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オーヘントッシャン 31年 1966-1999 #511 43.5%

カテゴリ:
AUCHENTOSHAN
Aged 31 years
Distilled 1966
Bottled 1999
Cask type Hogshead #511
700ml 43.5%

グラス:木村硝子
場所:BAR飲み(Y's Land IAN)
時期:開封1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★(5-6)

香り:ややゴムっぽさの混じるウッディさ、熟したバナナの甘いアロマ、薄めたカラメルを思わせる古酒感、ヒネ。微かにパフュームっぽい要素も感じる。

味:唇をヒリヒリとした刺激。香り同様薄めたカラメルを思わせる古酒系の樽感、サトウキビ、ドライな麦芽風味。奥行きがあまりなくクリアなボディ感。
余韻はほのかな青さを伴う麦芽、あっさりとしている。

樽感が比較的強く味はしっかりとしているが、中間から軽いというかクリアというか、三回蒸留らしい個性的なボディ感がある。加水は樽感と酒質の分離が進みシャバシャバになってしまうのでNG。静かに個性的なモルト。


近年殆ど作り手のなくなってしまった、ローランド伝統の三回蒸留。オフィシャルボトルでカスクストレングス、単一年度というだけでも珍しいリリースですが、1960年代蒸留で30年を超える長期熟成モルトとあっては、ボトラーズリリースでも中々出会えない貴重な1本です。

今回のボトルはオーヘントッシャンが1994年にサントリー傘下となった後、複数種類リリースしたボトルであるため、日本国内でも正規品として購入することができました。
自分も1965年蒸留の同ボトルを購入し、家飲みしていましたが、その香味はやはり個性的。ピートのように存在を強く主張するものではなく、はっきりと目立たないがそれとわかる、ボディのクリアさと舌への鋭角な刺激があります。

(オーヘントッシャン蒸留所でオブジェとなっている、かつて使われていた蒸留器。今回のモルトの蒸留にも使われたのだろうか。Photo by K67)

3回蒸留は、主にブレンド向けの原酒づくりに用いられてきた過去があります。
当時の原酒は麦やピートの香味が強かったので、2回蒸留ではそれらが残りすぎる。飲みやすく柔らかいブレンドを作るため、3回蒸留して個性を薄め、原酒のバランスをとろうとしたのではないでしょうか。
その結果、確かに香味は薄くなったのですが、単体で飲むと違う要素も抱えることとなった。。。その一つが、このオーヘントッシャンで感じられる特徴だと思います。

短熟の原酒では樽感の少なさや若さ、あるいは加水されていたりで目立たないのですが、長期熟成になってもそのキャラクターは消えず。むしろ樽感との対比でそれがわかりやすい。
好き嫌いが割とはっきり分かれるボトルだと思いますが、美味しさというより経験値を得ることができるボトルですね。

スプリングバンク 15年 1990年代流通 46%

カテゴリ:
SPRINGBANK
Aged 15 Years
Campbeltown Malt Scotch Whisky
1990's
750ml 46%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み(Y's Land IAN)
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:ベリー系のアロマ、熟した果実や黒砂糖、華やかさとみたらし系の古酒感が混在している、リッチなシェリー感。合わせて土っぽさや燻したスモーキーさ、モルトスナックを思わせる香ばしい麦芽風味も奥から感じられる。

味:とろりとした粘性、コクのある味わいが感じられる口当たり。ベリージャムとカラメルソース、黒砂糖、中間はややべったりとして変化に欠けるが、厚みのあるボディと徐々に顔を出すピートフレーバーが樽感を受け止めている。
余韻はドライでウッディ、そして柔らかいスモーキーさ。収斂するタンニンに対してベリー感が長く残る。

ベリー系の風味が混じる古きよきシェリー感、厚みのあるボディ、加水で整えられたまろやかな飲み口。樽感と酒質のバランスが取れており、現行品では中々見られない総合的に完成度の高い味わいを楽しめる。是非ストレートで。


当時は普通に売られていたボトルも、今飲むと完成度が非常に高いことに気がつく。マッカランしかり、グレンドロナックしかり、ハイランドパークしかり・・・。近年のオフィシャルも一時期に比べて良くなってきたとは思いますが、70年代蒸留の原酒が普通に使われているそれと比較するのは酷というものです。
加えて1990年代というのは、酒税法大改正や円高の影響もあり、洋酒の価格崩壊が起こった時期。世間はバブル崩壊による不況でそれどころではなかったとは思いますが、ウイスキー愛好家的には天国のような時代だったとも言えます。

今回のスプリングバンク15年は、まさにその時代を体現するかのようなボトル。オールドシェリーのニュアンスがぷんぷんするだけでなく、厚みのあるボディのスプリングバンクらしさが底支えとなって、味はまろやか、香りはふくよか。モルトの香水などと例えられたのも理解できる、高い完成度を誇るオフィシャルリリースという印象の1本です。
このボトルが普通に買えたのは、羨ましい限りです。


