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オスロスク 15年 2006-2021 55.5% GM for ハリーズ金沢

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AUCHROISK 
GORDON & MACPHAIL 
For Harry’s KANAZAWA 
Aged 15 years 
Distilled 2006 
Bottled 2021 
Cask type Refill Bourbon Barrel 
700ml 55.5% 

評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでオーキー、バニラ、ココナッツ、洋菓子系の甘さ。序盤はウッディでドライなトップノートだが、徐々に熟したバナナや洋梨、フルーティーな甘さが開いてくる。

味:コクがあって柔らかい度数を感じさせない口当たり。麦芽風味と合わせてオークフレーバーの塊。マロングラッセと黄色フルーツのアクセント。徐々にドライでウッディ、スパイシーなフィニッシュ。
時間経過でオークフレーバーの塊が解け、林檎のコンポートや白葡萄を思わせる甘く華やかなフレーバーが広がってくる。

近年のGMコニチョらしい蒸溜所の個性を活かしたカスク。リフィルバーボンバレルだが、1st fillかと思うくらいに濃厚なオーキーさがあり、それでいて渋みが強いというわけではない。オスロスクらしい適度な厚みのある酒質、柔らかい麦芽風味が馴染んでいる。
時間経過での変化についてはコメントの通りで、開封直後やグラスに注いだ直後は絡まって一つの塊になっているフレーバーが、徐々に解け、広がっていく点がこのボトルの注目すべき点である。また、加水の変化も同様でしっかりと伸びてくれる。これは手元に置いて1本付き合いたいボトル。

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先日より応援記事を投稿している、BARハリーズ金沢さんの記念ボトル。
経緯については過去記事に記載の通り、三郎丸蒸溜所ともつながりの深いBARハリーズ高岡が金沢駅前に移転することとなり、その店内内装にかかる費用としてクラウドファンディングが行われています。
このボトルはそのリターンの1つとなっているもので、今回サンプルを頂いたのでレビューを掲載します。

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※クラウドファンディングは11月18日まで。初期の目標額である300万円は達成しており、500万円のネクストリターンも達成間近。後30万円!!
樽焼きステーキ&ウイスキーが楽しめるモルトバー「ハリーズ金沢」を作りたい‼ - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)

オスロスクのリリースは最近少なく、特に近年間違いのないGMコニチョとなれば、気になっている人も少なくなかったのではないかと思います。
で、飲んでみた感想としてはやはり間違いなかったわけです。カスクストレングスでハイプルーフらしい余韻の強さ、麦芽系のフレーバーの厚み、熟成を経たことによる奥行きがあり、それでいて近年のトレンド的なフレーバーは外さない。一見すると通向けというか、地味なところがあるスペックですが、ある程度飲んだ愛好家にとってはこういうのが良いんです。

某ロールスロイスとか政府公認第一号とかより、タムデューとかノッカンドゥ―とか…こういうちょっとマニアックなところのほうが”くる”んですよね。
また、今回のボトルのポイントはリフィルのバレルでありながら、しっかりとしたオークフレーバーが備わりつつ、逆にウッディすぎないバランスの良い仕上がりがポイントです。開封後の変化が良好であることから、それこそハリーズ金沢が今後長く金沢の地でウイスキーを広めていくにあたり、5年後であっても10年後であっても変化を楽しめるような、同店にとって基準であり、基盤になるようなボトルだと感じます。これは良いカスクを選ばれましたね。

ハリーズ金沢のオープンは11月23日(火)。マスターの田島さんから頂いた写真を見て、その雰囲気の良さにびっくりしました。なんで東京にないんでしょうか(笑)
カウンターの一枚板の雰囲気、マーブル模様のような木目は、同店が以前あった高岡の銅器を思わせる模様の洋でもあります。
昨日の東京のコロナ感染者は7名。月曜日とはいえ今年一番低い数字。いよいよ現実を帯びてきたアフターコロナの社会。。。三郎丸蒸留所にも去年以来いけてませんし、北陸に脚を運ぶ楽しみがまた一つ増えました。

