タグ

タグ:オフィシャル

グレンモーレンジ 18年 1990-2000年代流通 43%

カテゴリ:
IMG_0619

GLENMORANGIE 
YEARS 18 OLD 
SINGLE HIGHLAND RARE MALT SCOTCH WHISKY 
1990-2000’s 
750ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:甘やかで柔らかい香り立ち。ブラウンシュガー、キャラメル、微かにみたらしの要素も混じる色濃い甘さ。合わせて牧草、麦芽香もしっかりと感じられる。

味:香り同様に柔らかくしっとりとした口当たり。まずはシェリー樽熟成を思わせる色濃い甘さ、キャラメルや微かにダークフルーツ。そしてやや野暮ったさに通じる麦芽風味、バニラやパン生地の甘さ、徐々にほろ苦くビターなウッディネス。

現行18年の華やかさとも、1世代前の90年代初頭流通の陶酔感伴うシェリー系18年(写真下)とも異なる、2000年前後の緩やかで甘やか、そして少し植物感などが混じる野暮ったさ、牧歌的な麦芽風味の混じる癒し系。
洗練されても突き抜けてもいないがそれが良い、どこか安心感を感じてしまう、この流通時期らしいモーレンジの個性を味わえる1本。

IMG_1562

初めて飲んだというわけではなく、今まで何度も飲んでいるボトルですが、レビューしていなかったので掲載します。

バーボン樽や麦芽風味のフレーバーがメインにある10年と加えて、シェリー樽熟成原酒の要素を感じられるのが、1990年からリリースを開始したとされるグレンモーレンジ18年です。
ただ同じ18年といっても、時代によってフレーバーの方向性は変わっており、今回はその点を少し掘り下げていきます。

現行品の18年は、シェリー樽原酒こそ使われているものの役割は全体に厚みを出す程度。現行18年の象徴とも言える、ラグジュアリーな華やかさは、バーボン樽熟成原酒の役割となっています。
一方で、1990年のリリース当初の18年は、シェリー樽原酒の個性が強く出て、そのクオリティはまさに黄金時代。甘やかでフルーティーで艶やかで…陶酔感を感じさせるもの。
どちらのボトルもその流通時期を俯瞰して、ハイレベルな1本であることは間違いありません。

そして今回紹介する1990年代後半から2000年代流通のグレンモーレンジ18年は、属性としてはそのどちらにも属さない。
シェリー樽原酒は60−70年代の黄金時代とは言いがたく、バーボン樽原酒は近年の市場を抑えた華やかでフルーティーさを全面に出せるようなものでもない。この時期のグレンモーレンジらしい野暮ったさのある麦芽風味を主体として、華やかでもフルーティーでもない、甘やかさとウッディさが備わった味わいが特徴です。

シングルモルトウイスキー市場は2000年代以降に本格的に拡大してきた歴史があり、いわばそこまでは、どんな味わいが市場で評価されるのか各社手探り状態だったところ。シェリー樽の色濃い甘さやダークフルーツを思わせる果実感。バーボン樽の華やかで黄色系のフルーティーさを思わせるオークフレーバー。そしてトロピカルフルーツ。
この辺を意識して各社がリリースをし出したのは、まさに最近なんですよね。

そうした歴史から、今回のグレンモーレンジ18年は、ブレンデッドウイスキー全盛期からの過渡期の1本。18年だけでなく、同時期の10年も妙に野暮ったいフレーバーが目立つ構成となっています。
ただ、この野暮ったさが完全に悪かというと決してそうではないんです。都会に住んでいると田舎の空気に心が安らぐ瞬間があるような、洗練されていないものに味を感じるというか。。。
何れにせよ、今のウイスキーにはない魅力を持った1本であると言えます。

IMG_0926
IMG_0966
今回のレビューアイテムは、御徒町にオープンした「リカースペース榊」でテイスティングしました。
チャージ2000円と、通常のBARに比べると高額なように感じますが、無料で飲めるボトルに加え、このモーレンジが1杯●00円など、基本的には原価に近い価格で提供。
また、強い匂いを出さないフードは持ち込み自由など、フリーな感じも面白い。
色々飲んで勉強してみたい方、おすすめのBARです。

クロナキルティ ギャレーヘッド シングルモルト 40% (新バッチ 2023.10〜)

