ネルソンズ グリーン ブライヤー テネシーウイスキー 45.5%

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NELSON’S GREEN BRIER 
TENNESSE WHISKEY 
HANDE MADE SOUR MASH 
CHAS. & W.A.NELSON, 
750ml 45.5%

評価:★★★★★(5ー6)

香り:ブラウンシュガーやオレンジのメローなアロマの中に、スパイスと干し草、鉛筆の削りカスのような要素が混じるトップノート。

味:口当たりは滑らかでややオイリー。香りで感じられた干し草のような要素を伴いつつ、柔らかくメロー、微かな酸味。余韻にかけては軽やかなスパイシーさとほうじ茶のようなウッディネスが染み込むように感じられる。

テネシーウイスキーらしく、サトウカエデの炭で濾過した原酒の柔らかくメローな味わい。マッシュビルは明かされていないが、味わいの柔らかさと植物系の癖を残した味わいから推察してコーン6~7割、小麦2割強、大麦1割弱程度といったところか。原酒の熟成年数は5年程度のものから若い2年のものも含まれている印象で、香味に影響しているのだろう。
とは言えそれを差し引いて溶剤感やえぐみは少なく、酒質はテネシーでジャックかジョージディッケルかと言ったら後者寄りのタイプ。後述するストーリー性も持って、将来が楽しみな蒸留所である。

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※個人的におすすめなコーラ割り。滑らかさで引っ掛かりはなく、テイスティングで感じた干し草っぽさは消え、ほのかに酸味のある味わいがコーラの風味に上手くマッチする。

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久しぶりに外見、デザインで調達してしまった1本。
2014年にテネシー州ナッシュビルに創業した、Nelson's Green Brier(NGB)蒸留所によるテネシーウイスキー。ルーツは1860年に同州ロバートソン群で創業、1909年に禁酒法(当時は州法)の影響で閉鎖された旧Nelson's Grenn Brier蒸留所で、その創業者一族であるネルソン兄弟が、蒸留所の復活を目指して当時のレシピや製法を忠実に再現した…というもの。

調べてみると元のNGB蒸留所は年間生産量38万ガロン(約200万本分に相当)と同州でも大規模な蒸留所だったようで、ロバートソン群では最大の生産量だったとのこと。またその蒸留所としての評価は、閉鎖直前である1900年代に当時アメリカのスピリッツ業界で商標登録を取りまとめていた団体2つのうちの1つであるMIDAから、Aランク:50万ドル~60万ドルの評価を受けていたそうです。※ジョージディッケルがAA評価、ジャックダニエルはCCC評価。

現在のNGB蒸留所からは、テネシーウイスキー以外にバーボン仕様のもの、ライウイスキー等もリリースされていますが、今回レビューするテネシーウイスキーは同社のスタンダードリリース、言わば”顔”という位置づけ。
当時のラベルデザインだけでなくボトル形状も再現されており、ブランドエピソードともリンクしてること。やっぱり雰囲気って大事ですよ。中途半端にラベルだけ寄せた復刻版は…。
また、価格も3000円台と最近増えてきたクラフトバーボンにしては手ごろだったことも高ポイント。しっかり背中を押してくれました。

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※画像左、1900年代に流通した閉鎖前のNGBテネシーウイスキー。画像右、新たにリリースされた新NGB蒸留所のテネシーウイスキー。ラベルデザインに加え、ボトル形状も当時を意識したものであることが伺える。

と、まぁここまでは、蒸留所やブランドの統廃合、買収売却が盛んなアメリカンウイスキー業界では珍しくない話であり、今回のリリースも、実はレシピを指示して大手蒸留所に外注した原酒なんじゃないか?と思っていたら、 蒸留所含めて自前で作ったものであるという情報。
調べてみると現在の生産拠点や熟成庫の情報も出てきます。これは…良くも悪くもある話なんですよね。

