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ウイスキーバイブル 2019 主要部門をアメリカンウイスキーが独占 ジャパニーズ部門はポールラッシュが受賞

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今年もジムマーレイ著、ウイスキーバイブルにおけるワールドウイスキーオブザイヤーが発表されました。
個人的にはボジョレー解禁的な印象もある、ウイスキー業界の風物詩なこの発表。ああ、もうすっかり秋ですねぇ。。。

ジムマーレイ氏の活動ついては今更説明は不要と思いますが、ざっくりまとめると、毎年1000種類以上のウイスキーをテイスティングし、コメントとスコアリングをまとめた著書"ウイスキーバイブル"の執筆を手がける、非常に大きな影響力を持つテイスターです。

そのスコアリング基準は不明確な点もありますが、近年の評価では、
2016年クラウンローヤル・ノーザンハーベスト・ライ
2017年ブッカーズ・ライ13年
2018年テイラーフォーグレーン12年
と、各年のウィナーがアメリカ・カナダ方面に寄っていることから、その趣向が見えてくるようです。
2015年の山崎シェリーカスクから一転して、クラウンローヤルが選ばれた年など「正気とは思えない」と辛辣なコメントが寄せられたこともありましたが、なるほどここまで続くと一貫していますね。

長熟バーボンに備わる艶やかな甘みや、ハイプルーフで突き抜けた味わいは自分も求めている要素の一つであり、スコッチとの対比に異論を唱えるつもりはありません。ただ、その時々の思い切った線引きが、ジムマーレイ氏の評価なのでしょう。
今年はそれがさらに極まった内容となり、ワールドウイスキーオブザイヤーと、シングルカスクオブザイヤーの主要2部門をバーボンが受賞。全体でもトップ3銘柄のうち2銘柄がアメリカンで、異なるカテゴリーのコンペを見るような結果となりました。

■The full list of winners
◆2019 World Whisky of the Year

William Larue Weller 128.2 Proof 
- Buffalo Trace Antique Collection 2017

◆Second Finest Whisky in the World

Glen Grant Aged 18 Years

◆Third Finest Whisky in the World
Thomas Handy Sazerac Rye 127.2 Proof

◆Single Cask of the Year
Blanton’s Gold Edition Single Barrel



ワールドウイスキーオブザイヤーを受賞した、William Laure Wellerは飲んだことがありませんが、バッファロー・トレースの長熟となれば、一定以上のクオリティがあると見て間違いないと思います。
リミテッドであるアンティークコレクションは、小麦を主原料とする原酒のうち総じて10数年間の熟成を経てピークに到達した樽から、毎年度リリースされているシリーズのようです。
今回受賞したのは2017年ロット。スペックなどから察するに、芳醇で柔らかくドライな含みから、ボリュームのあるウッディネスと艶やかな甘み、パンチのある余韻といったところでしょうか。

そして全シングルカスクのベストかどうかはさておき、高い評価も納得出来るのが、ブラントン・ゴールドラベル 51.5%です。
今オススメのハイプルーフバーボンを聞かれたら、1万円未満なら自分でも勧めている銘柄の一つ。現行品はボディが少し細い気もしますが、オールドバーボンにある香味の共通項を備えた、熟成感あるリッチでメローな味わい。何よりもスタンダードとして安定して購入出来るのが嬉しいですね。
ラベルに書かれたボトリング日付が古いほうが香味が濃い傾向があり、2000年以前のものなど特にオススメです。


SCOTCH WHISKY
Scotch Whisky of the Year 
Glen Grant Aged 18 Year Old 
Single Malt of the Year (Multiple Casks) 
Glen Grant Aged 18 Year Old 


続いて、各区分毎の受賞銘柄からピックアップすると、今年もスコッチカテゴリーでトップながら、全体では2番手だったグレングラント18年。
これで3年連続トップ3圏内、しかしウィナーにはなれず。レベルが高いのは間違いないのですが、そろそろ永遠の2番手とか言われそうな。。。(笑)

グレングラント18年は、先日とある企画でブラインドテイスティングで飲む機会があったばかり。やや軽めの酒質にアメリカンホワイトオークの華やかさとフルーティーさ、そして少し枯れ草のようなウッディネス。加水調整によるバランスも良く、うまく仕上げられた美味しいモルトでした。
味は万人に好まれ易いタイプですし、BARでも使いやすいモルトウイスキーだと思います。

