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つくづくマッカランという蒸留所は面白いと感じます。
シングルモルトのロールスロイスとして評価される、そのスムーズで引っかかりのない豊かな味わいから、さぞかし蒸留所の個性も穏やかで優等生なんだろうと思いきやとんでもない。
若い原酒は暴れん坊で、酒質も以外と重さがあります。だからこそシェリー樽の強い影響を受け止めて、加水であれだけしっかりしたコシが残るのでしょう。ボトラーズがリリースするようなシェリー樽以外のシングルカスクで飲むなら、間違いなく長期熟成向けの原酒です。今回飲ませていただいたマッカランは熟成期間も度数も大変素晴らしいところで、満足に値する1杯でした。

MACALLAN
Aged 35 years
Distilled 1968/06
Bottled 2003/10
700ml 53.1%

【ブラインドテイスティング回答】
分類:スペイサイドモルト
蒸留所:グレングラント
度数:50%程度
蒸留時期:1960年代後半~70年代前半
熟成年数:35~40年程度
評価:★★★★★★★★(8)

香り:
芳醇なオーク香、麦芽、ナッツ、ドライアプリコットの甘酸っぱい果実感、バタークリーム、甘栗の香ばしくも甘いアロマ。微かにハーブのニュアンスもあり、非常に充実している。

味:
口当たりはコクがあり甘酸っぱく、ハイプルーフらしく勢いのある広がりがある。
蜂蜜、麦芽、アプリコットジャム、熟したパイナップル、濃縮したオーク風味。微かに乾いた草っぽさ。
後半にかけてじわーっと濃い旨味が広がっていく。鼻抜けもオークとフルーツで素晴らしい。
フィニッシュはドライで華やか、ダンカン系トロピカル、程よいスパイスを伴い長く続く。


恐らく樽はリフィルホグスヘッドで、それも1960年代頃によく見られる良質なオーク系のフレーバーが原酒由来のコクのある風味と混ざり合って・・・一言で言ってしまえばダンカンテイラーのピアレス味。フルーティーフレーバー全開です。
度数は50%以上あり、樽感は強いですがボディがしっかりしているので負けている感じはなく、全体のバランスはかなり良いと思います。

ブラインドの予想も、ダンカンテイラーが2000年頃にリリースした、1960年代蒸留、ピアレスのスペイサイド系の何かだろうなと。微かな乾いた草っぽさや樽感、アルコールの感じ等からグレングラントを予想しましたが、まさかマッカランとは思いませんでした。

ピアレスコレクションは2002年頃からリリースが開始され、初期のリリースからは後々高い評価を受けるボトルがかなり排出されています。そこから一時期こうしたフルーティー系リリースが非常に多かったので、「またかよ」的な印象も持っていましたが、改めてあの時代を振り返ると贅沢すぎる感想でした。
この1本はそうしたピアレス初期の中でも、レベルの高い1本だと思います。
マッカランらしさは・・・答えを聞いた後で飲んでも明確には難しいのですが、そもそもボトラーズですしね。オフィシャルリリースとの共通点はあっても無くても良いと個人的には思います。

スペイサイドモルトの特徴は何となく認識出来るし、シングルモルトウイスキーとしては素晴らしい。ウマけりゃ良いのだ、ウマイは正義!
改めまして、貴重なボトルのテイスティング機会を頂きました北海道のSさん。感謝です!