というのも、2014年のテンプルトン・ライ集団訴訟事件以来、アメリカではそれまで一般的だった、蒸留所を持たずブランドのみ保有し、原酒は大手工場に外注したものを詰めるという効率重視のスタイルから、自前で小規規模な蒸留所も操業するというスタイルが増えてきています。
ところが、自前の蒸留所で作った原酒のクオリティが…大手のそれに比べて今ひとつなところが多く、それで蒸留所の操業にかかるコストが上乗せされていて価格も高いというダブルパンチ。
中にはうまく軌道に乗せて、クオリティの高い原酒を作っている蒸留所もあるようですが、果たしてNGB蒸留所はどちらなのか…。

前置きが長くなりましたが、飲んでみた印象は小規模生産者としては比較的よくできているレベルなんじゃないでしょうか。
復活させた、という当時のオリジナルマッシュビルについては詳細不明ですが、コーンの甘さ、そして小麦の柔らかさが特徴となっているレシピであるように感じます。
コメントに書いた通り適度に熟成した原酒のメローな要素と、若い原酒に見られる植物的な要素が混ざったような味わいですが、原酒の平均熟成年数が上がってくればもっとメローでプラス要素に振った豊かな味わいになっていくでしょう。現状でもロックやハイボール、カクテルベースで楽しんでいくなら特に不満はないです。逆に、スタンダードなジャックダニエルと比較して、コシのある味わいに仕上げてくれているという印象もあります。

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なお、蒸留所を再出発させたネルソン兄弟は、ウイスキー事業に従事していたというわけでも、自分たちの出自を知っていたというわけでもなく、たまたま訪れた肉屋の前で自分たちの苗字を冠した蒸留所の看板が目に入ったことがきっかけでルーツを知ることになり。
また、今回のリリースのキモともいえるマッシュビルや製法(サトウカエデの炭にニューメイクを通すリンカーンカウンティプロセス)も、一族の秘伝として伝わっていたものではなく、1900年当時の記事を見つけてそこに書かれていた情報が再現に繋がったとのことです。

まさにゼロからのスタート。個人的にはよくぞその状況で蒸留所を建設して再稼働させられたなぁと感心してしまいます。
ちなみに上述のとおり、NGB蒸留所ではテネシーウイスキー以外にバーボンウイスキーも蒸留しており、こちらも比較的手ごろな価格でリリースされています。ここまで知ってしまうと作り手としてとして気になる…あれ、なんで手元にもうあるんだろう(笑)
このあたりはまた後日、紹介させて頂こうと思います。

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御岳 シングルモルト ジャパニーズウイスキー 2025 43%

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ONTAKE 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
First Fill Solera Sherry Butts 
Bottled 2025 
700ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:黒糖かりんとうを思わせるやや焦げたような甘さと合わせ、ポップコーンのような香ばしさを感じるトップノート。合わせてドライプルーンやレーズンの色濃い果実香、微かにオレンジピールや針葉樹のようなハーバルさも感じられる。

味:滑らかでコクのある口当たり。シェリー樽由来のダークフルーツや天津甘栗の甘さ、飲み込むとウッディネスは紅茶のタンニンのようであり、ジンジンとした刺激を伴って染み込むように広がる。余韻も長く、完成度の高さが窺える。

さながらマッカランのような1本。熟成年数は5年前後だろうが、シェリー樽由来のリッチなフレーバー含めてバランスよくまとまったシングルモルト。濃厚でウッディなもの、やや淡い印象のもの、あるいはサルファリーなもの、成長個体差のある個性的なソレラシェリーカスクを合わせ加水で整えることで、全体的に厚みと複雑さを感じられる仕上がりとなっている。この蒸留所が目指す完成像の一つが見える1本でもる。

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※水割り、ロック、ハイボール。代表的な飲み方を全て試してみたが、シェリー樽熟成のウイスキーでありながらハイボールに合うのは、酒質の素性の良さ、香味の中に爽やかな柑橘やハーバルな要素があり、それらが全体をまとめてくれるからだろう。