JAPANESE WHISKY
Japanese Whisky of the Year 
The Hakushu Paul Rusch 

ジャパニーズ区分では、萌木の村がリリースした、ポールラッシュ生誕120周年記念シングルモルトウイスキー(白州)が選ばれています。
秘蔵の長期熟成原酒とヘビーピート原酒を使い、日本的な熟成感のある多彩な香味。柔らかく角の取れた香り立ちでありながら、その味わいは内に秘めた想いが感じられるような芯の強さとピートの存在感。まるで往年のポールラッシュ氏その人を思わせるようなウイスキー。
一般市場には流通がありませんが、一部のBARと、萌木の村では飲むことが可能な1本。今日は我が家でもささやかにテイスティングといたします。
(※リリース当時のテイスティングコメントはこちら。

この他、ディアジオのスペシャルリリースからコレクティヴァムXXVⅢなど、昨年から今年にかけて話題になったボトルもいくつか、カテゴリー毎に受賞しています。
詳細は以下の通り。なお、ウイスキーバイブルの表紙には毎年度ジムマーレイ本人の姿が書かれているわけですが、今年はどう見ても精神生命体。。。あるいはハリーポッターあたりに出てきそうな精霊の類。
テイスティングすることのべ何万、ついにそのグラスの中には魂が宿ったのでしょうか(汗)。

 
SCOTCH
Scotch Whisky of the Year
Glen Grant Aged 18 Year Old

Single Malt of the Year (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Year Old

Single Malt of the Year (Single Cask)
The Last Drop Glenrothes 1969 Cask 16207

Scotch Blend of the Year
Ballantine’s 17 Year Old

Scotch Grain of the Year
Berry Bros & Rudd Cambus 26 Years Old

Scotch Vatted Malt of the Year
Collectivum XXVIII

Single Malt Scotch
No Age Statement
Laphroaig Lore

10 Years & Under (Multiple Casks)
Laphroaig 10 Year Old

10 Years & Under (Single Cask)
Berry Bros & Rudd Ardmore 9 Year Old

11-15 Years (Multiple Casks)
Lagavulin 12 Year Old 17th Release Special Releases 2017

11-15 Years (Single Cask)
Cadenhead’s Rum Cask Mortlach 14 Year Old

16-21 Years (Multiple Casks)
Glen Grant Aged 18 Year Old

16-21 Years (Single Cask)
Bowmore 19 Year Old The Feis Ile Collection

22-27 Years (Multiple Casks)
Talisker 25 Year Old Bot.2017

22-27 Years (Single Cask)
Scotch Malt Whisky Society Glen Grant Cask 9.128 24 Year Old

28-34 Years (Multiple Casks)
Convalmore 32 Year Old

28-34 Years (Single Cask)
Gleann Mor Port Ellen Aged 33 Year Old

35-40 Years (Multiple Casks)
Benromach 39 Year Old 1977 Vintage

35-40 Years (Single Cask)
Glenfarclas The Family Casks 1979

41 Years & Over (Multiple Casks)
Tomatin Warehouse 6 Collection 1972

41 Years & Over (Single Cask)
The Last Drop Glenrothes 1969 Cask 16207

BLENDED SCOTCH
No Age Statement (Standard)
Ballantine’s Finest

5-12 Years
Johnnie Walker Black Label 12 Year Old

13-18 Years
Ballantine’s 17 Year Old

19 – 25 Years
Royal Salute 21 Year Old

26 – 50 Years
Royal Salute 32 Year Old Union of the Crowns

IRISH WHISKEY
Irish Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Year Cask Strength