そうして当時流通量が多かったこともあり、この時期のスプリングバンクは比較的飲む機会に恵まれているのですが、色がまちまちでロット差が大きいという印象もあります。
これはバンクのボトリング設備がそこまで大きくないので、ロット差が出やすいこともさることながら、スプリングバンクが一時期"冬の時代"に陥り、樽の調達も差が出てしまっていたのではないかとか、色々感じるところはあります。

特にビンテージで比べると上記写真の同時期流通品25年と21年では21年の方が濃く、さらに21年よりも若干今回の15年の方が濃いという、普通に考えると逆じゃない?という構成。まあ上記ロット差や、流通先の違いもありますし、例えばグレンファークラスの角瓶時代も25年より21年の方が濃いとか普通にありますので、メーカーのブレンド方針というだけかもしれません。
ただこのわかりやすい違い故、当時は「スプリングバンクを買うなら色が濃いほうを買え」という愛好家共通の方針もあったのだとか。

イベントでわざわざテイスティングする特別感はあまり感じないかもしれませんが、はっきり言って下手なボトラーズに手を出すくらいならこういうボトルのほうが旨いのです。まして当たりロットならなおのこと。
このボトルは例によってBAR IANのウイスキーラバーズ名古屋2018先行テイスティング会でのテイスティングなわけですが、イベント当日、何を飲んで良いか迷うとか、あるいはとりあえず飲みやすくて美味しいものを求めるようであれば、1990年代のミドルエイジ・オフィシャルボトルを探してみると良いと思います。

駒ケ岳 30年 シェリーカスク ナチュラルカスクストレングス 53% 本坊酒造

カテゴリ:
KOMAGATAKE
Natural Cask Strength
Hombo Shuzo
Aged 30 years
Distilled 1986
Bottled 2016
Cask type Sherry
700ml 53%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み(Y’s Land IAN)
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:香木を思わせるような華やかで強いウッディネス。ツンとしたアタックが鼻腔を刺激する。奥から洋菓子、メレンゲクッキーのような甘い香りとドライアプリコットや黄桃のニュアンス。

味:乾いたウッディネス、ややギスギスしたアタックの強い口当たり。同時に華やかで、おしろいのような香りが鼻腔に抜ける。
熟したアプリコットや蜜っぽい甘さ、ほのかにハーブも感じるが、全体的には樽感主体。フィニッシュはドライでオーキー。濃く入れたフレーバーティー、渋みを伴うウッディさが長く残る。

樽感が強く、そうしたウイスキーに見られるサラサラとしたような口当たりやウッディネスが特徴。まさに樽を詰め込んだモルト。加水すると華やかな香りはバランスが良くなるが味は樽感が分離するようでややぼやけてしまう。難しい。


先日投稿した、駒ケ岳30年シェリーカスク48%(右)と同じ樽構成で、ブレンド比率違いと思われるシングルモルト。
今回のボトルは樽出しそのまま、カスクストレングスバージョンとしてリリースしているわけですが、樽構成を裏付けるように、どちらのボトルも香味の構成は同じベクトル上にあります。

それはシェリーカスクと言うより、複数回使用した後のプレーンカスクや、シェリー感の薄い樽だったのかオークフレーバーを主体とする構成。ただ48%仕様のリリースと比較すると、今回のボトルの方が樽由来の要素が強く、樽在そのものがより濃く溶け出ているようで、なかなかアクの強い味わいに仕上がっています。例えば使った2樽の原酒のうち、片方の樽感が強く、その原酒の比率が高いのかもしれません。

ゆっくりと香りを楽しみ、文字通り舐めるように舌と口を慣らしながら時間をかけて飲んでいく。30年の時の流れを感じるように楽しむボトルであると思います。


1985年創業の信州蒸留所において、今回の一連の1986年リリースはまさにこれまでの歴史が詰まっている一つ。あくまで樽由来の要素とわかっていても、緑萌える木々に囲まれた信州の環境を連想する事が出来る風味でもあります。

まあテイスティングコメントでは檜風呂とかウッドコテージとか、資材置き場なんて表現もありそうですが(笑)。
なお、2本を比較すると、今回の仕様は53%でナチュラルカスクストレングスなのですから、48%の方も60%から10%以上落としたというレベルではなく数%程度と考えられます。
仮に加水前が同じ53%だったとしても約1.1倍。本数を増やすより味を整えた意味合いが強かったのではないでしょうか。

こうしたウイスキーにおける加水の是非は様々ありますが、全体のバランスを考えた時に酒質と樽感との駆け引きというか、無視できない要素なんだなと改めて感じさせられました。
これも同時にテイスティングしたからこそ感じる事ですね。

