タグ

タグ:ブラインドテイスティング

グレンドロナック ハンドフィル 25年 1993-2018 蒸留所限定 57.7%

カテゴリ:
GLENDRONACH
HAND-FILLED
Aged 25 years
Distilled 1993
Bottled 2018
Cask type Sherry Butt #698
700ml 57.7%

グラス:
場所:BAR ミズナラカスク (水楢佳寿久)
時期:開封後半年程度
暫定評価:★★★★★★(6)

【ブラインドテイスティング回答】
地域:スペイサイド
蒸留所:モートラック
熟成:20年程度
蒸留時期:1980年代後半~1990年頃
樽:シェリーバット・スパニッシュオーク
度数:58%程度

香り:ドライでスパイシー、ドライプルーンなどのダークフルーツ、香木やハーブのアクセント、かすかに黒蜜を思わせる甘酸っぱく濃厚なシェリー香。

味:パワフルで濃厚、しっかりとした酒質で余韻にかけてスパイシーな刺激も感じられるが、どこかこなれたような印象を受ける口当たりでもある。
余韻はビターで湿ったようなウッディネス、カカオチョコレートにベリーや黒葡萄、ハイトーンで長く続く余韻。

おそらくスパニッシュオークのシェリーカスクで、近年系シェリーの中でも評価されているタイプの香味が備わっている。十分美味しいのだが、もう少し甘みというか果実味が該当する香味に備わっていれば、さらに上の評価をつけていた。ストレートまたは少量加水で。


BARミズナラカスクにて、オーナーの篠崎さんが現地蒸留所にて購入されてきた、バリンチ(ハンドフィル)ボトル。何杯か飲んだ後で、最後の1杯に「ちょっとブラインドでもやってみます?」として出題いただいたものです。

シェリー感は所謂シガーモルトタイプ。テイスティングの通り強い酒質があり、かつ比較的涼しい場所にある内陸系の蒸留所で思い浮かんだのが、グレンファークラスやモートラック。どっちかと言えばモートラックかなぁという感じでしたが、該当する蒸留時期でグレンドロナックが出てこなかったのは不覚でしたね。。。 

一方で、口当たりには経年変化に近いようなこなれた印象もあり、熟成というよりボトリングから数年単位で時間が経ったのではないかと予想しましたが、思いっきり近年ボトルでした。
その違いはスペックを効いて納得。グレンドロナックのハンドフィルは、一度樽から払い出した原酒を90リットル程度のハンドフィル用のカスクに移し、そこから購入希望者が詰める形式で販売されています。
そのため、通常のボトリング行程と比較して空気に触れやすい環境にあることが、今回のようなこなれた印象に繋がったのかもしれません。

glendronach-hand-filled-visitor
(グレンドロナック蒸留所、ビジターセンターでのハンドフィル風景。購入者がラベルにサインし、ボトリングが行われる。画像引用:Peated perfection

ブラインドテイスティングの回答としては、樽と度数しか合致しておらず、それ以外は誤差の多い結果になってしまいましたが、誤認した部分と整合性の取れる理由もありましたので、納得のいく結果でもありました。何より、現地で購入された貴重なボトルのテイスティング機会を頂き感謝です。

それにしてもこういうスタイルのハンドフィルはまさに限定品という感じで、ロマンがありますよね。法律の問題などあるのだと思いますが(確か瓶詰め専用の部屋が必要とか)、現在日本の蒸留所で同じスタイルのハンドフィルの販売を行っているところはなく、あるのは酒屋の量り売りくらい・・・。
大手は難しいと思いますが、原酒の量がある程度確保できた数年後、クラフトディスティラリーなどはこうした試みを行っていただけないかなと思っています。

クライヌリッシュ ブティックウイスキー 50.6% Batch No,2

カテゴリ:
CLYNELISH
BOUTIQUE-Y WHISKY 
Batch No,2
Release in 2013
500ml 50.6%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:ブラインドサンプル@Wennyさん
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

