ベンリアック 50年 1966-2016 GMケルティックラベル 54.3%
BENRIACHGORDON & MACPHAIL
Aged 50 Years
Distilled 1966
Bottled 2016
Cask Type 1st Fill American Hogshead #606
54.3% 700ml
グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:持ち寄り会@マッスルKさん
時期:開封後1ヶ月未満
暫定評価:★★★★★★★★(8)(!)
香り:ツンとした樽香とシナモンなどのスパイス、ハーブ。徐々に甘栗、ドライアプリコット、熟したパイナップル。最初はドライで香りが立たないが、ほんの数分でフルーティーさが充実してくる。
味:最初はドライな口当たりだが、徐々に甘みと粘性がひろがる。紅茶を思わせる心地よいタンニン、ピリピリとしたスパイシーさから舌の上で発散するフルーティーさ、熟した桃、アプリコットジャム、トロピカルフルーツ。ボディはしっかりして、生きている。
余韻はドライ、華やかなオークフレーバーが非常に長く残る。
最初はドライで樽のニュアンスが強いが、5分10分もすれば急速に香味が開き、甘み、フルーティーさが充実してくる。
今後開封後変化でさらに開く印象がある一方、加水するとボディが崩れ、一気に香味とも弱ってしまう。ストレートでじっくりと、時間をかけて半世紀に渡る時の流れを楽しみたい。
昨年リリースされたLMDWの60周年記念シリーズ。もっとも突き抜けたスペックであり、目玉とも言える1本が、このベンリアック50年GMケルティックラベルです。
ケルティックラベルは数年前に乱発されて以降、リリースされるのは久しぶりという印象がありますが、流石メゾン、そして流石GM。長熟原酒の枯渇が叫ばれる現代において、「奇跡」と言っても過言では無い、とんでもない樽を持っていました。
他の銘柄を含めると50年オーバーのウイスキーはこれが初めてというわけではありませんが、総じて度数が低かったり、過熟気味のウッディーさが強かったりで「ピークを過ぎてるけど飲めるレベル」という仕上がりが多い印象。
それがこのベンリアック1966は、50年の時を越えてなお、枯れず、くすまず、54%と高度数を維持。酒質部分の香味はだいぶ削られてシャープになっている感じはありますが、樽感は華やかでフルーティー、過熟感のあまりないオークフレーバーが、舌の上で綺麗に発散していくのです。
これは長期熟成原酒にありがちな、40%前半まで度数が落ちてしまった、最初はフルーティーだけど後が続かないものとの大きな違いです。
樽は1st fillのアメリカンホグスヘッド。この時代ではシェリー樽だと思うのですが、明示的にこれがシェリーと言えるかは曖昧なフルーティーさ。何より1st fillのシェリーホグスヘッドであればもっと濃厚なシェリー感が備わっているところ、そういうニュアンスはありません。
ではバーボンホグスヘッドかというと、シェリーに比べて容量が小さい環境で50年も熟成させたら、もっとドライで渋みも強く出るはず。。。どちらの樽であっても、このベンリアックのフレーバーには繋がらないのです。(エンジェルズシェアをざっくり計算すると、どちらの樽でも一応今回ボトリングしている本数は得られる可能性はあり、足し合わせ等ではないようです。)
何かヒントはないかとメゾンのサイトを見ると、樽仕様が「Remade hogshead 1st fill」となっていました。
ホグスヘッドは基本組み直して作るものですから、リメードである事はおかしい事ではありません。
しかし使い古したアメリカンホワイトオークの樽を再加工して作ったリメードホグスヘッドを起点とし、そこに1度ウイスキーを熟成させた後の1st fillであれば、今回のような熟成感もある程度説明がつきます。
一方、樽は前述の通りであっても、度数に関しては高度数すぎるものを入れた感じでも無いので、純粋に一般的な度数で樽詰めされ、熟成環境が噛み合った結果と言う印象。
何れにせよ半世紀という時間をかけて作られた原酒を飲む事は、味わい以上に特別な想いがあります。まして今回のように、特別にバランスの取れたものは尚更です。
素晴らしいウイスキーをありがとうございました!
コメント
コメント一覧 (2)
後60年代はトロピカルフルーツのフレーバーが多かったのはわかったのですがこのフレーバーはその年代の原酒の酒質から来てるのですかね、それとも樽が良質だったのでしょうか、少なくとも今よりはずっと質が良かったと思いますがw。
熟成のメカニズムはほんとうにざっくり語ると「樽要素の足し算」と「酒質の引き算」なんです。後はここに「熟成環境」の話も加わりますが、これは少し保留で。
樽要素の足し算はイメージできるかと思いますが、熟成中の樽からは、樽材のエキス、樽にしみこんでいたシェリーやバーボン等の香味、そしてアルコールによって溶け出る樽そのもののフレーバーが、どんどん原酒側に足されていく形になります。
一方で、樽は呼吸するわけですが、その呼吸などを通じて、酒質から、アルコールや雑味となる要素がマイナスされていきます。この雑味要素は必ずしも全てマイナスではないので、熟成を重ねれば重ねるほど、酒質部分の味わいは単調になっていきます。
おっしゃられていた「煮詰まりすぎたベリーソース」というのは、樽の要素が足されすぎて、濃くなりすぎた状況のことを表現しているのでしょう。
そしてこれらは、樽がファーストフィルシェリーカスクのように濃い樽なのか、何度も使い古されたプレーンオークなのか、など樽の種類によって変わりますし、酒質の部分も、時代時代で原料由来の複雑さなど違いがありますから、スタートラインが当然異なるわけで、熟成のピークとなる、樽の個性も原酒の個性もちょうど良いところというのは原酒ごとに異なります。
なお、トロピカルフルーツですが、基本的に60年代のそれは状況証拠の積み重ねから原料由来のところが大きく、樽によるニュアンスはアシスト程度だと思っています。しかしこれの正解は誰もわかっていないのです。(わかってたら、今のウイスキーでもガンガントロピカルフレーバータイプのものを作れますから。)
最近のリリースでもトロピカルという表現は良く使われますが、それは樽由来のもの、オークフレーバーで、60年代のものとは似て非なるものでもあります。