Irish Pot Still Whiskey of the Year
Redbreast Aged 12 Year Cask Strength

Irish Single Malt of the Year
Bushmills Distillery Reserve 12 Year Old

Irish Blend of the Year
Bushmills Black Bush

Irish Single Cask of the Year
The Irishman 17 Year Old

AMERICAN WHISKEY
Bourbon of the Year
William Larue Weller 128.2 Proof

Rye of the Year
Thomas H
Handy Sazerac 127.2 Proof

US Micro Whisky of the Year
Garrison Brothers Balmorhea

US Micro Whisky of the Year (Runner Up)
Balcones Peated Texas Single Malt

BOURBON
No Age Statement (Single Barrel)
Blanton’s Gold Edition Single Barrel

No Age Statement (Multiple Barrels)
William Larue Weller 128.2 Proof

Up To 10 Years
Eagle Rare 10 Year Old

11 – 15 Years
Pappy Van Winkle Family Reserve 15 Year Old

16 – 20 Years
Abraham Bowman Sweet XVI Bourbon

11 Years & Over
Orphan Barrel Rhetoric 24 Year Old

RYE
No Age Statement
Thomas H
Handy Sazerac 127.2 Proof

Up to 10 Years
Knob Creek Cask Strength

11 Years & Over
Sazerac 18 Year Old (2017 Edition)

CANADIAN WHISKY
Canadian Whisky of the Year
Canadian Club Chronicles: Issue No
1 Water of Windsor 41 Year Old

JAPANESE WHISKY
Japanese Whisky of the Year
The Hakushu Paul Rusch

EUROPEAN WHISKY
European Whisky of the Year (Multiple)
Nestville Master Blender 8 Years Old Whisky (Slovakia)

European Whisky of the Year (Single)
The Norfolk Farmers Single Grain Whisky (England)

WORLD WHISKIES
Asian Whisky of the Year
Amrut Greedy Angels 8 Year Old (India)

Southern Hemisphere Whisky of the Year
Belgrove Peated Rye (Australia)


※参照・引用
•JIM Murray's Whisky Bible
•The Whisky Exchenge

清里フィールドバレエ 29周年記念 イチローズモルト ジャパニーズブレンデッド 48%

カテゴリ:
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KIYOSATO FIELD BALLET
29th ANNIVERSARY
Ichiro's Malt & Grain
Japanese Blended Whisky 
Bottle No, 368/403
700ml 48%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★★(7)

香り:豊かな樽香、メープルやキャラメルナッツのような香ばしく甘い香り立ちから、時間経過でドライアプリコットの甘酸っぱさ、シュガースポットの出たバナナ。ほのかにミントの爽やかさも伴う。

味:リッチな樽感を感じる柔らかい口当たり。ウェハスチョコレートやピーナッツの甘みと軽い香ばしさ、濃く入れた紅茶のタンニン、オレンジジャムの甘み。余韻はビターで程よくドライ、微かにハーブや松の樹皮。メローな樽香が鼻腔に抜け、長く続く。

香味ともジャパニーズらしい樽感が主体だが、それが柔らかく多層的にまとまったブレンデッド。熟成した原酒こそのスケール感を感じさせてくれる。
少量加水すると、最初は樽香がギスギスしたような刺激を感じるものの、すぐに穏やかになり、メープルシロップを思わせる熟成したバーボンのような甘い樽香と、ママレードジャムのような甘酸っぱい口当たりも。

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今年もリリースされた、シリーズ第5作目となる清里フィールドバレエ記念ウイスキー。早速テイスティングさせていただきました。
作り手は前作同様、イチローズモルトの肥土伊知郎氏。シリーズ第2作からリリースを継続しているため、イチローズモルトとしては4作目となり、そしてこれが当面最後のリリースとなります。

清里フィールドバレエは、毎年8月に山梨県清里・萌木の村で開催されているバレエの野外公演。
ウイスキーとの関係は特段ありませんでしたが、今から4年前に公演25周年を記念したウイスキーをサントリーの輿水氏が手がけたことから繋がりが生まれ、その後は作り手を変えて1年に1度、公演に合わせた記念ウイスキーのリリースが継続されています。
その中で、伊知郎氏の目標は響30年を越えるウイスキーを作り上げること。フラグシップブランドの如く羽生蒸留所と川崎蒸留所の長期熟成原酒を惜しみなく使い、毎年異なるアプローチを感じさせるブレンドを仕上げていました。

今年はその集大成にして、自信作であるとの話も伺っています。
構成原酒である羽生モルトと川崎グレーンは、熟成期間や環境の関係などから樽感が強く、そのブレンドも基本的には同様のウッディネスとフルボディな構成が軸。
前作、28周年記念はフルーティーさとリッチな樽感に奥行きのバランスが良く、ファーストリリースの25周年とは違うベクトルで完成度の高いウイスキーであったところ。

