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エッセンスオブサントリー 第3弾 リッチタイプ ジャパニーズブレンデッド 48%

カテゴリ:
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ESSENCE of SUNTORY 
BLENDED JAPANESE WHISKY 
RICH TYPE 
Bottled in 2019 
500ml 48% 

グラス:アランノベルティグラス
時期:開封後1週間
場所:BAR ヒーロー
評価:★★★★★★(6)

香り:山崎らしい甘く華やかで、香木っぽさの混じるウッディなアロマ。干し柿やアプリコット、オーキーでもあり熟成を感じる。その奥には白く乾いた木材、微かにハーバルなニュアンスも。

味:口当たりは厚みがあって甘やかでリッチ。柿のペーストや林檎のカラメル煮、加工した果実の甘みと香木を思わせるウッディネスが広がり、そこからさらにもう一段、乾いた木材を思わせる強いウッディさが口内を引き締める。
余韻はドライでスパイシー、木製家具、香木のオリエンタルな含み香を漂わせて長く続く。

熟成感と多層的なウッディネスを楽しめるブレンデッド。中でもミズナラ樽の香木を思わせる要素が主体。もはや響と言っても違和感のないサントリー味だが、余韻や香りの奥に強めのウッディさ、針葉樹系のニュアンスが存在するのが違いと言える。加水しても崩れずよく延びる。っていうかモロ響系統。ジャパニーズハーモニーがこうだったら。。。

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エッセンスオブサントリー第3弾。鏡板を杉材に変えた杉樽熟成のモルト原酒をキーモルトとし、白州、山崎、それぞれの原酒をベースとしているジャパニーズブレンデッド。
昨日レビューした白州ベースのクリーンタイプに比べ、この山崎ベースのリッチタイプは熟成感とウッディネスが強く、シェリー樽やミズナラ樽等の杉樽以外のフレーバーがしっかり備わっていることから、杉材の個性はクリーンタイプほどは目立たちません。

テーマとなる杉樽原酒は、ホワイトオーク樽で12年以上熟成させた山崎モルトを杉樽に移して6年以上後熟したフィニッシュタイプ。後はリフィルシェリー樽、ミズナラ樽で18年以上熟成させた山崎モルトや、同じく18年以上熟成の知多グレーンと、公開されている原酒が全て18年以上の熟成を経ているという、原酒不足な昨今では珍しい贅沢な仕様のブレンドです。
香味ともしっかり熟成感があって満足度は高く。また水楢と杉、2つの日本由来の木材が生み出すフレーバーの共演は、これぞジャパニーズハーモニーと言えるものだと感じます。

自分は響のような多層的なサントリーのブレンド構成を、樽感の十二単のようだと感じています。今回のブレンドで杉樽の存在感は、その着物のなかの1~2枚と言えるレベル。一番目立つ表の部分はミズナラで、間をシェリー、ホワイトオーク、そしてグレーンが繋いでいる。強調されたウッディネスに些か違和感はありますが、癖の強い原酒をキーモルトにしつつ、ここまで整ってまとめられるのは、サントリーのブレンド技術の高さを感じられる"エッセンス"だと思います。

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ちなみに、昨日公開したクリーンタイプのレビューで、2つのラベルデザインが、どちらのブレンドも味わいのイメージとリンクしているように感じると書きました。

考えすぎか、あるいは偶然の一致かもしれませんが、ベースの部分の色使いが
クリーンタイプ:白色:白州や知多のスッキリとクリアなブレンド(白角や角瓶のベクトル)。
リッチタイプ:黄金色:熟成した山崎と知多の味わい深い多層的なブレンド(響のベクトル)。
ここにそれぞれ墨字の"和のデザイン"が、今回のテーマである杉樽由来のフレーバーを表しているという理解であり。このロジックで行くと、リッチタイプは杉樽の面積が少ないわけですが、実際先に書いたようにそこまでコテコテな構成ではありません。