カテゴリ:

clonakilty_galley_head

CLONAKILTY 
GALLEY HEAD 
SINGLE MALT IRISH WHISKEY 
Cask type Bourbon Barrel 4 years, Rum Cask finish 
Batch 2023~
700ml 40%

評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでオーキーなトップノート。ややドライな香り立ちだが、土や殻付き麦芽を思わせる要素に果実感豊富。洋梨や林檎、マスカット、微かに青瓜やジャスミン。奥から蜂蜜のような粘性を思わせる甘さも感じられる。

味:口当たりは柔らかく適度なコクがあり、麦芽風味から軽やかなスパイシーさと微かな青み。香り同様にしっかりとフルーティーで、黄色や白色の果肉を思わせるフレーバー。余韻は華やかで、ナッツや果実の皮のようなほろ苦さに、塩を数粒舌の上で溶かしたような出汁感を伴う長いフィニッシュ。

想像以上に王道で、想像以上に美味しかったシングルモルト。第一印象はバーボン樽の12年熟成程度のスペイサイドモルトかローランドモルトだが、それだけではない個性が印象的なウイスキーである。長期熟成アイリッシュウイスキーのケミカルトロピカルとは異なるが、麦芽風味と樽由来の豊かな果実風味は万人受けする構成。現代のウイスキー愛好家に広く評価されるだろう。最初の1杯にどうぞ。ハイボールもGOOD。

CLONAKILTY_h

アイルランド南部、大西洋沿いにある街、その名を冠したクロナキルティ蒸留所のシングルモルトのスタンダードブランドが、今回のテイスティングアイテムである”GALLEY HEAD”です。
このリリースをご存じの方だと「知ってるギャレーヘッドとラベルが違う?」と思うかもしれませんが、今回の1本は今後市場に流通してくるリニューアル品で、構成原酒の異なるバッチ。個人的に前作より好みの味に仕上がってます。

蒸留所を操業するアトランティック・ディスティラリー社は2016年設立。蒸留所のオープンは2019年3月。
自社蒸留の原酒が充分熟成するまでの間は、同じアイルランドの蒸留所(ブッシュミルズやグレートノーザンなど)から調達した原酒をベースに、後述する海岸沿い高台にある熟成環境でのカスクフィニッシュやブレンドを経たリリースが行われています。

現在市場にある銀色のスタンプ(以下、画像参照)のギャレーヘッドは、バーボン樽で4年間熟成させた原酒を、ワイン樽で数カ月フィニッシュしたもの。軽やかな味わいにワイン樽由来のナッティなフレーバーが合わさって、ハイボールで楽しむにはピッタリなウイスキーでした。
一方で今回リリースされた新しいロットは、バーボン樽で4年以上熟成した原酒をアグリコール・ラムカスクで追熟。華やかでリッチなフルーティーさが好ましく、若さも感じず飲みやすい1本に仕上がっています。

IMG_0781

先日、とあるBARで偶然クロナキルティ蒸留所の関係者、日本エリアマネージャーのフィオナさんとお会いしたことが、今回のレビューの発端でした。
せっかくなのでと、バックバーにあったギャレーヘッド(シルバースタンプ)のハイボールを頂きながら、色々お話を伺ったのですが・・・。お恥ずかしいながら、本ウイスキーについては「見たことある」程度、ハイボールの味もさっぱり系だったしで。。。作り手の熱量に対して「ほんとにほんとぉ~?」みたいな、多分そんな雰囲気を私が出してしまっていたのだと思います。

それじゃあこれを飲んでよと、取り出されたボトルがゴールドスタンプきらめく新ロットのギャレーヘッド。その場で開封、マスターすいません。グラス貸してください。
いや驚きました。シルバーのほうはストレートだと普通だなーという印象でしたが、ゴールドはレビューでも触れたように、想像以上に王道で、想像以上に美味しかったんですよね。
市場流通価格はわかりませんが、聞くところでは現在とそう変わらないとのことで、他社製品とも充分に渡り合える、センスの良さが光る1本だと思います。

FullSizeRender
FullSizeRender

◆クロナキルティ蒸留所について
せっかく色々お話しも伺ったので、ここからはクロナキルティ蒸留所についてざっくり紹介させて頂こうと思います。
同蒸留所は先に触れた通り、2019年3月からクロナキルティの街中で創業、熟成庫は町から約10㎞離れた、海岸そばの高台にあります。
原料となる麦芽もまた同地域にある自社畑で栽培されているものと、周辺の契約農家で栽培されたもののみを使用する、言わばローカルバーレイという原料、環境で造られている特徴があります。

