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シークレットスペイサイド(マッカラン) 24年 1994-2019 酒育の会 49.3%

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SECRET SPEYSIDE DISTILLERY 
For Shuiku no kai 
Aged 24 years 
Distilled 1994/07 
Bottled 2019/01 
Cask type Bourbon Barrel #1408895 
700ml 49.3% 

グラス:ー
場所:BAR Fingal 
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:華やかでオーキー、しっかりと樽香を感じさせる香り立ち。オーク香はバニラや蒸かした栗を思わせる甘さに、ファイバーパイナップル、砂糖のかかったオレンジピールなど果実の中身よりも皮や茎の部分をイメージさせるドライフルーツ香がアクセントになっている。

味:やや粉っぽさを感じる口当たりだが、バニラやバタークッキー、じわじわとアップルパイ。焼いた生地のような要素の混じる果実感をアクセントに、濃いオークフレーバーが酒質を支えにして口内に広がる。
余韻は華やかなオーキーさと、削りかすを思わせるざらついたウッディネス。バーボン樽由来のトロピカルフレーバーが奥から戻るように開き、好ましいフィニッシュを構成する。

オークフレーバーに加えて、アメリカンオークのエキスがかなり溶け出しているような1本。バーボン樽系の圧殺というべきか、かなりの樽味。しかし酒質の強さが樽感を支えていて、味わいの基礎として余韻までヘタらず香味を広げてくれる。少量加水すると序盤の粉っぽさ、甘さがまとまってより華やかなニュアンスを感じさせる。仕上がりの分かりやすさと共に、原酒のポテンシャルを感じる1本。

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みのも○た、ではなく日本の戦後独立から高度経済成長を支えた偉人の一人、白洲次郎をモデルにしたと思われるラベル。
正確にいうと、どこにもそんなことは書かれていないのですが。デザインのベースは、著書「プリンシプルのない日本」の表紙にも使われた写真(以下、参照)。そこに"パイプ"を咥えさせ、武骨な"ロックグラス"を持っているアレンジが、このラベルのもととなった人物が、白洲次郎氏であることを明確に伝えていると言えます。

ラベルの背景を見ると、うっすらと書かれている軍服姿の人物がおり、これはダグラス・マッカーサー元帥でしょうか。両氏の間にはいくつか逸話があり、なかでも有名なのは”昭和天皇からのクリスマスプレゼント”ですね。
占領下にあった日本とはいえ、天皇陛下に非礼を働いたマッカーサー氏を怒鳴り付けたという真偽不明なエピソードですが、この他、白洲次郎氏とGHQとの間には「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめるだけの関係があったとされています。
ラベルの人物が咥えているパイプは、マッカーサー氏の有名な写真に写るものと同じ形状。知っている方なら、思わずニヤリとさせられる組み合わせです。

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また、手に持っているグラスは単にロックグラスではなく、”ボトルをカット”して作ったお手製のグラスかなと。
学生時代、白洲次郎氏はイギリスに留学しており、その際に親交を深めたうちの一人が、若き日のストラフォード伯爵。この縁で、戦後の日本でありながら、白洲次郎氏はスコッチウイスキーをストラフォード伯爵経由で個人輸入して楽しむ(樽そのものをプレゼントされていたという話もある)という、一般には考えられないような生活をしていたとされ。。。この時、飲みきってしまったボトルをカットし、グラスとして使っていたというエピソードが残されているのです。

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(白洲次郎氏がストラフォード伯爵から贈られたボトルに張られていた裏ラベルの実物。こんなボトルを実際に伯爵から贈られたら、間違いなく震える。。。Mrの文字の重みが凄い。)

さて、ラベルに仕組まれたギミックが面白かったのでついつい前置きが長くなりましたが、ここからが中身の話です(笑)。
このストラフォード伯爵から日本に届いていた銘柄が、マッカラン、グレンファークラス、そしてブレンデッドウイスキーのブラックボトルでした。
なんて羨ましい・・・という心の声はさておき、今回のリリースはスペイサイド地域の蒸留所のシングルモルトであることから、関係する中身として、マッカランかグレンファークラスのどちらか。バーボン樽のリリースということから、マッカランであるようです。

マッカラン=シェリー樽というイメージはありますが、元々マッカランは酒質がヘビーで強く、こってりとしたシェリー樽や加水で調整されてバランスがとれるような原酒です。
よって、小さいバーボン樽で長期間熟成してもそれに負けることはなく。今回のリリースも樽感はかなり強くでて濃縮したようなオーキーさはあるものの、それを口内で広げるような力が残っている点が印象的でした。

