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ブラインドテイスティングの考え方について

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今更書くまでもないと思いますが、自分はテイスティングスキル向上のため、率先してブラインドテイスティングを行うようにしています。

ブラインドテイスティングは、通常のテイスティングと何か異なる観点を持つわけではありません。ただしラベルからの情報がないので、このブランドならこれがあるという事前の予測と補正が出来ません。
結果、素の感想が出るのは、言い換えれば感じることが出来た要素と出来ない要素が確認できる、テイスティングのブレや穴を認識することが出来る機会とも言えるわけです。


ブラインド推進派を公言しているのもあって、ウイスキー仲間やブログ読者の皆様から"挑戦状"をぶっこまれたり、個人開催のブラインドテイスティング会に誘ってもらったりと、様々な機会を頂いています。
その結果か、最近は正答率も上がり、やらかす機会も減ってきました。

同時に「テイスティングで何を意識しているか」、「ブラインドテイスティングのポイントは何か」ということも度々話題になります。 
そこで今回の記事では、そのテイスティングイメージを、ブラインドテイスティングの流れに合わせる形で記事にまとめてみます。
こうしたアプローチは個人個々、様々な考え方があるものと思いますので、これが正解と言うつもりはありません。
ただ、説明することで考えがまとまりますし、新しい考え方も取り入れてもっともっと上達していきたいなと。。。
皆様におかれましても、テイスティングに関する考え方のご意見を頂ければ幸いです。 


①テイスティングのポイント
ブラインドではいきなり銘柄や蒸留所を絞り込むようなことはせず、香味構成や、そこから得られるイメージから、以下の項目をそれぞれ個別に絞り込むところからスタートします。
これはオープンテイスティングでも共通する要素であり、地域に見合ったキャラクターはあるか、樽の構成はどうかなどを考えるのは、好みかそうでないか以外に少なからず意識するポイントだと思います。

・地域※
・熟成年数
・蒸留時期
・樽構成
・度数
・その他(加水の有無、特徴的な個性など)
※ブレンデッドと判断される場合は、使われている原酒のどの地域特性が一番強いか。
   
その際、ノージングで香味構成の全体像はおおよそ判断出来ますが、グラスの形状に加え、空間の"匂い"や"気温"などの影響も受けるため、実際に飲んで味わいと含み香から各情報を補正する必要があります。
一部、香りだけで判断できる蒸留所もいくつかあります。ですが、それはかなり狭義なもので、青リンゴとかピートとか、広義な要素から安易に絞り込むのは事故の元。そうやって決め付けて、時に邪推しながら他の項目を予想すると、大概やらかします(笑) 


②得られる情報の整理と捉え方
飲んだ際に得られる情報には、そのまま理解出来るものと、いくつかの要素を踏まえて予測したほうが精度が高まるものがあります。 
前者は"ざっくりとした樽構成"、"度数"、"加水の有無"、そして"酒質の整い具合"です。

樽構成の認識は、まずはシングルカスクで該当する樽構成のウイスキーを飲み、それぞれの樽の個性の傾向を理解しておくことが必要です。
その上で、バレルなのかホグスヘッドなのか、ファーストフィルなのかセカンド以降なのか、複数種類が使われているのかなどの詳細な分析は、後述する熟成の考え方をもとに深掘りすることになります。

度数の捉え方は、ウイスキーの粘性で見るとか、香味のアタックの強さで推定するとか、スタイルは様々あるようですが、自分は"飲み込んだときの喉や口奥のヒリつき具合"で判断しています。
ボトルによっては、度数が低くてもアタックの強さがあるボトルがあったりしますが、不思議と飲み込んだ後に感じる刺激は、度数と比較して一番ブレ幅が少ない印象です。

そして加水の有無については、例えば同じ度数でも度数落ちの43%と加水の43%では、香味の広がり方を始めキャラクターが異なるため、香味の中間での開き具合、口当たりで感じられる質感といった点で推定しています。


例えば、上はシングルカスクで度数落ちのウイスキー(青線)と、加水調整済みのウイスキー(赤線)の、香味の広がり方をイメージした図になります。
度数落ちは口当たりがシャープで、パッと香味が開くのですが、余韻にかけては長続きしない傾向があります。これは熟成によって酒質のボディが削られ、所謂線の細いタイプに仕上がっていることが多いためです。