スキャパ 8年 1989-1997 ジョンミルロイ セレクション 59.5%

カテゴリ:
JOHN MILROY SELECTION
ORKNEY ISLANDS
EXTREME NORTHERN HIGHLAND
(SCAPA)
Aged 8 years
Distilled 1989
Bottled 1997
700ml 59.5%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み(Y's Land IAN)
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:少々硬さのあるハイトーンな香り、注ぎたては青みがかった麦感から、カステラやバニラウェハースを思わせる甘みが開いていく。

味:アタックの強い口当たり。ナチュラルオーク、まだ硬さのある洋梨、青いバナナ。唾液と混じるとオイリーでカステラのような甘みも感じられる。
余韻はハイトーンでドライ、ほのかに麦芽由来のほろ苦さを感じるヒリヒリとした余韻。

経年変化で角は取れつつあるが、短熟ゆえ樽感は淡く、硬さとアタックの強さがある程度残っている。少量加水するとまろやかさ、さらなる甘みが引き立ちグッド。


蒸留所名称ははっきりと書かれていないものの、オークニーモルトでエクストリーム・ノーザン・ハイランド表記、つまりスキャパ蒸留所というボトル。
スキャパ蒸留所が1994年に一時閉鎖される前の蒸留で、愛好家を逆に惹きつける8年という短熟仕様。旨さもさることながら、個性を求めるコアなドリンカー向けの1本です。

昨日記事にしたハイランドパークも樽感の淡い構成ながら、同じオークニーモルトとは言え酒質の違いは歴然。ピートのニュアンスも穏やかでニュートラルな作りに加え、ボディもそこまで厚いわけではないですね。
ただ20年という瓶熟から角が取れつつありますが、ボトリング当時はもっとバチバチでアタックの強い味わいだったのだと思います。

かつてスキャパの原酒は殆どがブレンドに使われ、ボトラーズリリースでしかそれを味わえなかった時期がありました。
この1980年代〜1990年代前半の原酒が熟成され、加水されて作られていくのが今は亡き12年、14年、16年と熟成年数を推移したスキャパ・オフィシャルボトルシリーズ。
今でも飲めて共通点がわかりやすいのは16年。この8年熟成原酒をバーボン樽あたりに突っ込んでさらに熟成し、40%あたりまで加水すると。。。あんな感じで華やかなモルトウイスキーになるかなと。原酒の繋がりでイメージするのも面白いですね。


今回のボトルは、連日の更新同様にウイスキーラバーズ名古屋2018のIANブースでテイスティングが可能です。
美味しさというより面白さ、経験値を求めるボトルですが、中々機会も限られるボトラーズ・オークニーモルト飲み比べもいい経験になるのではないでしょうか。

ハイランドパーク 1978-1996 サマローリ オークニーモルト 45%

カテゴリ:
HIGHLAND PARK
SAMAROLI "COILLTEAN"
Aged 18 years
Distilled 1978
Bottled 1996
700ml 45%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み(Y's Land IAN)
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:やや青みがかった淡い樽香、洋梨やアロエ果肉、蜂蜜とバニラの甘み、奥からスモーキーなピート香。ナッツの香ばしさ、スワリングで干し草のような植物感もある。

味:コクのある口当たり。蜜っぽい甘みは蜂蜜檸檬、麦芽風味、乾いた牧草、青みがかった甘さのアクセント。徐々にスパイシーなオーク、ボディが厚く、奥行きのあるフレーバー。
余韻は染み込むようにピートが広がり、スモーキーフレーバーが強く感じられる。

恐らく2nd〜3rdフィルあたりのアメリカンホワイトオーク(シェリーカスク)             の熟成か。やや青みがかったプレーンな樽香に、ハイランドパークらしい甘み、麦感、スモーキーさと酒質ベースの味わいが楽しめる。少量加水すると華やかなオーク香、甘い麦芽風味が引き立つ。


BAR Y's Land IAN ウイスキーラバーズ名古屋出展ボトル。先行テイスティング会でのテイスティング。

昨年故人となってしまったサマローリ氏が、まだ現役だった時代のハイランドパークボトリング。近年、ハイランドパークはボトラーズに原酒を売らなくなってきていて、特に長期熟成原酒は益々貴重にという話も業界サイドから聞くところ。そう言えば70年代蒸留のそれは久しぶりに飲んだ気がします。

今回のボトルの特徴は45%加水でありながら残るボディの厚み、酒質由来の味わいの強さでしょうか。うまい具合に加水が効いて、飲み口のバランスは熟成年数以上に良いですね。
60年代に続き、70年代のハイランドパークは評価の高いボトルが多いわけですが、この酒質で良質なシェリーカスクなどが組み合わされば、混ぜても加水でも単一でも旨くなるよ、という土台の良さを学ぶことができるボトルだと思います。

なお、伝聞情報ですが、当時のサマローリはケイデンヘッドから樽(原酒)を買っていたとのこと。
同時期のケイデンヘッドのリリース、グリーントールのオーセンティックコレクションも今回のように酒質ベースで樽感の淡いものが多く、それを加水で出したかカスクストレングスで出したかという、納得できる共通項も感じられました。

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