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アランカスクサンプル
ISLE OF ARRAN 
Distilled 2011/7/15
Cask type 1st Fill Sherry Hogshead(250L)
Cask no,11/1327


【Bottled 2016/9/26 Aged 5 years 59.8%】(右)
香り:ドライプルーンやシロップ、キャンディを思わせる濃厚でべたつきのある甘いアロマ。香り立ちは甘さがメインだが、スワリングしていると刺激やウッディネスも感じられる。

味:甘く濃厚な口当たり、フルーツシロップのような粘性のある甘み、徐々にスパイシーな刺激。
余韻はウッディでドライ、濃くいれすぎた紅茶のタンニン、ピリピリとした刺激が盛り上がるように広がってくる。

一言メモ:甘口なシェリー感主体でわかりやすい味わい。奥行きはあまりなく、加水等の変化は薄くなっていくイメージ。

【Bottled 2017/8/30 Aged 6 years 59.8%】(左)
香り:濃厚な香り立ち。ドライプルーンの甘み、焼き芋、少し焦げたようなウッディネス、ツンとした強い刺激。時間経過でスパイス、オークのバニラやキャラメリゼを思わせるアロマも感じる。

味:濃厚な口当たりで擬似シェリーのとろりとした甘み、同時にウッディな渋みとスパイシーさ、舌の上にドライで鋭い刺激。濃厚な中にフレッシュさ、時間経過で甘酸っぱい果実味も広がってくる。
余韻は焼き芋のような焦げた甘みから苦味主体。ウッディなタンニン、ドライで少し粉っぽさを伴い長く続く。

一言メモ:樽感はだいぶ強くドライだが、ただ濃いだけでなく多彩さがあり、時間や加水での変化は見るところがある。


本ブログに素晴らしい写真の数々を提供いただいているT.Ishiharaさんから、アラン蒸留所の個人所有カスクのサンプルをいただきました。
上記写真で右側は5年熟成、左側は今年サンプリングしたばかりの6年熟成。新婚旅行の際に購入した樽なのだとか。
樽買いって浪漫だよなあとか、新婚旅行で樽買いってよく奥さん許したなとか、感じるところは色々ありますが。。。それはさておき(笑)。

このサンプルは、現状把握とボトリング時期を見極めるために取り寄せるものですが、「同じ樽の原酒を1年違いで飲むことなんてなかなか無いですよね、感想も聞かせてください」とIshiharaさん。
バーボン樽ならイチローズモルトのMDCや、自宅の5リットル樽等で近しい経験はあるものの、今回は個人で所有しているケースの少ないシェリー樽ですから、これはめちゃくちゃ貴重な経験です。 
いつも本当にありがとうございます!

(両者仕事の都合で時間が合わず、ワンチャンスでサンプルの受取場所となった都内某所の公園、その場で意見交換。。。(笑))

シェリー樽の仕様は1st fill シェリーカスクのホグスヘッド。シェリーのタイプはオロロソのシーズニングで、バットではなく250リットルと小ぶりな分、樽感がつきやすい仕様であると言えます。
実際、酒質の慣れ具合はどちらも年数相応で、まだまだ荒いところはありますが、樽感は5年もので十二分に「シェリー樽熟成」を名乗れるレベル。
なるほど、このまま単純に濃厚になっていくのか・・・と思いきや、少なくともこれ以上熟成を続けるなら加水を前提とするような、大きな変化が5年と6年を隔てる1年間の間に起こっていました。

というのも、両サンプルは味もさることながら、香りからしてまるで別物な仕上がりなのです。
アランは元々プレーンであまり癖のない酒質であるため、基本的には樽感主体の香味になりがちです。5年熟成がとろんとした甘みが主体的な構成なのに対して、6年熟成はそうした甘みのほかにスパイシーな刺激に苦味、渋み、焦げたような樽香が強く出てきており、熟成が次のステージに移っていることが感じ取れます。
すなわち、「樽材に染みこんだシェリー分が主体的に溶け出す」のが第一段階とすれば、第二段階はそのエキスがある程度出切った後、「樽そのものが溶けて混ざり合う比率が濃くなってきた」という整理。それはこの1年間がターニングポイントだったと言えるほどの違いで、ここまで変わるとは・・・ちょっと予想できないですね。

結果論ですが、5年はわかりやすさという点で、カスクストレングスとしてひとつの詰め時だったのかもしれません。
6年熟成では甘み以外の要素とドライな舌当たりが増して濃縮感があり、時にネガティヴにも感じられますが、時間経過でそれらの要素が混じり合うことで、多彩なキャラクターが感じられるようになりつつあります。
そのため、ぱっと飲んでとっつきやすいのは5年ですが、奥行きの違いというか、1ショット以上飲みきることを前提として様々な変化を許容する伸びしろは、6年の方が多くあるように感じました。


今後について予想すると、まず余韻のドライさ、粉っぽさは樽が溶けた結果出ているキャラクターなので、長く熟成しても収まらず、今と同等、あるいはそれ以上の強さとなると考えられます。
一方でシェリー感については甘酸っぱさやスパイスのフレーバー、バニラなど、樽が溶け出た結果の変化も蓄積するため、楽しみな部分でもあります。

アランのプライベートカスクサービスは最長10年間の保管と加水の有無が決められるとのことで、8〜10年の熟成で酒質の若々しさ、アタックの強さがある程度取れたところを見計らい、樽感の強さを加水で調整して全体的な完成度を高める方向を狙っても面白いかもしれません。
実際6年ものは加水するといい具合に伸びてくれたので、7年、8年とサンプルが続くなら、より精緻に加水して最適な度数を調べるくらいのことをやってみたいですね。

熟成期間の中で起こりうる大きな変化を実際に味わい、樽との向き合い方や経年による変化を推測するための重要な経験を積むことが出来た、素晴らしいサンプルでした。
感謝と共に、将来のボトリングも楽しみにしております!