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マクダフ 13年 2006-2020 GM 52.9% For モルトヤマ #101695

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MACDUFF 
CONNOISSEURS CHOICE
GORDON& MACPHAIL
Aged 13 years
Distilled 2006
Bottled 2020
Cask type Refill Bourbon Barrel #101695 
For Maltoyama 
700ml 52.9%

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:オーキーで華やかなトップノート。洋梨やドライパイナップルを思わせるフルーティーさ、ココナッツ、ほのかにバタービスケット。注ぎたて(開封直後)はドライでスパイシー、ハーブや木材の削りカスのようなアロマがトップにあるが、徐々に黄色系のフルーティーさと蜜っぽさ、麦芽由来の甘みが強くなり、加水するとさらに開いてくる。

味:スムーズな口当たりから、柔らかいコクのある麦芽風味と軽いスパイシーさ。香り同様にアメリカンオーク由来の華やかな含み香があり、洋梨の果肉、砂糖漬けレモンピールとナッツを思わせる甘みとほろ苦さ。余韻は程よくドライでウッディ、オーキーな黄色系フルーツの残滓を伴って穏やかに続く。

オークフレーバーと麦芽風味主体。リフィルバレルなのがプラスに働いた、樽感と酒質のバランスの良さが魅力的な1本である。開封後時間経過、または少量加水すると香りにあったドライな刺激が穏やかになり、すりおろし林檎や白葡萄のフルーティーさ、ホットケーキなどの小麦菓子を思わせる甘さといった、好ましい要素が充実してくる。40%程度まで加水するとさらに麦芽風味が充実し、まさにデヴェロンだなぁと言う感じ。フレーバーを楽しむなら段階的に加水を推奨するが、ハイボールにしても良好で、夏向きの味わいを楽しめる。
近年のGMコニッサーズチョイスらしい、蒸溜所のハウススタイルを活かした仕上がり。蒸留所の限定品やハンドフィルを買ったら、こんな感じのものが出てくるんじゃないかという完成度の高い1本。

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先日、T&T TOYAMA ジャパニーズウイスキーボトラーズ事業の紹介をしたので、今回は手元にある富山関係リリースのレビューでも。T&Tなら ニンフのラフロイグやアードベッグって手もあるんですが、この状況じゃ読んで貰った後でBAR飲みって訳にもいかないですし、ここはまだ買えて家飲み向きなボトルで。。。
というわけでこのGMコニッサーズチョイスのマクダフ、まだ買えるんですよね。価格も同じようなフレーバーを持ったオフィシャルや、他のシングルカスクリリースとの比較でも違和感なく、味も悪くない。というかむしろ良い部類なのに、なんででしょう。スペックが地味だからかな?

構成は安定のバーボン樽熟成、黄色系フルーティー・ハイランドモルト。リフィルバレル熟成なので、ドカンとオーキーで突き抜ける感じではないですが、その分マクダフらしい麦芽風味がフルーティーさと合わせて開く綺麗な仕上がり。過剰なウッディネスなどネガティブな要素が少ないだけでなく開封後の変化も良好で、ドライ気味な部分が徐々にこなれて好ましい要素が開いてきます。

私見ですが、マクダフの魅力は若いリリースから見られる麦芽風味と、熟成を経ていくと現れる綺麗なフルーティーさにあると感じており。今回の一本は長熟のカスクではないものの、それらに通じる魅力を感じさせてくれると思います。
その他の飲み方では、ロックにするとちょっとウッディさが目立ちますが、軽やかで冷涼なオーク香が心地よく、加水やハイボールは言わずもがな。特にハイボールはこれからのシーズン、テラスや野外でゴクリとやったら優勝案件でしょう。アレンジとしてレモンピールをちょっと絞ったり、あるいはスペアミントなんて浮かべてみたり。。。単にオーキーなだけでなく、酒質由来のフレーバーの素性が良いので、様々な飲み方にマッチしてくれます。


