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昨日9月1日、ジャパニーズウイスキー大変革のまさにその時であり、多くの方が動かれたことと思います。
かく言う私も限定品を1本ずつ押さえることができました。

そして予想通りというかなんというか、ヤフオク上にはこの限定の余市と宮城峡がぎっしり出品されてますね。
動かれていた方の中には、こうした転売目的での方もいらっしゃったことでしょう。ただ前編で書いたようにオークション出品はノーリスクでは無いわけで、その辺ケアしてんのかなーという出品頻度の方も結構いらっしゃいます。まぁ別にその人が後々課税や罰金にまみれようと、それは個人の自由の結果。自由には責任が付いてまわる、納税は国民の義務ですからね。
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(9月1日発売、シングルモルト余市ヘビリーピーテッド、シングルモルト宮城峡シェリーカスク。)

さて、前編に引き続き、「ウイスキーをヤフオク転売するなら利益だけでなくリスクも考えるべき」と題して、最近注目されているネットビジネスであるウイスキーの転売に潜むリスクをまとめています。
前編ではそのリスクとして、ある一定利益以上を得た場合の課税と、酒税法違反に該当する恐れがあることを紹介しました。
後編では、そうしたリスクを放置した結果起こりうる、最悪のケースとも言える"追徴課税"と、これまでのまとめを記載します。

前編はこちらからどうぞ。

4.とても怖い追徴課税
一定額以上の利益が出た場合、それを申告するのは当年度中の確定申告です。
申告の際に発生する金額のおおよそについては前編の3.に記載の通りです。
簡単な話、ちゃんと申告しておけば怖い思いはしなくて済みますし、以下の話は無関係です。
(ちなみに確定申告すると、サラリーマンは勤め先に副収入やオークション出品がばれる可能性があります。)

問題は確定申告しなかった場合です。
会社にバレるのがいやとか、どうせ請求されないだろうと思ってるとか・・・また、オークション利益に税金が発生するとは思ってない方は、そもそもこうした意識がありません。
すると年度が切り替わってから数ヶ月後に、税務署からお手紙が来ます。(主に8~9月頃が多いようです。)
 
「あんた税金申告漏れしてませんか」と。
この手紙が来た時点で税務署側は漏れている金額も全て把握しているようですので、後は中身について税務署側と相談しましょう。

 
ところが9月を過ぎても手紙が来ず、そのまま年が変わってしまいました。
上述のように課税対象となる物品は税務署のさじ加減で決まることもあって、明らかに黒でない限り見逃されるケースも出て来ます。
例えば50万円利益を上げたとされるケースでも、明確に雑所得に分類される利益が20万、譲渡所得分なのか雑所得なのかあやふやなゾーンが10万、譲渡所得分が20万だったとします。
この10万がどちらに振れるかで大きく話は変わるわけですが、こんなのが何千件もあったらいちいち対応してられませんよね。
 
しかしそこで見逃されたと安心するのはまだ早い。
税金には追徴課税という仕組みがあり、課税を通常5年、悪質なもので7年間遡って行えます。
しかもただ課税されるだけではなく、遅れた分のペナルティーとして追加分まで請求されてしまいます。
 
追徴課税は4つの加算税(過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税)と延滞税で構成されます。
過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税は収めていなかった税額に対して、だいたい10~15%の加算ですが、悪質な隠蔽であると認められた場合の重加算税は30%~40%の加算となり悲惨の一言。
また同時にプラスされる延滞税がまた凶悪で、最大約14.6%の税率となり、実質的にはプロミスもびっくりの利子付きで徴収されることになります。
追徴課税については以下がわかりやすいと思います。画像も以下から引用しました。
ご参考:最大1.4倍!?知らなかったでは済まない追徴課税と加算税
 
