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GLENFARCLAS 
BLACK GEORGE 
For BAR LIVET 
Aged 29 years 
Distilled 1989 
Bottled 2019 
Cask type 1st fill Sherry Hogshead #11194 
700ml 55.4% 

グラス:テイスティンググラス
時期:販促サンプル
場所:BAR LIVET
評価:★★★★★★★(7ー8)

香り:煮詰めたダークフルーツを思わせる甘酸っぱさと、チョコレートクッキーのような濃厚な甘いアロマ。古酒っぽさのあるシェリー感でレーズンやベリー、甘さと果実感主体でウッディネスは控えめ。奥にはかすかにフローラルなニュアンスも感じられる。

味:甘酸っぱくとろりとして濃厚な口当たり。香り同様にダークフルーツを煮込んだような濃厚さと、カラメルソースのようなほろ苦さも伴うシェリー感。じわじわとウッディな苦味も開いてくる。
余韻は長く、スパイシーな刺激とともに、アーモンドのようなほろ苦さとタンニンを伴うが、これは強くは残らない。むしろ奥には熟した黄色い果実のようなフレーバーも潜んでおり、口内に揺蕩うシェリーのふくよかな香気とあわせて陶酔感にも通じている。

ハイプルーフで余韻に繋がる酒精の強さもあるが、それを感じさせない濃厚さと甘酸っぱいフレーバーが印象的。少量加水しても香味がそのままの延びて、近年のノーマルなシーズニングシェリー樽とは異なる奥行きの深い味わい。瓶熟での成長も期待出来る。
一方、味は問題ないが、冷えているとかなり香り立ちに影響するので、4月というリリース時期は丁度いいかもしれない。

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BAR LIVETさんのオリジナルボトル。グレンファークラス1989、通称ブラックジョージ。
すでにコアユーザーから、2019年リリースで確実に期待できる1本との前評判もあるボトルですが、4月に予定されているリリースを前に、到着したばかりというボトリングサンプルをテイスティングさせていただきました。
結論から言うと、前評判通り、あるいはそれ以上に美味しいボトルに仕上がっていると思います。

ブラックジョージの企画がスタートしたのは1年前の冬のこと。蒸留所でカスクの絞り込みが行われ、候補となった5樽からサンプルが取り寄せられて最終的な選定が行われたのが昨年5月。その後はラベルや価格の調整など諸々あり、現地での選定から約1年の追熟期間を経て、ようやくリリースとなりました。
この時、取り寄せられたカスクサンプルを飲むことができた方々の情報が、上述の”前評判”に繋がっていた訳ですが。カスクサンプルとボトリングで味が違って来るのは、ボトリングあるあるの代表事例。この記事ではその変化の有無についても触れながら、レビューをまとめていきます。

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(グレンファークラスのウェアハウスでのカスク選定風景。ミリオン商事さんの協力で実現した静谷氏による選定は、蒸留所スタッフが「勘弁してくれ」と根をあげるほどの樽数と時間に渡ったという。。。ちなみにボトリングされた#11194はスタッフお気に入り、秘蔵の樽とのこと。)

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(候補となった5つのサンプル。すべて同じ1989年蒸留だが、シェリー感の濃淡、果実味の系統、サルファリーさの有無など、異なるキャラクターが感じられる。ちなみにこの5樽の中では頭ひとつ抜けた完成度だったのが、今回ボトリングされた原酒だった。)

グレンファークラスの1989と言えば、近年最も高い評価を受けたと言えるBARメインモルト、BARキャンベルタウンロッホが2016年にリリースした Cask No,13009。
そして最近のリリースからは、信濃屋の2017年詰めCask No,13049。このあたりが今回のリリースとの比較対象になると思いますが、ブラックジョージの香味は、そのどれとも異なるタイプです。

ざっくり分類すると#13009はスパニッシュオーク由来の香木を思わせる濃厚なウッディネスがあり、果実味に差はあれど山崎などで見られる樽の系統。#13049は、程よい甘みとウッディさの中にクリアでトーンの高いアタックが、1990のクリスマスボトルを思わせる系統というのが自分の中の分類です。
そしてブラックジョージのシェリー感は、テイスティングの通り序盤は黒と赤、余韻にはプレーンオークを思わせる黄色系も混じる、濃厚で凝縮したような甘酸っぱい果実味が特徴。バットとホグスヘッドでの違いもあるのか(例えば、側はスパニッシュでも、鏡板はアメリカンオークとか)、最近リリースされた中ではサイレンスバーの30周年記念の1987を濃厚にしたような構成が、系統として一番近いかなと思います。

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(サイレンスバーが同店創業30周年を記念し、リリースした1987年蒸留のホグスヘッド#3813。リフィルなので序盤のシェリー感は控えめだが、余韻にかけてのフルーティーさとバランスの良さが特徴。)

この濃厚さに繋がった要因のひとつが上記1年弱の追熟期間と考えます。(もうひとつの要因は、カスクの中身すべてを混ぜたかどうか、サンプルの段階の違いでしょう。)
昨年のカスクサンプル時点で充分濃厚ではありましたが、ボトリングされた原酒は序盤の甘酸っぱさがさらに強くなり、余韻で感じられた熟した果実のフェロモンに通じるようなフルーティーさは、少し圧殺されるような仕上がりとなっていました。

そういう意味で、このブラックジョージは前評判通りかと言われると厳密には違うのですが、”あるいはそれ以上”という前置きはこの違いのため。むしろインパクトと分かりやすさを備えただけでなく、悪落ちしなければ時間経過で妖艶さを纏い、さらに良い方向に変化することも期待出来ます。
同蒸留所の1960~70年代あたりの伝説的なボトル達と比べると、至らぬところは当然ありますが、今この瞬間これ以上はそう望めないことも事実。高い評価を受けることは間違いないと思います。

グレンファークラスは1980年代の樽の不足と樽売りの値上げから、今後のリリースレンジは2000年代蒸留に移行すると聞いています。
短熟でも良い原酒はありますが、長い時間をかけてピークを迎えたからこそ得られる艶やかでアダルトな仕上がりは得難く、本質的に異なるもの。
この時代にこのレベルの原酒をボトリングできたということが、ミリオンさんと選び手の実績の積み重ねを感じさせると共に、愛好家としては素直に羨ましくも感じるのです。