今作、29周年の基本的な構成は上記の通りなのですが、それが飲み口から余韻にかけて存在感を維持しつつもソフトにまとまって、熟成によって得られた個性が繊細なものまで多層的に楽しめる点に、作り手が目指す形が見えるようです。

(清里フィールドバレエ・アニバーサリー25th、28th、29th。多層的で洗練された美しさを持つ25thに対し、26thからは限られた原酒の中でブレンドとしての完成度を年々上げてきた。)

使われた原酒はモルトが20〜25年熟成、グレーンはより長熟で40年弱といったところでしょうか。樽はホワイトオークの古樽的なウッディネスが強くバーボン、シェリー、プレーン、あるいはコニャックと区別がつきづらいものの、加水が効いてうまくまとまっています。

今回のブレンドを例えるなら、ゆっくりと沈んでゆく夏の夕日のようであり、々しいフィナーレというよりは、 観劇の興奮と終幕の寂しさの中で流れるエンドロールのようでもあります。
原酒のストックが厳しく、既存の組み合わせで作るイチローズモルトのフィールドバレエは今作で最後。ですが、そもそもイチローズモルトのフィールドバレエは26th限りの予定だったところ。リリース後、萌木の村を代表するレストラン・ビール醸造場が火災で全焼する事故が起こり、 しい状況に置かれた萌木の村の活動を後押しするため、27th以降の制作を続け られたというエピソードがあります。

作り手との繋がりを感じるエピソードですが、そのブレンドづくりも今作で区切り。萌木の村としては公演30周年の節目向け、新たな作り手に想いを託してリリースを継続する予定と伺っています。
自分は観客席に身を置き、まさにその観劇を見た心のままに一連の情景を思い返しつつ、また来年の夏の夜の出会いを心待ちにしているのです。

リンクウッド 25年 1984-2009 サマローリ 45%

カテゴリ:
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LINK WOOD
SAMAROLI
Aged 25 years
Distilled 1984
Bottled 2009
45% 700ml

グラス:テイスティンググラス
時期:開封後1年程度
場所:BAR Perch 萌木の村
暫定評価:★★★★★★(6)(!)

香り:しっとりとスモーキーな香り立ち。燻した麦芽、プレーンでスパイシーなウッディネス。徐々にエステリーなニュアンスがあり、洋梨のような淡いフルーティーさも。

味:やや乳酸的なアクセントを伴うプレーンな口当たり。洋梨のペースト、ドライオレンジ、モルティでほろ苦く、合わせて焦げたようなピートフレーバー。
余韻はスモーキーでドライ、プレーンオークの自然なウッディネスは、微かに柑橘やジンジャーを感じさせ、長く続く。

オールドスタイル系統のリンクウッド。リフィルシェリーバットあたりの熟成か、樽感はプレーンでモルティーな香味が主体となっている。ややピートが強い印象も受けるが、加水が効いて一体感のある香味が印象的。


リンクウッドと縁の深いサマローリから、その中でも比較的リリースの多いビンテージである1984年蒸留のリンクウッド。
この原酒はかつてのオフィシャル系統というか、自分の好きなオールドスタイルで、ピートが感じられるタイプでした。
過去に飲んだものも含めると、総じて同様の系統であり、ボトラーとしてまとめて購入したロットがこのタイプだったのかもしれません。

スモーキーなリンクウッドと、淡麗なリンクウッド。この違いにかかる蒸留設備云々の話は、これまでの記事で度々触れてきていますので割愛しますが、開封してみないとわからないのがリンクウッドのガチャ要素です(笑)。
ただ、1980年代前半は蒸留所の閉鎖が相次ぎ、酒質的はドライな傾向が強く、樽的にはバーボン樽への切り替え時期で迷走する蒸留所も少なくない。スコッチ業界全体をみるとこの時期はそうした傾向があるわけですが、そんな中で生まれ年で自分の好みなモルトがあるというのは、嬉しい要素だったりします。


ちなみに、1970年代から1985年、そして2000年以降はガチャ要素の強いリンクウッドですが、1987年蒸留でピーテッド名義のモルトがリキッドサンからリリースされています。
オールドスタイルのリンクウッドを作る蒸留棟は1985年から生産を休止しているため、これは普段端麗なタイプの原酒が生み出される新しいほうの蒸留棟のピーテッドタイプということに。
同じようにオールドスタイルな仕上がりかと思えば、ピートの種類が違うのか、設備の違いか、ピートが浮ついていて異なる仕上がり。同じ設計とされている蒸留棟で生み出される酒質の違いが、ウイスキーづくりの神秘を感じさせます。