【ブラインド サンプルB】
地域:ハイランド
銘柄:ベンネヴィス
年数:20年程度
流通時期:2010年代
度数:48〜50%
樽:バーボンホグスヘッド
仕様:シングルカスク

香り:干草や乾いた麦芽のドライなアロマから、乳酸系の酸味、キウイフルーツや人工的なパッション香、時間経過でおしろいを思わせる甘みも感じられる。

味:少し水っぽさのある口当たり、バニラ味の風邪薬シロップ、おしろい、オーキーで黄色い果実味。後半にかけてヒリヒリとした刺激、ケミカルな甘みも伴う。
余韻はドライでほろ苦く、乾いたウッディネス。オーキーな華やかさの残滓を伴い長く続く。

ハイランド系の酒質と熟成感。人工的なニュアンスのあるフルーティーさとおしろいを思わせる麦感は、度数落ちホグスのベンネヴィスだろうか。同系統のフレーバーを出すものとしてはアイリッシュにしては麦系の香味が厚く、ロッホローモンドにしては熟成が長い印象。


リカーショップ、マスターオブモルトがリリースする、ブティックウイスキーカンパニーブランドのクライヌリッシュ。スペックの詳細は明かされていないものの、度数、樽、熟成年数、流通時期などの諸条件は、そこまで大きく外してはいないと思います。蒸留は90年代前半で、ボトリング本数から、樽はホグスヘッドでしょう。

しかしいただけないのが、蒸留所に結びつく特徴の捉え方。今回は白粉っぽい厚めな麦芽風味以外に、人工的なニュアンスのある甘み、リキュールやシロップのような果実味を強く拾ってしまい、こりゃ多少麦感もある90年代の前半から中頃くらいのベンネヴィスかなと。結果は大外し、麦系が強いクライヌリッシュだったワケです。
地域指定ハイランドと言えば予想は近いようですが、正直猛省ですね。

正解発表の後で改めて飲んでみると、ああ、これはクライヌリッシュだよというワクシーで白粉っぽい麦感の方が強く感じます。こんなにわかりやすいキャラクターだったのに、ピントが合わないとこうもズレる。
これが情報を飲むということであり、どこにフォーカス出来るかというブラインドの難しさ。まだまだだぞと良い刺激を頂いた出題でした。ありがとうございます!

オールドフィールド ブルーラベル 特級表記 1980年代流通 43% ブラインド

カテゴリ:
OLD FIELD'S BLUE LABEL
Blended Scotch Whisky
1970-1980's
760ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:ブラインドサンプル@Wenny氏
暫定評価:★★★★★(5)

【ブラインドテイスティング解答】
地域:ハイランド&ローランド
銘柄:BIG-T、ピータードーソン、デュワーズ
年数:NAS(5〜8年程度)
流通時期:1980年代
度数:43%
樽:複数回使用のリフィルシェリー系
仕様:ブレンデッドスコッチ

香り:ドライでクリア、あまり香りが立たない。プレーンな穀物感、アロエ果肉。時間経過でほのかにレーズンを思わせる酸味。

味:品のいい甘さと麦芽風味主体。ヒリヒリとしたアタック、薄めた蜂蜜、砂糖漬けレモンピール。あまり変化はない。余韻はドライ、微かなピートフレーバー、あっさりとしている。

スタンダードクラスと思われるオールドブレンデッド。癖の少ないハイランドやローランドのブレンド向け蒸留所のモルトをベースに、グレーンも相応に使われている印象である。

IMG_8946

オールドフィールド社製のブレンデッドウイスキー。愛好家の間では"天国に一番近いBAR"としても知られる、静岡に本店を持つBARブルーラベルの店名の由来になった、ブレンデッドウイスキーでもあります。

その素性は1970年代初頭、ウイスキー新興市場向けに作られた輸出用のブレンデッドウイスキーだった模様。
当時はストラスコノンなど、イギリス以外の国への販路を求めた銘柄も複数ありましたので、この銘柄がそうした素性のウイスキーであってもおかしくはありません。実際、日本向け以外にイタリア向けのボトルは確認できるのですが、イギリス側の関連サイト等にほぼ情報がないのです。