一方で加水調整した場合は、口当たりの角が取れ、余韻の香味も残りやすくなりますが、効きすぎると中間の変化が消えてしまい、あまり香味が広がりません。
こののっぺりとしたような質感は、強制的に整地されたようにも感じるため、度数落ち=獣道、加水=整地・舗装した道路を、それぞれ歩くようなイメージを持っています。

こうしたイメージを整理することは、熟成に伴う酒質の整い具合を判断する基準にもなります。
加水で無理やり整えたのか、熟成を経てバランスよく整ったのか。。。あるいはまだ若く元気いっぱいなのか(下図)。
近年ではカヴァランのように最初からクセの少ないクリアなニューメイクを作り、早熟でリリースするスタイルが増えている印象があります。
ですが長期間の熟成を経ないと得られない要素、質感はあり、次章ではそうしたウイスキーの熟成由来に関する項目を深掘りします。


③熟成がウイスキーに与える影響
さて、残る項目である"地域"と"熟成年数"
そして前章から引き継ぐ"樽構成の詳細なの推定"は、ブラインドテイスティングにおいて最も経験値が必要な領域であり、ウイスキーの熟成に関する知識が問われる、いわば応用問題です。

熟成年数を予想する際、ありがちな間違いとして「色が濃いから熟成も長い」という考えがあります。 
確かに、カラメル添加やウッドチップなどのイレギュラーを除けば、熟成しないと色はつかないため、目安の一つにはなります。
ですが、精度をあげるにはそこからもう一歩踏み込む必要があります。


上の図、C-①からC-③は、異なる地域に置かれた樽から原酒に溶け出る樽のエキスの量を、熟成年数を横軸にまとめたものです。 

例えば、C-①を台湾、C-②は日本、C-③はスコットランドとします。それぞれ気候が異なる中で、明確に違うのは気温です。
日本は最高気温で30度をゆうに越えますが、スコットランドは20度に届かない。台湾はもっと温暖ですね。
樽材は温度が高いと膨張してエキスを多く出すため、樽の出方は地域によって差が出ることになり。。。これは同じ日本やスコットランド国内でも、鹿児島と北海道で気候が違うように、南ハイランドと北ハイランド・オークニーでは同様に樽の出方が違う傾向があります。

この図で言えば、C-①で10年程度で到達する樽感は、C-③の環境では40年必要ということになり30年も差が出ます。 その時間差は基準とする環境次第ですが、実際そうした原酒が普通にあることは、説明は不要でしょう。 
この熟成期間との関係は樽の種類によっても異なり、例えばファーストフィル(茶線)とセカンドフィル(黄線)では以下のような違いとなって、原酒に現れる傾向があります。

(同じ熟成年数のスコッチモルトでも、樽の種類によって色合いは全く異なる。)


では熟成地域と年数を正しく判断する上で、もう一歩踏み込むとはどういうことか。それは"樽のエキス"に加え、"溶け出た樽材の量"を香味から判断することが一つ目のポイントになります。

先程からグラフに赤い点線がありますが、これが"溶け出る樽材の量"の熟成年数での変化とします。
樽が溶けるとはどういうことか。それを説明するには熟成の概要についても触れておく必要がある訳ですが、ウイスキーを熟成する際の樽を通じた影響は、ざっくり以下の図のように分類出来ます。

(ウイスキーを入れた樽の断面図。左が熟成開始時、右が熟成後)

①樽の呼吸を通じて原酒の一部成分が外に放出される。
②樽材が原酒の一部成分を吸収する。
③樽の呼吸を通じて外部の空気が取り込まれる。
④樽材からエキスが出る、樽材そのものが溶ける。

ここでのポイントは④です。
熟成によって得られる樽感は、樽の材質が持つ成分と、ワインやシェリーなど染み込んでいた成分(エキス)が原酒に溶け込むだけでなく、樽材そのものが溶け出て"樽由来の香味"を構成しているのです。
この樽材そのものが多く溶け出ることで、味わいのドライさ、ざらつきなどが変化してきます。

