マッサン終了後のウイスキーブームの行方 〜その④ 晴天なれども波高し〜
どうにも市場の動きを考察すると、心情的にはニッカ寄りですし、キリンの富士山麓18年も愛飲中なんですが・・・。
さて、長々書いたブームの考察も今回でラスト。日本市場ではなく海外市場の話です。
こちらが活発になると日本から商品が無くなるかもしれない、ある意味困った話ですが、 供給側からすればブームであることに変わりは無いのでまとめます
。
今、本当に日本のウイスキーが評価されています。
国際空港免税店では入荷と同時に山崎が売り切れ、供給安定化のためサントリーが免税店での通常ラインナップ販売を停止し、 免税限定のリミテッドエディションを投入するくらい。
クソ高いですがこれも売れるんでしょうきっと・・・。
ビックカメラは日本語が無いテロップまで出しちゃって、ヤフーオークションでは仲介業者がバシバシ落札中。
円安も手伝ってすごいことになってます。
酒屋巡りをするとサントリーの売り場がごっそり売り切れていて、店員に聞けば「中国人が買っていった」と返事があるくらい。
(ビックカメラ酒販コーナーのチラシ)
実際のところはジャパニーズだけで無く、スコッチもバリバリ売れていて、 スコッチの輸出額は年々増加中。
このうち、消費量でいえばインドが群を抜いてます。
2014年、世界で一番売れているウイスキー(Drinks International発表)は、ジョニーでもバランでもない、
インドのオフィサーズチョイスというウイスキー。
2位もマクダウェルNo,1という、これまたインドの地ウイスキー、3位でやっとジョニーウォーカー。
ジョニーの出荷量は全世界で1400万ケース(1億7000万本)、それでも3位。
ほぼ自国消費で世界的銘柄を抑えてワンツーフィニッシュに加え、3位ジョニーを除いて9位までインドですから、 それだけウイスキーの需要があるのは明白です。
しかも昨年度からの消費量の伸びを見ても他を圧倒しています。まさにフォースインディアw。
日本製品はというと、角瓶が23位にランクイン。これはほぼ日本国内の消費によるところだと思いますから、生産能力はさておき 伸びしろは十分です。
(引用:Drinks International Millionaires' Club list 2014)
他方で上述のインド無双なランキングは、
普及価格帯を含めてのものであり、
高価格帯のプレミア品に絞るとインドは姿を消してアメリカがトップになります。
らしいっちゃらしいですね。人口分布の縮図を見ているようです。
各社の展開を見ると、ニッカは欧州を中心に販路を拡大中。
イチローズモルトも同様にアメリカなどでPRを行ってます。
大規模なモノでは昨年のサントリーによるビーム社買収、おおよそ欧米中心です。
低価格品を大量に送り込むのは、生産・販売体制が伴わなければ難しいですし、 まずは量より質でプレミアム品の需要があるところからという方針
なのでしょう。
サントリーの買収劇は対欧米市場において攻めの一手ですが、樽や蒸留所などオマケ的な要素に加え、
販路という意味で一気に足がかりをつくる事が出来ました。
一部某アレな評論家から、アメリカはバーボンだからスコッチタイプが売れるわけ無いとか、400回アメリカに行った自分の経験とか、 失笑を禁じ得ない評論が展開されたりして、いやはやなんというか(笑)。
かつて日本のウイスキーメーカーは、前述のとおりウイスキー市場の急速な衰退を経験し、 背水の陣というところまで追い込まれていますから、
このまま国内に留まるよりも海外へという考えは理解できるモノで
す。
そのためには、いくら良いモノがあっても販路が無ければ大規模には展開できません。
海外への販路を広げて常に需要のあるマーケットに製品を送り込み安定消費を狙う、実に理にかなっています。
ウイスキーに関しては今後はアフリカ、インドネシアなどさらに多くの途上国でウイスキー需要が生まれていくでしょう。
マッサン終了後のウイスキーブームの行方①で記載した「世界情勢」とはこれらのことで、 こうした国に如何に販路を拡大出来るかが、
今日本のメーカーに求められている状況であると言えます。
参照:スコッチ・ウイスキーの輸出額、過去10年で87%増
http://spirits.drinks-business-review.com/news/scotch-whisky-exports-from-uk-rise-by-87-020114-4154153
http://spirits.drinks-business-review.com/news/scotch-whisky-exports-from-uk-rise-by-87-020114-4154153
参照:ニッカウヰスキー、6年で輸出18倍 海外で高まる日本産ウイスキーへの評価
参照:テレビ東京 Crossroad「肥土伊知郎」 イチローズモルト
参照:Drinks International Millionaires' Club list 2014(PDFページ11)
●最後に
以上、ドラマの効果に加えて国内の市場と海外の市場を総括してみると、 我々消費者サイドから見るブームと、
企業側から見るブームでは若干差があるものの、国内のブームは1~2年程度続いた後、
ドラマに乗っただけの層は離れても、飲み屋などでハイボールを「ウイスキーではなく酒として嗜む層」が底支えすることも見込めるため、 引き続き一定の水準の消費が見込まれるのではないでしょうか。
また、海外市場については需要は存在するため、その獲得にはメーカー側の更なる努力が必要ですが、 日本のウイスキー作りにおける品質、技術は、
もはや昭和の黎明期とは違い本家スコットランドを越えるに至ったもの。
ウイスキー業界の展望は「晴天なれども波高し」、さらなる競争の中に明るい展望があるものと見ています。
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