BARブルーラベルから発信された情報によると、同ボトルの位置付けはスタンダードクラスで、構成原酒はトーモアやベンネヴィス。オールドフィールド社はロングジョン社の関連企業で、同社が保有する原酒を主に使ったブレンデッドを作っていたそうです。
とすると、他にはグレンアギー、ラフロイグなどもありえるわけですが、飲んだ印象としてアギーはあってもラフロイグはほとんど無いかなと言う構成。テイスティングで感じたように、熟成の比較的若く、ブレンド向けの癖の少ない穏やかな原酒とグレーンが中心だと感じます。 


今回のブラインドサンプルは、当ブログ読者のWennyさんから頂きました。
直接の面識はないのですが、以前も出題を頂いており、こうしてまた新たにサンプルを頂けるとは、ブロガー冥利に尽きる光栄な話です。
ちょうど「ブラインドテイスティングの考え方」なんて持論を記事にしたところでもあり、これは外せないぞと挑んだ今回の出題。。。これから順次公開していきますが、個人的に及第点から要補習という結果でした(汗)。

このブルーラベルはスペック的には大きく外してないので、まさに及第点という回答。言われて見ると納得な銘柄なのですが、この辺りの個性の少ないスコッチでの銘柄当ては、思いつく銘柄を揃えた上でのサイコロになっちゃいます。
もっとも当たり目が入っているかどうか、それが問題なのですが。

ブラインドテイスティングの考え方について

カテゴリ:
今更書くまでもないと思いますが、自分はテイスティングスキル向上のため、率先してブラインドテイスティングを行うようにしています。

ブラインドテイスティングは、通常のテイスティングと何か異なる観点を持つわけではありません。ただしラベルからの情報がないので、このブランドならこれがあるという事前の予測と補正が出来ません。
結果、素の感想が出るのは、言い換えれば感じることが出来た要素と出来ない要素が確認できる、テイスティングのブレや穴を認識することが出来る機会とも言えるわけです。


ブラインド推進派を公言しているのもあって、ウイスキー仲間やブログ読者の皆様から"挑戦状"をぶっこまれたり、個人開催のブラインドテイスティング会に誘ってもらったりと、様々な機会を頂いています。
その結果か、最近は正答率も上がり、やらかす機会も減ってきました。

同時に「テイスティングで何を意識しているか」、「ブラインドテイスティングのポイントは何か」ということも度々話題になります。 
そこで今回の記事では、そのテイスティングイメージを、ブラインドテイスティングの流れに合わせる形で記事にまとめてみます。
こうしたアプローチは個人個々、様々な考え方があるものと思いますので、これが正解と言うつもりはありません。
ただ、説明することで考えがまとまりますし、新しい考え方も取り入れてもっともっと上達していきたいなと。。。
皆様におかれましても、テイスティングに関する考え方のご意見を頂ければ幸いです。 


①テイスティングのポイント
ブラインドではいきなり銘柄や蒸留所を絞り込むようなことはせず、香味構成や、そこから得られるイメージから、以下の項目をそれぞれ個別に絞り込むところからスタートします。
これはオープンテイスティングでも共通する要素であり、地域に見合ったキャラクターはあるか、樽の構成はどうかなどを考えるのは、好みかそうでないか以外に少なからず意識するポイントだと思います。

・地域※
・熟成年数
・蒸留時期
・樽構成
・度数
・その他(加水の有無、特徴的な個性など)
※ブレンデッドと判断される場合は、使われている原酒のどの地域特性が一番強いか。
   
その際、ノージングで香味構成の全体像はおおよそ判断出来ますが、グラスの形状に加え、空間の"匂い"や"気温"などの影響も受けるため、実際に飲んで味わいと含み香から各情報を補正する必要があります。
一部、香りだけで判断できる蒸留所もいくつかあります。ですが、それはかなり狭義なもので、青リンゴとかピートとか、広義な要素から安易に絞り込むのは事故の元。そうやって決め付けて、時に邪推しながら他の項目を予想すると、大概やらかします(笑) 


