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SPRINGBANK
CADENHEAD'S
Aged 31 years
Distilled 1965
Bottled 1996
Sherry wood Matured
700ml 50.5%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@個人所有ボトル
時期:開封後1ヶ月未満
暫定評価:★★★★★★★★★(9)

香り:華やかでフレッシュなベリー香、葡萄、ほのかに黒土、ドライでパワフルな香り立ち。微かにニッキのようなスパイス香もある。最初は角の立った硬さがフレッシュさとして感じられるが、時間経過で艶やかで奥深い甘みへと変化する。

味:少し硬さを感じるが、コクがあって甘酸っぱくパワフルな広がり。ベリージャム、枝付きレーズン、ブラウンシュガーをまぶしたお菓子、レザーのアクセント。ボディは厚みがあり、しっかりと広がる。
余韻はドライでウッディ、華やかなベリー系のシェリー感をほろ苦いピートとウッディネスが引き締め長く続く。素晴らしい。

開封からそこまで時間が経っていないためやや硬さはあるものの、果実味豊富なシェリー感を厚みとコクのある酒質がしっかりと樽感を受け止めている。序盤はフレッシュ、徐々にコクのあるジャム感。うっとりするような陶酔感。スプリングバンクで数あるリリースの中でも名作と呼べる1本。 


素晴らしいシェリーオークで熟成された原酒は、銘柄問わずある程度のレベルに到達することは間違いはありません。しかしさらにそれ以上のレベルに行くとなると、酒質そのものの個性、ベースの良さ、樽との相性がモノを言います。
これらが合わさって伝説的な1本を生み出した蒸留所が、「偉大な蒸留所」として評価されるようになるわけですが、ことスプリングバンクに関してその評価に異論の余地はないと思います。

もっとも、良いものが常に評価されるとは限らず、スプリングバンクにも冬の時代はありました。時期によっては酒質の弱い迷走気味のボトルが見られることもあります。
しかし冬の時代があったからこそ様々なボトラーズ等に樽売りが行われ、長期熟成原酒もストックされ、こうして素晴らしいリリースの数々が生み出されたというわけですから、長い目で見れば冬の時代は必要なものなのかもしれません。
まあその期間製造側はたまったものじゃないワケですが(汗)

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今回のテイスティングアイテムは、1990年代のケイデンヘッド、グリーントールボトルのオーセンティックコレクションシリーズから。ケイデンヘッドと言えば1980年代以前のブラックダンピーボトル時代の評価が高く、その後継であるグリーントール時代は樽感の淡いリフィル系のリリースが多い印象。
そのため美味しさよりもカスクストレングスゆえのキャラクターの違いや、酒質ベースの味わいで楽しむ、テイスティングの面白さに通じるところがあるワケですが、時折素晴らしいカスクで 突き抜けたリリースに当たるため侮れません。

ケイデンヘッドは、1972年にJ&Aミッチェル社の傘下に入ったボトラーズブランドで、このJ&Aミッチェル社はスプリングバンクを所有していたことから、以来同門の関係にあるのは周知の話。現地のケイデンヘッドショップではスプリングバンク系列の限定品やDuty paid sample などのカスクサンプルが販売されるなど、強い結びが感じられます。

今回のリリースもまた数ある1960年代蒸留のスプリングバンク・ボトラーズリリースにあって、オフィシャルとは異なる突き抜けたベリー系の香味とバンクらしいコクのある酒質との一体感が素晴らしく、経年を経たことでさらに完成度は増しているようです。

流石、系列企業は良い樽ストックしてるなと・・・まあ、なんとかなるさ方針の企業柄なので、当時そこまで考えてリリースされていたかはわかりませんが(笑)
近年はローカルバーレイのリリースなど、スプリングバンク側はかつての姿を取り戻そうとする"狙った"仕込みを続けているようですし、シェリー樽のノウハウ蓄積と合わせて今後素晴らしいリリースが増えていくことも期待したいです。