樽材が溶ける量は、樽詰め度数や地域差などで多少違いはあっても、エキスほど大きな差はないと感じています。
そのため、この2点に注目してウイスキーを整理すると、飲んでいるウイスキーがC-①から③のどれに該当するのかが見えてくることになります。
また、小さい樽であればあるほど貯蔵量に対する接触面積が増えることから樽材が溶ける量は多くなるため、バーボンバレルとホグスヘッドの違いなど、同一分類のカスクサイズの判断材料にもなります。(本編とはあまり関係がないですが、ミニ樽による長期熟成が難しい理由の一つでもあります。)

もう一つ、熟成を判断する材料となるのが酒質の変化です。
樽熟成による影響を通じて、ウイスキーは樽感を得る一方で、持って生まれた要素は良いも悪いも含めて徐々に失っていく。つまり、熟成は"何も足さない何も引かない"ではなく、"足し算と引き算の同時進行"であると言えます。

図中のB-1は元々酒質が強かったもの、B-2は酒質がそこまで強くないもの。例えばラガヴーリンとブナハーブンとすれば、伝わるでしょうか。
ブラインドテイスティングの場合、飲んだ際の口当たりの滑らかさや、香味の広がり方、ボディの強弱などから熟成年数を逆算してイメージする必要があるため、ウイスキーそのものの経験値がより強く求められることになります。

熟成による足し算と引き算の図をまとめると、上記のようにウイスキーによって様々な条件があることがわかります。

それを認識する為には、日頃から若いウイスキーも長期熟成も幅広く飲み、ウイスキーの香味分類以外に、このウイスキーはどういう素性や位置付けのものなのか、らしさはあるのかという点を意識しておくことが上達の近道なのかなと思うのです。


④シングルカスク以外のウイスキーのイメージ
シングルカスクに限定するなら前章までで話は終わりですが、ウイスキーはそれだけじゃ無いですし、もうちょっとだけ続くんじゃ、ということで。

ブレンデッドやシングルモルトウイスキーの場合、樽や原酒が複数種類使われることになるため、シングルカスクのものよりも個性が掴みづらくなる傾向があります。
バーボンバレルとバーボンホグスヘッドなど、近い種類の樽が複数混じって加水されていたりする単一系統タイプはまだマシですが。。。多数の樽が混じって味もそっけも無いグレーンまで大量に加わっているようなブレンデッドの場合、樽構成に関する難易度は一気に上がります。

酒質がちょっとブレるというか、異なる盛り上がり方をする箇所があるというのが同一系統複数樽のイメージ。

赤線は多種多様な原酒が使われたミドルエイジのブレンデッドスコッチ。青線はグレーン増し増しでベースもよくわからない安価なブレンデッドウイスキーのイメージ。

こうしたウイスキーで混ざり合った原酒を一つ一つ分解して分析するなど、今の自分では困難です。
なのでオフィシャルスタンダードのブレンデッドとかを、条件無しのブラインドで出されるほうが、加水も効きまくってるし樽も取りづらいで、正直辛いですね(汗)。

ただ、前章までにまとめた観点から見ると、アタリをつけて行くことは出来るため、後はどこまで深掘り出来るかということになります。
おそらく、ブラインドテイスティング推進派にとっては、課題の一つになることは間違いない領域です。


⑤テイスティングスキル向上のために
さて、上述のように、各項目を個別に考えて整理しろと言っても、取っ掛かりがなければナンノコッチャという話。
その最初のステップになるのが、樽由来の香味の理解です。
それがあると、酒質由来の香味が整理できるようになり、熟成感が。。。と繋がるわけですが、そのポイントになるのがシングルカスクのウイスキーを数多く飲むことだと考えています。 

例えるならオーケストラ。複数の樽や原酒を使ったシングルモルトやブレンデッドは、多くの個性があるため、何がどれ由来なのか紐解くことが困難です。オーケストラを初めて聴いた人が、後で「あの楽器の演奏良かったよね?」と言われても、話についていけないのと同様で、しかしソロパートに限れば話は別です。

