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LITTLE BOOK
CRAFTED BY FREDDIE NOE
BLENDED STRAIGHT WHISKEY
Batch No,1 "The Easy"
2017 Release 
750ml 128.2proof

グラス:サントリーテイスティング
場所:自宅セミナールーム@TWD
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ウッディで渋みの強いアロマ、メープルシロップやキャラメルアーモンド、ほのかなハーブ、鋭利な穀物感、アルコールのアタックを感じるハイトーンなアクセント。

味:口当たりはウッディでコクのある甘み、焦げたような苦味と粘性、徐々にメープルシロップ、アーモンドナッツの甘みと香ばしさ。パワフルで濃厚な味わい。
余韻は焼きりんごの淡いフルーティーさ、チャーオークのえぐみを感じつつ、スパイシーでドライ。

近年の濃厚系バーボンというチャーオークの味わいが主体。樽が強くスパイシーでややウッディなえぐみが目立つが、ロックや少量加水すると全体的に伸びてメローで多層的な香味がある。


   
リトルブックは、ジムビーム社が作る原酒をベースとするブレンデッドウイスキー。
名前の由来は「ブッカーズ」でお馴染み、先代蒸留責任者であるブッカー・ノウ氏が、その孫であるフレディ・ノウ氏に付けたニックネームであり、同氏が最初に手掛けたウイスキーとのことです。

このウイスキーは、ストレートバーボンウイスキーが主流であるアメリカのウイスキー業界にあって、しかも最大手であるジムビーム社のブランドにあって意欲的、かつチャレンジングな1本と言えます。

その理由は、バーボンではなくブレンデッドウイスキー表記であると言うこと。写真のタグの中に書かれているように、バーボンウイスキーにコーン、ライ、そしてモルトウイスキーをブレンドしており、通常は各原料を混ぜて発酵、蒸留に移るところを別々に作って最後に調整しながらブレンドしたというプロセスか。
ともすれば、現地スーパーでコークハイ用に売られている安価で薄いアメリカンウイスキーと同じジャンルになりかねないモノをガチで作ったという感じ。
例えるなら、トリスと響、くらいのトーンの差はあります。

(ジムビーム蒸留所にて、故ブッカー・ノウ氏の銅像。自身の孫の挑戦はどう写ったのだろうか。Photo by T.Ishihara)

このブレンデッドウイスキーの詳細な原酒構成は
・バーボンウイスキー(4年熟成)
・コーンウイスキー(13年熟成)
・ライウイスキー(6年熟成)
・モルトウイスキー(6年熟成)
2年以上の熟成を経ているため、それぞれストレート表記が付く原酒。ただ、補足の必要があるのが、スコッチのそれと異なる連邦アルコール法における整理と条件です。

まずブレンデッドウイスキーは、上記何らかのウイスキーを20%以上含むものとされています。(50%以上の場合、ブレンデッド◯◯表記となるので、今回単一のものはどれも50%未満か。)
加えて、同法におけるモルトウイスキーは大麦が原料の51%以上であれば名乗ることが出来、他のコーン、ライも同様に最低ラインとなる比率や樽の条件が定められています。
蒸留方法もポットスチルの2回蒸留とは限らず、つまりスコッチ的なブレンデッドとは異なる構成であるわけですが、自分のようなスコッチ側を主軸にする人は勘違いしやすいかもしれません。

実際その風味はいかにもバーボン的。コーンで柔らかさ、ライで華やかさ、モルトで弱くなりがちなコシの強さ、飲みごたえをベースとなるバーボンに付与しようと狙ったのかもしれませんが、樽が強くパワフルで、ストレートで飲むと混ぜられたというそれぞれの原酒の影響は感じ取りにくいという印象を持ちました。
ただ、少量加水すると樽感や度数とのバランスが取れ、香りも開いて「なるほど」と思わせる要素は確かに感じられます。

アメリカンウイスキーの代表格であるバーボンウイスキーは、蒸留方法と樽の制限等ゆえ、香味が似通ってしまうことが良さでも弱点でもあると、度々語られています。
リトルブックのファーストリリースはその枠こそ越えてはいないものの、先代とは異なるスタイルで新しい可能性を模索した、今後に期待したいチャレンジングなリリース。
現地ウイスキー関連雑誌が「将来のために確保すべき」と評価していたそうですが、それはフレディ氏の挑戦と新しい可能性を評価してのことではないかと思うのです。

追記:このボトルはTWDメンバーのAさんが、アメリカを旅行した際に購入してきてくださったもの。貴重なボトルをありがとうございました!