福島県南酒販 963 ブレンデッドウイスキー 黒ラベル 46%
963MALT & GRAIN
FINE BLENDED WHISKY
SASANOKAWA SHUZO
700ml 46%
グラス: 木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後3ヶ月程度
評価:★★★★★(4-5)
香り:透明感のある香り立ち。乳酸系の酸味、塩素、シトラスの爽やかさと焦げたようなスモーキーさ。徐々にローストナッツを思わせる香ばしさもある。
味:ドライな口当たりとあわせてとろりとしたオイリーな甘みのある粘性、ピリピリとしたスパイスの刺激、酸味を伴う麦芽風味にスモーキーフレーバーがしっかりと広がる。
余韻はドライでピーティーでスモーキー、根菜を思わせる苦味、焦げたようなピートの香味がしっかりと長く続く。
ピーティーでモルティーなブレンデッドウイスキー。原酒の若さ故やや単調な味わいではあるが、その分ピートレフレーバーという個性が際立っている。ドライな飲み口に反してボディもそこそこあり、ストレート以外にロック、そしてハイボール、あるいは最近流行りのシビハイなど用途は多い。

今年3月頃、笹の川酒造と福島県南酒造がリリースしたブレンデッドウイスキーの新商品。開封直後から味わい的に夏向きだなと、ブログ掲載時期をずらしたところ、気が付いたら8月に入ってしまっていました。
いやぁ、月日が経つのは早い。。。 最近特に早い。。。(笑)
この963シリーズは輸入原酒も含めて幅広く原酒を使って作る、福島県南酒販のプライベートブランドの一つです。
昨年は963の8年や21年が50%オーバーの仕様でリリースされ、特に21年が某ウイスキー雑誌で高評価されるなど注目も集めました。
今回テイスティングしている963の第二弾となるNA(黒ラベル、赤ラベル)シリーズは、46%加水で価格を抑えるために比較的若い原酒を使用。赤はハイランドタイプ、黒はアイラ系のスモーキーな構成、どこかで聞いたような住み分けですが、程価格帯の無個性なウイスキーから脱却し、モルトの尖った個性を付与する方向性でブレンドされています。
黒ラベルについては若いは若いのですが、嫌味に感じるほどの未熟香はなく、クリアでドライ、余計な要素が少ない分ピートフレーバーが際立ってブレンドの個性を楽しめる味わい。また、モルト比率も多めなのでしょう、結構しっかりモルティーで、例えば若いカリラやアードモアに共通する香味も感じられます。

(笹の川酒造・安積蒸留所でカリラというと思い出すのが貯蔵庫に転がっていたカリラの古樽。中身は既にカリラではないウイスキーカスクだが、こうした樽があるのは同社が長くウイスキーづくりに関わってきた証でもある。)
ウイスキーづくりはサントリーやディアジオのように多種多様な原酒を持てる場合を除き、特にクラフトの場合は作れる商品の方向性に限りがあり、しかも大体どの会社も同じところに収束する印象があります。
すると1本あたりのコストは大手の方が安く済むので、どうしてもクラフト系のブランドは割高になってしまいます。これはどの業界も同じような状況ですね。
ではクラフトは何を武器に大手と戦うか、一つは同じ市場で戦わない、大手が出さないような味、個性的な商品を作っていくのが一案。
そしてもう一つは、地域に根ざした活動で、ご当地アイドル的に一定の市場を確保する方法。
この963の黒、赤は個性という点で面白いウイスキーを作ってきたと思います。バランスよりも尖った味わい、しかしどちらのタイプもスコッチ・ジャパニーズ全体で珍しくないので、昨年試作品を見せてもらった日本酒酵母のウイスキーや現地のワインやリキュールなど何か使えないかと感じるところ。
後は963の(福島県郡山市を中心とした郵便番号から命名)このブランドがいかに現地でファンを獲得するか。現地の百貨店などではテイスティングイベントも行われているようですし、昨年募集されたカスク共同オーナーも素晴らしい企画でした。手間がかかるだけでなくトライ&エラーも続くと思いますが、今後も引き続き面白いウイスキーを作っていって欲しいです。
コメント
コメント一覧 (2)
963の赤、黒なんですが、ハイボールとか地元の居酒屋さんのメニューにも在ったので一昨日の晩に最初の1杯で頂きました。 んで、設定の値段がやはり高いかなと。 そりゃ富士山麓とかジムビームのハイボール380円商品と同等では無いのは理解してますが、 あと夏場はビール飲んで これからの季節は日本酒の需要が増えるのが東北の田舎町。 一昨日もその後は大七の燗酒に移行。 会社のポリシーは良く理解出来るし 皆も協力したいが、値段設定諸々を考えても難しい点があると思います。
あと、全国何処でもなのかは?何ですが、 当市内の業務スーパーのウヰスキーコーナーでは山桜1980円の脇に ジョニ赤980円 ホワイトホース948円 ハディントンハウス880円のプライスで365日陳列している状態が現実です。
悲しい話で申し訳ございませんm(__)m
難しい話だと思うのですが、地ワイン的なものは特に難しいですね。
ちゃんとした日本のワイナリーのものはそこそこ美味しく、将来も楽しみなのですが、1本1000円しないようなブツは何を使ってるかもわからないし、仰るように酸味がくどいかボディが軽いか・・・なので。新世界のワインと比較しても大きく落ちてしまいます。
ウイスキーにしても、ワインにしても、日本でちゃんとしたものを作ろうとすると、やはり規模や人件費の関係から、どうしてもそれなりにコストがかかってしまいます。輸入原酒を使っても、余計にコストがかかっていることに変わりはないですし。
ローカルアイドルがメジャーデビューしていくように、地元愛の中でちょっとずつブランドを育てていくしかないと思うのですが、我々の財布も無限ではないので・・・最初に戻りますが、なかなか難しい話ですよね(笑)