ボウモア 1993-2003 ゴールデンカスク 65.5%

カテゴリ:
BOWMORE
The Gordon Cask
Distilled 1993
Bottled 2003
Bottle No,1 of 282
Cask #50056
700ml 65.5%

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封直後
場所:萌木の村
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:フレッシュで強い香り立ち。潮気とレモン、魚介っぽいアクセントに香ばしいピート香が合わさって、白身魚のポワレのよう。奥から乾いた木材、ハイトーンで軽いアクのようなニュアンス。時間経過でグレープフルーツやシトラス、柑橘を思わせる香味がさらに開く。

味:フレッシュな口当たりから、じわじわとコクのあるオイリーな甘み。グレープフルーツ、乾いた麦芽、時間経過でバニラやドライマンゴー。灰っぽいピーティーさを伴う。
余韻はスモーキーでグレープフルーツのワタを思わせるほろ苦さ、フレッシュで長く続く。

度数の高さゆえアタックも相応に強いが、ボウモアらしい柑橘系のフルーティーさとピートフレーバー、何より樽のくどさのないフレッシュなバランスが印象的。若さがポジティブに働いたが故の仕上がりと言える。ただし加水するとボディが薄くなり、アンバランスになってしまう。これも若さか。。。


萌木の村にて「飲みたいボトルは全部開封するから」という舩木さんの漢気により、開封直後をテイスティングさせて貰った、1993年蒸留の短熟ボウモア(しかもボトルNo,1!)。
同程度の熟成には"前田の9年"もありますが、あれは加水でしたので、シングルカスク&ハイプルーフ仕様のフレーバーのインパクトは得難いものがあります。
65%という度数の高さとボウモアの酒質がもたらす、フレッシュでコクのある味わい。ネガティブな要素少なく、樽使いも合わせて短熟の良さを認識出来る1本です。

ここでちょっと昔話。今では"当たり年"と言われるこのビンテージですが、今回のボトルのリリース当時は、特別なPRやビックビンテージなる売り込みもありませんでした。
というか同じ時期では、キングスバリーが1993年のボウモアとカリラをバッティングしてリリースしていたくらいで、今では考えられない人気のなさ(笑)。
まあ2000年代初頭はウイスキー人気も下火でしたし、ボウモアに至っては70〜80年代蒸留のパフューム系原酒が主体だったので、それも仕方ないのかもしれません。(その手の愛好家の方には否定的な書き振りで、申し訳ありません。)

そんな中でリリースされた、脱パフュームでビンテージ入りのボトルがこれ。
今より情報拡散が緩やかな時代。愛好家の間で「1993年のボウモアは化粧香が消えて美味しいらしいぞ」という評判がじわじわ広まり、今後どう変化するかわからないボウモアのハウススタイルもあって、"当たり年"という表現が使われていきました。
またこの2年後、whisky funのサージ氏が、BBRがリリースした姉妹樽1993-2005(#500061)を絶賛したことも流れを決定づけましたが、爆発的に有名になったのは2009年のキャンベルタウンロッホ周年記念や、2010年のパーフェクトドラム。そこから各インポーターを通じた当たり年リリースが、近いビンテージを巻き込んで急増していったわけです。

(ボウモア蒸留所の黄昏時。リリースの続いた当たり年は消え去り、この1〜2年は1990年代の原酒すら珍しい。今後同蒸留所のボトラーズリリースは益々貴重になっていくと言われている。Photo by K67)

以上の経緯から、ボウモアは1993年蒸留だけがある種神格化されつつあります。
しかしリリースを振り返ると、93年は樽使いや酒質が安定していたイメージがある一方で、90年代前半全般に突き抜けたボトルの存在と、同様の良さがあることも実績としてあり、決してグッドビンテージは93年だけではありません。

アイラモルト90年代の良さは、先日記事にしたラガヴーリン12年でも触れた話。理由は定かではありませんが、ラフロイグやカリラなどは80年代も良い出来でしたし、ボウモアに関してもパフュームでマスクされて分かりづらかっただけで、本来はアイラとしてこの時期までが良い時期で、その後麦芽品種や樽使いの変更などで変わっていってしまったのかもしれません。
何れにせよ、今飲むと考えることが多く、魅力の多い蒸留所です。