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鹿児島、西酒造が2019年から操業する御岳蒸留所のシェリー樽リリース第二弾。もはや説明は不要と思いますが、この蒸留所の特徴はなんと言ってもシェリー樽。公式のWEBページにも記載されているように、シーズニングのシェリー樽ではなく全てボデガでシェリー酒の熟成に用いられていたソレラカスクを用いているというこだわりがあります。

それ以外にも蒸留所や熟成庫の設計、厳選した二条大麦と独自開発した酵母とこれまでのノウハウを活かしたウイスキーづくりで、世界が求める酒を作るというコンセプトを実現するにたるこだわりの数々。個人的に2019年の創業当時に飲んだニューメイクのクオリティに感動し、樽や製法のこだわりに圧倒されて以来、注目の蒸留所の一つとなっています。※蒸留所の情報は以下、2023年リリースの記事を参照ください。



そんな御岳蒸留所の一般市場向けリリースは、2019年の操業初期の原酒がソレラカスクで約3〜4年熟成を迎えたタイミングで払出し、2023年12月にリリースされた1stリリース。
その後はバーボン樽熟成原酒を使ってリリースされた2024 Editionと続いてきたところ。今回は香味から推察するに2023年のファーストリリースにも使われた原酒のさらに熟成年数を増したものを軸に構成したと思われる、シェリーカスクリリースが再び発売されています。

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※2024年リリースの御岳ピュアモルトジャパニーズウイスキー、バーボン樽熟成の1本。ウッディな中にオーキーなフルーツとビターな味わいが特徴。
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※2023年12月にリリースされたファーストリリースの御岳2023(左)との比較テイスティング。

2023年のリリースと比較して飲むと、香味の傾向は同じであるものの、熟成感、そして樽由来の香味の濃さが大きく異なっており、それは色合いから見ても感じられるところ。同じ43%でありながら御岳2023のほうが酒精感は強く、ややスパイシーな香味が強い印象を受けます。

もちろん上述の通り酒質の素性の良さ、ニューポッティーな香味の少ない柔らかい麦芽風味を感じさせる味わいから、ファーストリリースでもあからさまに若く荒々しい印象こそなかったものの、シェリーカスクの濃厚な味わいが全面に出ていることを期待していた愛好家側からすれば、ちょっとバランス寄りすぎると感じたような。誤解を恐れず言えば「思ってたんと違う」と感じた人も少なくなかったのでは。

一方で、こうして比較すると今作であれば、その期待に応えてくれるのではと。シェリー樽熟成のウイスキーとして確実にクオリティが上がっていると感じさせてくれます。
レビューを書くにあたって飲み始めましたが、気がつくとすごい減りましたね。シェリー樽熟成のウイスキーが辛くなる夏場にかかろうかというこの時期に、開封3日で写真の通り1/3くらい飲んでしまいました。

ソレラシェリーカスクはシーズニングのものに比べて個体差が大きく、その成長曲線が1樽1樽大きく異なることから一概に何年くらいとは言えませんが、今作のベースを5年前後熟成の原酒と考えると7−8年熟成で最初のピーク、その後は10年、12年、加水で整えるなら15年あたりまで順調に育ってくれそうな印象もあります。

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※御岳 5年 カスクストレングス 58% No,0062 for ウイスキートーク福岡2025

ちなみに、御岳蒸留所は一般向けリリースとしては今回レビューした43%加水のシリーズを展開している一方で、イベント限定で愛好家向けにカスクストレングスを販売しています。
直近だと6月のウイスキートーク福岡で5年熟成のものがリリースされ、現地参加されていた某氏のはからいでボトルを手に入れることができました。気になっていたボトルだけに、これは有り難かったです。

今回の2025リリースのシングルモルト御岳にも感じられる個性の一つ、濃厚でビターなシェリーカスクのフレーバーを、樽出しだからこその力強さ、説得力をもって感じられるのが特徴の一つ。
2023リリースのシングルモルト御岳の時はもう少し度数を上げたものをリリースしてほしいとレビューに触れましたが、そうそうこれこれ、こういうのですよ。
5年熟成のカスクということでちょっと荒さはありますが、蒸留所としても原酒としても、順調に成長していることを感じさせてくれると思います。
長くなってきたのでこのボトルはまた別途レビューを書きたいと思いますが、イベントで見かけて機会があれば、是非飲んでほしいですね。