このマクダフがリリースされた時、同時にシェリー樽熟成のグレントファースもリリースされ、愛好家の間で話題になっていました。
やっぱりGMってボトラーズは凄いですね。ボトラーズ苦境の現状にあっても普通にこういう樽が出てくる…そしてそれを相応な価格でPBとして回してしまうのですから、「GMの貯蔵量は化け物か」とか呟いてしまいそうです。
(勿論、そうした原酒を引っ張ってこれたモルトヤマさんの繋がりも、これまで数多くのPBをリリースしてきた経験・実績によるもので、一朝一夕に実現できることではありません。)

話が逸れますが、GMのコニッサーズチョイスは、かつては加水オンリーで、カラメルを添加したような甘みのある緩いシェリー感のあるボトルが中心。その後はそれのリフィル樽かというプレーンなタイプが主体。つまりシェリー樽熟成系が多かったわけです。
ところが、2018年頃にブランド整理を行ってリリースの方向性を変更すると、今回のようにシングルカスクでリリースするコニッサーズチョイスが登場。このシリーズでは先に触れたキャラクターから離れ、バーボン樽で熟成した原酒や、蒸溜所のハウススタイルやオフシャルリリースの延長線上にある味わいのリリースが見られるようになります。

おそらく、CASKシリーズなど別ブランドに回していた樽をコニッサーズチョイスで使うようになったのでしょう。また、GM社を含めてスコットランドの老舗ボトラーズは、1年のうち決まったタイミングで蒸留所からニューメイクや熟成原酒をまとめて買い付けており(そういう会議の場があるのだとか)、一部の原酒は他ボトラーズメーカーに回すなど、ブローカー的な活動もしています。
今回のボトルのように、今までのGMのリリースと毛色が違う、蒸溜所のハウススタイルが全面に出ているような樽は、ひょっとすると熟成原酒として買い付けたものからピークを見極めてリリースしたボトルなのかもしれません。

絶対的エースと言えるような、圧倒的パワーや存在感のあるタイプではありませんが、所謂ユーティリティープレイヤーとして、こういうボトルが1本あると助かる。そんなタイプのリリース。
ちなみにフレーバーの傾向としては、麦芽風味が豊富なものでクライヌリッシュ、グレンモーレンジ、アラン。ぱっと思いつくマイナーどころでダルウィニー、ダルユーイン、オード。。。この辺が好みな方は、このボトルもストライクゾーンではないかと思います。

グレンエイボン 25年 1990年代流通 40%

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GLEN AVON 
SINGLE HIGHLAND MALT 
Gordon & Macpahil 
Years 25 old 
1990 - 2000's 
750ml 40% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:サンプル@BAR 1two3
評価:★★★★★★(6)

香り:柔らかい香り立ち。カラメルソースとドライプルーンを思わせる色濃い甘さ。枯れたようなウッディネスに、煮出した紅茶のような濃厚でビターな印象も感じられる。

味:緩くスウィートな口当たり。カラメルソース、デーツやドライプルーンを潰して混ぜたような、ほろ苦く甘いダークフルーツ風味。ビターなウッディネスが余韻にかけて広がり、序盤の甘さを打ち消すように、タンニンが染み込む。

懐かしの典型的GMシェリー味。緩い口当たりであるが、独特の甘さと加水の緩さのあとから枯れて細いボディの印象があり、いまいち広がりに欠ける。過去何度か飲んだボトルだが、大体こういう系統だった。
この緩さはまるでXOクラスの量産コニャックを飲んでいるようなイメージで、そこからウッディでビターで、樽感全開。蒸留所の個性は見当たらないが。。。

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先日のジョン・グラント17年に続いて、bar 1two3の村田さんから頂いたサンプル。
グレンエイボン(というかGMのリリース)は1990年代後半からトールボトルにデザインが統一されているようなので、今回のボトルは1990年代の前半から中頃のものと推察。たまにオークションで「ウイスキー」表記のシールが張られた特級時代の名残を感じさせるボトルが出回ったりしています。

グレンエイボンの中身はグレンファークラスと言われていますが、仮にそうだとすると今回のボトルの香味でファークラスのオフィシャルで共通項があるのは、同じ流通時期である90年代のダンピーボトル25年。カラメルソースが混じったような、緩く甘くてウッディな・・・可もなく不可も無しというか、率直に言って面白味の少ない味わいと言えるボトルです。

