ローズバンク21年 リミテッドエディション 2014年ボトリング

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流石に出ないだろうと思っていたローズバンク。
しかしまさかのリミテッドリリース第3弾として、今回のニューリリースにラインナップされていました。
限定4530本、値段は1本5万強。まぁ強気というかそれでも相対的に見れば良心的と思えてしまうのは、その他のリミテッドエディションの価格設定故の話。
いずれにしても、くりりんの戦闘力ではまったくもって勝ち目がありません(笑)。

ROSEBANK
AGED 21 YEARS
Limited Edition
Distilled in 1992
Bottled in 2014
55.3% 700ml

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暫定評価:★★★★★★(6)

”微かな酸味と青い植物っぽさのある、クリーンでエッジの鋭い香り立ち。レモンを思わせる酸味からクッキーの甘いアロマ。
口当たりはクリーンでトーンの高い甘さから苦味に変化する。香り同様に植物っぽさと微かにハーブの爽やかさ、時間経過で徐々にレモンやオレンジなど柑橘系ピールの砂糖漬け。
フィニッシュはローランドらしくピリピリとしたスパイスがあり、ドライであっさりとしている。”


1993年閉鎖のローズバンク、その1年前のいまや貴重になりつつあるモルト原酒。
樽はリフィルアメリカンオーク樽で、カスクストレングス4500本ですから、バットにしろホグスにしろ、結構混ぜてますね。あまり樽の影響は感じ無かったことから、構成的には2回目あるいは3回目でしょうか。
これまたディアジオさん、うまいことローズバンクらしさ、ローランドらしさを出した味に仕上げてきています。

時間経過が必要なモルト、というのはIANのマスター談。
確かに口開けよりも時間がたったほうがローランド系のトーンの高いハイプルーフな味わいに変化が出てきます。
ディアジオの資料にはアペリティフとありますが、確かにこういう適度にドライでトーンの高いべたつかない甘さのある味わいは、その系統で力を発揮しそうです。
しかしまぁ5万のアペリティフってその後のコース何食べるんだって話なんですけどw

なお、ディアジオからのコメントとしては、
「以前の25年(1981年蒸留)と21年(1990年蒸留)と比較して楽しんでみたら良いんじゃない?」
いやーもうね、良い度胸だなと。しれっと高いハードル次々に設定しやがって、ネタか?ネタなのか?w

竹鶴政孝がはじめて飲んだウイスキーは? ハイランドケルトの正体に迫る

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マッサンのスピンオフが決まりましたね。
1時間枠×2で2話。
あまりウイスキーとは関わりがなさそうですが、楽しみにしたいと思います。
 
参照:スピンオフドラマの放送が決定しました!(NHK)
 
 
さて、マッサン繋がりで最近疑問に思った事をひとつ。
マッサンこと亀山政春に大きな影響を与えたウイスキーは、ハイランドケルトでした。これは実在しない架空のウイスキー銘柄ですが、劇中では一つのキーとなっています。
では、
竹鶴政孝に"日本人に本当に美味しいウイスキーを飲んでほしい"と思わせたウイスキーって何だったんでしょうか。
晩年の竹鶴政孝が愛した酒がハイニッカだとか、修行した蒸留所はロングモーンとか、そういう話はあるんですが、最初に飲んだウイスキーしかり、あれほどの情熱を与えるきっかけになったウイスキーの記載が見当たりません。
せっかくなので時代をさかのぼり、竹鶴政孝にとっての"ハイランドケルト"を考察してみたいと思います。

