松井酒造 マツイモルトウイスキー 倉吉 8年 シェリーカスク 46%

THE KURAYOSHI MALT WHISKY
Aged 8 Years
Sherry Cask
700ml 46%
グラス:サントリーテイスティング
量:ハーフショット
場所:BAR飲み
時期:開封後2ヶ月程度
暫定評価:★★★★★(5-6)
香り:近年系のシーズニングシェリー系の甘いアロマ。グリーンレーズン、ケーキシロップを思わせる甘みに、ホットケーキの生地を思わせる麦芽風味。最初は甘み主体のアロマだが、徐々に変化して乾いた木の渋み、ツンとしたエッジを感じる。
味:ピリピリとした口当たり、淡いシーズニングシェリーのプルーン、ブラウンシュガー、ほのかなウッディネスにハイランドモルトを思わせる麦芽風味が中間から広がる。飲み込んだ後はオレンジママレード、クラッカー、粘性のある甘みと微かに乾いた牧草のニュアンスが余韻として残る。
甘み主体で嫌味も少ない、少々奥行きには欠けるが全体的に飲みやすくまとまっている。
このブログのみならず世間で色々と話題になっている、鳥取の松井酒造の倉吉シリーズ。今回のボトルは今年の8~9月ごろにリリースされた8年モノのシェリーカスクです。
飲み手の中には複雑な想いを持っている方もいらっしゃるようですが、中身の原酒に罪はありません。
結局のところ、倉吉シリーズの問題は売り方、ラベルの表記、この1点に尽きます。
自分は飲んだ上で判断したいと・・・それでも、前回のNAシェリーカスクがメーカーコメントの甘い果実香、チョコレート、至福の1杯という表現から程遠いと感じる内容だっただけに、若干怖さがあって様子見のハーフショットから。
飲んだ日にFBにも投稿している内容ですが、これが思いのほか飲めるのです。
少し薄めですがちゃんと近年のシーズニングシェリー樽熟成の味がするだけでなく、その分近年の樽にありがちなえぐみ、ゴムっぽさなどは感じず、甘さ主体の構成でバランスは悪くないぞと。
ハイランドモルト主体のバルクがベースか、酒質的にはらしい麦芽風味も感じられ、熟成は高温多湿の日本ではなく冷涼なスコットランドを思わせる進み方。飲み口で少しスパイシーな刺激がありますが、それもまた一つアクセントになっていて抵抗なく飲み進めることが出来ました。
評価的には前回の18年と同等、あるいはそこまでちぐはぐさは感じなかったので、ちょい上くらいのイメージ。
もし最初にこの1本がリリースされていたら、もう少し前向きになれたんじゃないかと感じます。

ただ、先も述べたように倉吉シリーズの問題は、中身ではなくラベルの表記です。
前回リリースされたNA、NAシェリー、そして18年から疑問視されていたMade in NIPPONなど各表記は継続されただけでなく、加えてピュアモルト表記が今回のリリースから「KURAYOSHI MALT WHISKY」表記になり、とりあえずモルトウイスキーという事はわかりますが、シングルカスク、シングルモルト、ブレンデッドモルトのどの区分なのか、よくわからなくなってしまいました。
裏ラベルにもその旨は書かれておらず。バッティングはモルトとモルトの掛け合わせを指す為、同じ蒸留所の原酒を掛け合わせることもバッティングになり、シングルカスクの線はなくなりましたが、それ以外は読めるということに・・・。
多分ブレンデッドモルトなんだろうとは感じますが、紛らわしいだけですので、改めて基準整備の必要性を感じます。
別においしいモノが出来れば何の原酒を使っても良いんですけど、こういうところはキッチリしたほうが良いと思うんですけどね。
【10月21日 鳥取方面の地震において被災された皆様へ】
被災された皆様方にお見舞い申し上げます。
多くの被害、建造物の崩壊、断水などが起こっていると伺っておりますし、まだまだ余震も続いているとのこと。現地にお住まいの皆様の苦労は並々ならぬものと存じます。
当方も実家が東日本大震災で被災しただけでなく、親類が犠牲になるなどあり、こうした災害による悲しみと、やるせなさは少なからず理解しているつもりです。
被害が大きかったとされる地域には、この松井酒造合名会社もありますが、伝え聞くところでは「工場関係者は大丈夫」とのことで、一つ安心している次第です。
一刻も早くこの地震が収束し、被災された皆様にとって、いつもの生活が帰ってくることを祈っております。
コメント
コメント一覧 (4)
存在しない蒸溜所の名前を名乗ってウイスキーを売ると言うのはアメリカ(バーボン)の世界では比較的良くありますが(商慣習として認められている)日本では商慣習として受け入れられているとは言い難いんじゃないでしょうか(指摘の通り法整備が進んでいないので「違法」ではない可能性が高いですが)。また、さすがに他国のウイスキーを詰めて「Made in Nippon」はないんじゃないでしょうか
例えばドイツのボトラーズWhisky Dorisが売っている製品のボトルを見てみるとちゃんと「Scotch Whisky」や「Product of Scotland」と書いてありますし、逆に海外で日本のウイスキーを詰めているNumber One Drinks Companyの製品には「Japanese Whisky」と書いてあります。ウイスキー好きとしては色々チョイスが増える事自体は嫌ではないんですがどうもやり方がどうなんだろうなぁ…と言う感じです
コメントありがとうございます。
そうなんです。私も同じ意見です。
別に自分は輸入原酒を使おうが何をしようが、ウイスキーという枠の中であれば許容するつもりではありますが、ここは売り方に難があるんですよね。
もちろんウイスキー製造は慈善事業じゃないので、多くを売りたいし、利益を求めるというのは否定するところじゃありません。
他方で、今回のMatsui Malt Whisky表記を筆頭とした様々な記載、説明文、そもそもの企業姿勢、いろんなところにルール違反ではないけれどマナー違反の数々があり、何も知らない消費者が誤認してもおかしくないような状況を作り出してしまっているのはなぁ・・・と感じます。
ちなみに聞くところによると、アメリカも認められているというわけではなく、一部銘柄で若干問題になっているようです。単純に消費者側に知識というか思いいれが無かっただけなのかもしれません。
「倉吉」は地元で良く見かけておりましたが、
なんとなく胡散臭さを感じ、そもそも倉吉に蒸溜所なんてあったか?という思いから、今まで手に取ることはありませんでした。
今回、くりりんさんの記事をキッカケに、「倉吉」を始めとするジャパニーズウイスキーの販売定義の奥深さに触れる事ができ、大変感謝しております。
確かに、原酒には罪がなく、ウイスキーは味が全てでもあると思います。
しかし、製造者の想いやその過程に思いを馳せる事もまた、ウイスキーを愉しむ醍醐味ではと考える者にとっては
松井酒造の販売方や姿勢には疑問を感じ、それが地元であるが故にまた、ただただ悲しく感じるばかりです。
長文失礼致しました。豊富で内容の濃い記事、これからもウイスキーを美味しくいただく参考にさせて頂きます。
はじめまして!コメントありがとうございます。
頂いたご意見は、まさにそれも消費者として感じる要素の一つだと思います。
私はかなりドライというか、理系的に割り切った考え方をするで味が良ければと想ってしまいますが、ウイスキーは単に味だけではなく、そこに込められた作り手の想い、バックストーリーが、共感とおいしさを有無のも事実です。まして地元であればなおのことですよね。
ただ倉吉の活動は、その賛否だけでなく結果としてウイスキー業界に大きな議論を生んだのも事実であり、それがこの数年後どう生きてくるかを見ていきたいと思っています。
引き続きよろしくお願いします。