FullSizeRender
※クロナキルティ蒸留所の熟成庫。眼前に広がる大西洋からは時折強い海風が吹き付ける。この熟成環境がもたらす個性は、現在のリリースからもその片鱗を感じることが出来る。

FullSizeRender
※クロナキルティ・ギャレーヘッドのリリースにおいて、ブランドストーリーにもなっているギャレーヘッド灯台。写真奥の矢印の場所に熟成庫が建てられている。 

このこだわりの背景には、クロナキルティ蒸留所が原料の栽培から、熟成、ボトリングを全て蒸留所のある地域内で行う「GRAIN TO GLASS」をコンセプトに掲げていることがあります。
ただし創業時から蒸留していたのはアイリッシュ伝統のシングルポットスチルウイスキーのみで、シングルモルトは作っていなかったとのこと。
また現在シングルポットスチルウイスキー、またはアイリッシュウイスキー(ブレンデッド)としてリリースされているラインナップも、原酒が充分確保できていないこともあって、そのコンセプトを全て反映したものではありません。

これはこの蒸留所に限らず、新興蒸留所においては大概同じですね。大事なのは、そのコンセプトを継続することなんです。
そして新たなロットとして先日からラベルが切り替わり、日本では2023年11月からリリースされるクロナキルティ・アイリッシュウイスキー、ポートカスクとダブルオーク(以下、左、中央)には、クロナキルティ蒸留所で蒸留され、上記熟成庫で4年以上の熟成を経た原酒が使用されているとのことです。

IMG_1445

また、クロナキルティ蒸留所の原酒を用いた100%シングルポットスチルウイスキーは、2025年のリリースを予定していること。2023年からはシングルモルトウイスキーの蒸留も開始しており、熟成後は今回レビュしたギャレーヘッドにも活用していく予定だそうです。
着実に、理想を形にするための歩みを進めていますね。

蒸留所を立ち上げたメンバーは、熟成庫がある地域のそば、ダーンディディで9世代に渡って農業を営んでいるスカリー家。今回紹介した「ギャレーヘッド」は半島の先端にある、この地域の象徴とも言える灯台をブランド名に採用したものであり、クロナキルティ蒸留所にとってのスタンダードブランドの一つとなっています。
今はまだワークインプログレスなクロナキルティ蒸留所ですが、この成長過程を楽しめるのが新興クラフトの面白さ。
酒販メーカーからも期待している蒸留所の一つとして名前を聞きますし、今回のギャレーヘッドも市場のニーズを満たす味作りに光るものを感じます。今後のリリースが楽しみです!

FullSizeRender
FullSizeRender
※ダーンディディで蒸留所創業者一族が耕作する大麦畑と収穫風景。シングルモルトのリリースが待ち遠しい。

シングルモルト 三郎丸 2019-2023 The Ultimate Peat 61% 特装版

カテゴリ:
FullSizeRender

SABUROMARU 
The Ultimate Peat 
Single Malt Japanese Whisky 
Distilled 2019 
Bottled 2023 
Cask type Bourbon Barrel #190093 
700ml 61% 

評価:★★★★★★(6)

香り:スモーキーでビター、和柑橘を思わせるアロマに微かに根菜や発酵香、焦げた木材や藁、灰のような香りも混ざる。スワリングするとオレンジピールやキャラメル、ほのかなオーク香。

味:甘酸っぱくスモーキー、オイリーな口当たり。柑橘やチャーオークの甘さ、ウッディネス。そしてビターなピートフレーバーがしっかりと広がる。
余韻はほろ苦くピーティーで力強い。オークフレーバーがその奥に混じり、グレープフルーツの綿やオレンジ等を思わせる果実味が隠し味となって複雑で長く続く。

やや若さに通じるところはあるが、力強いスモーキーフレーバーと柑橘系の要素、三郎丸らしさがしっかりと感じられる1本。2018年のZEMON導入前に比べて洗練された酒質に、樽感が程よく混ざりあう。樽感は華やか黄色フルーツ系より、少し焦げ目がついた新樽寄りのタイプで、それがピート由来のほろ苦い香味と馴染んでいる。
口当たりは61%あるとは思えない柔らかさ。本リリースの特徴で、専用グラスでなくとも充分美味しさと個性を楽しめる。

