ミクターズ US-1 ストレートライウイスキー 42.4% シングルバレル

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MICHTER'S 
SINGLE BARREL US★1
KENTUCKY STRAIGHT RYE WHISKEY 
700ml 42.4% 

評価:★★★★★★(5-6)

香り:メローで赤みがかった果実香。洋梨のような甘みもあり、合わせてスパイシーでハーバルなアクセント、微かにゴム。溶剤的な要素もあるが、基本的にはメローな甘さが香り立つ。

味:マイルドで緩さのある口当たり。序盤は度数相応に柔らかく、ややボディは軽め。キャラメル系の甘みと熟成たチェリー、紅茶のタンニン。じわじわとウッディでビターな質感、軽い刺激が口内に広がる。

その日の体調や気温、あるいは飲み合わせによって、悪い部分が目立つ時と良い部分を拾う時があり、その複雑さが面白いウイスキーである。ライウイスキー区分らしくハーバルでスパイシー、ドライな個性に、ミクターズの製法由来かメローで赤みがかった果実香とマイルドな口当たり、熟成感が魅力。
なお、飲み方は少々贅沢だがハイボールか、カクテルベースとして使用するとノーマルなライウイスキーとは一味違う1杯を楽しめる。家飲み用お手軽カクテルのオススメは、コーラと1:1で割ったコークライ!

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先日紹介した、新生ミクターズブランドのライウイスキーが、今回レビューする1本。バーボンが美味しかったので、ライも続いてトライです。
ちなみに、ミクターズブランドの歴史や、現代の製法、こだわり等については、前回のミクターズ・US1・バーボンウイスキーのレビュー記事にまとめてあり、このライウイスキーも基本的なところは同じであるため詳細説明は省きます。

ミクターズUS1のポイントとしては、製法や原料等を指定した形で、アーリータイムズ(と噂される)蒸留所に外注し、その後自社で準備した良質な樽、熟成庫(ヒートサイクルウェアハウス)で4年以上熟成させた原酒を製品化したものが、このブランドということになります。※現在は5~7年の原酒がリリースされているとの情報もアリ。
ただしこれだけだと誤解されそうなので、ミクターズの名誉のためにあえて記載すると、アーリータイムズは有名な低価格帯バーボンの一つですが、噂や状況証拠がなければ結びつく事はないと言えるほど、ミクターズのクオリティは別格。上質なアメリカンウイスキーであり、それだけ独自の工夫が大きな違いをもたらしているのだと思われます。


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(※ミクターズ社が所有する、ヒートサイクルウェアハウスの一つ。温暖な環境を維持することで、通常より速く熟成が進むと考えられている。)

一方で、ミクターズのライウイスキーについてはいくつか不明点があり、バーボンのほうはスモールバッチなのに、なぜかライはシングルバレルだったり。あとは原料比率、マッシュビルも非公開だったり。
リリース側はこれらに関して情報を公開しておらず、また、関連が噂されているアーリータイムズも、ライウイスキーをリリースしていないことから予想が出来ません(US★1バーボンはアーリータイムズとマッシュビルが同じ)。

海外の愛好家サイトでは、ライが55-60%くらいではないかという予想。個人的にはもう少し高いのではとも感じますが、視点を変えて調べてみると、同蒸留所で2018年まで製造されていたオールドフォレスターが、ライウイスキーをリリースしているんですよね。マッシュビルはライ65%、モルト20%、コーン15%とのこと。同じマッシュビルである保証はありませんが、華やかさがありながら、独特の深みや複雑さがあるのはひょっとしてモルト比率の多さも関連しているってことか…?

ライが多いとドライでスパイシーさが強くなりがちなところ、その個性はしっかりと感じつつ樽由来のメローな甘さと熟成感、そして加水調整で、マイルドで飲みやすく仕上げられているのが、このミクターズ・ライUS★1の特徴でもあります。

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さて、ライウイスキーはカクテルのツールとしても注目されており、様々な飲み方が提案されてきています。王道のカクテル、マンハッタンやオールドファッションは勿論、最近ではコーヒーとの組み合わせも注目されていて、調べてみると様々なレシピがヒットします。
ハーバルでスパイシーな癖があり、香りが強い一方でボディが少し軽くドライになりがちなところを、カクテルで加えられるリキュールや果汁等が補って、パズルのピースのように相互補完し合う組み合わせが期待できるのでしょう。