1916年、摂津酒造に入社する頃には、竹鶴は洋酒に興味を持っていたといいます。
当時日本にはワインなど各種洋酒の輸入が増え始めていたところ、日英同盟の影響もあってスコッチウイスキーも同様に日本の市場に入ってきていました。
また、竹鶴が通っていた大阪高等工業学校は神戸にほど近く、当時神戸といえば洋酒含む舶来物の輸入が盛んでしたし、新しいモノに興味やあこがれを持って・・・というのは考えられる話です。
実際竹鶴も、高等学校卒業後は家業である酒造を継ぐ可能性も考慮しつつ、その前に興味があった洋酒作りをしたいということから摂津酒造の門を叩いたと伝えられます。
その後、摂津酒造の洋酒部門で赤玉ポートワインに関わり、岩井社長の命令を受けてウイスキー製造技術を学ぶため、渡英するに至ります。
 
しかし当時の情報伝達速度、情報量で考えると、1916年入社で、1918年に渡英って、ものすごいスピードです。会社としてはもっと前から計画していたのかもしれませんが、その後の竹鶴の行動を見ているとほぼノーアポ、現地調達サバイバル研修。とても綿密な計画とは思えません。
同盟が締結されたとはいえ、ネットも無ければ世界の歩き方もない、飛行機も無いので手紙だって往復で数ヶ月かかるのは普通なところ。
日本の地を2度と踏めないかもしれない、先の見えない危険な話。それをたいした計画もなくほぼ丸腰状態。
いくら社命とはいえ、あこがれだけで決意を固めることが出来るんでしょうか・・・(まぁ書籍の情報通りの性格なら、竹鶴はやりかねない気もしますが)。

推測に過ぎませんが、留学前、当時日本に流通していたイミテーションと、本格スコッチウイスキーの飲み比べはしてるんじゃないかと思います。
それこそ摂津酒造が取り寄せて、モルト、グレーン、ブレンデットと試飲した可能性もあります。
それで感銘と同時に危機感を抱いた竹鶴が、日本人に本当に美味しいウイスキーをと感じたならば、流れは自然かなと。
 
その推測に基づき銘柄を考えますと、当時はブレンデット全盛期でシングルモルトの流通は極めて少数。
記録が残っているのは、カルノー商会の取り扱いだった、デュワーズ、H&B、ブキャナン。グラバー商会(ジャーディン系)が輸入していたウイスキー。あるいは当時から既にステータスを確立していたパー系か。列歴史を紐解くと、おおよそ当時日本に流通していた銘柄は限られてきます。
H&Bはロイヤルワラントで日本の皇室にも入ったやんごとなきお酒。デュワーズはアメリカでヒットした関係もあって当時取り扱い銘柄の種類も多い。
パー系のオールドパーやマンローキングオブキングスも当時日本に入っていた銘柄ですし、上述のジャーディン系としてホワイトホースの扱いがあれば神戸界隈で遭遇する可能性は高いところ。
絞りきれませんが、この辺に絞られてくると考えられます。
 
実はこの中のうち、当時の流通と思われるデュワーズ・ホワイトラベルは飲ませて貰ったことがあります。
約100年前の酒とあって、香味はだいぶ変化していましたが、オールドスコッチらしいどっしりしたピート感があったのが印象的でした。
経年変化を逆算して考えると・・・カラメルの甘さに麦芽のスモーキーで芳醇な香味、それこそ竹鶴のハートを鷲掴みにする、非常に魅力ある酒だったのではないかと思います。
 
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(写真引用:Whisky link デュワーズ・ホワイトラベル8年 1920年前後流通)
 
※当時の日本のウイスキー文化の参考に。
ウイスキーマガジン:戦前の日本とウイスキー
 
 
さて、長々書いておいて、竹鶴にとってのハイランドケルトは特定出来ませんでしたが、ドラマ"マッサン"のハイランドケルトは面白い情報が手に入りました。
ハイランドケルトのモデルについては色々意見や予想があるところですが、これ、中身はスコ文研の土屋守氏が監修したブレンデットウイスキーなんだそうです。

ハイランドケルト
(写真引用:ハイランドケルト・NHK  呑壱の呑んだくれブルース様)

