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オールドボトル市場の中では現行品と同じレベルで注目されるボトルもあれば、現行品とは異なる存在感を放つボトルがあります。
このVAT69は現行品こそ安ウイスキーの定番という位置づけにあり、味も平凡なものですが、オールドボトル、それも1970年代以前のものは高い評価を受けるボトルの一つです。
100種類の試作の中の69番目のブレンド・・・なんて薀蓄はぐぐって頂くとして、味とボトルの紹介に入りましょう。

VAT69
FINEST SCOTCH WHISKY
JAPAN TAX
1970's
760ml 43%

構成原酒:ロイヤルロッホナガー、グレネスク
評価:★★★★★★(6)

香り:グラスから強く感じられる灰、ミネラルっぽいピート香。古酒系のヒネ、とろみのある甘い香り。熟したグレープフルーツ、ブラウンシュガー、カステラ、麦芽の香ばしさ、たまり醤油のようなアロマもある。 

味:コクがあって濃厚な口当たり、黒砂糖、バニラ、焦げた木や灰のピーティーな口当たり。 
徐々にカラメルソースとオレンジママレード、甘さとほろ苦さが豊かに。
余韻は序盤のピートが舌に染み込むように残る。シェリーやカラメルの甘さも感じられる。

独特のピート香、オールドらしいこってりとした厚みもある香味。ストレートまたはロックで長く楽しめる。 ハイボールは可も無く不可もなく。 ボディがあるのでソーダには負けないが、特筆する要素はあまり感じられなかった。

ブレンデットウイスキーはキーモルト云々の話をしても、やはり混ぜられている関係上どこか似た傾向の味に収束してくるところがあります。
その中でも個性的なモルトを効かせたブレンドは他とは異なる香味が有り、それが魅力。ホワイトホースやローガンのラガヴーリンは代表的な事例ですが、ここにもう一つ、特徴的な風味を出すモルトとしてあげられるのがロイヤルロッホナガーです。
当時のロッホナガーが使われているVAT69、並びにジョンベック、マイナー銘柄ではロイヤルディーサイドからも他のブレンドとは異なる個性として、当時のロッホナガーに共通する灰のようなピーティーさが感じられます。
兄弟銘柄にはアンチコリーがありますが、こちらはライトタイプでそこまで特徴的な風味ではなかったように記憶しています。
 
VAT69は1960年代はコルクキャップ、1970年代からはスクリューキャップ。
そしてボトル形状がずんぐりとした逆向きの台形的な形状から、徐々にまっすぐな形になっていき、最後の1980年代後期には通常のトールボトルと同様の形状となって現在に至ります。ラベルデザインの変化と合わせて非常に見分けやすい銘柄です。

飲み比べた感じ、1960年代はかなりロッホナガーの特徴が濃く、1970年代はそこそこ、1980年代はバランス型ですが、言い換えれば没個性的な感じがあります。
これは1970〜1980年代から、1960年代に稼働したグレネスクの原酒が使用出来るようになって行くにつれ、ブレンドを変えていったためと考えられます。
しかし不況からグレネスクを閉鎖せざるを得ず、所有者DCLのブランド戦略の中でVAT69が下位グレードに位置付けられたこともあって、そのクオリティと個性は失われていきます。
完全に安ウイスキーとなった現行品に、当時の面影はありません。

VAT69は1960年代から1990年代まで5〜10年刻みで所有して飲みましたが、1970年代のスクリューキャップJAPAN TAX付き、今回の時代のボトルが、完成度というか一番バランスの良い仕上がりだと感じます。
当時のVAT69を見かけましたら、是非独特なピート香と、ねっとりとしたコクのある風味を堪能してください。