ですが、BARはともかく家でカクテルとなると、リキュールやら道具やら、色々準備するものが多く、手軽にオススメとも言えません。。。
そこで今回、1ステップで作れる何か(つまり割るだけで良い組み合わせは無いか)を、色々試してみました。牛乳、オレンジジュース、コーヒー…様々試した中で、ある意味何の捻りもなく、ナンバーワンをかっさらったのが、コカ・コーラ。それも、通常のコークハイのような作り方ではなく、写真のようにライウイスキー1に対してコーラ1,さながらハーフロックを作る要領で混ぜたものになります。

これだとベースが濃くなるため、安価なウイスキーではアルコール感や未熟感が出て美味しくはなりません。

しかし、先に書いたようにミクターズのライウイスキーはマイルドで熟成感がしっかりある中に、ライウイスキーの香味も強く感じられる上質なライウイスキーです。多少濃く作っても違和感なく、むしろライのフレーバーを残しつつ、コーラのフレーバーが混ざり合って、いやこれ美味いやないかと。
名付けてコークハイならぬ、コークライです!
※既にこういうレシピがあったら申し訳ありません。

あまりに自然にすいすい飲めてしまうので、20%以上の度数があるモノと言うことを忘れてしまいそうになります。おおよそレディーに進める酒じゃないですが、レディーキラーの部類と言えるかも。
そして、どんどん何か違う組み合わせになっていくようで心苦しくありますが、ポテトチップスなどの揚げ菓子との相性が素晴らしくいい…ここはアメリカらしくプリングルス。背徳感というスパイスが加わって、堪らない組み合わせです。

普通のバーボンでも充分美味しくなりますが、ライのフレーバーがアクセントになったカクテル(というほど崇高なものではない)スタイルでも、是非試してみてください。
しかし本当に、飲みすぎ注意ですよ!

キルホーマン 7年 2013-2021 #623 for HARRY'S TAKAOKA 57.1%

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KILCHOMAN 
Aged 7 years 
Distilled 2013.8 
Bottled 2021.4 
Cask type 1st fill Bourbon Barrel #623 
Selected by T&T with くりりん 
Exclusively for HARRY'S TAKAOKA 
700ml 57.1% 

評価:★★★★★★★(6-7)(!)

香り:ややドライな香り立ち。フレッシュで強いピートスモークと合わせてシトラスのようなシャープな柑橘感、薬品香のアクセント。奥には煙に燻された黄色系フルーツが潜んでおり、時間経過で前に出てくる。

味:香りに反して口当たりは粘性があり、燻した麦芽やナッツの香ばしさ、ほろ苦さに加え、熟したグレープフルーツやパイナップル等の黄色系の果実感。年数以上の熟成感も感じられる。
余韻は強くスモーキーでピーティー。麦芽の甘みと柑橘感、微かに根菜っぽさ。愛好家がアイラモルトに求めるフルーティーさが湧き上がり、力強く長く続く。

若さを感じさせない仕上がりで、ストレートでも充分楽しめるが、グラスに数滴加水するとフルーティーさがさらに開く。逆にロック、ハイボールは思ったより伸びない。香味にあるシャープな柑橘香、燻した麦芽、黄色系フルーティーさの組み合わせを既存銘柄に例えるなら、序盤はアードベッグで後半はラフロイグのよう。粗削りであるが良い部分が光る、将来有望な若手スポーツ選手に見る未完成故の魅力。エース候補の現在地を確かめて欲しい。

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富山県高岡のBAR HARRY'S TAKAOKA(ハリーズ高岡)向けPB。2017年にウイスキーBARとしてリニューアルした同店の、4周年記念としてボトリングされたものです。
ボトリングは昨年12月頃から調整しており、本当は8月上旬に届くはずが、コロナの混乱で1か月スライド…。同店の周年には間に合いませんでしたが、中身はバッチリ、届いて着即飲してガッツポーズしちゃいました。今回は、そんな記念ボトルの選定に関わらせてもらっただけでなく、公式コメント掲載や、ラベルに名前まで入れて頂きました。

今回のリリースの魅力は、7年半熟成と若いモルトでありながら、若さに直結するフレーバーが目立たず年数以上の熟成感があること。そしてブラインドで出されたら「ラフロイグ10年バーボン樽熟成」と答えてしまいそうな、余韻にかけてのピーティーなフルーティーさにあります。

