キングスランサム1960年代流通 "ROUND THE WORLD"
昨日は7月17日、第二次世界大戦におけるポツダム会談が始まった日です。
日本としては負けた戦争の話をネタにせんでもって話ですが、そのポツダム会談の晩餐の場で出されたのがキングスランサム。あまりの旨さに王様の身代金に匹敵すると言われた名前の由来や、日本では漫画レモンハートでの幻のボトルという解説、ラウンド・ザ・ワールドのこだわりの製法等、役の多いボトルだけに興味をもたれているドリンカーも多いと思います。
ポツダム会談当時からは新しい時期の流通になりますが、比較的状態のいいボトルを入手することが出来、じっくり飲み進めています。やはり今日の更新は、このキングスランサムが相応しいでしょう。
KING'S RANSOM
"ROUND THE WORLD"
GLENFORRES GLENLIVET BLEND
1960's
43.2% 750ml
評価：★★★★★★★（７）
香り：馥郁とした濃く甘い香り。メープルシロップ、プルーン、微かにアーモンド。時間を置くと微かなハーブ、マッカラン系のスムーズなシェリー香。
味：クリーミーな口当たり、でリッチなシェリー感と濃い甘さから、徐々にカラメルのビターさ、麦芽、胡桃。
甘いメイプルシロップの香りが鼻に抜ける。フィニッシュはビター、ウッディーなタンニンが程よく口の中を引き締め長く続く。
まるでマッカランのように濃厚でスムーズな、そして程よいタンニンが染みこむシェリー系のブレンデットウイスキー。
ブレンデットっていうかほぼモルトじゃないかって構成です。実際、先日エドラダワー蒸留所のパフュームが無くなって美味しくなったという記事は書かせていただきましたが、そのクリーミーさを味わって、まず真っ先に思い浮かべたのがこのボトルでした。
キングスランサムは、ウイスキーの司祭と呼ばれた名ブレンダー、ウィリアム・ホワイトリー氏が、そのブレンドの理想のひとつとして作ったもの。原酒は彼が求めたエドラダワーがふんだんに使われているとのことで、同蒸留所の酒質変化の影響をダイレクトに受けている銘柄でもあります。
1950年代、1960年代流通のキングスランサムはクリーミーなエドラダワーの香味。こってりとしたシェリー、カラメルの風味ともマッチしています。しかし1970年代の後期流通、1980年代流通のキングスランサムは見事なパフューミーで、まぁ好きな人は好きなんでしょうけど、自分はちょっと持余します。
少なくとも、愛した姿とベツモノになってしまったエドラダワーを天国からホワイトリー氏はどう見ていたのか･･･。
同氏がエドラダワー蒸留所の買収に成功したのが晩年となる1925年。そこからまず同氏はエドラダワーを使ってハウスオブローズというイギリス上院議会向けのブランドを手がけます。
そしてその後作られたキングスランサムはさらにもうひと手間、ブレンド後のマリッジを世界一周航路の帆船の中で行う”ラウンド・ザ・ワールド”の手法がとられており、氏のこだわりを徹底的に具現化したウイスキーとなっています。
マリッジに使った樽はもちろんシェリー樽。真偽のほどはわかりませんが、常にじめじめとした湿度と、適度な揺れのある帆船の船底は、ウイスキーの貯蔵に最適だったのだとか。
ちなみに船側としてはバラスト代わりに樽を積むのは問題ない話で、世界1周どころかプライベートブランドでは世界を3周したウイスキーもあったそうです。
時期的には同氏のブレンダー人生の集大成でもあったボトル。まだオークション等での購入も可能ですが、BARでも出してくれるところはあるので、気になる方は是非飲んでみてください！
良い仕事してるウイスキーだと思いますよ！
（キングスランサム1960年代流通の背面ラベル。世界一周航路としてケープタウンを出発して最終的にスコットランドに戻ってきていることが書かれている。）
コメント
コメント一覧 (6)
ウイスキーを使ったカクテル『マンハッタン』を飲んでみたら意外とおいしかったこの頃です。
実は先日メールを整理している時に誤ってくりりんさんよりの新着メールを削除してしまったかも知れないので、もし最新の送付メールがありましたら、お手数ですが再送信していただけると助かります＞＜
マンハッタンは良いカクテルですよね。
とある素晴らしくスキルのあるバーマンの方に作って貰った一杯、忘れられません。
メールですが、先日のやり取り以降、特段送ってませんので多分消えて無いのではないかなと思いますよ。
私の作ってもらったバーでは、ベースがライウイスキーの物よりカナディアンの方が人気があるということでカナディアンクラブをベースにして頂いていました。同じウイスキーベースのカクテルだとゴッドファーザーなんてのもありますが、あちらは甘さがけっこう重めで、飲むタイミングを選ぶのに対してマンハッタンはオールラウンダー的で飲み勝手が良いですよね。
メールについて了解です！またよろしくお願いします。
自分の時はオールドのバーボンを使って作ってもらいましたが、このレシピの自由度がカクテルの面白さでもありますね。ベースはたとえばニッカのカフェグレーン、あるいはサントリーの知多でも性質上はOKですから、色々試してみるのも面白いかもしれません。
正直カクテルまで手を出すととても財布が追い付かないので、自分はウイスキー1本ですが、美味しいレシピがあったら教えてください。
ちょうど今ヤフオクにキングスランサムの47%が出品されていますが、そのことでしょうか。
キングスランサムで流通時期を判別するのは、度数ではなくラベルのデザインになります。
アメリカ向けなどで1950年代から、1970年代前半頃まで47%仕様があるので、度数だけで判断するのは危険ですね。
最も古いラベルは、この記事でテイスティングしているエンブレムに赤枠のついたものですが、これもボトルネックの形状の違いや、ラベルの「ブレンデッド表記」と「グレンフォレスグレンリベット表記」でそれぞれ時代が異なります。
その後1970年ごろにロゴマーク周りの赤枠がなくなり、徐々にボトルの形状が縦長になっていきます。1980年代のランサムのボトルデザイン等は別記事で紹介の通りです。
参考になりましたら幸いです。