熟成感があり、普通に美味しいスペイサイドモルトで、特に余韻にかけての好ましいフルーティーさが魅力。ここだけならもう1ポイント上の評価をつけようかと思うくらい。
また、そこに単なるラベル売りと思わせない工夫のあるデザインや、中身との繋がりにあるエピソード。。。流石趣味としてのお酒の楽しみ方を広める、酒育の会のオリジナル。
味だけでなく情報も楽しむ嗜好品として、申し分ない出来の1本だと思います。

カリラ 12年 43% オフィシャル & Liqul 11月号

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CAOLILA 
AGED 12 YEARS 
ISLAY SINGEL MALT SCOTCH WHISKY 
700ml 43% 

グラス:不明
時期:不明
場所:Bar fingal
評価:★★★★★(5ー6)

香り:ややエッジの立ったピーティーさと、クレゾールのような薬品香のある香り立ち。土っぽさと根菜、ほのかにグレープフルーツ等の柑橘の皮や綿を思わせるほろ苦さがスモーキーさの中に感じられる。

味:口当たりはクリアで塩気と共に洋梨をペーストにしたような柔らかい甘味とコク、プレーンなウッディさ。そこにスモーキーフレーバーが後追いで開く。余韻はピーティーなほろ苦さと軽い酸味、針葉樹やタイムのような植物のニュアンスと、根菜っぽさも混じる。

3rdフィルあたりのプレーンなオーク樽で熟成された原酒を主体に構成されているのだろう。オークフレーバーは控えめで酒質由来の甘味と若干の植物感やハーバルさ、そしてピートに由来するアイラの特徴をもったスモーキーさがメイン。この甘味と口当たりの柔らかさがカリラのオフィシャルの特徴と言える。ハイボールも悪くないが、何気にロックが合う。


ジョニーウォーカーの構成原酒として知られるカリラ。ジョニーウォーカーだけではなく、ディアジオ傘下のブレンド用ピーテッド原酒として中核的な役割を果たしてきたわけですが、一方でアイラモルトのオフィシャルスタンダード銘柄のなかでは、販売戦略も関係していまいち目立たない印象があります。

アードベッグ10年
カリラ12年
キルホーマン・マキヤーベイ
ボウモア12年
ポートシャーロット10年
ラガヴーリン8年
ラフロイグ10年
※ブナハーブンはスタンダードがノンピートなので除外

ラインナップを見ると話題性でアードベッグやラガヴーリンに及ばず、近年ファンを獲得しつつあるポートシャーロットやキルホーマンら新興勢力にも押され気味。
カリラのクリアでシャープなピーティーさをとっても、それこそ若いキルホーマン等の方が分かりやすいというのが些かネックです。
一方で現行品のボウモアやラフロイグが味を落としているなかで、クオリティを維持している(2016年頃にはロットが切り替わって美味しくなったという話題もあった)点は、もっと評価されても良いと思うのですが。。。
そんなわけで、目立たないながら渋い仕事と繋ぎ役でチームに欠かせない、"いぶし銀"というのが自分にとってのカリラの位置付けとなります。

なお、近年のカリラは2011年にマッシュタンとウォッシュバックの増設工事があり、2010年時点で380万リットルだった生産量は650万リットルにまで増加したとされています。
これはシングルモルト需要もさることながら、ウイスキー全体の消費量が増えていることへの対応策。ここまでの話の流れの通り、カリラ単独でそこまで売れてる訳じゃないですからね。
今回のオフィシャル12年は増設が行われる前の原酒ですから、今後どのような影響があるかは未知数。他方で、実は工事が行われる前からカリラの生産量は増加の一途であり、2000年頃には100万リットル程度だったという情報からも、如何にカリラがディアジオの作るウイスキーを支えているかが伺えます。

増産体制になると味が変わるのは、ある種の法則のようなもの。ボトラーズの短熟を飲む限りそこまで悪くないとは思いますが、それが吉と出るか凶と出るか。。。ディアジオの技に期待したいです。

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酒育の会 Liqul(リカル) 11月号

先日発刊された、リカルの11月号。※WEBは週明けの公開のようです。
今回の特集テーマは「BARの流儀 "よりBARを楽しむために"」で、巻頭特集ではBARでのマナーや注文方法などを記事にしています。
BARとはどうあるべきかという考え方は、嗜好品に求める条件のように様々なものがあって当然ですが。やはり守るべきマナーはある程度共通で、そして良いサービスはお店の一人相撲では成り立たないんですよね。