キルホーマンは、バーボン樽で7~8年熟成させると好ましいフルーティーさが出やすくなる、というのは過去の他のリリースでも感じられており、その認識で言えば、今回のボトルの仕上がりは不思議なものではありません。
ただ、個人的な話をすると、キルホーマンは2019年に話題になった100%アイラ9thリリースで醸成された期待値や、グレンマッスル向けキルホーマンでの経験もあって、「100%アイラこそ正義」と感じてしまっていた自分がおり。。。ノーマル仕様の酒質の成長に注目していなかったため、尚更驚かされたわけです。

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本記事では、今回のボトルの魅力を語る上で、キルホ―マン100%アイラにも少し触れることとします。
100%アイラとノーマルリリースの違いは、麦芽の製麦工程にあります。
100%アイラは蒸留所周辺の農家が生産した麦芽を、キルホーマン蒸溜所でモルティング。生産量は年間全体の25%で、設備の関係かフェノール値も20PPM程度と控え目に設定されています。一方で、今回のリリースを含むノーマルなキルホーマンは、ポートエレン精麦工場産の麦芽を使用し、50PPMというヘビーピート仕様となっています。

ローカルバーレイスペックでフロアモルティングした麦芽を前面に打ち出しているためか、あるいはピートを控えめにしているためか、100%アイラは麦芽風味を意図的に強調してボディを厚くしている印象を受けます。
そうしたフレーバーは、今後の熟成を経ていく上で将来性を感じさせる大事な要素でしたが、全体の完成度、バランスで見たときに、現時点ではそれが暑苦しく過剰に感じられることもあります。

今回のボトルは100%アイラほど麦感やボディはマッシブでなく、ピートが強めでボディが適度に引き締まったスタイリッシュタイプ。昔のCMで例えるなら、ゴリマッチョと細マッチョですね。
また、キルホーマンの製造工程の特色としては発酵時間を非常に長く取っており、かつては70~80時間程度だったところが、現在は最長110時間というデータもあります。そうした造りの変化が由来してか、これまでリリースされてきた2000年代のビンテージに比べて酒質の雑味が控えめで、フルーティーさがさらに洗練されているのです。

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つまり、過剰に麦感や雑味が主張しないからこそ、樽感(オークフレーバー)を上手に着こなし、今回のようなアイラフルーティータイプに仕上がったと。
この原酒が後5年、10年熟成したらさらに素晴らしい原酒になるかと言われると、樽感が強くなりすぎてややアンバランスになってしまうのではないかという懸念もありますが、1st fillバーボン樽ではなくリフィルホグス等を使えば15年、20年という熟成を経た、一層奥行きあるフルーティーな味わいも期待できると言えます。

もはや優劣つけ難い2つの酒質と、それを生み出すキルホーマン蒸留所。
近年、アイラモルトのオフィシャルリリースが増え、安定して様々な銘柄を楽しめるようになりましたが、一方でシングルカスクorカスクストレングスの尖ったジャンルは逆に入手が難しくなりました。愛好家が求める味わいを提供していくという点で、10年後にはアイラモルトのエースとなっている可能性は大いにあります。

以上のように、ウイスキー愛好家にとって魅力ある要素が詰まったキルホーマン蒸留所は、ハリーズ高岡が目指す「ウイスキーの魅力を知り、触れ、楽しむことが出来る場所」というコンセプトにマッチする蒸留所であるとも言え、同店の節目を祝うにピッタリなチョイスだったのではとも思えます。
今後、何やら新しい発表も控えているというハリーズ高岡。北陸のウイスキーシーンを今後も支え、盛り上げていってほしいですね。

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(2017年8月、リニューアルした直後のハリーズ高岡のバックバー。オフィシャルボトルが中心で、現在と比べると実にすっきりとしている。これが数年であんなことになるなんて、この時は思いもしなかった。現在はウイスキーバーとして北陸を代表すると言っても過言ではない。)

なお、なぜ富山在住でもない自分が、ハリーズ高岡の周年記念ボトルに関わっているかと言うと…本BARが4年前にリニューアルした直後、モルトヤマの下野さんの紹介で訪店。以降、富山訪問時(三郎丸訪問時)は必ず来店させてもらい、周年記念の隠し玉を贈らせてもらったり、勝手にラベル作って遊んだりと、何かと交流があったことに由来します。あれからもう4年ですか、月日が経つのは早いですね…。

そんな節目の記念ボトルにお誘い頂き、関わらせてもらったというのは、光栄であるという以上に特別な感情も沸いてきます。関係者の皆様、改めまして4周年おめでとうございます!