FullSizeRender

なお、上記通常使っている木村硝子テイスティンググラス1でのレビューだが、The Ultimate Peat Glassを使うことでこれらの要素が混ざり、ピートのスモーキーさと樽由来の甘やかなアロマが主体でネガティブ要素も一層少なくなり、口当たりのスムーズさで美味しさが際立つ。
まさに、良いフレーバーを引き出し、力強いピートフレーバーと三郎丸の酒質がバランスよく融合した味わい。

IMG_1427

三郎丸蒸留所の「ピートを極める」をコンセプトに、その個性や美味しさをストレートに伝えられるように製作したオリジナルグラス「The Ultimate Peat Glass」。このグラスの特装版として発売された、アタッシュケース付きモデルに付属していたのが、今回のテイスティングアイテムです。

本テイスティンググラスの設計には自分も関わらせてもらった訳ですが、「こういうのできませんか?」と、悪ノリで提案したモノが本当に形になってしまったのが本品だったりします。
元ネタは某グラスメーカーのイベント用アイテムと思しき、同社の最上位モデルのワイングラス8種が全て入ったケース。アタッシュケースかっこいいなー、こういうのあったら良いなぁ、2脚セットとかでどうだろうと。

ほら、男性ならアタッシュケースに憧れることは1度くらいあるじゃないですか(特に思春期)。
しかし稲垣さんからは、やれますね、とサムズアップがメッセンジャーで返ってきたくらいのリアクションで、社交辞令だと思っていたらまさか本当に作るとは(笑)。
しかもこのグラス用のウイスキーとセットですよ。完成の連絡を受けて、思わず笑ってしまいました。

FullSizeRender
FullSizeRender
※The Ultimate Peat Glass 特装版内容:専用アタッシュケース、シングルカスク三郎丸2019-2023、専用グラスクロス、ピンバッチ、The Ultimate Peat Glass。これにボトルを入れて持ち歩く日は来るのだろうか…。

そんな個人的な趣味全開のアイテムに対して、付属のウイスキーはピーティーでスモーキーな本格派。また、樽感と酒質、このグラスで楽しむのにちょうどいい塩梅です。
2019年の三郎丸は、独自開発した鋳造ポットスチルZEMON導入によって酒質がさらに向上。数値上では苦労が見られますが、三郎丸が目指すウイスキーの個性が、原酒の成長とともに間違いなく洗練されて感じられます。
一方で、今回の1本は三郎丸の2019年の原酒の中では決してあたりとか、突き抜けた品質というわけではないようにも思います。

いわば、三郎丸モルトとしては平均的なキャラクターの一つ。今後、5年、8年と熟成を経て、間違いなく完成度が高まる余力があるようにも感じられます。
なお、今回の特装版ですが最初に予定していた販売数は瞬殺。その後追加販売もあるなど、想像以上に好評でした。
自分の知人(アジア圏の方)は、これは一体どこで買えるんだ、素晴らしいアイテムだと興奮気味に語っていました。ああ、やっぱりケースって大事なんですね(笑)。

IMG_1467
オマケ:自分が見かけたアタッシュケース入りグラスセット。こういうの作れませんか?この一言が、まさかこんな結果になろうとは。

グレンリベット 12年 ダブルオーク 40% Lot2023.3 &ごめんなさい案件

カテゴリ:
FullSizeRender

THE GLENLIVET 
12 YEARS OLD 
DOUBLE OAK 
Lot 2023.3 
700ml 40% 

評価:★★★★★(5)(!)

【ブラインドテイスティング】
トップノートはオーキーで華やか、ややドライ。洋梨などの果実香を感じる。奥には干藁、おが屑。
口当たりは蜜っぽい甘さ、ボディは加水で緩いが麦芽由来の甘みの後から、香り同様にオーキーでほろ苦いウッディネスを伴うフィニッシュ。
香味のスケールは小さくまとまった感じはあるが、好ましい要素主体でバランス良く味わえる。

バーボンオーク主体、12年熟成程度、オフィシャル複数樽バッティングのシングルモルト、地域はスペイサイド。
というところまでは絞り込める。
また、酒質には素性の良さが感じられ、大手メーカー、大手蒸留所による造りとも感じられる。
予想銘柄はグレンフィディックかグレンリベット。