その点で、リッチタイプは言わばブレンダーが納得のいく材料を使って作る、サントリーのブレンド技術を見るようなリリースでもあるのかなと。上で角と響と書きましたが、ブレンドの違い以上に原酒の格が違うんですよね。
まずはクリーンタイプで杉樽由来のフレーバーを感じ、その上でリッチタイプで理想系を味わう。そんな視点で楽しんで見てはいかがでしょうか。

エッセンスオブサントリー 第3弾 クリーンタイプ ジャパニーズブレンデッド 48%

カテゴリ:
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THE ESSENCE of SUNTORY 
BLENDED JAPANESE WHISKY 
"CLEAN TYPE" 
Botteld in 2019 
500ml 48% 

グラス:アランノベルティグラス
時期:開封後1週間
場所:BAR ヒーロー
評価:★★★★★★(5-6)

香り:ドライでオーク由来の軽い華やかさを伴う、クリーンな香り立ち。スパイシーで干し草、針葉樹、タイムなどを思わせる微かにハーバルなニュアンスが独特なアクセントになっている。

味:香りのクリーンさ、ドライさに反して口当たりはとろりとしたグレーンの甘味がある。合わせてオークの華やかさが一瞬含み香として感じられるが、すぐに干し草や乾いた木材のようなドライさ、序盤の甘味からの落差がある。また余韻にかけてスパイシーさ、オーキーな華やかさに混じって木材のエキスのような独特なニュアンスを伴うフィニッシュ。

ライトピーテッドな白州ベースのブレンデッドに、杉樽の個性という組み合わせなので、杉材由来のフレーバーが分かりやすいのがポイント。特にフィニッシュにかけて存在を主張して、それが良いか悪いかはさておきアンバランスなほどではない。
加水すると穏やかにまとまり、香りは軽やかな華やかさが延びるようで、スッキリとした余韻へと繋がっていく。こうした変化に加え、強めに加水してもしゃばしゃばにならない点は流石のブレンド技術。

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先月末にリリースされた、エッセンスオブサントリーシリーズ第3弾。同シリーズのコンセプトに関する説明は今さらなので省略しますが、今回のテーマは”杉樽モルト原酒”。アメリカンオーク樽の鏡板部分を杉材に変えた”杉樽”で熟成させたそれは、サントリー独自の原酒として、何かと話題になることが多いものです。

杉樽がもたらすフレーバーの方向性はミズナラの”和”とは異なる"和"に通じるもので、爽やかで軽い植物感の混じるハーバルなニュアンス。既存の製品だと、トリスの構成原酒に使われていたり、かつては輿水ブレンダーが”ピュアモルト膳”の構成原酒の一つに用いたなどエピソードが残されています。
ただし、癖の強い樽であることから原酒の扱いは難しかったことも合わせて語られています。
以前この杉樽熟成のモルト原酒を飲んだことがありますが、確かに独特な香味要素やボディを潰すようなエキスが強く、ブレンドに使うとしても隠し味、シングルモルトとしては厳しいのではないか、と感じていたところでした。

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今回のエッセンスオブサントリー第3弾は、その杉樽熟成モルト原酒を用いたブレンデッドウイスキーへのチャレンジ。白州ベースのブレンデッド(クリーンタイプ・写真左)と、山崎ベースのブレンデッド(リッチタイプ・写真右)の2本。ラベルに書かれた墨字は「和」であり、デザインの違いからも伝わるように、どちらも異なる方向性を表現したブレンドとなっています。

このクリーンタイプは、杉樽で6年以上熟成させた白州モルト原酒と共に、同じく白州蒸留所のホワイトオークで熟成したモルト、知多蒸留所のクリーンタイプグレーンをブレンドしたもの。そこまで若いとは感じないので、アメリカンオーク樽の原酒のほうは、少なくとも10年程度は熟成しているように感じます。
トップノートは白州モルトらしい軽い華やかさ、オーキーなアロマが感じられ、そこからグレーンの影響かドライでまさにクリーン。ここに杉樽っぽさがハマッて個性が分かりやすいのですが、味の強さから杉樽のモルトは全体の20%程度とか、バランスを取りつつ使っているのではないか。大半がそれというレシピではなさそうです。