日本では各メーカーやインポーターの努力で、様々なボトラーズリリースが流通していて、素性の明確なシングルカスクの調達には事欠きません。また、近年では単一種類の樽で構成されたオフィシャルシングルモルトも増えてきました。

まずはバーボン樽の傾向、シェリー樽の傾向、それと熟成年数をセットという感じで、それぞれの項目ごとに自分の基準をつくることがテイスティングスキル向上に繋がると考えます。
他には、自分でもブレンデッドを作ってみるとか。最近流通が増えてきているウッドスティックを使って樽の成分やそのものがどう溶け出るのかを経験してみるなど、理解を深めるツールは我々の周囲に数多くあると思います。
まだまだ自分も試行錯誤しながら、色々試していきたいですね。


⑥最後に
長々と書いてしまいました。ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
考えてる内容は一通り網羅したつもりですが、わかりにくい表現などは、今後何度も読み直して微修正を加えていくつもりです。

また、今回まとめたような考え方を全飲み手に強制するものではありません。
大事なのは自分に合うか合わないかという直感的なものであって、美味しく楽しく飲めればいいじゃないか、難しく考える必要ないという意見も当然あると思います。
かくいう自分も年中神経を尖らせてテイスティングをしているわけではないですし、お酒を主役にせず、ロックで飲みながら映画を見たり、潤滑油がわりに場の雰囲気まで楽しむような飲み方をするのも大好きです。

ただ、あくまで自分の目指すところとして、ウイスキーが個性を楽しむ酒であり、その個性がウイスキーの魅力であるならば、それを理解したいし余すところなく味わいたい。
そうすると、やはり精度の高いテイスティングスキルはあったほうがいい。レビューブログもやってますしね(笑)。
今日ここに書かせていただいた記事は、そんな自分の考え方のまとめにして、マイルストーンの一つなのです。


追記:本記事を書いていたところ、ブログ読者のWさんから、ブラインドテイスティングサンプルを頂きました。
タイミング良すぎでしょ(笑)
こんな記事書いて、「マイルストーンなのです(キリッ」で締めた直後に、いきなりやらかせない・・・。
いやいや、プレッシャーは最高。こういう時こそ、一層集中できるというもの。順次トライさせて頂きます!

ハイランドパーク 12年 バイキングオナー 40% ブラインドテイスティング

カテゴリ:
HIGHLAND PARK
12 YEARS OLD
VIKING HONOUR
700ml 40%

【ブラインド解答】
地域:アイランズ
蒸留所:ハイランドパーク
年数:12~15年程度
度数:43%程度
樽:アメリカンホワイトオーク、リフィルシェリーオーク主体。
仕様:加水、複数樽バッティング、近年流通品。

グラス:木村硝子テイスティング
時期:不明
場所:ブラインドサンプル@ぎんが
暫定評価:★★★★★(5-6)

香り:サルファリーさを含む淡いシェリー香。微かにピートと干草、オレンジピールのほろ苦さ。奥には蜂蜜の甘みを伴うエステリーさとオーキーなウッディネスがあり、スワリングすると一時的に開いてくる。

味:ややえぐみのある口当たり、中間に塩水を思わせる潮気、蜂蜜の甘み、やや緩いボディ。フィニッシュは林檎のコンポートを思わせるオーキーで華やかなフレーバーが、土っぽさと植物感のあるピート、スモーキーさのアクセントとなって感じられる。

おそらく現行品のオフィシャルボトル。ミドルエイジ・・・までいかない、比較的若い原酒を加水で整えている印象はあるが、大手の作りらしく上手くまとまっている。乾いた植物感を伴うピートフレーバーと樽由来のニュアンスが程よく混ざり合い、特に余韻のオークフレーバーとスモーキーさが可能性を感じる。


昨日に続きハイランドパークのブラインド記事。昨年大幅リニューアルしたハイランドパーク・オフィシャルラインナップの12年モノ、バイキング・オナー。

その新しいデザインは、近年のハイランドパークの販売戦略であるヴァイキング文化をベースに、世界遺産「ウルネスの木造教会にある壁面装飾」をモチーフとして、従前ののっぺりとしたボトルから大きく異なる。バックバーにあって明らかに目を引くデザインとなっています。