ただ、オールドっぽさはないし、現行と考えるとフィディック12年かな。現行フィディックにしては麦感が柔らかいというか、蜜っぽい甘さが気になるけど・・・。
グレンリベットは一つ前のグリーンボトル時代や、ちょっと前に終売になった13年ファーストフィルアメリカンオークならともかく、現行はかなり樽感が淡くなってドライ、若さも目立ってた印象だから、近年リリースでは無いと予想。
現行リベット12年だったら、ペルノさんにゴメンナサイ発信するよ(笑)
ということで、銘柄はグレンフィディックで!
……。

IMG_1157

『グレンリベット及びペルノリカールさん、ごめんなさい』

ドヤ顔で回答しました。
しかも現行リベットはないとまで断定して回答しました。
まさかのど現行、グレンリベット12年ダブルオークでした。
出題者でもないのに、この時隣に居た某A氏の笑顔が憎たらしい。

弁明させていただくならば、2019年にグレンリベット12年がグリーンボトルから今の12年ダブルオークにリニューアルした時、そのインパクトたるや凄かったんです。
アメリカンオーク樽の華やかさや林檎系のフレーバーが薄くなり、ドライな樽香に若干ニューポッティーですらあるフレーバー。
アンケートをとったわけではありませんが、少なくとも自分の周囲の愛好家、当時のFBやTwitterでは賛否の賛を探す方が難しかった。

著名な某テイスターは、3rdフィルの樽の比率が増えているのではないかとし、厳しいコメントを発信していたのも覚えています。

FullSizeRender

一方で、同様にラベルチェンジをしたグレンフィディック12年(写真右)は、当時味がそこまで変わらず、固めの洋梨や林檎、麦芽にオークフレーバーという感じで、安定感が光る結果に。
数年前にグレンフィディック12年のレビューを書いた時も…

「同じく12年のシングルモルトで売り出している某静かな谷のように、リニューアルする毎に樽感が薄く若さが目立って、いったいどうしたのかという銘柄も散見されるなか。グレンフィディックの安定感が際立つ結果になっているようにも感じます。」
なんて書いてます。

ただこうして最新ロットをブラインドで飲み、意外な結果に驚いてもう1杯注文して、さらに比較で現行グレンフィディック12年とも飲み比べた結果。
認めざるを得ないわけです。グレンリベット12年が美味しくなっているということに。

FullSizeRender

「認めざるを得ない」なんていうと、偉そうというか、何かこの蒸留所にネガティブな想いがあるかのように思えますが、決してそんなことはありません。
むしろ近年の市場でトレンドの味を抑えてきたことは流石大手メーカーだと思いますし、それ以上にグレンリベットが旧ボトル時代の樽感、クオリティを取り戻していたことは素直に嬉しいことです。

故に約束通り「ゴメンナサイ」しますが、嬉しい誤算、嬉しいごめんなさいなので全然OK。
グレンリベッットは政府承認第一号の蒸留所であり、全てのモルトの基本と言われた時代があり、同様にUnblended表記やPure Malt表記など、オールド好きには特別な想いがあるのがグレンリベットです。

グレンリベット12年ダブルオークは、アメリカンオーク原酒とヨーロピアンオーク原酒のバッティング。
酒質がこなれた瓶内変化ではなく、明らかにリニューアル当時と比較して樽感がリッチになっているあたり、1stフィルのアメリカンオーク樽原酒を増やし、そこにヨーロピアンオークでコクを与える、この安定感に大手の底力を感じました。
ちなみに比較したところ、現行フィディック12年が以前よりまたちょっと固く、青っぽくなったような気もしましたが、これは誤差の範囲かもしれません。

一方で同じく流通量の多いスコッチモルトのスタンダードだと、ボウモア12年の現行品が結構美味しいんです。ボディは緩いというか軽いのですが、グレープフルーツや赤系果実の混じるピートフレーバーは、以前のボウモアに通じるキャラクター。大手メーカーのリリースも、定期的に試してみないとその真価が測れませんね。
今回も良い経験をさせてもらいました。2019年〜2020年にグレンリベットに絶望した各位、裏ラベルにボトリングロットが書かれてますので、ぜひ今一度試してみてください。

アベラワー アブナック アルバ 58.9% Batch No,007

カテゴリ:
FullSizeRender

ABERLOUR 
A’BUNADH ALBA 
ORIGINAL CASK STRENGTH 
Batch No,007 
Cask type 1st fill Bourbon Barrel 
700ml 58.9%