【BAR訪問記】萌木の村 BAR Perch(パーチ) @山梨県 清里

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山梨県北杜市清里にあるリゾート施設「萌木の村」。この施設内にあるホテル・ハットウォールデンのバーラウンジとして整備されているのが、今回訪問したパーチです。

このBARはウイスキー愛好家の中でも隠れ家的な環境として知られ、業界内の著名な方々はもとより、自分のウイスキー仲間の何人かも都内から足繁く通っているところ。
都心部から各種交通機関で約3時間、今の時期だと新緑の山々と鮮やかに咲く桃の花を見ながらの行程で、それはそれで優雅なものではありますが・・・おそらくこのブログを見ている方の過半数以上は、電車を一駅二駅乗ってふらっと行くようなBARではないと思います。

しかしだからこそでしょうか。この場所には、リゾート特有とも言えるゆったりとした空気と、都心部のBARにはない居心地の良さ、それを作り出すスタッフのホスピタリティ。そしてオリジナルボトルを含む素晴らしいお酒の数々があり、一度訪問すればファンになってしまうだけの環境が整っているのです。

まずはホテルにチェックインし、BARオープンまで隣接するレストランROCKで簡単に食事・・・のつもりが美味しくて結構がっつり。萌木の村で醸造しているビールと地元産のグリルソーセージ等を味わい、満たされた気持ちでBARに向かうと、"村長"である舩木上次さんが仕事終わりに立ち寄ってくださいました。

「やっと来ることが出来ました、お待たせしてしまい申し訳ございません。」
「良いんだよ、それより今日はお酒のことをいっぱい勉強させてもらうよ。」

舩木さんとは2年ほど前から交流がありたが 萌木の村には訪問機会を作ることが出来ずにいました。 
そんな中、舩木さんと二人三脚でこのBARパーチを育てて来た、バーマンの久保田さんが退職され、新天地でさらなる修行に励まれるという報せ。私もまたそろそろ公私とも忙しくなる時期で、これは行くなら今しかない、無理してでも行くしかない!と妻にも頼み込んで都合をつけ、やっと訪問することが出来た訳です。

この日は偶然団体のお客様が入られていて、BARラウンジには開店早々から美酒に酔う愛好家の歓喜と、静かな熱気が漂っていました。

自分はウイスキーやワインが眠るセラーを案内して貰った後で、ラウンジへとチェックイン。
パーチはラウンジという位置付けから、写真の通り広い空間があり。そこは煉瓦造りの暖炉に加え、舩木さんが集められたアンティークのオルゴールも特色の一つ。
普通ならBARに行ったらカウンター席一択なのですが、今回は窓際のテーブル席に着席。窓の外は名残雪、暖炉の火を眺めながら、時折聞こえて来るオルゴールの高く優しい音色の中で、運ばれて来るお酒を楽しむ。そんな贅沢なひと時を堪能しました。

この記事ではそのうちの一部を紹介させて頂きますが、後日メモが残る限り個別のレビューもまとめていきます。

パーチのバックバーは、地元清里ゆかりとも言える白州に加え、その近隣のウイスキーである駒ヶ岳、軽井沢、イチローズモルト・・・ほか各種ジャパニーズウイスキーのラインナップが豊富。
もちろんスコッチウイスキーやバーボンも、都心部ではすっかり見られなくなってしまったような銘柄まで多数あり、文字通り愛好家垂涎、1杯目の注文から目移りしてしまいます。

オープニングドリンクは、そんなジャパニーズウイスキーから軽井沢1960年蒸留 21年43% "岩田久利 吹き硝子ボトル"。
天に昇っていくかのような、幻想的な美しさを備えたボトル。。。っていうか、今の時代にこれが開いてるBARは初めて見ましたよ。
驚く自分の隣で、「酒は開けて飲まないと!」と笑う舩木さん。
経年と加水で柔らかい飲み口から、ナッツを思わせる軽い麦感に、軽井沢らしからぬ上品なシェリー感。少し抜けたような印象はありますが、オープニングにはちょうど良いくらいです。