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(角瓶からリニューアルした1990年代流通のオフィシャル・グレンファークラス。ネックの付け根部分の年数表記がポイント。この時代の30年は濃厚かつ香味の広がりもある美味なシェリー感を味わえるが、25年は今一つ締まりがない。)

ただ、今回のボトルはそんなオフィシャルに共通する緩い甘さに混じって、異なる個性が感じられるのがポイントだと思います。
それは線の細いボディ、枯れたようなウッディさ、ビターな余韻。これが良いか悪いかはさておき、原酒の傾向としては熟成年数表記以上の長い熟成期間を感じるものです。

おそらくですが、所有原酒の中でもピークを過ぎて微妙になってしまったものを、こうしたブレンドに回しているのではないかと推察。ボトラーズメーカーとして、シングルカスクだけでなく、シングルモルトやオリジナルブレンド銘柄等(さらには他社への原酒供給まで)手広く実施している準オフィシャルメーカーとも総合商社とも言えるようなメーカーがGMです。
グレンファークラスの場合は、蒸留所名は使えなかったようですが、良質なものは単一蒸留年表記のグレードに回したり・・・とか調整していたのではないでしょうか。

厳しめのレビューになりましたが、決して味が悪いわけではありません。ただなんというか面白味がないから、ちょっとネガな部分が目立ちやすいのが損なボトルなのです。

ハイランドパーク 29年 1989-2018 GM 57.0% #18/084

カテゴリ:
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HIGHLAND PARK 
GORDON& MACPHAIL 
Aged 29 years 
Distilled 1989 
Bottled 2018 
Cask type Refill Sherry Butt #18/084 
700ml 57% 

グラス:木村硝子
時期:不明
場所:自宅@サンプル
暫定評価:★★★★★★(6ー7)

香り:スウィートでドライ、スパイシーな香り立ち。ブラウンシュガーやカラメルソース、色の濃い甘さを感じた奥からハイトーンな刺激が鼻孔を刺激する。

味:とろりとしてリッチなシェリー感。ドライプルーンやデーツ、カラメルソースで煮詰めたダークフルーツを思わせる甘酸っぱさとほろ苦さ。余韻にかけては序盤の甘味をウッディでビター、スパイシーな刺激が引き締め、タンニンが染み込むようなフィニッシュ。

ハイランドパークっぽさよりも、新旧入り交じったような不思議なシェリー感が主体。それこそ昔のGMシェリーを思わせるカラメル系の甘さやダークフルーツ感の中に、傾向の異なるスパイシーさが混じる。少量加水するとスパイシーさが和らぎスウィートでマイルドな味わいに。総合的には良くできているが、これは近年シェリーなのかオールドなのか、果たして。。。


こんな樽があったのかと感じる、GMコニッサーズチョイスのグッドリリース。
酒質の個性よりも、いかにも昔のGMリリースらしい色濃くしっかりと付与された樽感が特徴的ですが、日本市場には同じ表記で熟成期間が約3ヵ月短いだけの、色の薄いシングルカスク(以下、画像参照)が入っていたようで。。。色合いだけで比較すると、ちょっと違いすぎるというか、ほんとに同じリフィルシェリーバットなのか?ラベル、コピペで作って修正し忘れてない?と思えるほどです。

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(ご参考:HIGHLAND PARK Aged 29 years 1989-2018 Cask No,19/057 55.3%)

こうした色濃いリフィルシェリー樽のリリースは過去にもあり、特段不思議なものではありません。
要因としてまず一つ考えられるのが、1st fillが灰汁抜き程度の短熟でしか使われなかった樽であり、エキスが充分残っていた可能性。そしてもう一つ考えられるのが、余韻にあるビターでウッディな傾向と新旧入り交じったようなスパイシーさから、スパニッシュオークバットのリチャード仕様、鏡板には新しいものが使われた補修樽であるという可能性です。

