グレンオード 26年 1962-1988 水橋(ミズハシ) 56.5%

ORD
Cadenhead
Aged 26 Years
Distilled 1962
Bottled 1988
For MIZUHASHI
750ml 56.5%
グラス:木村硝子古酒 リーデルソムリエ・ブルゴーニュグランクリュ
量:30ml以上
場所:個人宅(Whisky Linkイベント)
時期:開封後3年程度
評価:★★★★★★★★(8)
※リーデルソムリエ・ブルゴーニュグラスの場合★9
香り:酸味のある麦芽香、最初は乾いた木の香りが鼻を突くが、徐々に蜂蜜レモンや煮た林檎、クリーミーな甘みが開いていくる。口当たりはフレッシュでアルコール感に勢いはあるが、同時にこなれた印象もあり、経年を感じる。
味:粘性のあるパワフルな口当たり、麦感、バニラの甘みと林檎ジャム、こなれたアルコール感と乾いた木のエッジ。ボディは厚みがあり、強い旨みがストレートに広がる。
余韻は香りにもある蜂蜜レモンのようなオーク香、そして麦感、最後までリッチで長く続く。
コアなウイスキードリンカーにとっては伝説的な1本、六本木の株式会社水橋が関わったボトリング。
樽の出元はケイデンヘッド、近年ボトラーズのようにオーキーなフレーバー主体ではなく、淡い樽感にオードらしい麦芽風味と柑橘や梅を思わせる酸味を纏った酒質主体の香味が、いかにもという印象です。
同じ1962年蒸留では、ケイデンヘッドのダッシークリストファーカナン(1989年ボトリング)、サマローリのブーケ(1984年ボトリング)を飲んでいますが、水橋のオードが一番ストレートに酒質そのものの旨味を感じられる味わいだなと感じました。
グラスチョイスは写真のような小ぶりなグラスだと平均的、大口径グラスであるリーデルソムリエ・ブルゴーニュグランクリュでは圧倒的な香り立ちで、まさに卒倒です。
こうしたウイスキーを飲んで度々思うことは、樽詰め直後はもっとギスギスした強い味わいで、ボトリング直後に飲んでいたら、また違った評価になったんだろうなということ。ボトリング後約25年、さらには開封後約3年という時間経過によって変化した。このボトルもまた口開けから段階的に飲ませていただいているわけですが、飲み終わりに来てまた違った魅力を纏ったように思います。
ウイスキーは「ボトリング後は熟成しない」という定説から、ワインのように熟成させるものではないという考えが広まっていました。実際ウイスキーの定義で考えれば、ボトリング後は樽材を通じた呼吸がないので"熟成はしない"のでしょう。しかし、不変であるということはありえません。
このオードは狙って瓶熟されたわけではなく、当時の日本がウイスキーブームの下降時期にあったことと、ブームでありながらウイスキーに関する知識が乏しかったこと、さらには景気の良さなど、様々な要素が重なって奇跡的に今現在の日本にあるわけです。
今と昔では原料も製法も違いますから、必ずしもこのように育つとは言い切れませんが、中には「これは」と思うボトルもあります。今の世代には、奇跡を待つのではなく自分たちで作っていく姿勢が求められるのかもしれません。
コメント
コメント一覧 (7)
フランスではダムジャンヌとかボンボンヌとかいい、ブランデーの古酒を保管しますね。
コニャックの蔵で20ℓ~30ℓの壺に30年~60年木樽熟成品を詰めた物が多いようですが、マーテルの蔵に90年超えのがあった記事を見たことがあります。
スコッチの蔵でも同じようにしたら面白いのにと思いますね。
通常スコッチでは樽に詰めたら製品化直前までいじらない(樽同士の集約もしない)ので古酒の保管は(置き場所もとるし蒸発も多いし)大変でしょう。
19世紀蒸留のマッカランを蒸留所が買い戻したが結局フェイクと判明したように、20世紀以前のスコッチはほぼ人か天使に飲み尽くされてしまったでしょう。
また味わいの点でも、樽で25年壺で25年貯蔵してみたりしたらより美味しくなったりするかも。
私はコニャック・ハイン1914年という品を購入したことがありまして。
これは1914年収穫ブドウのオードヴィーを1958年に木樽からダムジャンヌに移して1987年に瓶詰めした、とありました。
開封後の変化を折々チェック
なかには大化けして印象がかなり違ってくるのもありますよね
私は常々グラスの重要性を感じてきた者です
今回グラスによって評価を変えてらっしゃるのを見て
我が意を得たり と
私は容量の大小・Bowl形状の違い等、様々なグラスを試行錯誤し
結果かなりの数のグラスを所有するに到りました
同じ酒でも酒器でかなり印象が変わるので見過ごせない最重要ツールです
あと作法も重要で・・・長くなるので割愛しますが(汗)
リーデル ブルゴーニュ グランクリュ は仰る様に香味立ちは最高ですが、飲み頃の時間帯が短か過ぎますね
注いでから飲み終える迄にも刻々とグラス内で変化するので逐一観察する必要がある訳です
挨拶文が抜けてしまい失礼しました(汗)
はじめまして
最近当ブログに辿り着き、過去記事含め愉しく閲覧させていただいております
とても良いブログですね、感心・敬服いたします
他の酒類に関する情報、ありがとうございます!