またその味わいから考えると、今回の2つのブレンドは、双方とも香味構成がラベルデザインや色使いにもマッチしているようで・・・。
つまりクリーンタイプは、白地が白州ブレンドのクリーンなフレーバーで、大きく書かれた黒の和が杉樽の個性と言えるような、一部分で目立つ構成なのです。
(リッチタイプとクリーンタイプでは、杉樽の個性は後者のほうが分かりやすいとも。)

個性的な原酒故、ブレンドはかなり苦労されたのではないかと思いますが。ただ混ぜただけにならない個性のバランスや、加水での変化など、チャレンジを支えるブレンド技術に、これまでの経験と伝統の技を見ることが出来た1本。
後は好みの問題で、自分はやはり杉樽をコアに持ってくるのは難しいかなという印象を再認識する結果となりました。

山崎 9年 エッセンスオブサントリー2019 スパニッシュオーク 56%

カテゴリ:
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THE ESSENCE of SUNTORY 
YAMAZAKI 
SPANISH OAK  
(New Wood) 
Aged 9 years 
Distilled 2009  
Bottled 2019 
500ml 56% 

グラス:サントリーテイスティンググラス
時期:開封当日&数日後
場所:日比谷BAR
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ドライでやや荒さも感じるウッディな香り立ち。焦げた樹皮やコーヒーのような苦さ、渋みを連想させるアロマに、そこからかりんとうや黒砂糖の甘み、徐々に甘酸っぱくリッチなダークフルーツ香。微かに香木のような要素も混じる濃厚なアロマ。

味:リッチでパワフル、ねっとりとして存在感のあるウッディさ。タンニンと共にダークフルーツの甘酸っぱさと、カカオ多めのアーモンドチョコレート。合わせて少しゴムのような樹液っぽさが主張する。
余韻はウッディでビター、そしてスパイシー。存在感のあるタンニンと、香り同様に香木を思わせるニュアンスを伴う深く甘い樽香が口内に残って、ひりつくような刺激と共に長く続く。

若干赤みがかった濃厚な色合いが美しい。酒質の若さを濃い樽感でマスクしている構成で、樽由来の要素や樹液を思わせるようなニュアンスを感じた後で、角の取りきれていない刺激が顔を出してくる。
少量加水するとクリーミーな甘み、プルーンを思わせるニュアンスが開くが、タンニンやほうじ茶のようなウッディさは変わらず後半を支配する。

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エッセンスオブサントリー第2弾、最後に紹介するのは、スパニッシュオークの”新樽”で熟成させた山崎原酒。今回のリリース3本のなかではこれが一番興味がありました。
なにせ、スパニッシュオークは近年シーズニングのシェリーカスクにおける主要な樽材のひとつでありながら、アメリカンホワイトオークと違い、純粋な新樽の香味がどう影響するかは様々なシェリー樽熟成のウイスキーを飲んで、共通項から推測するくらいしか手段がなかったためです。

いざ飲んで見ると、スパニッシュオークらしい香木的な要素もさることながら、これが本当に新樽なのか?ファーストフィルのシェリーカスクではないのか?
と、スペックを疑問視してしまうような系統の濃厚なフレーバー。ドライフルーツのような果実味や強いタンニンは木材の持つ香味成分、そして多孔性という性質に由来するところもあるのでしょう。一方で焦げたようなニュアンスも感じられることから、樽製造の際に適度にチャーしてあると推察。そうでなければ、この色合いは説明しづらいなと思います。