②得られる情報の整理と捉え方
飲んだ際に得られる情報には、そのまま理解出来るものと、いくつかの要素を踏まえて予測したほうが精度が高まるものがあります。 
前者は"ざっくりとした樽構成"、"度数"、"加水の有無"、そして"酒質の整い具合"です。

樽構成の認識は、まずはシングルカスクで該当する樽構成のウイスキーを飲み、それぞれの樽の個性の傾向を理解しておくことが必要です。
その上で、バレルなのかホグスヘッドなのか、ファーストフィルなのかセカンド以降なのか、複数種類が使われているのかなどの詳細な分析は、後述する熟成の考え方をもとに深掘りすることになります。

度数の捉え方は、ウイスキーの粘性で見るとか、香味のアタックの強さで推定するとか、スタイルは様々あるようですが、自分は"飲み込んだときの喉や口奥のヒリつき具合"で判断しています。
ボトルによっては、度数が低くてもアタックの強さがあるボトルがあったりしますが、不思議と飲み込んだ後に感じる刺激は、度数と比較して一番ブレ幅が少ない印象です。

そして加水の有無については、例えば同じ度数でも度数落ちの43%と加水の43%では、香味の広がり方を始めキャラクターが異なるため、香味の中間での開き具合、口当たりで感じられる質感といった点で推定しています。


例えば、上はシングルカスクで度数落ちのウイスキー(青線)と、加水調整済みのウイスキー(赤線)の、香味の広がり方をイメージした図になります。
度数落ちは口当たりがシャープで、パッと香味が開くのですが、余韻にかけては長続きしない傾向があります。これは熟成によって酒質のボディが削られ、所謂線の細いタイプに仕上がっていることが多いためです。

一方で加水調整した場合は、口当たりの角が取れ、余韻の香味も残りやすくなりますが、効きすぎると中間の変化が消えてしまい、あまり香味が広がりません。
こののっぺりとしたような質感は、強制的に整地されたようにも感じるため、度数落ち=獣道、加水=整地・舗装した道路を、それぞれ歩くようなイメージを持っています。

こうしたイメージを整理することは、熟成に伴う酒質の整い具合を判断する基準にもなります。
加水で無理やり整えたのか、熟成を経てバランスよく整ったのか。。。あるいはまだ若く元気いっぱいなのか(下図)。
近年ではカヴァランのように最初からクセの少ないクリアなニューメイクを作り、早熟でリリースするスタイルが増えている印象があります。
ですが長期間の熟成を経ないと得られない要素、質感はあり、次章ではそうしたウイスキーの熟成由来に関する項目を深掘りします。


③熟成がウイスキーに与える影響
さて、残る項目である"地域"と"熟成年数"
そして前章から引き継ぐ"樽構成の詳細なの推定"は、ブラインドテイスティングにおいて最も経験値が必要な領域であり、ウイスキーの熟成に関する知識が問われる、いわば応用問題です。

熟成年数を予想する際、ありがちな間違いとして「色が濃いから熟成も長い」という考えがあります。 
確かに、カラメル添加やウッドチップなどのイレギュラーを除けば、熟成しないと色はつかないため、目安の一つにはなります。
ですが、精度をあげるにはそこからもう一歩踏み込む必要があります。


上の図、C-①からC-③は、異なる地域に置かれた樽から原酒に溶け出る樽のエキスの量を、熟成年数を横軸にまとめたものです。 

例えば、C-①を台湾、C-②は日本、C-③はスコットランドとします。それぞれ気候が異なる中で、明確に違うのは気温です。
日本は最高気温で30度をゆうに越えますが、スコットランドは20度に届かない。台湾はもっと温暖ですね。
樽材は温度が高いと膨張してエキスを多く出すため、樽の出方は地域によって差が出ることになり。。。これは同じ日本やスコットランド国内でも、鹿児島と北海道で気候が違うように、南ハイランドと北ハイランド・オークニーでは同様に樽の出方が違う傾向があります。