今回お呼びがかからなかったのは「まあ泳がせておくか」と、たまたま請求されなかっただけかもしれません。
なんせ税務署側には最短でも5年間の猶予があるのですから。グレーゾーンの案件は、時間経過で真っ黒になるまで待てば良い。
今年大丈夫だったからと調子に乗って転売し続けた結果、その後どこかで引っかかり、そこから遡って最長5年ないし7年間分の利益についても芋づる式に対象となって課税プラス追徴課税。さらに最悪のケースは継続販売と見なされて酒税法違反まで付いてきた…。
いやもう目も当てられません。試算するまでもなく、懐が真っ赤に染まるのが見えています。
ある日税務署からお手紙が届いたら、車が買えるだけの金額を請求されていたという都市伝説のようなあの話。実は出品者によっては、そうした無限ループにハマってしまっている方もいらっしゃるという話も聞いたことがあります。
 
 
5.まとめ(一般人のウイスキー投資行為について)
大変長々と書いてしまいましたが、冗長な書きぶりのところもありましたので、箇条書きでまとめます。
・ネットオークションでお酒を売る場合、税金と資格関係で2つのリスクがある。
・お酒は入手からの期間等で、雑所得分類となるものと、譲渡所得分類になるものがある。
・発売したばかりのお酒をオークションで転売した場合、その利益は通常雑所得扱い。
・昔から家にあったようなお酒をオークションに出品した場合、その利益は譲渡所得扱い。
・税金は所得税と住民税が、雑所得分類であれば利益が20万円を越えるとかかる。
・確定申告を行うと、勤め先にオークション出品で利益を上げている事がばれる可能性がある。
・酒類の出品を継続して行っていると、非課税範囲内の出品であっても販売行為と見なされて酒販免許が求められる可能性がある。
・酒販行為において酒税法違反となると、1年以下の懲役または50万以下の罰金が科せられる。
・確定申告において上述の利益にかかる税金を支払わない場合、後日追徴課税の対象となる。
・課税は通常5年、悪質なもので7年間遡って行える、1年間連絡が無かったからといって見逃されたわけではない。
・追徴課税額は程度によるが、最悪利益が飛ぶどころでは済まないレベルであると覚悟した方が良い。


6.最後に
サイドビジネスを行って資産運用することは、 ある意味で正当なことです。
ファンドのプランを活用するにはまとまったお金が必要ですし、身近にネットというツールがあるならそれを個人で活用すれば良い。これもまた考え方の一つです。
しかし本編で度々書いたように、なんの資格も持たない一般個人が、酒という一段階縛りの厳しい分野で運用していくことは、リスクも相応となる恐れがあります。

今のウイスキー市場はちょっとしたバブルであり、そこに国内ウイスキーメーカーの値上げ、終売、限定品の登場などが燃料投下に繋がった、祭り状態であると言えます。
中にはこのブログで情報を得られて、買い付けなどに走られた方もいらっしゃるでしょう。
この祭りがいつまで続くのか、それはわかりません。しかし一部の銘柄は既に勢いを失っており、何でもかんでも高値という状況ではありません。
その他の分野では最悪元が取れればOKという考え方もあるでしょうけど、酒ジャンルでは売れば売るほど、もう一つのリスクが積み重なっていきます。

私はウイスキーの転売、ひいてはウイスキーを対象とした投資行為については中立の考えです。
「酒は飲むため!」とか「作り手への冒涜!」という、ある種の精神論を他者に強制するつもりはありません。
転売により、遠隔地に居て手に入れられなかった方々が入手できたり、あるいは倉庫などで眠っていたボトルに再び日の目が当たる等の効果もあると思います。
ただし、安易な考えで目先の利益に走った結果、後々進退窮まるという事にならないよう、一度考えられたほうが良いのかなとは思います。


※前編にも記載しましたが、当方は税理等の専門的な知識は無く、ネット等で調べた結果から本記事を記載しております。
よって認識違い等もあると思いますし、なにより他者の行為に対して責任を持つものではありません。
自身のご判断、責任の下で対応ください。また、間違いなどありましたらご指摘いただけますと幸いです。