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GLENMORANGIE
THE NATIVE ROSS-SHIRE
Years 10 old
Distilled 1981.2.5
Bottled 1991.4.17
Cask No,978
750ml 59.6%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後1週間以内
評価:★★★★★★(6)(!) 
※ストレートでの評価。加水の変化で加点有り

香り:乾いた木や干草の強い香り、ニッキやクローブを思わせるスパイシーなニュアンスと、ハイトーンで鼻腔を刺激するアタック。奥からはパイナップルやオレンジなどのドライフルーツ、バニラの甘み。時間経過でスパイシーさが和らぎ、オーキーで華やかなアロマが前に出てくるが、かなり時間がかかる。

味:ねっとりとした口当たり、大麦のクリーム、蜂蜜を思わせる甘みと砂糖漬けのオレンジピール。あわせて乾いたウッディネス、香り同様ハイトーンな刺激が広がっていく。ボディは強く、しっかりとしている。
余韻はヒリヒリとしてスパイシー、フレッシュで香り同様に木材を思わせるフレーバーと、若干のえぐみが残る。

ストレートでは荒削りだが、加水すると香味のバランスが段違いで良くなる。まろやかさとコクを感じる口当たりから麦芽風味、ほろ苦いウッディネスにオレンジピール。麦芽香と華やかなアロマが心地よく、素晴らしいポテンシャルを秘めている。
      
(ネイティブロスシャーはボトルを一周する独特なラベルが採用され、裏側下部分には、蒸留・瓶詰め年月日、樽番号など原酒のスペックが書かれている。)

グレンモーレンジの意欲作にして、名作の一つとする呼び声もある10年ナチュラルカスクストレングス、ネイティブロスシャー。
何が意欲作かというと、このリリースが行われた1990年代初頭は、スコッチウイスキーの消費量のうち95%以上がブレンデッドウイスキーという時代。40%台に加水した通常リリースのシングルモルトというだけでも少数派である中、シングルカスク、そしてカスクストレングスで樽出しのオフィシャルリリースを展開したことにあります。

同仕様は、ボトラーズリリースであれば珍しくありません。1990年代初頭、ボトラーズメーカーが今ほどない時期でも、シグナトリーやケイデンヘッド、そしてGMなどからのリリースがあります。
また、オフィシャルリリースでは、複数樽をバッティングしたシングルモルトのハイプルーフ(フルストレングス)は、マッカランやボウモア、リンクウッドなど一部メーカーからリリースがありましたが、通常ラインナップとしてのシングルカスクは現代でも数が限られます。
特にグレンモーレンジは、ボトラーズリリースが極めて少ない蒸留所だけに、シングルカスクの存在はより一層貴重と言えます。

上記はネイティブロスシャーに同封されているパンフレット。文章の随所に感じる前時代感はさておき、テイスティングにおける「ノンチルフィルター」「樽出しの微妙なニュアンス」とする香味の多彩さをPRしています。
(今発売されれば大注目のリリースですが、当時はその魅力を伝えるのに相当苦労しただろうと思われます。)

実際飲んでみると約60%のカスクストレングスだけあって、力強いアタックと共にシングルカスクだからこそのアロマ、フレーバーがダイレクトに飛び込んでくる感覚。樽材由来と思われるスパイスや木材の香味一つ一つの存在が、はっきりと感じられます。
10年熟成で、まだまだ荒削りな部分はありますが、この突き抜けた感覚は複数樽をバッティングした43%加水の通常リリースでは得難いもの。媚びない旨さ、と言いますか。このスペックだからこそ味わえる、通好みの味わいがあります。
Ross-shireはグレンモーレンジ蒸留所のある地名、Native は原産、土地由来のものを指す言葉。まさにこれというリリースですね。


余談ですがこのボトル、7年前に自分が本格的にウイスキーを飲み始めた頃に手に入れたものと同じ樽番号でした。
飲んだ印象はほぼ変わらず。ああ、そう言えばこんな感じだったなと。あるいは、いやちょっと丸くなったか?でも相変わらずだな、とも。
おそらく経年変化で完成度を高めるためには、後20年くらいは瓶熟が必要なレベル。しかしこれはこういうボトルとして楽しむものとも言えます。
今回、とある縁から自分の手元に来たこの2本。偶然の出会いに感謝しつつ、大切に飲んでいこうと思います。