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今回のボトルは11/6で11周年を迎える目黒の名店、BARマッシュタンの記念ボトルです。OMCから信濃屋さんとジョイントでボトリングしています。
マスターの鈴木さんが、味もさることながらコスパも重視して選んだという1本。紆余曲折、様々なご苦労あったとのことですが、近年オーヘントッシャンらしいローランド感のあるフルーティーさにオークフレーバーのマッチした1杯です。

OLD MALT CASK
AUCHENTOSHAN
Aged 17 Years
Distilled 1997
Bottled 2015
700ml 57.3%
Selected & bottled exclusively for
The MASH TUN TOKYO 
& SHINAOYA

暫定評価:★★★★★★(6)

香り:アルコール感と微かなケミカル香を伴うオーク香。少し粉っぽさもある。奥から熟したフルーツ、バニラ、ハーブ、微かに和紙のニュアンス。

味:華やかでオイリーだが粉っぽい舌触りも感じる口当たり。ドライパイナップル、バニラ、麦芽。オーク系のフレーバーが先に広がる。
鼻抜けに乾いたオーク材の華やかな香りと微かに紙っぽさ。後半から余韻にかけてローランドらしい熟したフルーツ感(洋梨や林檎)、ドライでスパイシー。

最初は樽の風味、そこからローランドらしいフルーティーさと2段階の広がりがある。
近年流通の多い1980年代後半から1990年代前半のリトルミルを試して違和感がないなら、このボトルも美味しくいただけるのではないでしょうか。

オーヘントッシャンのみならず、リトルミル等のローランドモルト、その近年モノは独特なフルーティーさを感じるボトルが多くあります。
自分は熟しすぎたフルーツ感、風邪薬シロップなんて言ったりしますが、フルーティーさで連想するスペイサイドやハイランドの王道的なそれとはキャラクターが異なる。どちらかと言えばアイリッシュ系であり、蒸留方法が影響しているのかなと感じるところです。
では1970年代や1960年代の蒸留はどうだったかというと、試した中では今ほどそうしたフルーツ感は・・・なんですよね。年代で考えればバーボン樽が普及し始める時期と重なるため、この違いがキャラクターに変化をもたらしたのではないかと感じています。

昨今、有名蒸留所の原酒枯渇が激しく、それほど人気ではないローランドであっても1990年代原酒の確保が困難という話。相次ぐ値上げの中で、飲み手だけではなく酒販業界全体が苦労を重ねています。
その時その時のクオリティに対する相場的な概念があるといっても、結局は安くて美味しいほうが良いんです。(かつては安くなってブランドイメージが崩壊し、ウイスキーブームが完全終焉した日本という国ではあるんですが。)
多くのユーザーが限りある資金をやりくりしているのですから、値上げ先行の今の市場、その影響が酒販業界に無い訳がありません。
さしたる競争もなく1万円台で1960~1970年代を確保できた時代は終わってしまった。
海外でのブームに押され、日本市場の優先度はどんどん下がっている。
その中で、惰性ではなく独自の工夫で価値創造を重ねられている関係者の方々には本当に頭が下がる思いです。

マッシュタンでは今回のオーヘントッシャン以外に、リンクウッド、スプリングバンクをダンカンテイラー経由でボトリングしてリリース。(こちらも相当苦労されたとか。)
どちらも近年モノとしては酒質、樽感ともレベルの高い出来栄え。コネクションがあるからこそ出来るリリースですね。
BARマッシュタン様、11周年、おめでとうございます。