この図で言えば、C-①で10年程度で到達する樽感は、C-③の環境では40年必要ということになり30年も差が出ます。 その時間差は基準とする環境次第ですが、実際そうした原酒が普通にあることは、説明は不要でしょう。 
この熟成期間との関係は樽の種類によっても異なり、例えばファーストフィル(茶線)とセカンドフィル(黄線)では以下のような違いとなって、原酒に現れる傾向があります。

(同じ熟成年数のスコッチモルトでも、樽の種類によって色合いは全く異なる。)


では熟成地域と年数を正しく判断する上で、もう一歩踏み込むとはどういうことか。それは"樽のエキス"に加え、"溶け出た樽材の量"を香味から判断することが一つ目のポイントになります。

先程からグラフに赤い点線がありますが、これが"溶け出る樽材の量"の熟成年数での変化とします。
樽が溶けるとはどういうことか。それを説明するには熟成の概要についても触れておく必要がある訳ですが、ウイスキーを熟成する際の樽を通じた影響は、ざっくり以下の図のように分類出来ます。

(ウイスキーを入れた樽の断面図。左が熟成開始時、右が熟成後)

①樽の呼吸を通じて原酒の一部成分が外に放出される。
②樽材が原酒の一部成分を吸収する。
③樽の呼吸を通じて外部の空気が取り込まれる。
④樽材からエキスが出る、樽材そのものが溶ける。

ここでのポイントは④です。
熟成によって得られる樽感は、樽の材質が持つ成分と、ワインやシェリーなど染み込んでいた成分(エキス)が原酒に溶け込むだけでなく、樽材そのものが溶け出て"樽由来の香味"を構成しているのです。
この樽材そのものが多く溶け出ることで、味わいのドライさ、ざらつきなどが変化してきます。

樽材が溶ける量は、樽詰め度数や地域差などで多少違いはあっても、エキスほど大きな差はないと感じています。
そのため、この2点に注目してウイスキーを整理すると、飲んでいるウイスキーがC-①から③のどれに該当するのかが見えてくることになります。
また、小さい樽であればあるほど貯蔵量に対する接触面積が増えることから樽材が溶ける量は多くなるため、バーボンバレルとホグスヘッドの違いなど、同一分類のカスクサイズの判断材料にもなります。(本編とはあまり関係がないですが、ミニ樽による長期熟成が難しい理由の一つでもあります。)

もう一つ、熟成を判断する材料となるのが酒質の変化です。
樽熟成による影響を通じて、ウイスキーは樽感を得る一方で、持って生まれた要素は良いも悪いも含めて徐々に失っていく。つまり、熟成は"何も足さない何も引かない"ではなく、"足し算と引き算の同時進行"であると言えます。

図中のB-1は元々酒質が強かったもの、B-2は酒質がそこまで強くないもの。例えばラガヴーリンとブナハーブンとすれば、伝わるでしょうか。
ブラインドテイスティングの場合、飲んだ際の口当たりの滑らかさや、香味の広がり方、ボディの強弱などから熟成年数を逆算してイメージする必要があるため、ウイスキーそのものの経験値がより強く求められることになります。

熟成による足し算と引き算の図をまとめると、上記のようにウイスキーによって様々な条件があることがわかります。

それを認識する為には、日頃から若いウイスキーも長期熟成も幅広く飲み、ウイスキーの香味分類以外に、このウイスキーはどういう素性や位置付けのものなのか、らしさはあるのかという点を意識しておくことが上達の近道なのかなと思うのです。


④シングルカスク以外のウイスキーのイメージ
シングルカスクに限定するなら前章までで話は終わりですが、ウイスキーはそれだけじゃ無いですし、もうちょっとだけ続くんじゃ、ということで。

ブレンデッドやシングルモルトウイスキーの場合、樽や原酒が複数種類使われることになるため、シングルカスクのものよりも個性が掴みづらくなる傾向があります。
バーボンバレルとバーボンホグスヘッドなど、近い種類の樽が複数混じって加水されていたりする単一系統タイプはまだマシですが。。。多数の樽が混じって味もそっけも無いグレーンまで大量に加わっているようなブレンデッドの場合、樽構成に関する難易度は一気に上がります。