その上で、新樽でこの香味なら、シーズニング前の樽作りと処理で、熟成させるウイスキーの仕上がりはおおよそ決まっているとも言えます。
例えば同じエッセンスオブサントリーのモンティージャワインカスクだと、焦げ感や樹液のような要素が低減している一方で、シェリー感と認識するであろうベースの香味は同じ。そこにシーズニング由来と思えるシロップっぽさや黒糖系の甘みが付与されているような。。。
つまりシーズニングでやっているのは色濃い果実味の付与ではなく、余計な灰汁抜きと、香味の仕上げ(短期のものはシェリーをいれた既成事実化とも・・・)のような印象すら受けます。
このボトル経験の有無で、近年のシェリー樽のシェリー感に関する印象がだいぶ変わるのではないでしょうか。

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(3種飲み比べ。それぞれの原酒の経験のみならず、飲み比べることで新樽にある香味がシーズニングやリフィルでどう変化したか、その関連性も知ることが出来る。
なお1ショットずつ注文したものの、全部飲みきるころには、舌も鼻も肝臓も”情熱”にやられてしまい。。。度数の高さと香味の濃厚さから、飲み比べはハーフショットずつが適量かもしれない。)

原酒単品で見ると、シングルモルトやブレンドの厚みを出せるような濃厚なモルトが、10年弱の熟成でこれだけのレベルに仕上がってしまうのは純粋にすごい。物量がどれだけあるかわかりませんが、オフィシャルリリースの原酒不足解消の光明が見えるようです。
もちろん3本とも仕上がりは荒く、特にこの新樽山崎などは、カバランのソリストを連想するような構成でもあったのですが、熟成環境しかり新樽のパワーしかり、サントリーは日本でのウイスキー作りを考えて、本当に試行錯誤しているんだなと驚かされます。

今回のリリースは、そうした山崎のハウススタイルを構成する要素に加え、ウイスキーの熟成に必要な樽の中でも謎の多いシェリー樽の、シーズニングシェリーとスパニッシュオークの香味の関係性を紐解くヒントを貰えたような、素晴らしい教材でもあったわけです。(あるいは更なる迷宮への入り口とも。)
思っていた以上に奥が深く、味の満足度以上に考えさせられるリリースでした。
次があるなら、白州でピートレベル違いのアメリカンオーク3種とかを期待したいです。


余談。完成度は3本とも横並びであり、序列については完全に個人の好みの問題と言えますが、バランスで言えばリフィルシェリー、わかりやすい甘みを帯びた濃厚さはモンティージャ、樽材由来の要素が最も出た経験値断トツは今回の新樽。。。
全てに共通のニュアンスがある中で、味で一番を決めるなら、好みの要素が多かったものはモンティージャワインカスクでした。

山崎 9年 エッセンスオブサントリー 2019 モンティージャワインカスク 55%

カテゴリ:
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THE ESSENCE OF SUNTORY 
YAMAZAKI 
MONTILLA WINE CASK 
(1st fill Spanish Oak)
Aged 9 years 
Distilled 2009
Bottled 2019
500ml 55%

グラス:サントリーテイスティンググラス
場所:日比谷BAR
時期:開封当日
暫定評価:★★★★★★(6)(!)

香り:しっとりとして濃厚な甘いアロマ。黒蜜やカラメルソース、微かな薬草香。ベリーキャンディのような人工的な甘酸っぱいニュアンスもあわせて感じられる。

味:とろりとしてリッチ、スウィートでウッディな口当たり。黒蜜やドライプルーン、レーズンチョコレートを思わせる濃厚な甘みと角の取れた酸味。序盤の濃厚なフレーバーを引き締めるタンニンが徐々に開いてくる。
余韻はコクのあるドライフルーツの甘酸っぱさと酒精の強さ、しっとりとしているがスパイシーなフィニッシュ。

まるで濃厚な近年マッカランのような味わい。熟成の若さと度数の高さで余韻にかけて酒精の強さはあるが、それが樽由来の濃厚な要素に負けない若いなりのバランスにも繋がっている。濃厚な甘みのある味わいは、シガーとの相性も良さそう。少量加水するとシーズニング系のウッディさ、香りの開きもよく甘酸っぱさもあるが、ネガな部分も顔を出してしまう。

