シングルモルト 長濱 セカンドバッチ 50%

カテゴリ:
FullSizeRender

SINGLE MALT NAGAHAMA 
THE SECOND BATCH 
Distilled 2017 to 2019 
Bottled 2023 
Cask type Sherry, Koval, Islay Quarter, Bourbon Quarter 
500ml 50% 

評価:★★★★★★(5→6)

香り:甘やかなウッディネス、複数のスパイスを思わせるアロマにりんごのカラメル煮や柑橘、カシスシロップ、微かに焦げた木材を思わせる要素を伴うリッチなアロマ。

味:とろりとした口当たり。黒かりんとうのような軽い香ばしさを伴う甘さと麦芽風味から、スパイシーな刺激と合わせて柑橘のジャムを思わせる甘酸っぱさ。余韻はウッディでビター、微かなピートを伴いジンジンと口内を刺激する長い余韻。

シェリー系の原酒を土台に、特にKOVALカスク由来のスパイシーさやアメリカンオークのフレーバーが合わさって、複雑な味わいが形成されている。ピーティーな原酒も少し使われており、香味の中で奥行きに通じているのが心憎い。
一方で、リリース直後の印象は各樽のフレーバーが馴染みきっておらず、濃厚さの中に複数の個性があるようでチグハグしたところもあったが、時間経過で馴染み一本筋の通った複雑さへと変化している。オススメはストレートを時間をかけて。

IMG_6833

長濱蒸溜所が2023年5月にリリースした、シングルモルト第2弾。
シェリー樽熟成原酒を軸に、KOVAL(バーボン)カスク、アイラクオーターカスク、バーボンクオーターカスクによる熟成原酒をバッティングしたシングルモルト。基本ノンピートですが、シェリー樽原酒についてはノンピートとピーテッド、それぞれの原酒が使われている。若い原酒ゆえに馴染みきってない印象はあったものの、今できる最大限の工夫をしたと感じた1本だったところ。
そろそろ第3弾のリリースも控えているので、ここで復習しておきたいと思います。
(え?そもそも1stのレビューがあがってないじゃないかって、細かいことを気にしてはいけない…)

シングルモルト長濱は、第1弾がバーボン樽やミズナラ樽原酒など、長濱蒸溜所にある様々な樽をベースにバッティングしたシングルモルト。
リリース直後もテイスティングしていますが、先日都内某BARでブラインドテイスティングをする機会があり、改めて飲んでみるとスパイシーかつしっかり柑橘系のフレーバーがあって、長濱かな?とは答えましたがTHE FIRSTとはわからなかった。時間経過によっていい意味でフレーバーが馴染み、大きく印象が変わっていたんですよね。
そして今回、久々にテイスティングしたTHE SECONDですが、これもやはりいい方向に変わっていると感じています。

長濱蒸溜所だけでなく、若いウイスキー全体に見られる傾向ですが、若い原酒で濃いめの樽感をバッティングしたシングルモルトやブレンデッドは、それがマリッジを経て馴染んだと感じてもボトリング後さらにもう一段、経年変化によってフレーバーが一体化する傾向があるように思います。
若い原酒の場合フレーバーの奥行き、複雑さが少なく、かつ味わいが強いため、どうしても原酒同士が馴染みにくいのでしょう。小さい子供たちだけ集めてもわちゃわちゃして落ち着かない小学校のクラスのようですが、成長すればある程度落ち着いてきますよね。

IMG_2322

そうした意味でTHE SECONDの変化は、恐らくKOVALカスク由来のスパイシーさ、焦げたようなウッディさ、そして若い原酒由来の酸といった要素が、シェリー樽由来の色濃い甘さの中に混じり、ただそれという単独の存在だけではなくなったという感じです。
例えば酸味が熟成樽由来の甘味と合わさったことで、ダークフルーツや柑橘を思わせるフレーバーへと変化している感じ。元々持っていたポテンシャルがしっかり発揮されてきています。

一方で、長濱らしさといえば、柔らかい麦芽風味とスパイス香、限定でリリースされるシングルカスク含めて、今まで飲んできた大体のリリースに共通して感じられる要素がこのボトルにもあります。そしてそれは、リリース直後でも時間が経っても一定の主張をするので、あー長濱だなと安心させてくれます。

そしてTHE SECONDでは、もう一つの特徴としてトンネル熟成庫の存在がピックアップされていました。
長濱蒸溜所は、長濱駅前にある長浜浪漫ビールに併設された蒸留棟で原酒の仕込みが行われているものの、熟成は使われなくなった旧道のトンネル、廃校となった小学校、そして2022年からは琵琶湖に浮かぶ竹生島でも行われています。