過去のGMのリリースで、ハイランドパークの短熟と言えば、1970~1980年代にリリースされていた8年があります。
この熟成に使われていた濃厚な1st fillなら、あるいは次に入れた原酒にもエキスを残すのでは。。。という希望的観測と、何よりオールドハイランドパークの中でも名高いボトルのDNAを継いでいると考えると、このリリースは非常にロマン溢れる1本となります。
他方で、ブレンド向け等を合わせ、年間で膨大な数の樽を払い出すGMが、いちいち同じ銘柄がめぐりあうような樽の管理をしているとは思えず。。。
現実的には、当時のGMから数多リリースされていた同じような短熟リリースの樽が使われたと考えるか。もう一つの可能性として、クーパレッジ経由の補修樽と考える方が、フレーバーの系統的にも自然なように感じます。

実際のところ、色の薄い日本向けの方が、GMの最近のリリースに多く見られる、あの特徴的なGMカスクの払い出しをそのまま使ったと言われても違和感なく。むしろ色合いとしては自然なのです。
飲み比べをしたわけではなく、これ以上は画竜点睛を欠くため控えますが(何より野暮ですし)、ついついあれこれ考えてしまうのは魅力的なウイスキーであるから。普通に味だけ見ても、良質なシェリー樽フレーバーが付与されたグッドリリースだと思います。


余談:このボトルは先日の持ち寄り会にて、どんな樽が使われているのかと話題になった1本でした。その際は「昔のGMシェリー樽の短熟払い出し後」という、本記事で1つ目の可能性寄りの考察をしましたが、会終了後に小瓶交換をしてじっくり飲んでみると、そうとは言い切れないニュアンスがいくつも見られたわけです。
やはり落ち着いて飲み直す機会は重要ですね。美味しいだけでなく、大変考えさせられる1本でした。追試の機会を頂き、ありがとうございます!

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今日のオマケ:笹の川酒造 初しぼり 純米吟醸 しぼりたて生

正月用の日本酒の一つ。安積蒸留所を操業する老舗笹の川酒造の本職とも言うべき、日本酒の2019年の初しぼり生酒。
昨年の新酒は、準備していた酒米や酒造そのものが台風の浸水被害を受け、震災後最大の被害があった中での仕込みでした。

そのため、新酒は例年より遅い出荷となったようですが、柔らかくクリーミーな米の旨味を感じる口当たりに、くどすぎず品の良い吟醸香、フルーティーさ。バランスの良さにすいすい飲めてしまう、美味しい日本酒に仕上がっていると思います。
昨日の若鶴の生原酒は、和洋どの料理も受け止められるような濃い酒でしたが、今日の日本酒は和食寄りで、刺身や昆布巻き等の脂の強すぎない料理と合わせると相乗効果を期待できると思います。
しかしなんというか、気持ちよく酔える良いお酒ですね。

ロングモーン 30年 GM 43%

カテゴリ:
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LONGMORN 
GORDON & MACPHAIL 
AGED 30 YEARS 
2000's
700ml 43% 

グラス:リーデル
時期:開封後1週間程度
場所:JAM Lounge 定例会
評価:★★★★★★★(7)

香り:角のとれた柔らかい香り立ち。スウィートでリッチ、ダークフルーツ、キャラメルを思わせる甘味と、ほのかに湿ったウッディネス。スワリングしていると奥から林檎のカラメル煮、パイナップル、トロピカルなフルーティーさが開いてくる。

味:ゆるく柔らかい口当たり。香り同様の構成でスウィートな飲み口から、徐々にウッディーでビター。爆発するような盛り上がりはないが、奥から若干エステリーかつトロピカルなフルーティーさも感じられる。
余韻は湿ったようなウッディネスとタンニン、口内に残る甘さを引き締め染み込むように残る。

まさにGM味というモルト。加水の影響に加え、なにかシロップのようなものを添加したのではないかとすら感じる、独特の甘味が香味の中間あたりまでを圧殺しているが、時間を置くと長熟ロングモーンらしいフルーティーさが開いてくる。蒸留時期1970年代と考えると納得の個性。なにより、このゆるさとバランスが、ストレートを自然体で楽しませてくれる。


