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ICHIRO'S MALT
"THE CAME"
Distilled at CHICHIBU
Distilled 2011
Bottled 2017
Cask type Madera hogshead #1370
700ml 61.3%

グラス:リーデルヴィノテクスピリッツ
量:ハーフショット
場所:BAR飲み@ナデューラ
時期:開封後1週間程度
暫定評価:★★★★★★(6)(!)

香り:濃厚で露骨なベリー感漂う香り立ち。黒蜜、柘榴、ドライクランベリー。湿ったウッディネス、微かに薬草リキュールのような甘みとハーブ香。

味:粘性があり濃厚な当たり。レーズン、イチジクの甘露煮、香りで感じたよりも薬草感が強く広がる。飲み口でアルコール感は度数ほど強くないが、余韻にかけて口内を刺激する。
余韻はパワフルでドライ、ポートのような甘みとウッディなほろ苦さが長く続く。

「露骨」という表現がしっくりくるような果実香。個人的にはネガティブな意味ではないが、薬草のようなニュアンスと合わせて好みを分けるかもしれない。
特筆すべきは、それに長期熟成シェリー樽由来のベリー系の香味に共通する要素が備わっている点。荒削りな部分もあり完璧ではないが、カスク選定に関わった方々の狙いが伝わってくるようでもある。加水せず、ストレートで楽しみたい。


信濃屋がプライベートボトルリリース10周年を記念して、昨年末から展開しているアニバーサリーラインナップの第5弾。今回は同社のオリジナルラインナップGAMEから、マディラワインカスクで熟成させた秩父。
兼ねてから信濃屋はGAMEシリーズとしてイチローズモルト(羽生)のリリースを行ってきたところ。今回のボトルはその繋がりを活かした、スペシャルな1樽をチョイスしてきたと思います。

というのも、このボトルの最大のポイントはテイスティングでも触れた、シェリー樽熟成ウイスキーのごく一部に備わる果実香。2010年ごろからウイスキーを飲まれていた方は、グレンドロナックやグレンファークラスなどで熟して艶がかったベリーのような香味を「ランシオ」として話題になったのは記憶されているかと思いますが、今回のボトルはそれに通じるニュアンスが備わっているのです。

勿論、短熟ゆえに随所に荒さはあるものの、もし自分がカスク選定をして秩父でこのサンプルに当たったなら、声をあげて驚いていたでしょう。
熟成に使われた樽でマディラワインといえば、先日グレンモーレンジから同カスクフィニッシュのバカルタがリリースされましたが、その香味と今回のボトルは別物です。
マディラワインカスクは最後に白葡萄か黒葡萄か、どちらのワインを入れたかで香味が変わるとのこと。これは黒の方だったのか、ワイン側の熟成期間違いか。。。実に興味深い要素です。


自分の好みを言えば、秩父のバーボン樽など短熟のボトルの多くには、口当たりはパッと華やかなのですが、余韻に若さゆえのえぐみ、未熟感に通じる感覚があり、飲み続けるうちにそれらが蓄積していくのが苦手な要素だったりします。
作り手側は創業時から様々な工夫をされていて、当時からだいぶ作り方も変わったそうですが、10年未満はまだ短熟、熟成しきれてない要素はどうしても残るものです。

他方、全てのボトルがそうではなく、ピーテッド2016、免税向けIPA、WWAでアワードを受賞した秩父ウイスキー祭り2017などは、同様の要素があまり感じられず。今回のマディラカスクもまた濃厚な飲み口から、ともすれば重く飲み進めづらい部分もあるところ、酒質と高い度数が良い方向に作用し、余韻でもバランスが取れている印象を受けました。
正直、驚かされた1本です。香り的には★7でも良かったかな。。。と言うくらいの衝撃。今後の秩父のリリースが楽しみになりました。


余談:本ボトルをテイスティングした池袋のナデューラさんは、本日、10月4日の営業で3周年を迎えます。
当ブログを始めて少しした頃、開店して1周年を迎えたばかりの同店に立ち寄ってからもう2年ですか。月並みですが、光陰矢のごとしですね。
時間と共に全ての姿が変わっていく中で、良いBARが変わらずそこにあるのは自分が帰る場所があるようでほっとします。
これからもウイスキー愛好家の学び舎として、家に帰る前の止まり木として、細く長くお店を続けていってもらえればと思います。 

【BAR訪問記】BAR Nadurra