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SUNTORY
YAMAZAKI
Single Malt Whisky
Limited Edition 2017  
No Aged
700ml 43%

グラス:サントリーテイスティング
場所:BAR飲み
時期:開封後1〜2ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(5→6)

香り:華やかでドライ、ツンとしたウッディネス。リンゴのカラメル煮、オレンジチョコ、香木を思わせるアロマ。時間経過で蜜っぽい甘さも感じられる。

味:ウッディでやや刺激のある口当たり。ドライオレンジピールから杏子のジャム、微かなハーブ、濃く入れた紅茶のタンニン。ボディが軽くドライな質感が目立つものの、徐々に粘性も感じられる。
余韻はドライでスパイシー、ほのかな焦げ感。華やかな樽香が染み込むように残るビターなフィニッシュ。

ボディは軽く、香りも浮ついたようで重厚な感じではないが、華やかなウッディさがあるボトル。サントリーらしさ、山崎らしさに通じる特徴的な樽香。ドライ気味でビターな味わいは、加水するとバランス良くなり蜜系の甘味が広がる。少量加水、あるいはロックも楽しめそう。


サントリーが毎年ギフト向けにリリースしている山崎の限定品。メーカーのテイスティングコメントは毎年同じですが、ブレンドの方向性という扱いのようで、年度毎に違う香味、仕上がりを楽しめます。

そのコンセプトは、シェリーやポート樽などによる20年以上の長期熟成原酒に、パンチョンやバーボン樽などの若い原酒をブレンドして仕上げるノンエイジ仕様。熟成で失われがちな香味のパワーを若い原酒で補った、両者のいいとこ取りということなのですが。。。この手のコンセプトは他社のリリースにもしばしば見られ、実態がかけ離れているケースも少なくなく。つまり、混ぜても香味や熟成感は完全に平均化されないので、下手すると若い原酒に食われていたり、嫌な部分が目立ってしまう場合もあります。

ブレンドには相反する要素が必ずあり、そこの間を埋めていかないと、一つの要素が孤立して目立ってしまうのです。(逆にギッチリ埋め過ぎても、それはそれで個性のぼやけた味になるのでバランスが難しいわけですが。)
この山崎リミテッドエディション2017はどうかというと、主たる香味の間を繋ぐ濃厚さのある原酒が少ないのか、長期熟成による華やかでウッディな樽感はしっかり感じられる一方、口当たりは妙にスパイシーでボディが軽い。同シリーズでは、特に2015からこうした傾向が顕著であり、今年はさらに突き詰めてきた印象があります。

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(先日久々に見学した山崎蒸留所。ちょうど蒸留器のメンテナンス中で、蒸留中のにおいを感じることは出来なかったが、これはこれで貴重なシーンを見学できた。)

華やかな樽香が感じやすい反面、全体的にはアンバランスとも言えるわけですが、加水すると水が架け橋となって間が埋まり、マイルドでフルーティーさを感じやすくなるポジティブな変化がありました。 
メーカーサイトには「まずストレートで飲んで欲しい」と書かれており、熟成した山崎らしい華やかな樽香をストレート感じた後は、ロックなど一般的なウイスキーの飲み方で肩肘張らずに楽しんでいけるのが、作り手のイメージなのかもしれません。

なお、テイスティングに記載したように、今回のボトルには香木に通じるウッディさがあります。
これはスパニッシュオークやアメリカンホワイトオークに由来する樽香、ブレンドの妙からくるものと思いますが、そうしたニュアンス漂う華やかでボディの軽い味わいは、サントリーがウリとする近年のミズナラカスクにも通じる方向性。個人的には"擬似ミズナラ"としても位置付けられる仕上がりで、意外な共通項にもブレンダーの技を感じました。

近年18年の出来がちょっとアレな中、そして12年が絶滅危惧種な中。この山崎リミテッドは代替品として案外良い仕事をするんじゃないかとも思います。