次は1960繋がりのスコッチモルト、GMのグレングラント1960-2001へ。これは純粋に美味い。古き良きGMらしくふくよかで、少し土っぽさを伴う豊かなシェリー感がたまりません。
そしてこれぞ地元、NAから25年までバックバーに一通り揃う白州ラインナップからは、久々に旧ボトルの12年を。もちろん、響や山崎も揃っているのですが、シェリーシェリーときたところで方向転換。今の白州12年より香味に存在感があり、厚みのあるウッディネスとスモーキーさがじんわりと広がっていきます。

macphails40&50
間髪入れずにオススメされるまま、なつかしのマクファイル40年&50年。ああ、もう順番はめちゃくちゃ。。。だがそれがいい(笑)。
中身はマッカランとしてウワサされているマクファイルズシリーズ。この長期熟成を普通にリリースしていたのですから、GMの規模と歴史がどれほどのものかが伝わってくるというもの。40年のほうがシェリーが効いており、スウィートでリッチな味わい。50年はリフィル系の華やかでドライなオークフレーバーが中心。

などなど、この他にも秘蔵のボトルも含めウイスキーを楽しんだところで、久保田さんにパーチの看板メニューとも言える"季節のフルーツを使ったカクテル"を作ってもらいました。
完全お任せ、雑な注文でしたが「そこそこ飲まれてますので、ここはクールダウンのために・・・」と作られたのが、ジンと柚子とトロピカルフルーツジュースのカクテル。

これがメチャ美味い。自分のコンディションに合っていたというのもあると思いますが、ジンと柚子の柑橘系の爽やかさが一体となり、ともすればクドくなりがちな双方の柑橘感、強いアタックはトロピカル系の果実味で丸みを帯びて穏やかに。
爽やかでありながら、満足感もある素晴らしい仕事の1杯でした。


この日は、舩木さんの友人であり、清里在住のNさんも来られていて、お二人から色々とこれまでの話しを伺うことができました。
曰く、パーチはかつてこのように整った環境ではなく、特段こだわりのないスペースだったそうです。それこそ、ウイスキーも数種類しか無かったという。。。
自分もこれまでの旅行先で立ち寄ったホテルのバーラウンジは、広く浅くを満たすが多く、特に地方の観光地のそれに突き抜けて凄いものは少ないという印象を持っていました。(先日宿泊した箱根の某ホテルラウンジは、カタログで売りの一つにしているのに荷物置き場になっていたほどで・・・。)

そこにバーマンとなる久保田さんが入社、当時ウイスキーに興味が無かったという舩木さんは、ラウンジを拡充する中で徐々にウイスキーの沼へ。。。この時、一人の常連客の後押しが二人に大きな影響を与えたとも聞きます。
ここからは清里の父・ポールラッシュ氏の言葉にある「最善を尽くせ、そして一流であれ」の精神の元、久保田さんは技術を磨き、舩木さんはウイスキーを集め、バーラウンジの環境を整えるだけでなく多くの人との繋がりをこの地に呼び込んでいきました。
そしてそれは、清里ウイスキーフェスティバルの開催をはじめ様々に結実。清里フィールドバレエやポールラッシュ生誕120周年記念ウイスキーといった、単なる記念品ではないウイスキーを産み出す事にも繋がっていくのです。
これが僅か10年に満たないうちの出来事だとすれば、信じる人は少ないのではないでしょうか。今後、この萌木の村、並びにBARパーチからどのような物語が生まれていくのか、楽しみでなりません。

(萌木の村発の記念ウイスキー達。一部はBARパーチでなければ飲むことが出来ないものも。各ボトルのレビューはこちら。)

こうしてオープンからクローズまで、すっかり長居をさせて頂き、ラウンジから徒歩1分未満の寝室でベットイン。翌朝には地元食材を使った美味しい朝食が待っている。
ああ、これは素晴らしい贅沢ですよ(笑)。
清里はこれからが新緑芽吹く春の訪れ、そして妖精の舞う夏へと続く、観光地としてのメインシーズンを迎えます。
次はいつ来れるかな、出来ればシーズン中にもう一度来たい、なんて考えながら満たされた気持ちで東京へと戻りました。
萌木の村の皆様、お世話になりました!

ホテル ハット・ウォールデン
バーラウンジ パーチ 
営業時間:20:00〜02:00
定休日:月曜日
住所:〒407-0301 山梨県北杜市高根町清里3545 

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