そして今号の自分の連載記事・オフィシャルスタンダード特集第3弾は、カリラとキルホーマンでした。(写真もう1~2枚送ればよかったなー、ちょっと寂しい構図に。。。)
これまでは内陸銘柄でしたので、今回はアイラにしようと。となると、近年成長著しいキルホーマンと、安定感抜群のカリラは当確で、あまり選定で迷いませんでした。
それぞれの評価は過去記事含めての通りですが、この2本はフレーバーの共通項と熟成によるピートの強弱等も見える組み合わせ、としても選んでいます。
ピートは熟成を通じて丸く、減衰していく傾向があり、若くフレッシュなキルホーマンと、適度な熟成を経て柔らかさも感じられるようになったカリラ、飲み比べも楽しんで貰えればと思います。

なお、リカルは来年1月からWEBマガジン出の配信も開始し、1記事あたりのボリュームと更新頻度をあげていくことになる予定です。
今の記事は700文字程度という制限があったので、書ききれない内容もあってこの変更はちょうど良く。また、オフィシャル特集はそのままに、オールドボトルの記事も連載していく予定ですので、更なる情報発信の機会を頂くこととなりました。
まずは今月のフェスでしっかり情報を仕入れないと!皆様、引き続きよろしくお願いします。

ジャパニーズスピリッツ・マルシェ2019秋 に参加してきた

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お酒を楽しむための様々な情報を発信している、酒育の会。同会主催で今日から10日間、「ジャパニーズスピリッツ・マルシェ2019」が、神田にて開催されています。

このイベント、テーマは近年ブームとなっている日本のウイスキーやクラフトジンなどの蒸留酒全般、所謂”ジャパニーズスピリッツ(一部スピリッツベースのリキュールを含む)”で、これらを試飲しつつ購入することも可能な販促会という感じ。
マルシェという位置付けらしく、ちょっとしたフリーマーケットのような雰囲気で、休日はVIPを招いてのゲストトークショーや、上記スピリッツを使ったカクテルの提供も予定されています。

自分は酒育の会発刊のフリーペーパーLIQULに関わらせて貰っていますし、何よりニューリリースの情報も抑えておきたい。参加&紹介しないわけにはいきませんね。
あとブース出展している蒸留所に、日頃情報共有していたり、あるいは個人的に注目しているところが多かったのもあり・・・。
早々に仕事を切り上げ、初日の会場に伺いました。
結果、平日と言うこともあってゆったりとした空気のなかで、色々お話を聞きながら試飲を楽しむことが出来ました。
そんなわけで、会場の様子をざっくりと紹介します。

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ジャパニーズスピリッツ・マルシェ2019秋
イベントページ:https://shuiku.jp/news/8005
入場料:無料
期間:2019年9月20日~9月29日
時間:11時~20時(29日は18時で閉会)
場所:マーチエキュート神田万世橋 1F S7スペース
東京都千代田区神田須田町1-25-4
※住所上は神田ですが、公共交通機関で近いのはお茶の水か秋葉原駅。
※会場前に目立つような看板が出ていません。わかりづらくて迷いましたw 秋葉原を背にして一番奥、御茶ノ水側のスペースで開催しています。

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(試飲ブース:上が無料、下が有料(100~2000円)。無料試飲はクラフトジンが充実していて、普段なかなか飲む機会のない各社のフレーバーを気軽に楽しめる。ウイスキーでもいくつか光るものあり。っていうか無料でこの充実度合いは。。。有料試飲もジャパニーズウイスキーを軸に、確かにレアなものが揃っている。クラフトアブサンも2種類スタンバイ!)

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(三郎丸蒸留所:自分イチオシクラフト蒸留所のひとつ。世界初、鋳造で作った新型蒸留器は問題なく機能しており、むしろ酒質は更に期待できるものとなった。ピーティーかつしっかりとした厚みがあり、将来を期待出来る味わい。今回は無料試飲ラインナップにその今年仕込みのニューメイクあり。是非進化を体感してほしい。)

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(長濱蒸留所:今回はアマハガン3種。同じブレンドがベースとは思えないほど、フィニッシュによる違いがしっかり出ている。先日発売されたばかりの第3弾ミズナラは、いい具合にニッキのようなスパイシーさが効いて、面白い仕上がりである。)

