I.W.ハーパー 12年 43%
- カテゴリ:
- ★5
- アメリカンウイスキー(バーボンなど)
I.W.HARPER
Aged 12 years
Kentucky Straight Bourbon Whisky
750ml 43%
グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封1年程度
評価:★★★★★★(5-6)
香り:華やかで甘い香り立ち。ケーキシロップのかかったホットケーキ、ビスケット、樽と穀物由来の甘いアロマに微かにドライオレンジ、若干の酵母っぽいニュアンスもある。
味:マイルドでコクのある口当たり。メープルシロップやカステラを思わせるメローな甘み、軽やかな穀物風味。中間は軽くスパイシーで、すぐに焦げた木材のような苦味が広がっていく。
余韻はウッディでビター、ジンジンと染み込むような刺激を伴い長く続く。
熟成期間ゆえか原料由来の軽さゆえか苦味が目立つが、甘くコクのある口当たりと余韻にかけてのその苦味が、バーボンにおける12年という熟成期間を感じさせる。
ロックやハイボールではさらに飲み口が軽くなり、抵抗なく飲めてしまう。香味のバランスを考えるとオススメはロックで。
メーカーPRでは世界で初めて12年表記のスタンダードとして販売されたという、IWハーパー12年。名前の由来などは公式サイトかグーグル先生を参照のこと。独特のデザインのデキャンタに高級感が漂う1本です。
発売時期は1961年、確かに当時のラインナップを見渡すと、5年、6年などが一般的で、12年ないしそれ以上のバーボンが数多く出てくるのは1980年代あたりからのように感じます。(これには諸々の事情があるのですが。。。詳細は海老沢氏のコメントから推察ください。)
そのため、「世界初の長期熟成バーボン」などと謳うPRもあったりするようですが、1930年代の禁酒法明けには貯蔵され続けていた原酒がリリースされていたり、当時はスコッチウイスキーでもノンエイジのデラックス表記が主流の時代。一般的なバーボンもまた年数表記の流れはまちまちで、長期熟成バーボンが無かったわけではないようです。
バーボンウイスキーはご存知の通り、ただでさえエキスの出やすいチャー済みの新樽に、寒暖差の激しい環境で熟成されることが多いため、スコッチウイスキーよりも早く熟成が進むとされています。
当時J&Bなどのライトなウイスキーが好まれた時代にあって、今より風味が強く、樽感も濃かったオールドバーボンで長期熟成を出そうというのは、事情はさておき中々チャレンジングな事だったように感じます。
ただ、IWハーパーはその点、材料比率でコーンを86%前後と、バーボンの定義では"51%以上"であるところ、コーンウイスキーの定義に該当する"80%以上"まで使用することで、軽やかで甘みのある酒質を作り上げており、抵抗なく飲み進める事が出来たのが他社よりも早く長期熟成バーボンの市場を獲得出来た要素の一つではないかと推察します。
発売当初の12年は飲んだ事がありませんが、1970年代から1980年代に流通したIWハーパー12年は飲んだ事があり。最近のボトルの方が苦味は目立ちますが、そのスムーズでマイルド、しっかりとメローな方向性は今も昔も変わらない。
むしろ、近年のバーボンのライト化が著しい中で、下手にウッディなえぐみや酵母っぽいニュアンスの強いモノを飲むなら、この辺でマッタリ飲むのも良さそうです。
5月6日追記:バーボンにおけるコーンの比率に関して、連邦アルコール法を確認、記事中に誤りがありましたので訂正いたしました。
コメント頂きましたかもさん、ありがとうございました!
誤:コーンの比率が51%以上、80%未満。
正:コーンの比率が51%以上。(上限は特にない。)
※コーン比率が80%以上ウイスキーを分類するのは、どのタイプの樽を使うかどうかで分類されている模様。IWハーパーに使われているのはチャー済みの新樽なので、バーボンとなる。
コメント
コメント一覧 (6)
朝鮮戦争(1950年)にさいし第二次世界大戦のようにウイスキー不足が起きると読んだシェンリー社のローゼンスティールはフル稼働で蒸留しました。
しかし戦争が予想よりずっと小規模に終わり、膨大なウイスキー余剰を抱えることに。
・・連邦議会の定めた保税期間により、その在庫は8年たつと課税対象となる・・
・・差し迫った課税危機をかわすには、議会に働きかけて保税期間を延長してもらえばいいと考えたのだ・・
・・バーボン協会と名乗る別のロビイスト団体を立ち上げたのだ・・
・・1958年、ローゼンスティールとバーボン協会のロビー活動がめでたく実り、保税期間を8年から20年に延長する「フォートランド法」が議会を通過した・・
・・フォートランド法が成立すると、ローゼンスティールは同業者たちが恐れていたことを実行に移した。1961年、シェンリーは2100万ドルを投じて自社のウイスキーの年数の利点を世に広めることを宣言した。彼はすべてを意図的な出来事のように見せかけ、その熟成計画は「何年もかけて準備してきたことで、10億ドルの投資をしてさまざまな熟成年数のウイスキーの在庫をそろえた」と報道陣に説明した・・
ほんとは市場の読み違いがすべてのはじまりなんてことは、いつまでたってもハーパーの広告に書くわけにはいきませんよね。
いつもためになるコメント、ありがとうございます!
いつの時代も、ブームの陰に何か事情があったりするんですよね。
これはいささか大きい話ですが、その結果様々なバーボンに長期熟成の道が拓けたというのは怪我の功名か。
どこまで書くか悩みましたが、むしろこうしてコメントで補足いただけた方が記事としてバランスが良かったなと思っています。
今後ともよろしくお願いします!
よくわからないのが、保税期間が8年の時は以後毎年課税されちゃうってことだったんですかね?
だったら12年熟成での商品化は難しいですよね~
イギリスやフランスの課税はどうなってるんでしょ・・
コーンウイスキーのコーン比率が80%以上とされているため、そこから来た誤りではないかと思われます。
課税額が増えていくってことじゃないでしょうか。
ちょっと調べてみたいと思いますが、毎年だったとしたらとんでもないですね(笑)
そしてスコットランドの課税額ですが、庫出税というのはよく聞く話ですが、そう言えば税率までは把握していませんでした。
話題もいただきましたので、各国の酒税法、調べてみたいと思います。
ご指摘いただきありがとうございます!
バーボンは51〜80%、80%以上はコーンだが、IWハーパーはコーンでは使わないチャー済みの新樽を使っているので、例外的にバーボン側に分類されるとして理解していました。
が、上限80%の記述は、確かにバーボン法上にありませんね。ちゃんと調べておくべきでした。
WEBを調べてみると、某馬をシンボルにしたブランドの正規輸入元まで上限80%の記述でバーボンを紹介していたり、何かをきっかけに国内WEBサイトに誤解が広まってしまったようです。
これまでもこうした事例は見られましたが、今回も・・・おかげで良い勉強になりました、感謝です!