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先日信濃屋さんのニューリリースを記事にしましたが、1本記事化を忘れていたボトルを思い出しました。
これもまた発売前に試飲して、中々面白いなと思っていた1本。クセの無い香味は好感が持てます。
実は飲んだ当初は「シェリー系なのに生木っぽさがなくて悪くない」的なコメントをつぶやいていました。しかし樽がそもそもシェリーじゃなかった・・・なんてオチまでついたボトルでした。
BENRIACH
Limited release
Aged 20 years
Distilled 1994
Bottled 2015
Cask type: Port hogshead #1702
700ml 54.9%
For Salon de SHIMAJI
Pen × Shinanoya
暫定評価:★★★★★★(6)
香り:かりんとうやプルーン、紅茶、乾いた木の香りを伴う甘いアロマ。
えぐみは少ないがアタックは強く、少々単調気味。時間を置くとバニラ、加水すると煮たリンゴのような香味も出てくる。
味:香り同様に甘くパワフルな口当たり、レーズンやドライアプリコット、色の濃い蜂蜜。
中間はウッディーだが原酒由来の個性は乏しい。徐々にタンニンが顔を出してくる。
フィニッシュは鼻に抜ける甘い木の香りを伴い、ドライでビターな余韻が長く続く。
ウイスキー業界で注目度が上がっている、プレイボーイ初代編集長の島地氏がプロデュースしたプライベートボトルの1本。
良く言えば素直な酒質、悪く言えば中間の変化に乏しい。1980年代以降の典型的なベンリアックの酒質。そこにポートホグスヘッドでの熟成で、シェリー樽熟成に近い香味が加わっています。また、近年のシェリー樽にありがちな生木のようなクセはなく、良くまとまっている。そんな1本に仕上がっています。
ポートワインとシェリーは同じ酒精強化ワインですが、産地の違い以外に、大きな違いとしては葡萄品種と熟成方法があります。
ざっくり書きますと、シェリーが白葡萄、熟成方法はソレラシステムを採用して長期間樽を使うのに対し、ポートは白葡萄も黒葡萄も使う、熟成方法は単一樽での熟成・・・でした。
過去形なのは、シェリー樽はソレラからの払い出しが使われていたため、ここが大きな違いだったため。ところがご存じのように最近はソレラからの払い出しではなくウイスキー用に作られた樽に、疑似シェリー溶液を満たしてシーズニングの行程が一般的です。
とすれば近い味の酒精強化ワインでポートワインであっても、今のウイスキー用シェリー樽と行程が大差無いというか、むしろより高品質な樽が見込める可能性もあります。
シェリー樽確保動きは何十年も前からあった話で、今こうしてリリースが出ているということはメーカー側もばっちり動いた結果だと思いますが、樽のノウハウ、研究が進み、さらに洗練されたリリースが増えてくれれば面白いなと思います。
プライベートボトルは、飲み手にとって一つの夢といっても過言ではありません。
自分で選んだ樽がボトリングされ、名前の入ったラベルが貼られる。
かつて好意により背面ラベルに名前を入れて頂いた事はありましたが、イチから行程に関わったことはありません。
某社にお願いしてボトリング可能銘柄のリストを取り寄せた事はありましたが、その内訳は大変厳しいもの。
それがこうしてファークラスにインペリアルにマルスにと、素晴らしいリリースがぽんぽん出てくる。やっぱりその人の力がモロに出ますね。素直に憧れます。
島地氏は今年の夏、スコットランドに渡り更なるシリーズ用の原酒を探ってくるということですから、このシリーズの今後も非常に楽しみです。
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