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(笹の川酒造、安積蒸留所:いよいよ今年3年熟成のリリースを控えた安積蒸留所。あまり市場に流通していない山桜の3銘柄に加え、1年6ヶ月熟成のニューボーンが試飲ラインナップに。ここも酒質は素直で癖も少なく、確実な成長が感じられる。)

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(小正醸造、嘉之助蒸留所はウイスキーではなく、今回はジンで出展。ほうじ茶と桜島小みかんジンがPRラインナップ。どちらも和の要素が強い面白いジンである。柑橘とジンの組み合わせはある意味オーソドックスだが、ほうじ茶の香ばしいフレーバーは意外に悪くない。むしろ美味しい。)

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(養命酒は自社製造のジン、香の森とライトタイプな香の雫で出展。ストレートでは飲み口強く、独特な香味が特徴のこのジンが、市場でどのように受け入れられるか・・・。っていうかライトタイプとは思えない香の雫。)

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(いいちこで知られる大分の三和酒類さんが作る、ジンでもウォッカでもない、麹が特徴のオリジナルスピリッツTUMUGI。
麹麦を蒸すことで香りを強くし、スタンダードのKOJIは焼酎とも異なる強い麹香(まるで醤油や味噌のような)と、その奥にかぼすやレモンなどの柑橘のフレーバー、そして柔らかい口当たりが特徴。ボンタンを使って香味付けしたTSUMUGI BONTANは、逆に麹のニュアンスを抑えて爽やかな柑橘感とドライな口当たりが心地よい。樽熟品は4ヶ月熟成で適度な樽感とマイルドな口当たりが、ハーブを思わせる要素と共に感じられる。
作り手の考え方、こだわり、そして日本人向きの和の風味。。。今回の出品物のなかで最もツボに入った銘柄だった。オススメ!!)

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(出展はされてないが、試飲ブースにあった非常に興味深い出来のジャパニーズグラッパ葡萄恋露。シダックスが親会社というのが面白いが、それ以上に丁寧な作りのグラッパで、ホワイトタイプはスウィートで淀みなく、華やかな香り立ちに花のようなアロマが混じる。これは美味しい。そしてエロチズム/愛(謎))

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(有料試飲から、ニッカのオールドブレンデッド。飲んでみたかった一本だが、とてもジャパニーズとは思えない、スコッチ的なモルティーさとピートフレーバーに驚き。モルト比率の高いリッチな作りの1本でかなり美味しい、是非我が家にほしいw。)

今回のイベント。酒類関連のイベントとしてはかなり長い開催期間かつ、立地的にも開催時間的にも、特に都内勤務の方が仕事帰りに立寄りやすいのが魅力。
入場料無料ですし飲めてない銘柄もあるので、もう一度遊びにいきたいくらいです。
TUMUGIのような魅力的な銘柄を知ることが出来たのも、大きな収穫でした。

一方で、さすがに10日間ぶっ通しで関係者がブースに張り付くことは、特にクラフト系にあっては難しく、ウイスキーフェス等のように常に全てのブースに関係者がいるわけではないのは仕方のないところ。
とはいえ主催する酒育の会のメンバーは、谷嶋さんを初め相当知見のある方々ですので、逆にお酒に関する感想や、飲み方などのアドバイスなど、酒育の会だからこその質問をしてみても面白いと思います。
イベントは明日からまだ9日間残っているだけでなく、トークショーは明日からスタートです。お時間ある方は是非参加してみてください。

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【ブース出展企業】
三和酒類株式会社
小正醸造株式会社 嘉之助蒸溜所
笹の川酒造株式会社
養命酒製造株式会社
アサヒビール株式会社
キリンビール株式会社
本坊酒造株式会社
若鶴酒造株式会社 三郎丸蒸留所
長濱浪漫ビール株式会社 長濱蒸溜所
佐多宗二商店
Limone

ゲストトークショースケジュール】
9月21(土)14時~ ろっき氏
「アセトアルデヒド症候群」主宰、ジンに関する取材研究では国内屈指の専門家、ジンに関する自費出版多数

9/22(日) 14時~ 輿水精一氏 サントリー名誉チーフブレンダー
16時~ 鹿山博康氏 Bar BenFiddichオーナーバーテンダー (カクテルのご提供もあり)

9/23(月・祝) 14時~ 肥土伊知郎氏 ベンチャーウイスキー代表
終日  須藤銀雅氏 アトリエAirgead代表 ブースにてバー専用チョコレートなどのご提供

9/28(土) 14時~ 山岡秀雄氏 ウイスキー評論家・コレクター × 吉村宗之氏  ウイスキーアドバイザー
16時~ 須藤銀雅氏 アトリエAirgead代表 「チョコレートとお酒のマリアージュについて」