(ウルネスの木造教会の壁面装飾。ヴァイキングが信仰したというドラゴンが、蔦の浮き彫りの中に隠されているという。また教会はヴァイキング船の建造技術が応用され、釘を使わず建てられている。引用元:

今回のリニューアルでは、変わったのは上記パッケージだけで、価格、中身は変わっていないと公式には発信されています。
確かに価格は据え置きなのですが、味について発売当時に比較テイスティングした限りでは、新しいボトルのほうがシェリー感が控えめで、その分ピートが際立っていた印象がありました。

今回は期せずしてそれをブラインドテイスティングで確かめた形。解答がボトル指定出来ている以上、特徴は掴みやすかったと言えますね。
ピートフレーバーがはっきりしているだけでなく、余韻にかけて感じられるアメリカンホワイトオーク由来と思しきオーキーなフルーティーさ。これは先日記事にした、17年ザ・ライトに備わっていたものほど強くはないものの同一の香味です。

一方、ハイランドパークの王道とも言えるシェリー樽熟成の原酒由来と思われる微かな硫黄臭は、オークフルーツ路線でいくなら不要とも・・・。
シェリー系原酒で厚みとバランスをとるのはいいと思うんですが、やはり中途半端にシェリー路線を走るくらいなら、オークフルーツ路線が良い。その傾向がスタンダードボトルから出ているのは、個人的にはポジティブであり、将来的に期待が出来るリニューアルであったとも感じるのです。


さて、今回のブラインドサンプルは、以前ちょっと特殊なブラインドを出題頂いた、ぎんがさんから。
先日、持ち寄り会に呼ばれていたのですが、家庭都合で参加できず。。。すると事前にいくつかのサンプルが送られてきました。ありがたいことに、明らかに煽ってきているブラインドサンプルとともにです。
ここまでやられたらリアルタイムで解答してやるよと、持ち寄り会の時間帯に解答をツイッターで送信。「鋭敏」を期待されていたようですが、期待通りの結果を提供出来て満足であります。

ロングロウ 18年 オフィシャル 46% ブラインド

カテゴリ:

LONGROW
Aged 18 years
Cask type Sherry
Release 2013
700ml 46%

【ブラインドテイスティング解答】
地域:キャンベルタウン
蒸留所:スプリングバンク(ロングロウ)
年数:12年程度
樽:シェリーを含むバッティング
度数:43%程度
仕様:オフィシャル、加水

グラス:木村硝子テイスティング
時期:不明
場所:自宅@ブラインドサンプル
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:蝋燭、生焼けホットケーキ生地とキャラメルが混じったような甘いアロマ。スワリングしているとウッディで黒砂糖を思わせるシェリー香とオレンジママレードを思わせる熟成感。

味:水っぽさのある甘い口当たりから、香り同様に蝋のような麦芽風味が主体。ほのかに粉末魚粉、奥には黒砂糖やカラメルソースを思わせるシェリー風味。ややべたつく甘みから、ほろ苦く土っぽいさ、若干の渋みを感じるドライな余韻。味の濃さの割に長くは続かない。

スプリングバンク蒸留所系列の独特の個性があり、関連するボトルであることは間違いない。ボディと個性はしっかりしているが、何処と無くシェリー感に混ざったような、あるいは水っぽさとも感じる。フレッシュシェリー樽的なモノが使われて、シェリーそのものが結構混じっているのだろうか。


ウイスキー仲間のぎんがさんからのブラインド出題、ラスト1本。このサンプルはここまでの2本(グレンカダム、ダラスデュー)とは異なり、個人的には非常にわかりやすい個性が備わっていて、ノージングで系列蒸留所、つまり近年のスプリングバンク仕込みであることは絞れました。

ウイスキーを飲むと、モルティング済みの麦芽の白い部分をかじったような・・・おしろいやお粥のような香味がする原酒があります。
近年のスプリングバンク系列の場合、その風味が濃いというか独特。自分の感覚では蝋燭っぽさだったり、ホットケーキミックスをこねた後のなま生地のような香味だと認識しています。
該当するのはヘーゼルバーン、スプリングバンク、ロングロウ、そしてキルケラン。前者の麦芽風味はハイランド地方を中心に多く見られますが、後者の香味が出ているのは近年のスプリングバンク系列以外で経験がありません。