酒質がちょっとブレるというか、異なる盛り上がり方をする箇所があるというのが同一系統複数樽のイメージ。

赤線は多種多様な原酒が使われたミドルエイジのブレンデッドスコッチ。青線はグレーン増し増しでベースもよくわからない安価なブレンデッドウイスキーのイメージ。

こうしたウイスキーで混ざり合った原酒を一つ一つ分解して分析するなど、今の自分では困難です。
なのでオフィシャルスタンダードのブレンデッドとかを、条件無しのブラインドで出されるほうが、加水も効きまくってるし樽も取りづらいで、正直辛いですね(汗)。

ただ、前章までにまとめた観点から見ると、アタリをつけて行くことは出来るため、後はどこまで深掘り出来るかということになります。
おそらく、ブラインドテイスティング推進派にとっては、課題の一つになることは間違いない領域です。


⑤テイスティングスキル向上のために
さて、上述のように、各項目を個別に考えて整理しろと言っても、取っ掛かりがなければナンノコッチャという話。
その最初のステップになるのが、樽由来の香味の理解です。
それがあると、酒質由来の香味が整理できるようになり、熟成感が。。。と繋がるわけですが、そのポイントになるのがシングルカスクのウイスキーを数多く飲むことだと考えています。 

例えるならオーケストラ。複数の樽や原酒を使ったシングルモルトやブレンデッドは、多くの個性があるため、何がどれ由来なのか紐解くことが困難です。オーケストラを初めて聴いた人が、後で「あの楽器の演奏良かったよね?」と言われても、話についていけないのと同様で、しかしソロパートに限れば話は別です。

日本では各メーカーやインポーターの努力で、様々なボトラーズリリースが流通していて、素性の明確なシングルカスクの調達には事欠きません。また、近年では単一種類の樽で構成されたオフィシャルシングルモルトも増えてきました。

まずはバーボン樽の傾向、シェリー樽の傾向、それと熟成年数をセットという感じで、それぞれの項目ごとに自分の基準をつくることがテイスティングスキル向上に繋がると考えます。
他には、自分でもブレンデッドを作ってみるとか。最近流通が増えてきているウッドスティックを使って樽の成分やそのものがどう溶け出るのかを経験してみるなど、理解を深めるツールは我々の周囲に数多くあると思います。
まだまだ自分も試行錯誤しながら、色々試していきたいですね。


⑥最後に
長々と書いてしまいました。ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
考えてる内容は一通り網羅したつもりですが、わかりにくい表現などは、今後何度も読み直して微修正を加えていくつもりです。

また、今回まとめたような考え方を全飲み手に強制するものではありません。
大事なのは自分に合うか合わないかという直感的なものであって、美味しく楽しく飲めればいいじゃないか、難しく考える必要ないという意見も当然あると思います。
かくいう自分も年中神経を尖らせてテイスティングをしているわけではないですし、お酒を主役にせず、ロックで飲みながら映画を見たり、潤滑油がわりに場の雰囲気まで楽しむような飲み方をするのも大好きです。

ただ、あくまで自分の目指すところとして、ウイスキーが個性を楽しむ酒であり、その個性がウイスキーの魅力であるならば、それを理解したいし余すところなく味わいたい。
そうすると、やはり精度の高いテイスティングスキルはあったほうがいい。レビューブログもやってますしね(笑)。
今日ここに書かせていただいた記事は、そんな自分の考え方のまとめにして、マイルストーンの一つなのです。


追記:本記事を書いていたところ、ブログ読者のWさんから、ブラインドテイスティングサンプルを頂きました。
タイミング良すぎでしょ(笑)
こんな記事書いて、「マイルストーンなのです(キリッ」で締めた直後に、いきなりやらかせない・・・。
いやいや、プレッシャーは最高。こういう時こそ、一層集中できるというもの。順次トライさせて頂きます!