GMの蒸留所ラベルシリーズ。2000年頃からの10年ちょっとの間にボトラーズまで飲んでいた愛好家にとっては「ロングモーンと言えば」あるいは「GM長熟加水と言えば」と例えられるキャラクターを確立していた、代表的な1本です。
この香味構成のロングモーンが、シングルカスクで数百本単位の限定品ではなく、万単位で大量生産されていたのですから、第2のオフィシャルにして、ハウススタイルであったと言っても過言ではありません。

当時飲み始めだった自分は、旨いけど面白くない、加水と樽で酒質を圧殺している、求めているシェリーはこれじゃない。などと、決して不味いとは言わないものの、正直安パイだと軽視していた部分がありました。
ただ、そこから今までウイスキーを飲み続けて来た上で、改めてGMの加水長熟シリーズを飲んでみると「こういうので良かったんだ」と思えてくる。1万円前後の価格で量産していたGMのすごさと共に、自分が落ち着く形を実感させられています。
きっと、そう感じている愛好家は自分だけではないことでしょう。

さて、今回のボトルや当時のGM長期熟成リリースに感じられる、カラメルを添加したような独特のシェリー感は、蒸留時期的に1980年代中頃あたりの仕込みから大きく数を減らしていきます。(もはや近年では絶滅危惧種。)
単に出荷調整をしているというより、樽そのものが切り替わっているわけですが、このシェリー感を産み出していた樽がなんだったのか、そしてなぜ消えてしまったのかについて、自分の考察は以前”ハーベイ・ブリストルクリーム”のオールドボトルをレビューした際にまとめた通りです。

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(イギリスでトップブランドだった、ハーベイ・ブリストル・クリーム1960~70年代流通。ブレンドメーカーのような立ち位置で、スペインの様々なボデガから原酒を買い付け、イギリスのブリストル及びその近郊で、保管とブレンドを1989年の移転まで行っていた。色を見れば一目瞭然だが、低価格帯の量産品とは思えないほど、熟成感のある良質なシェリーだ。詳細なレビューはこちら

現在のGMの各種リリースからは、今回のボトルに感じる香味はすっかり消え、一部ハイエンドの40~50年熟成のレンジに残るのみです。通常レンジのものは蒸留所買い付けか、当時のシェリー樽のリフィルを使っているのでしょう。
そのシェリー感、なぜ現在のシーズニングで再現出来ないのかというのが度々話題になりますが、
それは
・ベースに使われている樽材、樽の経歴の違い。(ボデガから出てきた輸送用の古樽かつ、ほぼアメリカンオーク)
・シーズニングに使われているシェリー酒の違い。(現在は未熟成のものを入れている。当時は買い付け原酒の保管なので、結果的にパハレテ的な仕様にもなっていた)
・そもそも現地工場という特殊な環境で、大量生産されるものの副産物であったこと。

以上3点の理由が、1980年代後半に制定された現地工場禁止、パハレテ禁止という法律的な面からも再現が困難であり、GMのリリースが消える蒸留時期とも合致します。
また、近年まれにボデガから20年、30年熟成のシェリーに使われたような樽が出ても、ブーム当時ほど数は出ず、大手オフィシャルは数が安定しないものに興味を示さなかったり、ボトラーズが購入しても別なリリースのみに回る。つまり条件が揃わないのです。

加えて、今回のボトルで言えば、蒸留されたであろう1970年代と現代では、ロングモーンは仕込み・蒸留方式を変えており、酒質が遥かにライトになっていることも再現が困難な複合的な要因としてあげられます。
一時のシェリーブームが、その当時の大手ボトラーズウイスキーと合致して出来上がった、シェリー系ウイスキーの姿。
この手のボトルは加水でボディがゆるく、ヒネやすいという特徴から瓶熟向きでないこともあり、一時の夢として、今後確実に消えていく系統だと考えられるのです。
ああ、もっといっぱい買っておけばよかったなぁ・・・。


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