そこにビターなくらい効いたピートとなれば、残るはスプリングバンクかロングロウです。
一方、口当たりで感じた樽感の緩さというか水っぽさ、そして中間から余韻にかけての樽感のベタつきが今回のアヤ。まだ若く樽感と酒質が一体化してないような。。。熟成年数が12〜15年くらいのオフィシャルシングルモルトで43%程度を想定しましたが、正解はどちらもそれより長く高い。開封後の時間経過によるものか、樽成分由来か、ただまあ冷静に考えると、予想したバンク系列の蒸留所の時点でオフィシャルは46%仕様でしたね(笑)。


そんなわけで、ノージングの段階である程度絞れていたブラインドでしたが、弾幕となったのが今回の出題意図。このサンプルに似てると思うと提示されていたのが、「スプリングバンク21年2018年リリース」。
まさか同じ系列の蒸留所を入れてくるか?と散々勝手に悩まされました。
ああ、全くなんて腹黒い出題者なんでしょう。

自分は今年のスブリングバンク21年は飲めていないため、この構成についてコメントできないですが、2017年リリースの21年は先日飲む機会があり、やはり先に述べたように麦芽風味に独特の個性が感じられます。
ピートの有無、発酵層や蒸留器、そして麦芽の品種。これらが入れ替わっても該当するフレーバーは替わらないため、これはスプリングバンクのフロアモルティング由来と考えるのが妥当。。。ただ、実際のところどうなのかはわかりません。
しかし近年、様々な蒸留所で酒質が細くなりつつある中、こうした樽でもピートでもない小手先だけではない個性は得がたいもの。蒸留所として高い評価を受けているのも、納得出来ると感じています。


以上で今回のブラインド出題の解答は終了です。
テイスティングの経験を得られるだけでなく、その独特な出題方法から、サンプルに対する認識のキャッチボールをしているような興味深いブラインドでした。ぎんがさん、改めて出題ありがとうございました!

ダラスデュー 17年 1970-1987 セスタンテ 58.3% ブラインド

カテゴリ:

DALLAS-DHU
For SESTANTE
Rare Highland Malt Scotch Whisky
Aged 17 years
Distilled 1970
Bottled 1987
58.3% 750ml

【ブラインドテイスティング解答】
地域:ハイランド
蒸留所:グレンダラン
熟成年数:15年程度
樽:リフィルシェリーバット
度数:60%程度

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@ブラインドサンプル
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:ハイトーンでドライ、ハイプルーフらしい強いプレーンなアタック。バニラ、華やかで品がいいおしろい系の麦芽香、微かにニッキ、シトラスのアクセント。時間経過で蜂蜜の甘み、柑橘感がさらに開き、

味:ハイトーンでスパイシーな口当たり。麦芽風味から洋梨のペースト、薄めた蜂蜜、膨らみのある味わい。
余韻はドライでスパイシー、ジンジンとした刺激、白木を思わせるウッディネスが麦芽風味やオレンジピールのほろ苦さを伴い長く続く。

ナチュラルでプレーンな麦芽風味主体だが、程よくホワイトオーク系の樽感が混ざり合っている。酒質のボディ感に香味の広がり、近年系の原酒とは格が違う。時間経過で開く香味が完成度をさらに高めてくれる。加水するとオーキーな華やかさ、クリーミーな麦芽風味がさらに開く。



前回のグレンカダム21年に引き続き、ぎんがさん出題のちょっと特殊なブラインドテイスティング。
今回のお題は、「ロイヤルブラック 16年 57% ゼニスインポート」。先日自分も記事にしたボトルで、ロイヤルブラックラの中でもかなりレベルの高いリリースの一つだと思います。