評価:★★★★★★(6)

【ブラインド予想】
地域:スペイサイド
年数:12〜15年熟成程度
度数:55%程度
樽:バーボンバレル
蒸留所:グレングラント

香り:勢いのある華やかでオーキーなトップノート。アメリカンオーク由来の要素がしっかり感じられ、乾いた麦芽や微かにナッツ、酒質の素性の良さを感じる。

味:コクのある口当たり、しっかりと広がりがある味わいで、蜂蜜や麦芽風味からじわじわ黄色系フルーツ、加熱した林檎。
余韻はほろ苦くウッディ、華やか。若干のスパイスとひりつくような刺激を伴う長いフィニッシュ。

バーボン樽熟成のミドルエイジ、スペイサイドモルトときたらイメージするだろうキャラクターの一つ。
比較的若い原酒と思われるが、複数樽バッティング故か口当たりに柔らかさがあるのも特徴。また、酒質に厚みがあり、樽感に負けず甘みやコクを主張するところが、近年のライト化に反した古典的な作りとして好感が持てる。確かに、これなら濃いめのシェリー感が付与されてもちょうど良く仕上がるだろう。


2000年にファーストリリースが行われた、アベラワー・アブナック(アブーナ)。アベラワーの樽出し原酒をカスクストレングスでボトリングする、熟成樽へのこだわりを打ち出したスモールバッチリリースです。
アブナックといえばシェリー樽熟成原酒。長く10年熟成未満の比較的若いものをバッティングしたカスクストレングス仕様という位置付けでしたが、今回紹介する“アルバ”は、2020年ごろからリリースされ始めた、1st fill バーボン樽熟成のアブナックです。

IMG_0774

シェリー樽熟成のアベラワー・アブナックは80近いバッチまでリリースを重ねている人気のブランドですが、その香味は初期の頃と比べるとだいぶ異なってきています。
写真は比較的初期のバッチ、No,6。おそらく2002〜3年ごろのものでしょう。何が違うって色合いですね。最近のロットが手元にある方は、是非写真のものと比較してみてください。明らかにシェリー樽に由来する色合いが異なり、薄くなってきています。

これはアベラワーに限ったことではありませんが、増加を続けるウイスキー事業者と生産量の中でシェリー樽の調達、確保はどの蒸留所も非常に難しい状況にあり、大手会社であっても四苦八苦しています。
そのため、アベラワーもいつまでシェリー樽メインでリリースを続けるのか。ここまで薄くなってしまったアブナックは、いっそバーボン樽に切り替えた方がいいのではないか。そのような声も、愛好家間で聞こえてくるほどでした。

そんな中で、ふと気がついたらリリースされていたのが、バーボン樽熟成原酒を使ったアブナック“アルバ”です。
アブナックはゲール語で“起源”を意味するとされています。アベラワーのリリースは、古くはシェリー樽熟成のキャラクターを前面に出したものが多く、例えば同じ路線として位置付けられているのが1980年代ごろまで流通していた8年角瓶。ただ、近年はシェリー樽とバーボン樽の熟成で、ダブルカスクマチュレーションをアピールするなど、少し風向きが変わってきていたところ。
これがアベラワーもう一つの起源であると、アブナックからホワイトオークを意味する“アルバ”がリリースされたわけです。

IMG_8344

なお、このように書くと今回のリリースは苦肉の策であるかに聞こえてしまうかもしれませんが、ブラインドテイスティングで飲んで素直におどろかされました。
アメリカンオーク樽由来の市場で評価されているフレーバーが備わって、それでいて酒質は軽すぎず、過度なウッディさも若いフレーバーも目立たない。複数樽バッティングなので、単体ではトゲトゲしさが残る原酒でもあっても、多少丸みを帯びているのでしょう。

ブラインドでイメージしたのはグレングラント15年でしたが、グラントほど軽くないし華やかでもない、この酒質由来の蜂蜜や麦芽の甘みはどうも違う。バルヴェニーの12年シングルバレル?いやしかしあれはもっとドライだし、該当するリリースがない・・・。
いつもはシェリー樽に隠れていた酒質、その素顔。シングルカスクとも違うオフィシャルならではの仕上がりは想像以上に良いものでした。
願わくば、このクオリティがリリースを重ねても継続されていくことを願っています。

このページのトップヘ

見出し画像
×