グレングラント 10年 40% & 酒育の会リカル9月号

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GLEN GRANT 
Aged 10 years
Release 2018~ 
700ml 40% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★(5ー6)

香り:華やかでドライ、オーキーな香り立ち。若干粉っぽさもあるオーク香だが、ファイバーパイナップルや洋梨を思わせるフルーティーさと仄かな酸味。奥には白粉っぽさも混じる麦芽香も潜んでいる。

味:フレーバーの輪郭は少しぼやけているが、ライトでスムーズな口当たり。乾いた麦芽風味とオークフレーバー。香り同様に華やかな含み香に加え、若干の酸を伴う。徐々に薄めたパイナップルシロップの甘味と、じわじわとスパイシーな刺激、干し草や乾いたウッディネスを伴うドライなフィニッシュ。

香味とも加水で若さや熟成の荒さを誤魔化したような部分はあるが、癖の少ない酒質の素性の良さに加え、時間経過で麦芽香がオークフレーバーのなかに開いてくる。ストレートだけでなくハイボール等他の飲み方に幅広くマッチする、使い勝手の良い1本。価格も実にお手頃。

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現行品のスペイサイド・オフィシャルでオススメを問われたら、間違いなくチョイスするのがグレングラントです。
変な癖のない素直な酒質に、バーボン樽(アメリカンオーク樽)由来の華やかなオークフレーバーを組み合わせた、近年スペイサイドの典型的な構成とも言える仕上がりが特徴で、香味の安定感だけでなくキャラクターを経験する意味でも価値ある1本。
2016年にラインナップが大々的にリニューアルされ、以降上記の傾向が強調される形になっています。

グレングラントのオフィシャルリリースは通常ラインナップで4種あり、すべてに共通するのがアメリカンオークの華やかなフレーバー。熟成年数を増すごとにそれがリッチになっていく、分かりやすい違いがあります。
ラインナップでもっとも若い5年・メジャーリザーブは流石に若さが目立つものの、以降は適度な熟成感に樽香のノリが良く。
特にリッチなフルーティーさが楽しめるのは18年ですが、コスパが良いのは10年、12年。店頭価格3000円程度で購入できる10年は現行品のスコッチモルト全体を見てもなかなかのものだと思います。

スペイサイド&ハイランド地方から、他の同価格帯のモルトを挙げると、グレンフィディックやグレンリベット12年などもありますが、それぞれキャラクターが異なっている。飲み口の柔らかさならフィディック、華やかさならグラント10年といった具合です(なおリベットry)。ただフィディックは近々ラベルチェンジが行われるようで、今後「良くなった」といわれる味わいを維持できるかは様子見の状況です。
また、似たようにライトでオーキーなタイプだとグレンマレイ12年もありますが、ほんの少し流通価格が高く、これならグラントやフィディックで良いかなとか思ってしまうのです。

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さて、先日発刊された酒育の会の機関誌「LIQUL(リカル)」9月号。
メインの特集では蒸留所リストと共に、ジャパニーズクラフトの同行について触れられていて読みごたえのある内容。
そのなかで、担当させていただいているコーナーで、グレングラントをクライゲラヒと共にスペイサイドモルトのオススメ2銘柄として掲載しています。
※酒育の会:LIQUL(リカル)電子版はこちら

記事の文字数制限で両者に関する詳しい解説は省略していますが、これも今回のように補足していければと。記載の2銘柄だと、グレングラントからは山間を吹く冷涼な風を思わせる爽やかな味わいが。クライゲラヒからは、一面に広がる麦畑を思わせる牧歌的なイメージ、というくらいに明確に違いがあります。

違いの理由については断定できませんが、調べてみると蒸留方法でグラントは1980年代に新しい設備への切り替えがあった一方、クライゲラヒは古典的な設備をそのまま使っていることが少なからず影響しているように考えられます。
スコッチモルトはかつてグレングラントも含めて麦感を厚く備えた原酒が多かったわけですが、一方で近年は麦芽品種の変更や、ピートの使用を控えたり、あるいは蒸留方法を切り替えたりで、先にも述べた通りライトで華やかなタイプの仕上がりが増えてきているのです。