IMG_2323
IMG_2324
※旧観音寺トンネルを活用した熟成庫。県内では心霊スポットとしても知られていたが、熟成庫となって天使がきたからか、噂もすっかり。

小学校、トンネル、異なる環境での熟成。トンネル熟成庫は1年を通じて気温が冷涼で、樽感が強く出る30度を超えることはまずない環境。樽感としてはスコットランドでの熟成に近くなり、一方でトンネル内は湿度が非常に高いことも特徴です。
どのような違いが出るかというと、度数が下がりやすくなると言われており、天然の加水が効くためか、まろやかな口当たりになると聞いています。

荒々しくも濃厚な原酒が育ちやすい温暖な熟成環境に比べ、穏やかでまろやかな原酒が育つなど違いが明確に表れていることが、それぞれの原酒をブレンドした際の複雑さに通じるわけです。
まだ若い原酒であるため真価を発揮するには多少時間が要りますが、その時間を含めて楽しむのもクラフトの味というヤツですね。
竹生島熟成とピーテッドがテーマの3rdリリースも楽しみにしています!

IMG_1810

厚岸 ブレンデッドウイスキー 小雪 48% 二十四節気シリーズ

カテゴリ:
FullSizeRender

THE AKKESHI 
BLENDED WHISKY 
SYOUSETSU 
20th. Season in the 24 Sekki 
700ml 48% 

評価:★★★★★★(5-6)

香り:トップノートはプレーンな甘さの後で、焼き芋のような香ばしさ、微かな焦げ感と土のアロマ。じわじわとスモーキーで、奥にはオレンジやカスタード、オークフレーバーが潜んでいる。

味:口当たりはスムーズで瑞々しい。グレーンや樽由来の甘みの後から、柑橘、シェリー樽のヒント、麦芽風味とピート香がバランス良く広がる。余韻にかけて軽やかなスパイシーさとミネラル、ほろ苦く穏やかにスモーキーなフィニッシュ。

ピート、麦芽、グレーン、樽、それぞれが過度に主張せず、バランスの良い印象を受けるブレンデッドウイスキー。熟成感が増してきた結果がはっきりと出ており、ストレート、ロック、ハイボール、様々な飲み方でも楽しめる。特にハイボールがオススメ!
ストレートでは少しボディが軽い印象を持ったが、これは使用している厚岸熟成グレーンの質によるところか。この時期の降っても積もらない小ぶりな雪の如く…。

FullSizeRender

二十四節気シリーズ、折り返しの第13弾。
飲んだ最初の一言は「まとまってきたなぁ」と。第一印象でそう感じるほど、今回のリリースもまたそれぞれの原酒の個性、樽感がバランス良くまとまっており、それぞれの原酒の成長が感じられる仕上がりです。
樽構成はバーボン樽メインに、モルトはミズナラ樽や繋ぎのシェリー樽がそれぞれ1〜2割か。微かに赤みがかった色合いにも見えるので、ワイン樽も少量使われているかもしれません。

原酒構成はモルト6:グレーン4、あるいは5:5といった、比較的グレーン原酒が全体を慣らしている印象。ピートフレーバーもその分穏やかで、ノンピートモルトも一部使われてる感じですね。
以前リリースされたブレンデッド大寒もそうでしたが、最近の冬のブレンデッドリリースはあえてグレーンの比率を上げているのか、加水によって全体がさらに慣らされてまとまりが良く、一方で少し軽いというかしんとしているというか、ボリューミーな傾向にある春から夏にかけてのブレンドの対極にあるように感じます。

IMG_1886
(2023年5月にリリースされた、ブレンデッドウイスキーとしては前作となる厚岸“小満”。原酒が熟成を増してバランスの良さを感じるのは今作と同じだが、ブレンド比率と構成原酒の違いで小満の方が躍動感を感じる。)

こうしたタイプのウイスキーは、味のインパクトが少ない分、面白みがないという印象を受けるかもしれません。
ただ、真逆に強すぎる個性、強すぎる主張のものは、毎日付き合うのが疲れるモノです。ウイスキーの完成系は一つではなく、毎日飲んでも飽きがないくらいの、ちょっと地味なくらいの味わいも完成系の一つだと言えます。
ブレンデッドウイスキーの場合、特に大手製品のスタンダードグレードはまさにそんな感じですね。

じゃあ厚岸の限定リリースにそれを求めるか?というと、それもまた好み次第ですが。。。こういうブレンドを自前の原酒だけで作れるようになってきた、というのが蒸留所としても成長の証。
1ショットで途中加水も試しながら、あるいは別途ハイボールも飲んでも飲み疲れない。むしろグレーンがよく伸びて、ストレートとはまた違う印象もあるくらいです。
厚岸蒸溜所のウイスキーとして、入門の1本にしてみても良いと思います。