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昨日に続いて、エッセンスオブサントリー第2弾から、モンティージャワインカスク熟成のレビューです。
シリーズ全体の位置付け等は、昨日の山崎リフィルシェリーカスクの記事中で紹介しましたのでざっくり割愛。同シリーズ第2弾は山崎蒸留所とスパニッシュオーク樽をテーマに、オフィシャルリリースのハウススタイルを構成するエッセンスたる要素を味わうことができます。

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(エッセンスオブサントリー第2弾から、リフィルシェリー樽熟成の山崎。シェリー感は程よいバランス型の仕上がりで、スパニッシュオークの香味の出方の違いと、近年のオフィシャル通常リリースとの共通項を探ることができる。レビューはこちら)

本来、この系統の酒精強化ワイン※の熟成樽に使われるのがアメリカンオークであることは、近年広く知られるようになった情報だと思います。(※モンティージャワインは、原料となる葡萄の糖度が高く度数が上がりやすいため、酒精強化が行われないものもある。サントリーの公式情報では酒精強化されたものを詰めているとのこと。)
つまりスパニッシュオークで作られたそれは、本来の製法の中から副産物として生じた樽ではなく、ウイスキーなどの他の酒類の熟成用に仕上げられたシーズニング樽ということになります。

このシーズニング樽と、通常製法からの排出樽の違いや、そもそも全てひと括りにシェリー樽と呼ぶかの是非についてはさておき、なぜシーズニング樽に本来のアメリカンホワイトオークだけでなく、サントリーのようにスパニッシュオークが一定数使われているかというと、それは木材の性質が大きく関係しています
適切に処理したスパニッシュオーク樽は、ウイスキーに香木を思わせる高貴なウッディネスと、ダークフルーツのようなフルーティーさ、特にシェリー系の樽として好ましい要素を短期間で与えてくれる、これはこれとして”求められている樽でもあるのです。

具体的にどのような香味であるかは、同じエッセンスオブサントリーの新樽熟成をテイスティングしていただくとして。。。
今回レビューするモンティージャワインカスク熟成も、シーズニング由来の多少薬品シロップのようなべたつきのある甘さと癖は感じられるが、黒蜜やベリーを思わせる甘みと酸味、そして濃厚さで、分かりやすく美味しいウイスキーに仕上がっていると感じます。
樽由来のタンニンも豊富で、余韻にかけての甘みと苦味の複雑さもポイント。何て言うか濃厚なマッカランみたいな味だなと。

ファーストフィルということで、ワインの成分量が多いのもそうですが、スパニッシュオークの多孔性のため樽材が持つ成分がウイスキーに溶けでやすいという特性が、日本の温暖な気候でさらに後押しされているようです。
こうしてみると、山崎のハウススタイルやサントリーのウイスキー作りのこだわりを知る以外に、近年のシェリーカスクを学ぶ上で重要な足掛かりになる一本とも思います。

山崎 10年 エッセンスオブサントリー 2019 リフィルシェリーカスク 53%

カテゴリ:

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THE ESSENCE of SUNTORY 
YAMAZAKI 
REFILL SHERRY CASK 
Aged 10 years 
Distilled 2008 
Bottled 2019 
500ml 53% 

グラス:サントリーテイスティンググラス
場所:日比谷BAR
時期:開封当日
評価:★★★★★★(6)

香り:鉛筆の削りかすを思わせる乾いたウッディネス。栗の渋皮煮、カスタードクッキーを思わせる甘みとほろ苦さ連想させるアロマ。スワリングでレーズンなどのドライフルーツの甘酸っぱい果実香も混じって感じられる。

味:ドライでウッディだが、徐々に粘性を伴う口当たり。ブラウンシュガー、オレンジピールチョコ、甘みの中に香り同様にドライフルーツの甘酸っぱさがアクセントになっている。
余韻は力強くスパイシーでトーン高めのウッディネス。ドライプルーンや黒蜜を思わせる甘みもほのかに漂い、淡いタンニンとともに長く続く。

