影響しているのは、酒精強化のそれではなく、赤ワインの空き樽です。
昨年、同社OBにセッティング頂いた山崎蒸留所のちょっと特別な見学会に参加した際伺った話では、赤ワイン樽は原酒への影響が良くも悪くも強く扱いが難しい。樽そのものの選定はサントリーが所有するシャトーラグランジュにもスタッフを派遣するなどし、かなり注意して行なっているということでした。

その結果でしょうか、近年サントリーのリリースには、ワイン系の原酒を使っているものが増えていますが、苺などのベリー系の香味が見られる好ましい味わいのものも増えていると感じます。また、スコッチで赤ワイン系は、たまにヤッチャッタ感のあるリリースがありますが、サントリーはある一定水準を満たしている感じ。
勿論単一でのリリースは難しいのでしょうけれど、別な原酒のフィニッシュや、ブレンドにおける構成原酒の一つとしては選択肢になりえる。
そう言えば新しくリリースされる、響ブレンダーズチョイスにも、ワイン樽原酒が使われるようですね。香味の傾向から、近年価格が高騰しているシェリー樽に変わる原酒にも位置づけられているのだと思います。

※残り2種類のエッセンスオブサントリーのテイスティングノートはこちら