IMG_1962
(厚岸蒸溜所の裏手。早い秋の終わり、忍び寄る冬の気配…)

アラン 18年 46% 2023年流通ロット

カテゴリ:
IMG_0304

ARRAN 
Single Malt Scotch Whisky 
Aged 18 years old 
Lot 2023 
700ml 46%

評価:★★★★★★★(6-7)

香り:オーキーで華やか、りんごのカラメル煮や洋梨のタルト、紅茶、微かに桃の缶詰を思わせるしっとりとした甘さが混じる。

味:柔らかく甘い麦芽風味、ブラウンシュガー、濃く入れた紅茶を思わせるウッディネス。中間以降は黄色系フルーツを思わせるフルーティーで華やかな艶のあるフレーバーが開き、非常に好ましい構成。
余韻は香りで感じた桃のシロップの甘さから、果実の皮を思わせるほろ苦い味わいが染みるように長く続く。

アメリカンオーク、そしてリフィルシェリーバットで熟成されたアランの真骨頂とも言うべきフルーティーなスタイルが全面に出ている。広義な表現としてはトロピカルフレーバーと言っても差し支えないだろう。熟成感、ウッディさも適度でバランスが良く、香味は旧ボトルの18年と同傾向だが完成度はこちらが高い印象。
これを家飲み出来るならもう充分。黒化した18年も良いけれど、やはりアランはこの系統が心落ち着く。3本くらい欲しい(笑)。

IMG_1508
IMG_1509
端的に言えば、旧ボトル時代のアラン18年が完成度を高め、より艶やかなフルーティーさを増して現代に戻ってきた。
先日都内某所で試飲し、アラン18年構成変わってる。見るからに色違うし、そして美味い。どこかでちゃんと飲める機会が欲しいと思っていたところ。10年ぶりに訪問した野毛・BARシープで、マスターのおすすめがこちらでした。
「最近良かったって思ったボトルはコレだよね。」
こういう偶然は、なんだか嬉しいものです。

2019年に現在のボトル、ラインナップに大規模リニュアルを行ったアランモルト。その中でも特に大きな変化があったのが、シングルモルト18年です。
黒い、南国のビーチにでも行ってきたのかというくらい黒い。元々アラン18年はシェリー樽原酒とバーボン樽原酒を構成原酒としていましたが、基本的にはシェリー樽がリフィルホグスヘッドなのか、今回紹介するロットのような色合いでした。
ただ、生産本数が1ロット9000本と限られており、2000年ごろのアラン蒸留所の生産規模もそこまで大きなわけでは無いことから、シェリー樽の比率、1st fill と2nd fillの比率が変わればこう言うことも起こり得ます。

IMG_1768
(2019年ロットのアラン18年。1st fillシェリー樽原酒の比率が高く、リッチでウッディな味わいの奥にはバーボン樽に由来するフルーティーさがアクセント。レベルの高い1本だったが、ここまで急激なイメチェンは想定外だった。)

一方、このリニューアル後の数年間でアランの人気が急激に高まり、最新ロットが入ってきても即完売という状況が続いていました。
アランは毎試合6回2〜3失点でゲームは作ってくれるレベルだけど、9回完封の絶対的エースでは無いんだよね。人気もそこそこだし。
なんて評価をしていたのが嘘のよう。
アラン抽選販売なんてビラを見かけては、え?アランってもっと気軽に飲めたボトルだったよね?
いつのまにかその人気がエース級になっていることについていけず、暫くロットの変化は見てませんでした。
ひょっとすると、2022年のロットでも同様の変化があったのかもしれません。

話を今年のボトルに戻すと、アラン18年が美味しい、完成度が上がったと感じる背景には、蒸留所としての純粋な成長があるのではと考えています。
アランの創業は1995年(1996って書いてましたスイマセン)。大手メーカー傘下ではなく独立した蒸留所です。日本のクラフトみても明らかなように、創業から数年単位で酒質は安定しませんし、樽の調達から仕込み全般、繋がり作りやトライ&エラーの積み重ねだったことと思います。

そうなると今回のロットに使われた原酒が仕込まれた2004-2005年は、いよいよ蒸留所として造りが安定し、熟成した原酒からのフィードバックも増える時期。シングルモルトブームも始まり、どんな樽のどんなウイスキーが評価されるか情報が入って熟成の方向性も定まってくる。
つまりアラン18年や21年などの熟成した原酒のロットは、これから一層期待出来るのでは…。
相変わらず店頭で見かけることは少ないですが、機会を見て定期的にテイスティングしたいと思います。

大手メーカーの安定した造りも良いですが、中小規模蒸留所、クラフトメーカーの成長が見えるリリースも楽しいですね。

このページのトップヘ

見出し画像
×