The Whisky Tasting Club 第1回セミナーの開催について 6/30(月)19:00〜

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先日代表テイスターを拝命することとなったWTCことThe Whisky Tasting Clubですが、早速初回のテイスティングセミナーを開催することとなりました。

テーマは「スペイサイドらしさ」。スコッチウイスキーの生産地域はメーカーや団体によって区分が分かれるものの、一般的にはアイラ、アイランズ、キャンベルタウン、スペイサイド、ハイランド、ローランド、に整理されることが多いところ。
地域ごとの個性は度々愛好家の中で話題になり、個人的にアイラ、スペイサイド、ハイランドは蒸留所によって異なるため絶対的ではないものの、近年では地域の個性としてこういう酒質や味わいに寄せていこうというメーカー側の意図が見えるモノが多いと感じています。

今回のセミナーでは、リリースされたばかりの THE TASTER LINKWOODを軸に、6つのシングルモルトからその個性を紐解いていきます。
ポイントは知識からではなく、講師である代表テイスター及び参加者が感じた香味から個性の理解にアプローチするということ。WTCでは今後も「テイスティングを通じて学ぶ、体験する」をテーマに、様々なセミナーを企画します。
セミナーの進め方は色々工夫していきますので、参加いただけたら幸いです。

余談ですが、シークレット2種は私からの無償提供となります。初回セミナーですし、皆さんにより一層楽しんでいただけるよう、ちょっとくらいはオマケをと。
参加申し込みは以下、Saketryのサイトからチケットをご購入ください。なお、セミナーはWTC会員に限らず参加登録いただけます。
よろしくお願いします!

※参加申し込み:https://www.saketry.com/743177.html
※本セミナーは無事定員となりました。当日はよろしくお願いします。また今後2回目以降も企画しておりますので、引き続きご関心を頂けると幸いです。(6月21日追記)

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The Whisky Tasting Club セミナー①
 「改めて問う、スペイサイドらしさとは?」

 かつては密造のメッカから、時代を経て現代のウイスキー造りの起点ともなったスコットランド・スペイサイド地域。WTC初回のセミナーでは、時代と共に変化してきた同地域の蒸留所がもつ個性、らしさについて、代表テイスターである吉村宗之氏とくりりん氏の2人がそれぞれの解釈を述べ合います。
スペイサイド地方の個性は時代とともに変化しており、その要点を、リリースされたばかりの「ザ テイスター リンクウッド」を軸に、6種のウイスキーを通じて体験いただきます。

【開催日時】
6月30日(月)19時15分~21時00分
 ※19時00分開場

【会場】
TOKYO ALEWORKS TAPROOM
(東京エールワークスタップルーム板橋)
東京都板橋区板橋 1-8-4 板橋 Cask Village 1階

【参加費】
4,000円(税込)

【参加定員】
20名様限定(先着順)

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【テイスティングアイテム】

・オープニングハイボール
・ザ テイスター リンクウッド13年 2011-2024 51.3%
・ザ モルトマン リンクウッド17年 2006-2023 52.2%
・ウイスキースポンジ Edition No,99 グレンマレイ 32年 51.8%
・シークレットボトル①
・シークレットボトル②
※いずれも15mlでの提供となります。
 ※シークレットボトル①、②はスペイサイド地方の蒸留所のシングルカスクとなります。

 【WTCについて】
 The Whisky Tasting Club(WTC)はスコッチモルト販売(株)が運営する会員制サイトです。SAKETRYオンラインショッピングサイトや系列店舗と連動し、会員ポイントを利用してお得にお買い物をお楽しみいただけるサービスを2023年8月から展開しております(登録・年会費ともに無料)。

URL: https://whisky-tastingclub.com/
SNS(X): https://x.com/WhiskyTastingC

 whisky-tastingclub.com

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