地酒が世界的なブランドに成長するなかで、求められる香味にアジャストしていったようにも見える変化。ただし、そのフレーバーが完全になくなった訳ではなく、オーク香の奥に潜んでいるのも感じ取れます。
今回レビューしたグレングラント10年か、あるいは別途記事にしている12年あたりと、該当する麦芽風味が出ているモルトを飲み比べていくことで、さらに個性の理解が進むようにも感じられます。

酒育の会 Liqul(リカル)での連載について

カテゴリ:
お酒に関する正しい知識や、趣味としてのお酒の楽しみ方を発信するため、イベントやセミナー等の各種活動を行っている一般社団法人酒育の会。
同会が奇数月に発刊している機関誌「リカル」に、2019年7月号からウイスキー関連の記事を連載させていただくことになりました。

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酒育の会 LIQUAL (リカル)
※最新刊ならびにバックナンバーについては上記URL参照。ウイスキーだけでなく、コニャック、テキーラ、ラム、ワイン等様々なお酒やBAR飲みのスタイルなどが特集されています。7月号はアルマニャック特集で、7/1以降WEB公開予定。


連載に当たっては、テーマも含めて自由に決めて良いという条件を頂いており、会の目的とも照らして"オフィシャルスタンダードの再認識"にしました。
ブログを書き始めてから、特にここ1~2年は意識的にオフィシャルスタンダードも飲むようになったのですが、最近そのオフィシャルが美味しくなったという声を、自分だけでなく周囲の愛好家からも聞きます。
この機会に再勉強も兼ねて、良いと思ったリリースや、従来に比べて好ましい変化のあった蒸留所のラインナップを紹介していく企画を考えたワケです。

文字数に制限があるため、細かい部分の解説やテイスティングコメント、スコアリング等はブログで補足する整理。書くのは良い部分をざっくり程度となるため、テイスティングレビューというよりコラムに近い構成になりますが、内容やラインナップに共感して貰えたら嬉しいですね。

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記念すべき連載一回目。掲載は巻末のほうかと思いきや、隣のページは吉村さんで、しかも一番開きやすいセンター部分。例えるならプロ入り1年目のピッチャーが、ブルペンでエースと一緒に投球練習をするような心境。。。になりましたが、自分の記事がこうして紙媒体に掲載されるのは本当に感慨深いです。(プロになったこともピッチャー経験もありませんがw)

チョイスしたのは、アバフェルディ12年とロッホローモンド系列の12年クラスで、ロッホローモンドやインチマリンを想定。
アバフェルディは今も昔も普通に美味しいハイランドモルトで、コスパも素晴らしいだけでなく、上位グレードとの共通点もある佳酒であることから。そして同じハイランド地方から、かつてはダンボールと呼ばれて珍味扱いされていた蒸留所ですが、近年好ましい変化が見られたロッホローモンドを。
どちらも記事化に当たって、外せないオフィシャルボトルだと思っていました。

一方オフィシャルスタンダードと言っても幅広く、もうひとつ基準に考えているのが、1本5000円台までの価格で販売されている、エントリーグレードであるということ。
例えば同じオフィシャルでも、スプリングバンクの10年は近年文句なく良くなったボトルのひとつですが、今回使わなかったのは8000円弱という価格が他のミドルグレードと同じ区分で整理出来てしまうためです。
同価格帯からカダム15年とか、ノッカンドゥ18年とかも。。。本当は使いたいんですけどね。5000~10000円のクラス、あるいはそれ以上の価格帯にも注目の銘柄は多く、そのうち各価格帯から1本ずつという形式にシフトしても面白いかもしれません。
他方、このあたりを制限しても候補は多いので、どれを取り上げるか悩むことにはなりそうです。


今回の話は、年に2回招聘頂いている、非公開のブラインドテイスティング会をきっかけとして、同会代表の谷嶋さんから頂きました。
これまで酒育の会と特段接点のなかった自分ですが、今までの経験を微力でも同会の理念に役立てられればと思います。
先に述べたように、最初はオフィシャルで最近注目している美味しい銘柄、面白い銘柄を中心に。その上で来年からは、日本のリユース市場に一定数以上在庫があるオールドボトルについても別特集で掲載していければと考えており、企画案は提出済みです。

なお、本著述については会社の許可をとった上で実施しています。今後は許可範囲内で、自分の時間のなかで無理なく参加させていただくつもりです。
そのため、締め切り前は執筆を優先するためブログの更新が止まるかもしれませんが。。。そこは察して頂ければ幸いです。(笑)
リカルでのくりりんも、よろしくお願いします!

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