ハイランドパーク 12年 バイキングオナー 40% ブラインドテイスティング

カテゴリ:
HIGHLAND PARK
12 YEARS OLD
VIKING HONOUR
700ml 40%

【ブラインド解答】
地域:アイランズ
蒸留所:ハイランドパーク
年数:12~15年程度
度数:43%程度
樽:アメリカンホワイトオーク、リフィルシェリーオーク主体。
仕様:加水、複数樽バッティング、近年流通品。

グラス:木村硝子テイスティング
時期:不明
場所:ブラインドサンプル@ぎんが
暫定評価:★★★★★(5-6)

香り:サルファリーさを含む淡いシェリー香。微かにピートと干草、オレンジピールのほろ苦さ。奥には蜂蜜の甘みを伴うエステリーさとオーキーなウッディネスがあり、スワリングすると一時的に開いてくる。

味:ややえぐみのある口当たり、中間に塩水を思わせる潮気、蜂蜜の甘み、やや緩いボディ。フィニッシュは林檎のコンポートを思わせるオーキーで華やかなフレーバーが、土っぽさと植物感のあるピート、スモーキーさのアクセントとなって感じられる。

おそらく現行品のオフィシャルボトル。ミドルエイジ・・・までいかない、比較的若い原酒を加水で整えている印象はあるが、大手の作りらしく上手くまとまっている。乾いた植物感を伴うピートフレーバーと樽由来のニュアンスが程よく混ざり合い、特に余韻のオークフレーバーとスモーキーさが可能性を感じる。


昨日に続きハイランドパークのブラインド記事。昨年大幅リニューアルしたハイランドパーク・オフィシャルラインナップの12年モノ、バイキング・オナー。

その新しいデザインは、近年のハイランドパークの販売戦略であるヴァイキング文化をベースに、世界遺産「ウルネスの木造教会にある壁面装飾」をモチーフとして、従前ののっぺりとしたボトルから大きく異なる。バックバーにあって明らかに目を引くデザインとなっています。


(ウルネスの木造教会の壁面装飾。ヴァイキングが信仰したというドラゴンが、蔦の浮き彫りの中に隠されているという。また教会はヴァイキング船の建造技術が応用され、釘を使わず建てられている。引用元:

今回のリニューアルでは、変わったのは上記パッケージだけで、価格、中身は変わっていないと公式には発信されています。
確かに価格は据え置きなのですが、味について発売当時に比較テイスティングした限りでは、新しいボトルのほうがシェリー感が控えめで、その分ピートが際立っていた印象がありました。

今回は期せずしてそれをブラインドテイスティングで確かめた形。解答がボトル指定出来ている以上、特徴は掴みやすかったと言えますね。
ピートフレーバーがはっきりしているだけでなく、余韻にかけて感じられるアメリカンホワイトオーク由来と思しきオーキーなフルーティーさ。これは先日記事にした、17年ザ・ライトに備わっていたものほど強くはないものの同一の香味です。

一方、ハイランドパークの王道とも言えるシェリー樽熟成の原酒由来と思われる微かな硫黄臭は、オークフルーツ路線でいくなら不要とも・・・。
シェリー系原酒で厚みとバランスをとるのはいいと思うんですが、やはり中途半端にシェリー路線を走るくらいなら、オークフルーツ路線が良い。その傾向がスタンダードボトルから出ているのは、個人的にはポジティブであり、将来的に期待が出来るリニューアルであったとも感じるのです。


さて、今回のブラインドサンプルは、以前ちょっと特殊なブラインドを出題頂いた、ぎんがさんから。
先日、持ち寄り会に呼ばれていたのですが、家庭都合で参加できず。。。すると事前にいくつかのサンプルが送られてきました。ありがたいことに、明らかに煽ってきているブラインドサンプルとともにです。
ここまでやられたらリアルタイムで解答してやるよと、持ち寄り会の時間帯に解答をツイッターで送信。「鋭敏」を期待されていたようですが、期待通りの結果を提供出来て満足であります。

このページのトップヘ

見出し画像
×