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※補足:本リリースへの協力に当たり、監修料や報酬、利益の一部等は一切頂いておりません。ボトルについても必要分を自分で購入しております。


963 ミズナラウッドリザーブ 21年 福島県南酒販 46%

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963
FINE BLENDED WHISKY 
MIZUNARA WOOD RESERVE 
Released in 2021 
700ml 46% 

評価:★★★★★★(6)

香り:様々な樽香、重層的なウッディネスがグラスの中から立ち上がってくる。トップノートはキャラメルのような甘みとチャーオーク、サルファリーさ。スワリングしていると、干し柿、林檎のキャラメル煮、蒸かした栗、バニラ、いくつかのスパイス。複数の樽を経たことによる樽感の重なりが、この複雑さに繋がっている。

味:味はまろやかで熟成感があり、まずはシェリー樽を思わせる色濃い甘みとドライフルーツの酸味。そこに煮だした紅茶やビターなフレーバー、微かにニッキのようなスパイス、樹液っぽさと腐葉土、奥には古酒感を伴う。余韻は焦げ感のあるビターなウッディネスが強く主張し、複数の樽香が鼻腔に抜ける。

ベースとなったブレンドの原酒構成が、シェリー樽熟成タイプとバーボン樽熟成タイプの輸入ウイスキー。それを国内でバーボン樽に入れてマリッジし、その後さらにミズナラ樽の新樽(チャー済み)でフィニッシュをかけた…といったところだろうか。長期熟成スコッチ備わるフレーバー、国内で追加熟成させたことによる強い樽感、それをさらに上塗りするミズナラエキスという、一見してカオスのように見えて、熟成感と加水が橋渡しとなり、重層的な仕上がりとして楽しめるレベルにまとまっている。
ロックにするとこれらのフレーバーが馴染み、余韻の苦みも落ち着く。バランスがとれて口の中に入ってくる。

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先日福島県南酒販さんからリリースされた、963ブレンデッドウイスキーの限定商品。同ブランドでミズナラと言えば、約3年前に17年のブレンデッドモルトがリリース。これは愛好家が求めているミズナラフレーバーを疑似的に再現していた、今後のミズナラ樽の使い方に新しい可能性を感じさせる1本であったところ。
今回はその空き樽を使って仕込んでいたものかと思いきや、通常リリースしている21年を新樽のミズナラ樽で2年間追加熟成したものだそうです。

ミズナラは他の樽材と同様、あるいはそれ以上にエキスが出やすい樽材だと言われています。なので長期熟成に用いるには、新樽ではなく何度か使い古したものが良いと、以前S社の方から伺ったことがあります。
なので今回のような新樽はフィニッシュに用いて少し落ち着かせるのが、定石と言える使い方の一つであるわけですが、それでも2年間、流石に色が濃いですね。キャラメルのような感じの色合いで、味わいもかなり濃厚に樹液を連想させるフレーバーがあります。

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(※2017~2018年にリリースされた963ブレンデッドモルト17年ミズナラウッドフィニッシュ。こちらはバーボン樽熟成の内陸モルトが主体であり、オーキーな華やかさとフルーティーさにミズナラ樽のスパイシーさが混じることで、S社からリリースされるミズナラ系の香味に似た仕上がりとなっていた。)

他方で、このウイスキーが単にエキスが濃いだけで終わらないのは、ベースのブレンドの個性にあります。
963ブレンデッドウイスキーは、スコットランドから輸入した原酒を、笹の川酒造の熟成庫で追加熟成して、それをブレンドすることで作られています。
今回は21年オーバーという長期熟成のバルクが用いられているわけですが、おそらく既に混ぜられているブレンデッドウイスキーバルクでシェリー樽タイプのものに、モルトウイスキーをブレンドしているのではないかと推察します。

香味の中に感じられるシェリー樽のフレーバーが、グレーン、モルト、どちらにも影響しているように感じられること。21年オーバーのバルクグレーン単体なら、もっとメローでバーボン系のフレーバーが強くなるのにそれが無い。一方で古酒感と表現されるような、オールドブレンデッドウイスキーのシェリー系銘柄で感じられるカラメル系のフレーバーが、全体の中で複雑さと奥行きに繋がっているのです。

日本とスコットランド、異なる環境がもたらす原酒への影響を活かして作られるブレンドは、少なくともスコットランド単独では作り得ない物だと感じています。
二つの地域が育てるウイスキー、それを活かすブレンド技術。日本側はまだ荒削りで原酒も足りませんが、時間が経って原酒が育ち、ノウハウが蓄積することで今後新しいジャンルとして確立していくことを期待したい。そんなことも感じたウイスキーでした。

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