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Ichiro's Malt 5th Release
THE FINAL VINTAGE OF HANYU
AGED 15 YEARS
Japanese Single Malt Whisky
Bottled 2015  (195/3710)
700ml 46.5%
暫定評価:★★★★★(5-6)

香り:ややドライで華やかなオーク香。ホットケーキシロップの甘さ、白ぶどう、アロエ、微かにミントや草っぽさ。奥から徐々にチャーオークフレーバー。新築の家具、ヒノキを思わせる香りもある。
少量加水するとオークとハーブの爽やかな香りが主体的に。ジャパニーズ的な香味も感じられる。

味:粘性を感じる口当たり、全体的に平坦で盛り上がる印象がない。酸味と湿ったオーク材、地ウイスキーの焼酎的な癖も感じる。梅干し、お菓子のスナック、甘み控えめなシロップ。香ばしさと酸味が混在し、余韻はビターでほのかにウッディー。少量加水するとまろやかで甘みが少し出て来るが、全体的な香味は変わらない。


「イチローズモルト」シリーズの第5弾。このリリースはラベルに天然記念物であるシラコバトがかかれており、シリーズを重ねる毎に1羽ずつ増えていくのが特徴となっています。
原酒は今は無き東亜酒造の羽生蒸留所、今回はその操業最終年にあたる2000年に蒸留された原酒で構成されており、別シリーズ銘柄であるファイナルビンテージオブ羽生の銘も打たれています。
ファイナルビンテージシリーズだと基本的にカスクストレングスでリリースされることが多かったように思いますが、今回はイチローズモルトシリーズなので加水のバッティングです。ボトリング本数も3710本と多く、使われた樽の種類にもよりますが最低7〜8樽、現実的には10樽以上はバッティングしたんじゃないかと思います。

羽生のリリースは半年振りくらいでしょうか、もう原酒無いだろと思ってたら、まだ残ってるんですね。
リリース情報は11月のウイスキーフェスで発表されていたという話ですが、フェスにいけなかった自分は最近酒屋のビラで知りました。イチローズモルトの複数樽バッティング加水は過去のリリースから一抹の不安を覚える部分もあったものの、羽生蒸留所の樽(新樽やリフィルバーボン)が効いたモルトは好みのものが多いので、どういう仕上がりになるのか楽しみでもありました。
 
まず第一印象は「色々混ざってるなあ」というもの。単一樽ではない香味。
香りは良い部類です。主体となる樽由来の華やかで甘みのあるアロマは、多少ドライな部分はあるものの中々良くまとまっていると思います。チャーオーク的な要素が見え隠れするのも、一部そうした原酒を使っているのでしょう。多種類の樽をバッティングした影響か、ちぐはぐな部分も見られますが、口開け直後ですから今後時間経過でまとまってくるとも考えられます。
また、タバコやシガーの煙と合わさるとちぐはぐさが消えてクリーミーで上質なオーク香、グリーンレーズンやアプリコットのような甘酸っぱい香りに変化します。これは飲む店や場所によって評価が分かれる要因となりそうです。

問題は味です。香りで期待できる要素があっただけに、正直味は首を傾げました。
加水の影響か樽由来か、べったりとして平坦で、後半にかけて風味が広がっていきません。
香りほど多様な個性も感じられないし、焼酎的なクセを感じるのも自分の中ではウーンとなってしまいます。
イチローズモルトの複数樽バッティングはたまにこういう「ただ混ぜました」的なモノが出るので、先に述べた一抹の不安があるんですよね。
経験上、これは加水や時間経過でどうにかなる要素ではないので、悩ましい味わいです。香りは★6ですが、味は★5か・・・。 

そういえばかつてリリースされたカードシリーズのジョーカー(カラー)も、色々混ざりすぎててごちゃごちゃでしたがハイボールにすると旨かったですし、案外ロックやハイボールで飲めば美味しくいただけるのかも。
口開け直後であることも考慮し、暫定として評価に幅は残しますが、自分の中では一長一短、厳しい評価をせざるを得なかったボトルでした。


(追記:同シリーズはホグスヘッドなどの1stカスクで熟成の後、2ndカスクでフィニッシュする流れが採用されてきましたが、第5弾はコニャック樽の原酒を含む複数種類の原酒をバッティングしたものだそうです。色々混じってるという印象の通りでした。)