参考:ロイヤルブラックラ 16年 1980年代流通 57% ゼニスインポート

そのボトルと近い要素があるという、ブラインドテイスティング。
サンプルAのカダムは明らかに近年系の構成でしたが、今回はノージング時点でちょっと傾向が違うなと。樽に頼らないナチュラルでハイトーンな構成は、近年のボトラーズではなく、1990年ごろのケイデンヘッドやセスタンテなどに多く見られたキャラクター。微かに香木、白木のニュアンスを伴うそれは、近年めっきり見なくなったフレーバーです。

この手の構成は、半端な酒質だとドライでビリビリするだけで終わるのですが、今回のサンプルや、上述のブラックラなどはボディがしっかりして、原料由来の味が残っているため、香味とも膨らみや広がりがある。
単体でのブラインドとしては、嫌味は少ないながら麦芽風味主体で比較的しっかりとした酒質に仕上がる、1970年代のグレンダラン、プレーン系のリフィルオークを予想。長期熟成でないことで、逆に麦芽風味にボディや勢いが残る、15年程度の熟成と考えていましたが、基本スペックはほぼイメージ通りだったと思います。
蒸留所?ハイランド・スペイサイド縛りでもダラスデューなんてわかったら変態ですよ(笑)。

(出題者から届いた煽りのメッセージ。ひよる?馬鹿言ってんじゃないよ、ブラインドテイスティングはいつ何時誰の挑戦でも受けるんですよ!)

そしてお題だったボトル、ゼニスブラックラ16年との比較は、確かにこの手のナチュラルな樽感に、麦芽風味主体のハイプルーフな構成は、近い要素が多いと思います。
厳密に言えばブラックラよりも樽由来の柑橘系のニュアンスが強く出ていると感じますが、ここは樽の違いでしょうか。どちらもある程度ウイスキーを飲み慣れた人が、好みの一つにたどり着いてくる、麦系の領域にあるボトルと言えます。

なお、以前のダラスデューの投稿で、自分は「印象に残っていないウイスキーの一つ」として、ダラスデューを挙げて結構辛口なことを書いています。
もちろん、蒸留所に対して持っている"このスペックだったらこう仕上がるだろう"という予測に、今回のボトルが合致しないわけではないですが、その中でも上位グループに入るだろう美味しさをすっかり満喫させていただきました。
これは印象に残ったボトルになりましたね。

アラン 7年 2011-2018 59.7% カスクサンプル For T.Ishihara ブラインド

カテゴリ:
IMG_8522
ARRAN
DUTY PAID SAMPLE
For TATSUYA ISHIHARA
Aged 7 years
Distilled 2011
Bottled 2018
Cask type Sherry Hogshead 250ℓ
500ml 59.7%

【ブラインドテイスティング】
地域:スペイサイド
蒸留所:グレンロセス
年数:12年程度
樽:シーズニングシェリーホグス
度数:53〜55%程度
仕様:ボトラーズ、シングルカスク

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1ヶ月程度
場所:自宅&イベント飲み
暫定評価:★★★★★★(5→6)

香り:香り立ちにハイトーンな強さはあるが、合わせてリッチなシェリー香、ドライプルーン、キャラメリゼやビターチョコレート、シナモンを思わせるスパイスのアクセント。焼き栗やウッディーなニュアンスを伴う。

味:濃厚でパワフル、とろりとしたシーズニングシェリー感。ドライプルーンやイチヂクの甘露煮のような甘み、一呼吸置いてスパイシーでハイトーンなアタックが口内を刺激する。余韻はスパイシーで、樽由来のタンニンを伴い長く続く。

シーズニング系のシェリー感が濃くでており、小さめの樽にシェリーが残った(染み込んだ)状態で原酒を詰めたと感じる構成。シグナトリーのイビスコシェリーマチュアードシリーズを連想した。樽の裏にある若さがピリピリと刺激し、若干酒質と樽の乖離を感じるが、少量加水するとバランスが取れ、ぐっと飲みやすくなる。


当ブログではおなじみ、ウイスキーの写真展開催に向けてクラウドファンディングに挑戦中の、T.Ishiharaさん所有カスクサンプル。
新婚旅行でアラン蒸留所を訪問し、その場でニューメイクの詰まった1樽を購入してしまったというエピソードは中々に豪快ですが、蒸留所から毎年自分の樽の中身を状態確認で取り寄せることができるため、ミニ樽ではない実際の環境でのウイスキーの成長を見ていける点は、愛好家にとってプライスレスな経験だと思います。