若さというか、アタックの強さが味の後半にかけて感じられるが、シェリー感はバランスが良い程度。少量加水で甘酸っぱい果実感がさらに開くと共に、少し青みがかった瓜やハーブを思わせるオーク由来の要素も感じられるようになる。

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先月末にリリースされた、THE ESSENCE of SUNTORYの第2弾。
昨年同時期にリリースされた第1弾は、サントリーのブレンドを産み出す"原酒の作り分け"をテーマとしたような、山崎ピーテッドモルト、白州ライベースのグレーン、そして知多グレーンのワインカスクという少々変化球的なチョイスでしたが、第2弾は山崎蒸留所の原酒とスパニッシュオークを軸に、新樽、モンティージャワインのファーストフィル、オロロソシェリーのセカンドフィルという3種がリリースされました。

山崎蒸留所は今でこそ多様な原酒が作られていますが、展示されている初期の樽がシェリーバットであるだけでなく、オフィシャルラインナップもグレードが上がるとシェリー樽の比率が上がっていく傾向があり、ミズナラ樽と合わせてハウススタイルを構成する要であると言えます。

近年は、スパニッシュオークでのシェリー樽(酒精強化ワイン樽)作りのため、木材選定からワインを指定しての貯蔵、シーズニング期間まで、現地ボデガにブレンダーを派遣して品質管理を実施している徹底ぶり。ジョークでしょうが、スペイン人はどうにも信用ならないという蒸留所関係者発言も。。。(笑)
今回のリリースはそうした背景から、まさにシングルモルト山崎のエッセンス、真髄を垣間見ることができる構成と感じます。

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(2018年リリースのESSENCE of SUNTORY 第一弾。夢、遊、創の文字をそれぞれのモチーフとしている。香味についてはを参照。

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(ESSENCE of SUNTORY 第二弾3種。ラベルデザインは前回同様に墨文字で、情熱の国スペインとかけて「情」の文字がモチーフになっている。芸術に疎い自分だが、それぞれの色使いと構成に、なんとなく伝わってくるものはあり、バックバーに全種揃うとインパクトもありそう。)

前置きはこれくらいにして、3種類の中から最初にレビューするのは、色の濃さでリフィルシェリーカスクのシングルモルト山崎。
山崎のシェリーと言えば、樽材であるスパニッシュオークの特性や、熟成環境の影響もあり、真っ黒で圧殺で。。。まあとにかく濃い仕上がりのものが多く、リフィルタイプがそのままリリースされることは珍しいですね。

使われている樽は、ファーストフィルの段階でも今回と同じくらいの期間で原酒を払い出していたのか、程よいシェリー感とウッディネスが残りつつ、オーク由来のカスタードを思わせる甘みとスパイシーさが特徴。度数もそこそこあるため、特に余韻にかけてしっかりとした味わいが広がっていきます。
加水すると樽成分でチャーされてない領域から溶け出た要素が由来してか、少し青みがかった感じもあり、現在の山崎のリリースの中でも、12年や18年あたりの香味と共通のニュアンスが感じられました。

エッセンスオブサントリーシリーズの面白さは、そのものの味も悪くないだけでなく、飲むことでサントリーの既存製品への理解や、ウイスキー作りのこだわりを知るきっかけになることだと思います。
第1段は各蒸留所1本ずつ、しかもブレンドというテーマが広域なもので、各原酒の繋がりが分かりづらい部分がありました。しかし今回のリリースは、山崎シングルモルトの軸となる香味を紐解くだけでなく、飲み手にとって近年のシェリーカスクを味わう上で避けて通れない、スパニッシュオークの理解に繋がる点が最大の特徴と言えます。
中々満足度の高いニューリリースでした。是非3本の違いを比較しながら、テイスティングしてみてほしいですね。

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