タンク等の樽以外での貯蔵については、例えば笹の川酒造が、5〜10年程度熟成のバーボン原酒を10年以上タンク貯蔵してリリースした事例があり、味の美味しさもさることながら、ニューリリースとしてオールドが出た事例として面白いボトルでした。
また樽の詰め替えについては、実は一部の蒸留所ですでに行われており、例えばグレンドロナックでは公式にそれを認めるコメントを出しています。見栄を張っているのかブランドづくりのためか、はたまた税金や法律的な縛りなのか、日本に伝わってくるウイスキー製造現場の情報は「神聖かつストイック」という感じなのですが、実際はアバウトな部分も相当あるようです(笑)。
このタンク貯蔵にしろ、樽の移し替えや原酒の集約などにしても、自分はケースバイケースでやっていくべきと考えています。すなわち、美味しければ良いんです。
後はそれをちゃんと伝えて欲しいのですが、故意かどうかはさておき、どうも謎が多いんですよね〜。
はじめまして!コメントありがとうございます!
経伝頭さんのように相当経験豊富な方から、光栄なお言葉を頂き、非常に嬉しいです。
おっしゃるようにグラスでガラリと印象が変わるウイスキーは少なくないですよね。
通常は2パターンの形状のグラスを使って、良い方のコメントを中心にまとめるようにしています。
リーデルソムリエグランクリュは一瞬でそのウイスキーを開かせてしまうため、狙った通りの変化をしないケースや、一瞬で終わってしまうボトルのもあり、合う合わないははっきり出ると感じています。
自分の場合は、購入する以上に周囲の方々から飲ませていただく機会が多く、今回のボトルもウイスキーでの兄貴分的な方から頂いたものです。
口開け、中間、ラストとそれぞれのシーンで様々な魅力があり、さらにそこに合ったグラスをチョイスしていく、勿論温度もありますね。
まるでワインのような話ですが、ウイスキーだから雑で良いだなんてことはなく、そのボトルの魅力を最大限引き出す工夫がどれだけできるかが、我々飲み手側に求められているスキルなのかもしれません。
今後ともよろしくお願いします!
スコッチでは蒸留の段階から税務署の管理下にあるそうですね。
コニャックではそこまで厳密ではないようで、そのためか熟成年数や年号表示が1962年に禁止されてしまいましたが1989年にまた可能になりました。
現行の規制では年号表示で販売したい在庫は専用の貯蔵庫に置かねばなりません。
貯蔵庫にはBNIC(公立コニャック委員会)のカギをかけ、錠前に蝋封を施します。
樽の栓にも蝋封をして管理を徹底し、中身のチェックにも一々BNICの職員が立ち会います。
カミュの担当者の弁によれば、そのたびBNICに支払う手数料が製品コストの半分にもなることがあるそうで・・
スコッチではそうしたお役所利権的なコスト問題はないんでしょうかね。
今回も一歩踏み込んだコメント、ありがとうございます。
コニャックのビンテージ有無とXO等のあやふやな表記は疑問に思いながら背景を調べていなかったのですが、なるほどそういう経緯があったのですね。
もとより混ぜてリリースされるものですし、かつ熟成の段階から徐々に加水していくのがコニャックですから、原酒そのものを混ぜて一体感を出す実利をとるやり方にシフトするのは自然なことかもしれません。
ウイスキーでも、もっと積極的にそういうやり方があっていいと思うんですけどね。特にジャパニーズは出荷時の度数で税金がかかるだけなんですから。