ご参考:T.Ishiharaさんのアラン蒸留所 プライベートカスクサンプル飲み比べ
http://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1067805308.html


自分は昨年、5年熟成と6年熟成のサンプルをテイスティングさせて貰い、1年間の変化に驚かされたところ(上記参照)。そして1年経った7年熟成のサンプルは、思わぬ場所でテイスティングの機会がやってきました。
それは8月下旬、ウイスキーガロア誌のテイスターである倉島さんが企画した、ブラインドテイスティングイベントにて。一連のテイスティングを終えた後の延長戦に、このアランのサンプルが仕込まれていたのです。

当日はまさかこれと思わず、結果は上記の通り。
言い訳すると、アランのようなプレーンな酒質が濃厚シェリーでマスクされると、それだけで蒸留所の判定は困難。香味から連想する構成は近年系ですが、最近シングルカスクでこんな濃厚短熟リリースあったかなぁと、最後の絞り込みで悩んで悩んで・・・。そりゃ思い当たらないわけですよ、リリースされてないんですから(笑)。
悔しいのでIshiharaさんに「サンプル貸して」とお願いし、自宅テイスティングで深掘りすることにしました。

(アラン・カスクサンプル。左側が6年、右側が7年。7年の方が熟成期間の分色に深みが出ているというか、若干赤みがかってきたように見える。香味も7年の方が当然濃厚。)

改めて飲むと、単体ではハイランド系のプレーンな酒質に、濃厚なシーズニングシェリー感が上乗せされているモルトという印象。短熟濃厚シェリーはカヴァランがありますが、カヴァランほど酒質が軽くないので、荒さが若干の分離感として余韻にかけて残ってる感じですね。
とは言え既に一定の完成度はあり、いよいよボトリング時期に入ったとも感じます。

ただ樽感はピークを迎えつつあるのですが、酒質は若さからまだ伸び代があるように感じます。
それこそ10年熟成すれば、酒質部分の荒さはそれなりに落ち着くと思うのですが、ピークを迎えている樽感は益々濃く、余韻のウッディーさは過熟仕様になっていく。このミスマッチをどうするかが、今後ボトリングを決める難しさだと思います。 

比較すると6年よりは明らかに7年のほうが全体の完成度が高く、6年目でボトリングを決断しなかったのは正解だったと言えます。
今後はオーナーの好みの整理でもありますが、飲んだ際にまず最初に感じるのは樽感なので、割り切るなら8年目あたりで樽感ピークの仕上がりを重視するのも一案。あるいは、この感じなら保存期限の10年間熟成してみて、樽感次第でカスクストレングスか、加水で仕上げるという選択肢もあります。

ちなみに今回、加水は43%、46%、50%、55%程度といくつか試しましたが、現時点では50%程度が安定しているようでした。
しかしせっかくのプライベートカスクはカスクストレングスで仕上げたい。。。ギャンブル要素が残るため悩ましいですね。まあ色の濃いほうがインパクトはあるので、預かり期間丸々いってしまっても良いかもしれません。
何れにせよウイスキーの変化を学びながら、その将来の姿を考え、悩み、時間を過ごす。これぞオーナーの特権。なんて贅沢な時間でしょうか。

IMGP9776
(アラン蒸留所外観。ウェアハウスを含むこのアングルの写真は珍しい。。。Photo by T.Ishihara)

なお、冒頭触れたT.Ishiharaさんの写真展に関するクラウドファンディングは、開始即日に目標額を達成しただけでなく、先日は目標額の2倍となる支援も達成しました。 

ご参照:ウイスキー写真作品企画展 "Why dou you like whisk(e)y"

会場は西荻窪のNishiogi Placeに決まり、更なるコラボレーションや日程の延長まで動かれるなど、当初予想したとおり大きな話になりつつあります。 
今回テイスティングしたアランのカスクサンプルも、会場でテイスティングできるウイスキーに予定しているとのこと。原酒とともに企画がどこまで成長するか楽しみです。

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