この話は土屋氏のセミナーの中で話があったそうですが、聞いた瞬間ぽかんとしてしまいました。
まず第一に、ハイランドケルトのラベルにはシングルモルトと書いてあるじゃないか、という疑問があります。
これは上でも書いたように、当時はスコットランドであってもシングルモルトウイスキーは少数で、大多数はブレンデットだったわけですが、土屋さんもその辺を踏まえ、現地で飲んでいるとしたらブレンデットだとNHKに話をしたものの、製作チームはシングルモルトでラベルを作ってしまったそうなのです。
 
また、中身についてはジョニ赤(MHD経由では黒という話も)にアードベックを足したモノで、当時のウイスキーは今よりピーティーだったのではと、アードベックをブレンドして雰囲気を出したと。
ジョニーウォーカーである理由は、竹鶴政孝が現地に留学した際に飲んでいたとすれば、留学先の地域などから推測してジョニーウォーカーだろうということ。
つまりハイランドケルト=ジョニーウォーカーだったんですね。
ドラマ用のセットに本当にウイスキーが入ってたのも驚きですが、実はラベルプリントミス(?)だったのも驚きです。
 
ハイランドケルトはハイランドパークが元ネタだと、けっこーな数のサイトが掲載していますし(これは誰が言い出したのか、出所が怪しいんですけど。)、かくいう自分も、LONMORT蒸留所だから多分ロングモーンのシングルモルトだろうと思っていたのですが、みんなNHKに釣られましたw。
 
NHKはこの責任をとって、"日本のウイスキー、そのルーツを紐解く"みたいなドキュメントを、スピンオフついでにやってほしいものです。
答えは出ないかもしれませんが(笑)。
 

本記事を書くにあたり、先行してFBウイスキー友の会で色々ご意見、情報を頂きました。
特に当時の神戸界隈(グラバー商会)関連の情報等を頂いた札幌Malt Bar Kirkwallのマスター岩本様。
摂津酒造関連の情報をいただいた、お初天神BAR Paradis マスター岩田様。
ハイランドケルトの真相に関する貴重な情報を頂いたS様、I様、ありがとうございました。

そして最後に一言。
「やったね!これでハイランドケルトが飲めるよw!」

カリラ30年 リミテッドリリース 2014年ボトリング

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オフィシャルのカリラの中では、最長熟成品となる30年。
リミテッドエディションのナチュラルカスクストレングス・シングルモルト。
カリラは安定して旨いので、このボトルも「どうせそこそこ旨いんでしょ」と思っていたのですが、それ以上の完成度でびっくりしました。 
 
CAOLILA
AGED 30 YEARS
Limited release
Distilled in 1983
Bottled in 2014
700ml 55.1%
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暫定評価:★★★★★★★★(8)
 
"柔らかいが存在感のあるスモーキーさ、消毒液、花の香り、奥から微かなカラメルの甘さも感じられる。
透明感のある口当たりからピリピリとしたスパイスと旨みが盛り上がってくる。コク、厚みのある麦感、うっすらと蜂蜜。フィニッシュはドライで微かに乾いたオークの香り、ピーティーで長い。
嫌味な点が無く、度数を感じさせない上質な味わいで完成度の高いウイスキー。"
 

今回のMHDニューリリースで飲んだ中で、一番好みだった1本です。(ブローラとポートエレンは飲めてません(汗))
長期熟成らしくスムーズですが、へたれた感じや樽負けした味は無く、それでいてカリラの個性がしっかりと主張してくる。芯が一本通ってるというか、やさしいけれども力強いというか、相反する要素を内包するこういうボトルをバッティングで作ることこそオフィシャルの真骨頂だと思います。
 
構成は、リフィル・ヨーロピアンオーク樽とリフィル・アメリカンオーク樽の原酒とのことで、露骨なオーク系のフルーツ感やえぐみ、タンニンも無く、素晴らしいバランス。
狙ったのかたまたまなのか、とにかく久々に素で旨いカリラを飲みました。
 
ロストビンテージとも言われる1980年代においてなお、その力を発揮してくれるカリラ蒸留所。
同時期産まれの自分としても、うれしい存在です。

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